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山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
目次

始まり

いつの間にか暗闇の中にいた。
どこを向いても真っ暗で、地面に立っているのかそうでないのかさえ分からない。
ふと前方に光が現れる。
光は次第に人型を取っていき見覚えのある人物になった。
眩しいほど美しい金の髪に目深に被ったボロボロな布……
最近ハマっているゲーム『刀剣乱舞』の私の初期刀・山姥切国広だ。
リアルな山姥切国広もかっこいい。

「そうか、これは夢か」
「夢じゃないぞ」
「夢に出てくる奴はだいたいそう言うんだよ」

そう言ってから気が付く。
目の前にいる山姥切国広は傷だらけのボロボロ、つまり重症状態である。

「え?!待って私重症放置したっけ??」
むしろ重症になるまで進軍することなんてなかったはずだ。
「まぁ落ち着け」
「あなたは落ち着きすぎじゃない?」
落ち着くように諭されて一息つく。
それにしても、傷だらけでも美男である。
見惚れてしまいそうだ。

「俺は折れて、あんたは死んだ。それだけだ」
「え……」

死んだと言われて思い出した。
仕事帰り、疲れた足を引きずって歩いていた私にタクシーが突っ込んできたのだ。
ぶつかった衝撃で意識を飛ばしたのだが……そうか、死んでしまったのか。

「じゃあこれは死に際に見てる夢ってことかー」
「そういうことになるな」

山姥切国広と会話できる夢なんて最後になんていい夢を見ているんだ。
と諦めたように考えている私を見て山姥切国広はため息を吐いた。
「……一つ願いがある」
「願い?」
なんだろう。
我が初期刀様である山姥切国広のお願いだなんて、死んだ私にできることならなんでもしてあげたい気分だけど。
「あんたに『俺』になってもらいたい」
「ん?なんて???」
急に何を言われたのかわからず聞き返す。
するとバカにしたような目で見られた。
「俺、山姥切国広となって今も苦しんでいる仲間達を助けてもらいたいんだ」
「それはなんていう成り代わり」
最近の小説でよくある成り代わり系のお話じゃないですかー。
え、一般ピーポーな私に何を期待しているんだろう。
「このまま再び降りれば記憶は真っ新になってしまう。でもあんたに俺の器に入って貰えば記憶を引き継げるし仲間達を助けることができる……かもしれない」
「ちょっとなんで最後自信なさげなんですかね?というか貴方自身でその仲間を助けたくないんですか」
「俺はもう折れてしまった……他に方法を思いつかないんだ」
そう顔を歪め苦しそうに言われてしまっては断れるわけがなかった。
私は頷く。
「いいよ。やってみる」
「本当か?!」
私の答えに山姥切国広はパァっと表情を輝かせる。
「本当本当。どうせ死んじゃってやることもないしねー」
最後に彼の役に立てるのならそれも有りじゃないか。
そう考えて私はその願いを聞くことにした。
「……ありがとう」
「お礼はその仲間を助けられた時に、ね?」
私が言うと山姥切国広は頷く。
そして片手を上げたかと思うと私の体が一瞬光って、収まった時には服が山姥切国広のものになっていた。
「あれ」
気のせいでなければさほど大きくない胸のふくらみがそのまんまのような……
私の疑問に答えるように山姥切国広は困った表情で言う。
「どうやらあんたと俺の魂が混ざった結果亜種というやつになってしまったみたいだな」
「おお……これが亜種……」
二次創作によくある見た目系亜種ちゃんですね。わかります。
「性能はそのまま俺のはずだから戦闘面の問題は無いはずだ」
言われて私は手に持っていた刀・山姥切国広を抜きはなつ。
シャランと綺麗な音が聞こえた気がする。
「おぉ……これが4億の男……」
「なんだそれは」
変な呼び名をつけるな、と小言をくらう。
いや4億の男って私がつけた名前じゃないし。しいて言うなら審神者の皆がそう呼んだからだよ!!
刀を軽く振るってみれば難なく振るえて驚いた。
「戦闘については器に染みついている。心配はするな……まぁ練度は1だけどな」
「不安要素!!」
そうか、顕現するってレベル1からなんだ。
これは大変そうだぞ。
「じゃあ戦場に落とすぞ」
「え、その本丸じゃなく?」
「あぁ、練度1のあんたが行った所で審神者に呪術で縛られて終わりだからな。できれば信頼のできる仲間を探して欲しい」
「でもそうしたらその間君の仲間は苦しみ続けることになるよ!」
私が言うと苦しそうに表情を歪めた。
「しかし……刀の付喪神になったあんたは審神者に弱い……」
あぁそうか。
すぐに助けに行きたいのは山々なのに私のことを心配してくれてるのか。
せっかく心配してくれてるのだからそれを無下にはできない。
「うん。ごめんね」
私は一つ謝って頭を下げる。
すると慌てた空気が伝わってきた。
「あ、頭なんて下げるんじゃない!全部俺の我儘なんだ!」
「それでもごめんね。頑張って仲間を見つけるからそれまで待っていて」
そう言えば観念したように一つ息を吐く。
「……頼む」
「頼まれました」
ふいに、近づいて来たと思ったらギュウっと抱きしめられた。
ぐふぅ……これがご褒美ですか。前払いオッケー大歓迎です……

糸を引かれるように意識が遠くなる。
それに逆らうことなく私は意識を手放したのだった。
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