第6話
第二幕
俺が織館高校に入学してから、早くも一週間が経った。
最初こそ自己紹介の名残だったり、異様なほどに絡んでくる司馬のせいだったりもあってぼっちだった俺だけど、今ではかなり打ち解けている。流石俺。コミュニケーション能力が高いだけあるぜ!
こほん。調子に乗るとまたぼっちになるかもしれないので調子から降ります。ごめんなさい。
しかし、一つだけ問題というか、気になったいることがあった。
それは仲山のことだ。実は、一週間が経った今でもまだ声を掛けることができていない。
仲山は休み時間になるたびにクラスメイトの女子(名前は忘れた)と二人で教室から姿を消してしまうのだ。したがって話しかける隙がない。
まあ、これから一緒のクラスなんだ。気長にやればいいさ。つーかこれからっしょ!
閑話休題。
さて、入学時の適性テストもそうだったが、この学園都市には変わったシステムがいくつも存在する。
その中の一つに、『生徒会長が学校敷地内を統治する君主となる』というシステムがある。
そのシステムのせいで、生徒会長は絶対の権力を持つとともに、学校や生徒を導いていかなければいかないのだ。比喩的な意味ではなく、言葉通りの意味で。
したがって、生徒会長は絶対に必要な存在なのだ。
……なのだが。
「えーっと、実はこの織館高校には生徒会長がいません」
とある日の帰りのHR。そこで長宗我部先生はそんな爆弾発言を言い放った。
たしかに、入学式の時に生徒会長の言葉とかがなかったからおかしいなとは思ってたけどさ。
そんな長宗我部先生の言葉に、学園都市に進学する前にシステムのことを調べていたであろう人たちは、ざわざわと騒ぎ出す。
「み、みなさん落ちついてください! 話は終わってないんですよう」
あたふたと手を振りながらみんなに静止を求める長宗我部先生。可愛い。
みんなもその可愛さに気がついたのか、口を動かすのをやめて先生に見入ってしまう。
すごいな、先生。
「ともかくですよ。前生徒会長が前年度に移動してしまったため、この学校には今生徒会長はいません。今いる二、三年生に代わりを求めましたが、誰も立候補してくれませんでした。だから、現時点で生徒会長はいないんです」
俺は先生の説明に納得したと同時に溜息をついた。
今、先生は『転校』ではなく『移動』と言った。
移動とは、学園都市にあるシステムの一つで、条件さえ整えば学園都市内にある他の学校へ移る事が出来るというものだ。そのシステムを利用した場合は、転校ではなく移動となる。
つまり、前生徒会長は自らの意思で学校を去ったのだ。生徒会長という身分でありながら。
まったく、指導者の器がないやつだな。どこのどいつだよ。
「そこで! みなさんに問います。生徒会長に立候補してくれる人はいませんか?」
そんな長宗我部先生の言葉に、教室内は再び喧騒に包まれる。
あたりまえだ。学園都市のシステムを理解している普通の人間ならば、生徒会長なんてやりたいとは思わない。少なくとも、入学してすぐには。
その理由は、この学園都市の最大にして根幹ともいえるシステムのせい。
『有能人材育成システム』。生徒間での通称は『戦争システム』。
名前だけを聞けばゲームみたいなのを想像するだろうけど、実際はそんな甘っちょろいものじゃない。
このシステムは、学園都市側が有能な人材、それこそ首相や大統領になって国を引っ張っていける人材を育てる為に作られたものだ。
簡単に言ってしまえば、『学校を国、生徒会長が君主、生徒が民となって領土を拡大していく』というもの。歴史SLGを想像すれば分かりやすいかもしれない。信長の野望とか三国志とか戦国姫とか。
言葉にしてみれば本当に簡単に聞こえるが、このシステムのすごいところはリアルさを追求しているところだ。
国を動かすには有能な配下が必要だし、資金も必要になってくる。
その資金は学園都市内の専用通貨である『ポイント』を民である生徒から税金という形で手に入れるのだが……これまたリアルにできている。
生徒は国が繁栄するために税を払う必要が出てくるが、勿論払わなくてもいい。払わなければ国が動いてその生徒に対してなんらかの動きをみせなければならないし、それに対抗して生徒が反乱を起こすかもしれない。ゆえに、国は民たる生徒の不満が出ないように善政を布かないといけない。
さらにすごいところは、領土拡大のために実際に戦争を行うということだ。
と言っても、重火器の類を使って実際にドンパチするわけではないけど。
まあ、戦争のことは追々語るとして。
問題は生徒会長のことだ。
仮になにかしらの問題が起こった場合、責任は全て君主たる生徒会長の問題となる。
嫌な話になるが、何かしらの問題を起こした生徒会長を学園都市側は『無能』と判断する。当然、学園都市が無能と判断した人間をどこの企業も雇いたくはないわけで。
つまり、無能と判断された人間は、将来の選択肢が限りなく狭くなってしまう。
勿論、大きな功績を遺した生徒会長や、何事もなく無難に国を治めた生徒会長は高い評価を得られるのだが……。
俺が織館高校に入学してから、早くも一週間が経った。
最初こそ自己紹介の名残だったり、異様なほどに絡んでくる司馬のせいだったりもあってぼっちだった俺だけど、今ではかなり打ち解けている。流石俺。コミュニケーション能力が高いだけあるぜ!
こほん。調子に乗るとまたぼっちになるかもしれないので調子から降ります。ごめんなさい。
しかし、一つだけ問題というか、気になったいることがあった。
それは仲山のことだ。実は、一週間が経った今でもまだ声を掛けることができていない。
仲山は休み時間になるたびにクラスメイトの女子(名前は忘れた)と二人で教室から姿を消してしまうのだ。したがって話しかける隙がない。
まあ、これから一緒のクラスなんだ。気長にやればいいさ。つーかこれからっしょ!
閑話休題。
さて、入学時の適性テストもそうだったが、この学園都市には変わったシステムがいくつも存在する。
その中の一つに、『生徒会長が学校敷地内を統治する君主となる』というシステムがある。
そのシステムのせいで、生徒会長は絶対の権力を持つとともに、学校や生徒を導いていかなければいかないのだ。比喩的な意味ではなく、言葉通りの意味で。
したがって、生徒会長は絶対に必要な存在なのだ。
……なのだが。
「えーっと、実はこの織館高校には生徒会長がいません」
とある日の帰りのHR。そこで長宗我部先生はそんな爆弾発言を言い放った。
たしかに、入学式の時に生徒会長の言葉とかがなかったからおかしいなとは思ってたけどさ。
そんな長宗我部先生の言葉に、学園都市に進学する前にシステムのことを調べていたであろう人たちは、ざわざわと騒ぎ出す。
「み、みなさん落ちついてください! 話は終わってないんですよう」
あたふたと手を振りながらみんなに静止を求める長宗我部先生。可愛い。
みんなもその可愛さに気がついたのか、口を動かすのをやめて先生に見入ってしまう。
すごいな、先生。
「ともかくですよ。前生徒会長が前年度に移動してしまったため、この学校には今生徒会長はいません。今いる二、三年生に代わりを求めましたが、誰も立候補してくれませんでした。だから、現時点で生徒会長はいないんです」
俺は先生の説明に納得したと同時に溜息をついた。
今、先生は『転校』ではなく『移動』と言った。
移動とは、学園都市にあるシステムの一つで、条件さえ整えば学園都市内にある他の学校へ移る事が出来るというものだ。そのシステムを利用した場合は、転校ではなく移動となる。
つまり、前生徒会長は自らの意思で学校を去ったのだ。生徒会長という身分でありながら。
まったく、指導者の器がないやつだな。どこのどいつだよ。
「そこで! みなさんに問います。生徒会長に立候補してくれる人はいませんか?」
そんな長宗我部先生の言葉に、教室内は再び喧騒に包まれる。
あたりまえだ。学園都市のシステムを理解している普通の人間ならば、生徒会長なんてやりたいとは思わない。少なくとも、入学してすぐには。
その理由は、この学園都市の最大にして根幹ともいえるシステムのせい。
『有能人材育成システム』。生徒間での通称は『戦争システム』。
名前だけを聞けばゲームみたいなのを想像するだろうけど、実際はそんな甘っちょろいものじゃない。
このシステムは、学園都市側が有能な人材、それこそ首相や大統領になって国を引っ張っていける人材を育てる為に作られたものだ。
簡単に言ってしまえば、『学校を国、生徒会長が君主、生徒が民となって領土を拡大していく』というもの。歴史SLGを想像すれば分かりやすいかもしれない。信長の野望とか三国志とか戦国姫とか。
言葉にしてみれば本当に簡単に聞こえるが、このシステムのすごいところはリアルさを追求しているところだ。
国を動かすには有能な配下が必要だし、資金も必要になってくる。
その資金は学園都市内の専用通貨である『ポイント』を民である生徒から税金という形で手に入れるのだが……これまたリアルにできている。
生徒は国が繁栄するために税を払う必要が出てくるが、勿論払わなくてもいい。払わなければ国が動いてその生徒に対してなんらかの動きをみせなければならないし、それに対抗して生徒が反乱を起こすかもしれない。ゆえに、国は民たる生徒の不満が出ないように善政を布かないといけない。
さらにすごいところは、領土拡大のために実際に戦争を行うということだ。
と言っても、重火器の類を使って実際にドンパチするわけではないけど。
まあ、戦争のことは追々語るとして。
問題は生徒会長のことだ。
仮になにかしらの問題が起こった場合、責任は全て君主たる生徒会長の問題となる。
嫌な話になるが、何かしらの問題を起こした生徒会長を学園都市側は『無能』と判断する。当然、学園都市が無能と判断した人間をどこの企業も雇いたくはないわけで。
つまり、無能と判断された人間は、将来の選択肢が限りなく狭くなってしまう。
勿論、大きな功績を遺した生徒会長や、何事もなく無難に国を治めた生徒会長は高い評価を得られるのだが……。
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