疾風の魔法剣士②
砂漠は日中の暑さとはまったく異なり、夜はとても寒かった。
吐き出した息が少し白くなっている。
半袖は短パンの軽い服装のハンクは、走って身体を温めなければ、今度は寒さで倒れる程の寒暖差だった。
ハンクは息を切らすことなく走り切り、目の前の魔物を見た。
魔物の姿はすぐに分かった。
砂漠の真ん中に大きな物が動いており悪目立ちしていたからだ。
遠目からでは夜の暗さで、黒い物体としか見えなかったが、近くで見ると、砂漠の砂が一ヶ所に集まり、巨人となって動いていた。
魔物の名前は砂の巨人(サンド・ゴーレム)。
どのような方法で大きな魔物が人間達に気付かないように『魔物の門(デビルズ・ゲート)』を抜けたか、分からないが『魔物の門(デビルズ・ゲート)』は大型の魔物も人間界へ入り込めるのが分かる。
その巨人の胸の辺りに、黒くて怪しく光る宝石が埋まっていた。
「なる程、あれが弱点か、まったく、ありがちだこと」
ハンクは呟き、背中に背負った剣を持ち巻いている包帯を取った。
この世界でも伝説と呼ばれているドラゴンの模様がつき、変な文字が刻まれた鉄の剣である。
剣は『ドラゴン・オブ・ソウル』と呼ばれていた。
ハンクはゆっくりと呪文を唱えた。
『我、従えし竜に力を借りる』
唱え終えると剣に刻まれている文字が光った。
そして……。
「元素(エレメンタル)チャージ。風の剣(シルフ・ソード)」
その掛け声で剣は光を帯び、形を変えた。
身の丈の大きさは変わらず、形だけが変わり、細くて透き通った緑色の渦を巻いたような形をしている。
ハンクは集中し黒い宝石に狙いを定めた。
そして魔物へ向おうとした時、後ろから声が聞こえた。
「ハンクお兄ちゃん!」
「えっ?」
ハンクは足を止め、後ろを見ると、リコがいた。
リコの後ろには馬から下りたリコの父親がいた。
「リコ、おっさんなんで?」
「お前が心配だったからだ。若造が魔物をうぁぁぁ!」
リコの代わりに父親が言った。
しかし、近くで魔物を見たことが無いのか、その大きさに驚き、リコの父親は腰が抜かした。
そして、乗ってきた馬はその恐怖のあまり、逃げ出した。
「あのな」
ハンクは呆れて大きくため息をついていた。
魔物は、後ろを向き無防備なハンク達を狙い、巨大な手を振るった。
その攻撃をくらえば、三人はひとたまりも無かった。
しかし、ハンクは形の変わった剣で、いとも簡単に大きな手を受け止めはじき返した。
「リコ、おっさん。立てるか?」
「リコは立てるよ」
「おっさんって失礼だな!」
立ち上がろうとしたが、立ち上がらず、腰を痛めていた。
「腰を抜かしているのにな~」
「うっ、ううん」
リコの父親は返す言葉が無かった。
「そんな事はいいとして、立てるかって?」
「う、ううん」
申し訳なさそうに首を横に振っていた。
「分かった。そこにいてくれ」
ハンクは魔物の隙をついて大きくジャンプした。
そして、胸にある宝石の部分まで軽々と飛んでいき、一瞬にして姿を消した。
次に姿を現した時、リコのところにいた。
背中には元に戻った剣を背負っていた。
その速さはやはり、風のようだった。
「ハンク、お兄ちゃん?」
リコは瞬きをなん度もしてハンクを見る。
「逃げるぞ!」
「えっ、あっ」
ハンクはリコと父親を持ち走った。
いきなりのことで驚いたが、抵抗することなく、そのままハンクに運ばれた。
その後ろでは黒い宝石が音を立てながら割れ、形跡も残らないまま粉々に砕け散った。
巨人は、黒い宝石と言う心臓部分を無くし、頭からどどっとと、砂は波のように流れた。
完全に崩れた時、三人は砂の波に掛からない場所まで逃げていた。
二人を担ぎ、走りづらい砂漠を全力疾走したため、ハンクは息を切らした。
「疲れた~」
寝そべり大きく呼吸をしていた。
「ハンクお兄ちゃん凄い」
リコは感激で手を叩いていた。
「まあね」
ハンクは誇らしげに笑う。
「お前、無茶苦茶な奴だ」
「無防備に向かってきたおっさんには言われたくないことなんですが?」
ハンクは無茶苦茶だと思っていなかった。
「あれは、リコがだな」
ハンクの父親は言い訳をしようにも言葉を詰まらせた。
「って、だから、おっさんじゃないって!」
「はは、まあ、どっちでもいいけどな」
ハンクは息を整え立ち上がった。
「さてと、もう、行くか、長居は無用だし」
一応、急ぎの旅だった。
「もう、行っちゃうの?」
リコは突然の別れに、悲しそうな目をした。
それを父親は悟った。
「ああ」
「もっと、話したかったのに~」
「また、会えるさ」
「えー!」
「ところで水も食料も無く、夜遅くに旅立つとか無謀だな。どこまで行く気だ?」
リコの父親は視線を外し、ぶっきら棒に言う。
「ジャガの街」
砂漠を渡ったところにある商人の街だ。
「通り道だ。送ってやる。ついでに食料と水も分けてやる」
「えっ? マジ! ありがとうございます! おっさんいいやつだな!」
ハンクは疲れを忘れて喜んでいた。
「このまま、恩を着せるのもあれだからな。って、だからおっさんじゃねー!」
素直ではなかったけど、ハンクにはありがたくってしょうがなかった。
吐き出した息が少し白くなっている。
半袖は短パンの軽い服装のハンクは、走って身体を温めなければ、今度は寒さで倒れる程の寒暖差だった。
ハンクは息を切らすことなく走り切り、目の前の魔物を見た。
魔物の姿はすぐに分かった。
砂漠の真ん中に大きな物が動いており悪目立ちしていたからだ。
遠目からでは夜の暗さで、黒い物体としか見えなかったが、近くで見ると、砂漠の砂が一ヶ所に集まり、巨人となって動いていた。
魔物の名前は砂の巨人(サンド・ゴーレム)。
どのような方法で大きな魔物が人間達に気付かないように『魔物の門(デビルズ・ゲート)』を抜けたか、分からないが『魔物の門(デビルズ・ゲート)』は大型の魔物も人間界へ入り込めるのが分かる。
その巨人の胸の辺りに、黒くて怪しく光る宝石が埋まっていた。
「なる程、あれが弱点か、まったく、ありがちだこと」
ハンクは呟き、背中に背負った剣を持ち巻いている包帯を取った。
この世界でも伝説と呼ばれているドラゴンの模様がつき、変な文字が刻まれた鉄の剣である。
剣は『ドラゴン・オブ・ソウル』と呼ばれていた。
ハンクはゆっくりと呪文を唱えた。
『我、従えし竜に力を借りる』
唱え終えると剣に刻まれている文字が光った。
そして……。
「元素(エレメンタル)チャージ。風の剣(シルフ・ソード)」
その掛け声で剣は光を帯び、形を変えた。
身の丈の大きさは変わらず、形だけが変わり、細くて透き通った緑色の渦を巻いたような形をしている。
ハンクは集中し黒い宝石に狙いを定めた。
そして魔物へ向おうとした時、後ろから声が聞こえた。
「ハンクお兄ちゃん!」
「えっ?」
ハンクは足を止め、後ろを見ると、リコがいた。
リコの後ろには馬から下りたリコの父親がいた。
「リコ、おっさんなんで?」
「お前が心配だったからだ。若造が魔物をうぁぁぁ!」
リコの代わりに父親が言った。
しかし、近くで魔物を見たことが無いのか、その大きさに驚き、リコの父親は腰が抜かした。
そして、乗ってきた馬はその恐怖のあまり、逃げ出した。
「あのな」
ハンクは呆れて大きくため息をついていた。
魔物は、後ろを向き無防備なハンク達を狙い、巨大な手を振るった。
その攻撃をくらえば、三人はひとたまりも無かった。
しかし、ハンクは形の変わった剣で、いとも簡単に大きな手を受け止めはじき返した。
「リコ、おっさん。立てるか?」
「リコは立てるよ」
「おっさんって失礼だな!」
立ち上がろうとしたが、立ち上がらず、腰を痛めていた。
「腰を抜かしているのにな~」
「うっ、ううん」
リコの父親は返す言葉が無かった。
「そんな事はいいとして、立てるかって?」
「う、ううん」
申し訳なさそうに首を横に振っていた。
「分かった。そこにいてくれ」
ハンクは魔物の隙をついて大きくジャンプした。
そして、胸にある宝石の部分まで軽々と飛んでいき、一瞬にして姿を消した。
次に姿を現した時、リコのところにいた。
背中には元に戻った剣を背負っていた。
その速さはやはり、風のようだった。
「ハンク、お兄ちゃん?」
リコは瞬きをなん度もしてハンクを見る。
「逃げるぞ!」
「えっ、あっ」
ハンクはリコと父親を持ち走った。
いきなりのことで驚いたが、抵抗することなく、そのままハンクに運ばれた。
その後ろでは黒い宝石が音を立てながら割れ、形跡も残らないまま粉々に砕け散った。
巨人は、黒い宝石と言う心臓部分を無くし、頭からどどっとと、砂は波のように流れた。
完全に崩れた時、三人は砂の波に掛からない場所まで逃げていた。
二人を担ぎ、走りづらい砂漠を全力疾走したため、ハンクは息を切らした。
「疲れた~」
寝そべり大きく呼吸をしていた。
「ハンクお兄ちゃん凄い」
リコは感激で手を叩いていた。
「まあね」
ハンクは誇らしげに笑う。
「お前、無茶苦茶な奴だ」
「無防備に向かってきたおっさんには言われたくないことなんですが?」
ハンクは無茶苦茶だと思っていなかった。
「あれは、リコがだな」
ハンクの父親は言い訳をしようにも言葉を詰まらせた。
「って、だから、おっさんじゃないって!」
「はは、まあ、どっちでもいいけどな」
ハンクは息を整え立ち上がった。
「さてと、もう、行くか、長居は無用だし」
一応、急ぎの旅だった。
「もう、行っちゃうの?」
リコは突然の別れに、悲しそうな目をした。
それを父親は悟った。
「ああ」
「もっと、話したかったのに~」
「また、会えるさ」
「えー!」
「ところで水も食料も無く、夜遅くに旅立つとか無謀だな。どこまで行く気だ?」
リコの父親は視線を外し、ぶっきら棒に言う。
「ジャガの街」
砂漠を渡ったところにある商人の街だ。
「通り道だ。送ってやる。ついでに食料と水も分けてやる」
「えっ? マジ! ありがとうございます! おっさんいいやつだな!」
ハンクは疲れを忘れて喜んでいた。
「このまま、恩を着せるのもあれだからな。って、だからおっさんじゃねー!」
素直ではなかったけど、ハンクにはありがたくってしょうがなかった。
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