二十八章 怪盗業発揮
「なかなかですわね」
様子を伺っていたタリアは想像以上の盛り上がりを見て満足そうに笑う。
「でも、長くは持ちそうにないですね」
すでに酔いがまわっている帝王がいつお開きだと言うかは時間の問題だ。
「それでしたら行きましょう。最初の入り口は……」
「タリア、わたしについてきて」
「はい、お任せいたします」
痛み止めの効果は上々、むしろケガをする前よりも調子がいい。
クラウディアは帝王の姿を見て追い始めた場所へとすぐに向かい、行き止まりの場所へと出た。
タリアは持っていたリモコンのスイッチを入れると、ただの壁が扉になって開く。
大人ふたりが横になって歩くのがやっとという広さしかない道を進む。
まだ先に道が延びているが、
「タリア、この辺からここの壁の中を通ったの」
向きや角度を変えながらリモコンを動かすと、どこかの壁がカチリと音を立てて入り口の扉が開く。
音に誘われ視線をそちらに向けると、足もそちらへと向かい、下るような道になっているところを歩き、また横の壁の中に入る扉を開く。
すると少し開けた道がある。
「このあたりに扉があって入るように言われたの……」
クラウディアはどの扉の中に入れられたのか、似たような扉が並ぶ中から探り当てようとした時だった。
あの時は気づかなかった人の気配がする。
「タリア、誰かいる」
「どこですか?」
「あそこ、あの真ん中あたり」
指を指すと、タリアは持っていたランプを高くあげ、先を照らした。
「もし、そこにおられるのはカーラ二世であられますか? わたしくしはタリア。マリアンヌ様に命を救っていただいたものです」
タリアの呼びかけに、その気配が動くのを察したクラウディアは近寄ろうとする。
でも、その動きを止めたのは以外にもタリアだった。
「もしカーラ二世であられるなら、扉でも壁でも床でもよろしいので二回、叩いてください」
少し間があいて二回叩く音がした。
「それではもうひとつだけ質問させてください。先日、ここにカーラ二世だと名乗っている男がきた思います。そのときに連れていたのは誰でしたか?」
またしばらく間があく。
すると、ガリガリトンガリガリトンとなにかで床か壁を削ったり叩いているような音がし始めた。
それがなにを示しているのかタリアにはわかっているようだ。
「ありがとうございます。たしかにカーラ二世であられるようですわね。試すようなことをして申し訳ございません」
タリアがその者がいる扉まで近づくので、クラウディアもあとについた。
またまたタリアは慣れた感じで鍵穴に細い棒をいれ、カチカチと数回突っついたり回したりしてあっさり鍵をあけてしまった。
部屋の中をランプで照らすと、そこには両手足に太い枷がつき、枷と枷が鎖で繋がり、また足の枷の鎖は壁にも繋がれていた。
顔はなにやら面のようなものが隠されているし、簡単に喋ることができないよう、口を塞がれているようだった。
タリアはその面が固定されている革紐をほどき、そして口を塞いでいた道具もはずす。
現れた顔は金色の髪がとても似合う、紳士的な男性。
痩せて目がえぐれ頬がこけてしまっているが、それでもそれなりの美貌だったのがわかる名残がある。
タリアは両手足の枷を外し始めると、男の視線がクラウディアへと注がれた。
「あ、あ……あ……」
長い間口を塞がれていたからなのか、それとも会話をしなかったからなのか、思っていることが言葉にできないようだ。
本来ならここで何か言うべきなのだろうか、タリアはそれはまた後でというかのように、男の視線を自分へと向けさせた。
「帝王、今は時間がございませんので、彼女との会話はのちほどでお願いいたしますわ。ここから出ます。歩けますか? できましたら走っていただけるとよいのですが」
男はタリアの問いかけに、頷いたら首を横に振ったりしている。
そんな中でもクラウディアのことが気になるようだ。
「あの、マリアンヌさんを助けたいのです。力を貸してください」
ここで逃げるのを止めたと言われないよう、クラウディアは自己紹介の前に目的を告げた。
マリアンヌという名に過剰反応する。
「あ、あ……あ、あ……マ、マリ……た、たす……たすけ、る。いく、とも、に……」
おぼつかない足でたちあがり、外に出ようとするが、なかなか上手く足を動かすことができない。
そこで男は四つん這いになってやっと閉じこめられていた部屋からでることができた。
二足歩行より四つん這いでついてきてもらった方がまだ早く戻れるきがした。
ふたりが来た道を戻ろうとしたが、男がこっちだと視線で促す。
タリアを見て、転がっていた小石を掴み、床に擦りつけはじめる。
ガリガリテンガリガリテン……
タリアはそのリズムを理解し、
「別の隠し通路があるらしいですわ」
来た道を戻り、事態に気づいた偽物と鉢合わせする危険は避けた方がいいだろう。
ふたりは男の後についていく。
するとそこにあったのは水路だった。
「地下水路、かしら? もしかして霊安室に繋がっていたりします?」
コクリと頷く。
様子を伺っていたタリアは想像以上の盛り上がりを見て満足そうに笑う。
「でも、長くは持ちそうにないですね」
すでに酔いがまわっている帝王がいつお開きだと言うかは時間の問題だ。
「それでしたら行きましょう。最初の入り口は……」
「タリア、わたしについてきて」
「はい、お任せいたします」
痛み止めの効果は上々、むしろケガをする前よりも調子がいい。
クラウディアは帝王の姿を見て追い始めた場所へとすぐに向かい、行き止まりの場所へと出た。
タリアは持っていたリモコンのスイッチを入れると、ただの壁が扉になって開く。
大人ふたりが横になって歩くのがやっとという広さしかない道を進む。
まだ先に道が延びているが、
「タリア、この辺からここの壁の中を通ったの」
向きや角度を変えながらリモコンを動かすと、どこかの壁がカチリと音を立てて入り口の扉が開く。
音に誘われ視線をそちらに向けると、足もそちらへと向かい、下るような道になっているところを歩き、また横の壁の中に入る扉を開く。
すると少し開けた道がある。
「このあたりに扉があって入るように言われたの……」
クラウディアはどの扉の中に入れられたのか、似たような扉が並ぶ中から探り当てようとした時だった。
あの時は気づかなかった人の気配がする。
「タリア、誰かいる」
「どこですか?」
「あそこ、あの真ん中あたり」
指を指すと、タリアは持っていたランプを高くあげ、先を照らした。
「もし、そこにおられるのはカーラ二世であられますか? わたしくしはタリア。マリアンヌ様に命を救っていただいたものです」
タリアの呼びかけに、その気配が動くのを察したクラウディアは近寄ろうとする。
でも、その動きを止めたのは以外にもタリアだった。
「もしカーラ二世であられるなら、扉でも壁でも床でもよろしいので二回、叩いてください」
少し間があいて二回叩く音がした。
「それではもうひとつだけ質問させてください。先日、ここにカーラ二世だと名乗っている男がきた思います。そのときに連れていたのは誰でしたか?」
またしばらく間があく。
すると、ガリガリトンガリガリトンとなにかで床か壁を削ったり叩いているような音がし始めた。
それがなにを示しているのかタリアにはわかっているようだ。
「ありがとうございます。たしかにカーラ二世であられるようですわね。試すようなことをして申し訳ございません」
タリアがその者がいる扉まで近づくので、クラウディアもあとについた。
またまたタリアは慣れた感じで鍵穴に細い棒をいれ、カチカチと数回突っついたり回したりしてあっさり鍵をあけてしまった。
部屋の中をランプで照らすと、そこには両手足に太い枷がつき、枷と枷が鎖で繋がり、また足の枷の鎖は壁にも繋がれていた。
顔はなにやら面のようなものが隠されているし、簡単に喋ることができないよう、口を塞がれているようだった。
タリアはその面が固定されている革紐をほどき、そして口を塞いでいた道具もはずす。
現れた顔は金色の髪がとても似合う、紳士的な男性。
痩せて目がえぐれ頬がこけてしまっているが、それでもそれなりの美貌だったのがわかる名残がある。
タリアは両手足の枷を外し始めると、男の視線がクラウディアへと注がれた。
「あ、あ……あ……」
長い間口を塞がれていたからなのか、それとも会話をしなかったからなのか、思っていることが言葉にできないようだ。
本来ならここで何か言うべきなのだろうか、タリアはそれはまた後でというかのように、男の視線を自分へと向けさせた。
「帝王、今は時間がございませんので、彼女との会話はのちほどでお願いいたしますわ。ここから出ます。歩けますか? できましたら走っていただけるとよいのですが」
男はタリアの問いかけに、頷いたら首を横に振ったりしている。
そんな中でもクラウディアのことが気になるようだ。
「あの、マリアンヌさんを助けたいのです。力を貸してください」
ここで逃げるのを止めたと言われないよう、クラウディアは自己紹介の前に目的を告げた。
マリアンヌという名に過剰反応する。
「あ、あ……あ、あ……マ、マリ……た、たす……たすけ、る。いく、とも、に……」
おぼつかない足でたちあがり、外に出ようとするが、なかなか上手く足を動かすことができない。
そこで男は四つん這いになってやっと閉じこめられていた部屋からでることができた。
二足歩行より四つん這いでついてきてもらった方がまだ早く戻れるきがした。
ふたりが来た道を戻ろうとしたが、男がこっちだと視線で促す。
タリアを見て、転がっていた小石を掴み、床に擦りつけはじめる。
ガリガリテンガリガリテン……
タリアはそのリズムを理解し、
「別の隠し通路があるらしいですわ」
来た道を戻り、事態に気づいた偽物と鉢合わせする危険は避けた方がいいだろう。
ふたりは男の後についていく。
するとそこにあったのは水路だった。
「地下水路、かしら? もしかして霊安室に繋がっていたりします?」
コクリと頷く。
※会員登録するとコメントが書き込める様になります。