剣の少年と愉快な冒険者たち(後編)④
中に入ると、四匹のゴブリンが横に並んで出てきた。
「はっはっはっは……」
不規則な四匹の笑い、ザグルの怒りが一気に頂点まで上った。
笑いの波が徐々に治まった時、ルミア達から見て右から二番目のゴブリンが叫んだ。
「行くぞ!」
「おう!」
残りが一斉に叫ぶ。
「赤い焔・赤(レッド)ゴブリン」
仕切っていたゴブリンだ。
「青の波・青(ブルー)ゴブリン」
赤の左隣のゴブリンが言った。
「ピンクの桜・ピンクゴブリン」
赤の右隣のメスゴブリンだ。
「そして、黄色いミカン・黄(イエロー)ゴブリン」
ピンクの隣が言った。
さっき走り去ったゴブリンである。
見た感じどれも同じだけど『きいろ』と背中に書いていて、自分で黄(イエロー)って言っていたので分かったのだ。
「完全無欠。全ての魔物と正義の為に戦う!」
赤が言う。
「我らゴブリン戦隊マモノーズ!」
声は揃っていたが、協調性の欠片も見当たらないバラバラなポーズをした。
一匹のゴブリンはうつ伏せになっている。
一匹のゴブリンはセクシーポーズらしきモノをとっている。
一匹のゴブリンは四つん這いになって、右手でピースをしている。
一匹のゴブリンは両手を上に挙げ、クルクル回っていた。
「つーか、この間と登場ゼリフもポーズも変わっているし!」
突っ込む所はそこでは無い気もするが、一応なにか言いたかったのだ。
赤とザグルと目が合った。
「そーいう、貴様はこの間の敵(かたき)! まだ、生きていたか!」
「生きているわ、つーか、戦っていないだろうが、お前らが勝手に逃げて」
「それは勇気ある撤退よ! レッドを悪く言わないで!」
ピンクがフォローに回った。
「それを逃げるといわないで、なにが逃げるだよ!」
「しかも、美しくないな。助っ人を呼ぶなんて、正々堂々と一人で戦いな」
青がゴブリンには似合わない薔薇を持っていて、その香りを嗅いでいた。
どうやら、二枚目をアピールしたい様子。
(最初から、四匹なお前らは卑怯じゃ無いのかよ!)
口に出したかったものの、ヒーローに憧れた幼き日々を忘れられず、言葉に出来なかった。
そんな会話ですらどうでもよくなり、ザグルは剣を抜いた。
「おい、ザグル落ち着け、斬ったら価値が無くなる」
「知るか!」
「これでも、俺は雇っているんだ。少しは言うことを聞けよ」
ド正論をルミアが言う。
「でも、オレはなにもしていないぞ!」
道中にはスライムの一匹や二匹、森を通った時に出会った。
だけど、攻撃してこないのだからと、無視して行ったのだ。
今までのことも森での事も含めてザグルは強調して言った。
「まあ、意味はあったさ。ムードメーカー」
「傭兵と関係無いじゃん!」
「気のせいだ」
「誤魔化すな!」
「おい! 悪党供ヒーローを忘れるな!」
「ああ、そうだった。悪党、ヒーローはともかく。おい! お前らを生け捕る!」
「生け捕るって、火炙り? それとも氷付け? どっちだ」
「両方ノーだ!」
ルミアは右手から電気を帯びた黄色の球体を出した。
魔法の中では特に雷が得意なのだ。
しかし、他の魔法も普通に使えた。
師匠のお陰で、魔法使いとしてもルミアは優秀だった。
「体内の水分が沸騰したくなかったら、大人しくつかまってお金にならねーか?」
「つーか、本来の目的を根本的に忘れているんだよ!」
今回の冒険は遺跡にいる魔物の調査。
そして、出来れば退治だった。
それがどうにも目的から逸れているから、おかしい話しになるのだ。
そして、ザグルを雇った理由も……。
「あ、あのー。それは止めて」
「大人しく捕まるなら」
「それも、嫌なんですが……。そうだ! 宝を渡します。それで手を引いてくれませんか?」
赤がゴマをすっていた。
(仮にもヒーローだろう。下に回ってどうする!)
「……良いだろう」
ルミアは快く承諾した。
そのあとで、クランに呟くように言った。
「両方ともゲットするぞ」
クランは静かに頷いた。
その言葉を勿論、ザグルは聞いていた。
(こいつ世界がひっくり返っても善にはなら無い。こいつは悪だ!)
ゴブリンが善になる事があっても、ルミアが善になる事が決してない。それだけ、心が腐っていると思った。
ルミアはいきなりザグルの頭を叩いた。
「なんで!」
「今『悪』とか思ってただろ?」
「えっ? なんで分かったの?」
(つーか、どう考えても悪だろう)
ザグルは頭をさすった。
図星だったから、否定が出来なかった。
「お前の心は読める」
「読むなよ!」
「秘儀読心術。魔法が使えないお前にも出来る技だ。習得すれば?」
「結構です。大変そうですから」
「これが意外に簡単だよ。色んな人をストーキングすればいいんだから」
「変態じゃん!」
「ウソだよ」
笑って誤魔化し、結局、読心術の極意は言わなかった。
まあ、知りたくもなかったが……。
「あのー、よろしいでしょうか?」
赤は更に腰を低くしていた。
「いいですよ」
魔物のような微笑みをゴブリン達に見せていた。
(本当にこいつは善じゃねー)
ゴツン。
「あっ、痛っ!」
もう一度同じ所を殴られていた。
ザグルは舌を打ちながら、頭をさすり、ゴブリン達、ルミア、クランに続いて更に奥の部屋へと歩いた。
「はっはっはっは……」
不規則な四匹の笑い、ザグルの怒りが一気に頂点まで上った。
笑いの波が徐々に治まった時、ルミア達から見て右から二番目のゴブリンが叫んだ。
「行くぞ!」
「おう!」
残りが一斉に叫ぶ。
「赤い焔・赤(レッド)ゴブリン」
仕切っていたゴブリンだ。
「青の波・青(ブルー)ゴブリン」
赤の左隣のゴブリンが言った。
「ピンクの桜・ピンクゴブリン」
赤の右隣のメスゴブリンだ。
「そして、黄色いミカン・黄(イエロー)ゴブリン」
ピンクの隣が言った。
さっき走り去ったゴブリンである。
見た感じどれも同じだけど『きいろ』と背中に書いていて、自分で黄(イエロー)って言っていたので分かったのだ。
「完全無欠。全ての魔物と正義の為に戦う!」
赤が言う。
「我らゴブリン戦隊マモノーズ!」
声は揃っていたが、協調性の欠片も見当たらないバラバラなポーズをした。
一匹のゴブリンはうつ伏せになっている。
一匹のゴブリンはセクシーポーズらしきモノをとっている。
一匹のゴブリンは四つん這いになって、右手でピースをしている。
一匹のゴブリンは両手を上に挙げ、クルクル回っていた。
「つーか、この間と登場ゼリフもポーズも変わっているし!」
突っ込む所はそこでは無い気もするが、一応なにか言いたかったのだ。
赤とザグルと目が合った。
「そーいう、貴様はこの間の敵(かたき)! まだ、生きていたか!」
「生きているわ、つーか、戦っていないだろうが、お前らが勝手に逃げて」
「それは勇気ある撤退よ! レッドを悪く言わないで!」
ピンクがフォローに回った。
「それを逃げるといわないで、なにが逃げるだよ!」
「しかも、美しくないな。助っ人を呼ぶなんて、正々堂々と一人で戦いな」
青がゴブリンには似合わない薔薇を持っていて、その香りを嗅いでいた。
どうやら、二枚目をアピールしたい様子。
(最初から、四匹なお前らは卑怯じゃ無いのかよ!)
口に出したかったものの、ヒーローに憧れた幼き日々を忘れられず、言葉に出来なかった。
そんな会話ですらどうでもよくなり、ザグルは剣を抜いた。
「おい、ザグル落ち着け、斬ったら価値が無くなる」
「知るか!」
「これでも、俺は雇っているんだ。少しは言うことを聞けよ」
ド正論をルミアが言う。
「でも、オレはなにもしていないぞ!」
道中にはスライムの一匹や二匹、森を通った時に出会った。
だけど、攻撃してこないのだからと、無視して行ったのだ。
今までのことも森での事も含めてザグルは強調して言った。
「まあ、意味はあったさ。ムードメーカー」
「傭兵と関係無いじゃん!」
「気のせいだ」
「誤魔化すな!」
「おい! 悪党供ヒーローを忘れるな!」
「ああ、そうだった。悪党、ヒーローはともかく。おい! お前らを生け捕る!」
「生け捕るって、火炙り? それとも氷付け? どっちだ」
「両方ノーだ!」
ルミアは右手から電気を帯びた黄色の球体を出した。
魔法の中では特に雷が得意なのだ。
しかし、他の魔法も普通に使えた。
師匠のお陰で、魔法使いとしてもルミアは優秀だった。
「体内の水分が沸騰したくなかったら、大人しくつかまってお金にならねーか?」
「つーか、本来の目的を根本的に忘れているんだよ!」
今回の冒険は遺跡にいる魔物の調査。
そして、出来れば退治だった。
それがどうにも目的から逸れているから、おかしい話しになるのだ。
そして、ザグルを雇った理由も……。
「あ、あのー。それは止めて」
「大人しく捕まるなら」
「それも、嫌なんですが……。そうだ! 宝を渡します。それで手を引いてくれませんか?」
赤がゴマをすっていた。
(仮にもヒーローだろう。下に回ってどうする!)
「……良いだろう」
ルミアは快く承諾した。
そのあとで、クランに呟くように言った。
「両方ともゲットするぞ」
クランは静かに頷いた。
その言葉を勿論、ザグルは聞いていた。
(こいつ世界がひっくり返っても善にはなら無い。こいつは悪だ!)
ゴブリンが善になる事があっても、ルミアが善になる事が決してない。それだけ、心が腐っていると思った。
ルミアはいきなりザグルの頭を叩いた。
「なんで!」
「今『悪』とか思ってただろ?」
「えっ? なんで分かったの?」
(つーか、どう考えても悪だろう)
ザグルは頭をさすった。
図星だったから、否定が出来なかった。
「お前の心は読める」
「読むなよ!」
「秘儀読心術。魔法が使えないお前にも出来る技だ。習得すれば?」
「結構です。大変そうですから」
「これが意外に簡単だよ。色んな人をストーキングすればいいんだから」
「変態じゃん!」
「ウソだよ」
笑って誤魔化し、結局、読心術の極意は言わなかった。
まあ、知りたくもなかったが……。
「あのー、よろしいでしょうか?」
赤は更に腰を低くしていた。
「いいですよ」
魔物のような微笑みをゴブリン達に見せていた。
(本当にこいつは善じゃねー)
ゴツン。
「あっ、痛っ!」
もう一度同じ所を殴られていた。
ザグルは舌を打ちながら、頭をさすり、ゴブリン達、ルミア、クランに続いて更に奥の部屋へと歩いた。
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