第08話「凛、かよちんは私が守る!」
ここは音ノ木坂学院のアイドル研究部部室。
μ'sの5人はアイドル部と交渉するつもりだ。
「ごめんくださーい。μ'sの高坂穂乃果ですけど……」
部室の扉が空いた。にこが出てきた。
「帰って」
にこはドスの利いた声でそう言い放つ。
「今なんて……」
「帰ってって言ってんのよ!!」
聞いてる方の鼓膜が破れかねないほどの大声でそう言われ、穂乃果は驚きを隠せない。
「うわっ! いきなりなんですか!?」
にこからの威嚇を受けてちょっと口調が荒くなる。
「で、でもアイドル好きな者同士仲良くしたいんですが……」
かよちんが怯えながらそう口を挟む。
「あ゛!?」
にこは苛立ちながら言葉を返した。
「ひっ……」
かよちんは完全に萎縮してしまった。もう何も言えない。
「とりあえず私と話つけて部活になろうってことでしょう? ふざけないで!」
憤りを感じた穂乃果は激しい口調で返す。
「なんなんですかそれ! 話くらい聞いてくれても!」
「大体、マネージャーと付き合ってるメンバーがいるアイドルなんて言語道断! 絶許案件! アイドル研究やってる身としてそんなの認めないから!」
「え、それってどういう……」
穂乃果は突然の衝撃発言に言葉も出なかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
俺は急いで音ノ木坂に向かった。あの凛って子がかよちんになにかしてないか気になったのだ。
校舎に入ってすぐ、穂乃果たちを見かけた。
さっき俺をしばき回したにこと口論になっているようだ。
話を聞いてればやれマネージャーと付き合ってるアイドルがいるだの、μ'sが認められないだの好き勝手言ってくれちゃって。
「誰が俺と彼女だっていうんだ?」
とっさにそう言葉を放っていた。
「うわぁっ! 竜くん用事じゃなかったの!?」
穂乃果は突然俺が現れたことにビックリしていた。
「用事はさっき終えたよ。結果はあんたらにしばき回されて終わったがな。希さんが開放してくれなきゃ今頃大変なことになってたぜ。なぁ? にこちゃん……それと凛ちゃん?」
凛ちゃんの名前を出した途端、かよちんの顔がこわばった。
「えっ、今なんて……。凛ちゃんがどうかしたんですか?」
「凛ちゃん、勘違いしてたんだ。俺とか花陽のカンケイを……な」
そう言って俺はかよちんの手を握る。かよちんは突然の出来事に顔が赤くなる。
「竜さん、こ、これは……」
かよちんが慌てふためく。
「やっぱりそういうカンケイだったんだ!! 嘘つき!!」
部室から凛ちゃんが出てきた。なんで君はそう単純なのかねぇ。
「凛ちゃん!? どうしてここに……」
かよちんは驚いた表情を見せる。
「私に助けを求めてきたのよ。幼馴染の様子がおかしいってね」
にこが説明を挟んだ。
「様子が……おかしい……。もしかしてスクールアイドルのこと?」
「そうにゃ……。かよちんがスクールアイドルを始めたことくらい凛知ってるよ。この男の人と付き合ってることだって凛知ってるよ! どうして? なんで凛に黙ってそんなことしてるの?」
凛ちゃんは激怒している。そりゃあそうだ。こんなの見せられたらたまったもんじゃないわな。
「ところがどっこい、俺達はこんなに仲良しだが付き合ってはいないんだなこれが」
「そうだよ! 竜さんとは仲良いけど付き合ってはいないよ!」
だからこそ、俺とかよちんは必死に説得をする。
「でも一緒に帰ってたにゃ!」
凛ちゃんは言い返した。
「一緒に帰ってた……か」
「それで楽しそうに話してたにゃ! 二人っきりで!」
そんなこともあったなぁ。
あれは確か、俺がマネージャー業務を始めたばかりの頃の話だ。
そのことに気付いた俺は口を開いた。
「確かに、二人っきりで帰ったことあるなぁ。楽しそうに話したこともある。最終的には……な」
「最終的に?」
凛は首をかしげる。
「そういう日はたしかにあったんだ。それは5月下旬の頃、穂乃果が風邪で学校を休んだ日だった」
「その日にデートでもしたの!?」
穂乃果は口を挟む。
「そうじゃない。その日、というか毎日行なっていることなんだがμ'sは下校時はみんな一緒に帰ることにしている。アイドルの身になにかあったら大変だからな。で、遠回りになるが皆の家を順番に回って帰るようにしてたってわけよ。学校から一番近い真姫ちゃんから始まって海未ちゃん、ことりちゃん、花陽ちゃん、そして穂乃果って感じでね」
「……ってことは」
にこはハッとする。
「で、さっきも言ったように穂乃果が風邪で学校を休んでいたわけだ。そういう日は必然的に最後は俺とかよちんの二人になってしまうだろ? つまり、二人きりで帰っていたのは決して嘘ではないが、恋愛云々では誤解ってことになる」
「そんなことが……」
凛ちゃんはその場に崩れる。
「確かに、俺とかよちんは大の仲良しだ。でもね、君が思っているような関係ではないんだよ。だって俺、マネージャーだもの」
「へ、へぇ……案外しっかりしてるマネージャーなんですね……」
凛ちゃんは少しは認めてくれたようだ。
「どうですか? こんなにしっかりしてるんです。矢澤さんもμ'sのこと認めてくれませんか?」
「そんなことだけで認めると思う?」
にこはそうきっぱりと言い切った。
「あぁ……やっぱりか」
俺は頭を抱える。どうすりゃいいんだこの人。
「あの、それで、かよちんを守ってくれてたのはありがたいけど……それなら問題はかよちんだよ!」
凛ちゃんは話の流れを大きく変えた。矛先が俺からかよちんになったのだ。
「私!?」
「なんで今までスクールアイドルのこと黙ってたの? 凛ずっと心配してたんだよ!」
「ごめんなさい……」
この流れはまずい。今かよちんを萎縮させるのはμ'sとしてかなりまずい。
「ちょっと落ち着こうか。かよちんだって悪気があったわけじゃないんだ。とりあえずかよちん、凛ちゃんに全部話そうか」
かよちんは少し恥ずかしがったが、意を決して口を開いた。
「わ、分かりました……。あのね、凛ちゃん。ちゃんと聞いてね」
「うん」
凛ちゃんは真剣にかよちんを見つめる。
「花陽ね……昔からアイドルになりたかったんだ。凛ちゃんも知ってるでしょ?」
「そうだね……」
「それで、今はこうしてμ'sのメンバーとしてアイドルやってるけど……でもね」
「でも……?」
「でも、こんなこと凛ちゃんに話したら心配するでしょ? 凛ちゃん、とても心配性だから……」
「だから、何も話さなかった……そう言いたいの?」
「うん」
凛ちゃんはため息を付いてかよちんを見つめる。
「それなら逆効果だよ! そういうことはちゃんと話してよ! 凛はいつでもかよちんの味方なんだから!」
そして凛ちゃんはそう言い放ったのだ。この一言は強くかよちんの胸に響いた。
「凛ちゃん……」
「確かに凛はいつもかよちんのことを気にしてるお節介な人かもしれない。でも、それだけかよちんのことが好きなんだよ! どんなかよちんだって嫌いにならないよ……隠し事してるかよちん以外は」
「……」
かよちんは黙り込んでしまう。正論だったからだ。
しかし、この状況はなかなかにラッキーである。
今2人はお互いを認めあっている。
そんな状況で話を切り出せば……。
「……そんなにかよちんのこと知りたかったら、ずっとかよちんの側にいればいい」
その言葉に凛ちゃんは驚きの表情を見せる。
「それって……」
「μ'sのメンバーになるってことさ。前に出るのが嫌なら、俺みたいにマネージャーでもいい。とにかく今が嫌なら変わるんだ! 変わって自分の理想を手に入れるんだ!」
完全に希さんの受け売りではある。しかし、希さんが俺に望んでいたことはこういうことなんだろう。
こうやって変わる大切さを伝えることこそが大事なんだろう。
「それいいねっ! ねぇ、凛ちゃん。μ'sのメンバーにならない?」
穂乃果が俺の意見に同調する。ここで穂乃果の助けが入るのは非常にありがたい。
「えっ、あっ、それは……」
凛ちゃんは頬を赤らめてうつむく。
これ効いてるんじゃないの? ということは後一押しで……いける!
よし、今だ皆! 褒めちぎれ!
そうみんなにアイコンタクトを送る。皆それを理解して口々に褒め称えた。
「その体型……引き締まった肉体……あなた運動やってますよね? それでしたら、歌って踊るスクールアイドルに向いてますよ」
海未ちゃん。
「さっきから話聞いてたけど、あなたってとても声が素敵よ。歌の技術は知らないけど、きっといいスクールアイドルになれるわ」
真姫ちゃん。
「そのショートヘアかわいい! その猫みたいな仕草もかわいい! というかもう全部かわいい! はなまるかわいいMVPだよ~!」
ことりちゃん。
「そうだよ凛ちゃん! 花陽でもちゃんとできるんだから、凛ちゃんにだって楽しくできるはずだよ! 花陽と一緒にスクールアイドル……やろ?」
最後にかよちん。
「分かった……分かったから褒めるの禁止にゃ! 恥ずかしいから……。かよちん、凛アイドルやってみるよ!」
凛ちゃんは意を決して宣言した。よかったよかった。
「それと、マネージャーさん」
名指しで俺が呼ばれた。なんだ?
「俺がどうかした?」
「かよちんは渡さないんだからね!」
「は、はぁ……」
どうやら凛ちゃんはかよちんのことが大好きらしい。
「それじゃあかよちんっ! 早速アイドルについて教えて〜!」
「うん!」
その証拠にこうして2人は和気あいあいとしている。良いもんだな、こういうの。
「素敵だね、友達って」
穂乃果が不意にそう俺に語りかけた。
「確かに」
「まるで穂乃果たちみたい」
「そうだな、穂乃果と海未とことりみたいな……」
そういうことだと思ってたんだけど。
「いや、そうじゃなくて。穂乃果と竜くんのことだよ。幼稚園の時からずっと幼馴染でしょ?」
そうだっけ? 俺は首をかしげる。
「まさか忘れたなんて言わせないよ! 小3の時、竜くんは……竜くんは……あれ、思い出せないや。ま、いっか」
穂乃果はそう言うと駆け出した。
「そんなことより、凛ちゃんが入った記念パーティーやるよ! 穂むらで!」
「穂むらで!?」
俺が驚いていると、凛ちゃんが目の前に現れて俺の手を引いた。
「さぁ、行っくにゃ~!」
こうしてμ'sは6人になった。
それはそうと、なんか忘れてる気がするけど……まぁいっか。
μ'sの5人はアイドル部と交渉するつもりだ。
「ごめんくださーい。μ'sの高坂穂乃果ですけど……」
部室の扉が空いた。にこが出てきた。
「帰って」
にこはドスの利いた声でそう言い放つ。
「今なんて……」
「帰ってって言ってんのよ!!」
聞いてる方の鼓膜が破れかねないほどの大声でそう言われ、穂乃果は驚きを隠せない。
「うわっ! いきなりなんですか!?」
にこからの威嚇を受けてちょっと口調が荒くなる。
「で、でもアイドル好きな者同士仲良くしたいんですが……」
かよちんが怯えながらそう口を挟む。
「あ゛!?」
にこは苛立ちながら言葉を返した。
「ひっ……」
かよちんは完全に萎縮してしまった。もう何も言えない。
「とりあえず私と話つけて部活になろうってことでしょう? ふざけないで!」
憤りを感じた穂乃果は激しい口調で返す。
「なんなんですかそれ! 話くらい聞いてくれても!」
「大体、マネージャーと付き合ってるメンバーがいるアイドルなんて言語道断! 絶許案件! アイドル研究やってる身としてそんなの認めないから!」
「え、それってどういう……」
穂乃果は突然の衝撃発言に言葉も出なかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
俺は急いで音ノ木坂に向かった。あの凛って子がかよちんになにかしてないか気になったのだ。
校舎に入ってすぐ、穂乃果たちを見かけた。
さっき俺をしばき回したにこと口論になっているようだ。
話を聞いてればやれマネージャーと付き合ってるアイドルがいるだの、μ'sが認められないだの好き勝手言ってくれちゃって。
「誰が俺と彼女だっていうんだ?」
とっさにそう言葉を放っていた。
「うわぁっ! 竜くん用事じゃなかったの!?」
穂乃果は突然俺が現れたことにビックリしていた。
「用事はさっき終えたよ。結果はあんたらにしばき回されて終わったがな。希さんが開放してくれなきゃ今頃大変なことになってたぜ。なぁ? にこちゃん……それと凛ちゃん?」
凛ちゃんの名前を出した途端、かよちんの顔がこわばった。
「えっ、今なんて……。凛ちゃんがどうかしたんですか?」
「凛ちゃん、勘違いしてたんだ。俺とか花陽のカンケイを……な」
そう言って俺はかよちんの手を握る。かよちんは突然の出来事に顔が赤くなる。
「竜さん、こ、これは……」
かよちんが慌てふためく。
「やっぱりそういうカンケイだったんだ!! 嘘つき!!」
部室から凛ちゃんが出てきた。なんで君はそう単純なのかねぇ。
「凛ちゃん!? どうしてここに……」
かよちんは驚いた表情を見せる。
「私に助けを求めてきたのよ。幼馴染の様子がおかしいってね」
にこが説明を挟んだ。
「様子が……おかしい……。もしかしてスクールアイドルのこと?」
「そうにゃ……。かよちんがスクールアイドルを始めたことくらい凛知ってるよ。この男の人と付き合ってることだって凛知ってるよ! どうして? なんで凛に黙ってそんなことしてるの?」
凛ちゃんは激怒している。そりゃあそうだ。こんなの見せられたらたまったもんじゃないわな。
「ところがどっこい、俺達はこんなに仲良しだが付き合ってはいないんだなこれが」
「そうだよ! 竜さんとは仲良いけど付き合ってはいないよ!」
だからこそ、俺とかよちんは必死に説得をする。
「でも一緒に帰ってたにゃ!」
凛ちゃんは言い返した。
「一緒に帰ってた……か」
「それで楽しそうに話してたにゃ! 二人っきりで!」
そんなこともあったなぁ。
あれは確か、俺がマネージャー業務を始めたばかりの頃の話だ。
そのことに気付いた俺は口を開いた。
「確かに、二人っきりで帰ったことあるなぁ。楽しそうに話したこともある。最終的には……な」
「最終的に?」
凛は首をかしげる。
「そういう日はたしかにあったんだ。それは5月下旬の頃、穂乃果が風邪で学校を休んだ日だった」
「その日にデートでもしたの!?」
穂乃果は口を挟む。
「そうじゃない。その日、というか毎日行なっていることなんだがμ'sは下校時はみんな一緒に帰ることにしている。アイドルの身になにかあったら大変だからな。で、遠回りになるが皆の家を順番に回って帰るようにしてたってわけよ。学校から一番近い真姫ちゃんから始まって海未ちゃん、ことりちゃん、花陽ちゃん、そして穂乃果って感じでね」
「……ってことは」
にこはハッとする。
「で、さっきも言ったように穂乃果が風邪で学校を休んでいたわけだ。そういう日は必然的に最後は俺とかよちんの二人になってしまうだろ? つまり、二人きりで帰っていたのは決して嘘ではないが、恋愛云々では誤解ってことになる」
「そんなことが……」
凛ちゃんはその場に崩れる。
「確かに、俺とかよちんは大の仲良しだ。でもね、君が思っているような関係ではないんだよ。だって俺、マネージャーだもの」
「へ、へぇ……案外しっかりしてるマネージャーなんですね……」
凛ちゃんは少しは認めてくれたようだ。
「どうですか? こんなにしっかりしてるんです。矢澤さんもμ'sのこと認めてくれませんか?」
「そんなことだけで認めると思う?」
にこはそうきっぱりと言い切った。
「あぁ……やっぱりか」
俺は頭を抱える。どうすりゃいいんだこの人。
「あの、それで、かよちんを守ってくれてたのはありがたいけど……それなら問題はかよちんだよ!」
凛ちゃんは話の流れを大きく変えた。矛先が俺からかよちんになったのだ。
「私!?」
「なんで今までスクールアイドルのこと黙ってたの? 凛ずっと心配してたんだよ!」
「ごめんなさい……」
この流れはまずい。今かよちんを萎縮させるのはμ'sとしてかなりまずい。
「ちょっと落ち着こうか。かよちんだって悪気があったわけじゃないんだ。とりあえずかよちん、凛ちゃんに全部話そうか」
かよちんは少し恥ずかしがったが、意を決して口を開いた。
「わ、分かりました……。あのね、凛ちゃん。ちゃんと聞いてね」
「うん」
凛ちゃんは真剣にかよちんを見つめる。
「花陽ね……昔からアイドルになりたかったんだ。凛ちゃんも知ってるでしょ?」
「そうだね……」
「それで、今はこうしてμ'sのメンバーとしてアイドルやってるけど……でもね」
「でも……?」
「でも、こんなこと凛ちゃんに話したら心配するでしょ? 凛ちゃん、とても心配性だから……」
「だから、何も話さなかった……そう言いたいの?」
「うん」
凛ちゃんはため息を付いてかよちんを見つめる。
「それなら逆効果だよ! そういうことはちゃんと話してよ! 凛はいつでもかよちんの味方なんだから!」
そして凛ちゃんはそう言い放ったのだ。この一言は強くかよちんの胸に響いた。
「凛ちゃん……」
「確かに凛はいつもかよちんのことを気にしてるお節介な人かもしれない。でも、それだけかよちんのことが好きなんだよ! どんなかよちんだって嫌いにならないよ……隠し事してるかよちん以外は」
「……」
かよちんは黙り込んでしまう。正論だったからだ。
しかし、この状況はなかなかにラッキーである。
今2人はお互いを認めあっている。
そんな状況で話を切り出せば……。
「……そんなにかよちんのこと知りたかったら、ずっとかよちんの側にいればいい」
その言葉に凛ちゃんは驚きの表情を見せる。
「それって……」
「μ'sのメンバーになるってことさ。前に出るのが嫌なら、俺みたいにマネージャーでもいい。とにかく今が嫌なら変わるんだ! 変わって自分の理想を手に入れるんだ!」
完全に希さんの受け売りではある。しかし、希さんが俺に望んでいたことはこういうことなんだろう。
こうやって変わる大切さを伝えることこそが大事なんだろう。
「それいいねっ! ねぇ、凛ちゃん。μ'sのメンバーにならない?」
穂乃果が俺の意見に同調する。ここで穂乃果の助けが入るのは非常にありがたい。
「えっ、あっ、それは……」
凛ちゃんは頬を赤らめてうつむく。
これ効いてるんじゃないの? ということは後一押しで……いける!
よし、今だ皆! 褒めちぎれ!
そうみんなにアイコンタクトを送る。皆それを理解して口々に褒め称えた。
「その体型……引き締まった肉体……あなた運動やってますよね? それでしたら、歌って踊るスクールアイドルに向いてますよ」
海未ちゃん。
「さっきから話聞いてたけど、あなたってとても声が素敵よ。歌の技術は知らないけど、きっといいスクールアイドルになれるわ」
真姫ちゃん。
「そのショートヘアかわいい! その猫みたいな仕草もかわいい! というかもう全部かわいい! はなまるかわいいMVPだよ~!」
ことりちゃん。
「そうだよ凛ちゃん! 花陽でもちゃんとできるんだから、凛ちゃんにだって楽しくできるはずだよ! 花陽と一緒にスクールアイドル……やろ?」
最後にかよちん。
「分かった……分かったから褒めるの禁止にゃ! 恥ずかしいから……。かよちん、凛アイドルやってみるよ!」
凛ちゃんは意を決して宣言した。よかったよかった。
「それと、マネージャーさん」
名指しで俺が呼ばれた。なんだ?
「俺がどうかした?」
「かよちんは渡さないんだからね!」
「は、はぁ……」
どうやら凛ちゃんはかよちんのことが大好きらしい。
「それじゃあかよちんっ! 早速アイドルについて教えて〜!」
「うん!」
その証拠にこうして2人は和気あいあいとしている。良いもんだな、こういうの。
「素敵だね、友達って」
穂乃果が不意にそう俺に語りかけた。
「確かに」
「まるで穂乃果たちみたい」
「そうだな、穂乃果と海未とことりみたいな……」
そういうことだと思ってたんだけど。
「いや、そうじゃなくて。穂乃果と竜くんのことだよ。幼稚園の時からずっと幼馴染でしょ?」
そうだっけ? 俺は首をかしげる。
「まさか忘れたなんて言わせないよ! 小3の時、竜くんは……竜くんは……あれ、思い出せないや。ま、いっか」
穂乃果はそう言うと駆け出した。
「そんなことより、凛ちゃんが入った記念パーティーやるよ! 穂むらで!」
「穂むらで!?」
俺が驚いていると、凛ちゃんが目の前に現れて俺の手を引いた。
「さぁ、行っくにゃ~!」
こうしてμ'sは6人になった。
それはそうと、なんか忘れてる気がするけど……まぁいっか。
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