バーティの日記 その2
バーティの日記(×月×日)の続き
私達3人の素性は、勤務先であるインペルダウンの署長以外は誰も知らないということにはなっているが、少数ながらもヘンリーさんのような人がいて、いざという時には協力してくれる。
インペルダウンを出る時、暴動を起こしてくれたのもこういう人達だ。
ペラムが行く予定だった画廊が架空の店であったことは既に知らされていた。
ヘンリーさん達は、今はペラムを迎えに来た馬車がどこに消えたのか捜索している最中ということになっているが、実はこちらも既に分かっているということだった。
その場所は、私達がいた場所からそんなに遠くなかった。私はヘンリーさんに言った。
「まだ夜明け前です。すぐに行動を起こします」
「そうであれば、急いだほうがいいでしょう。明るくなると人目に付きやすくなります。強力な助っ人もいるようなので、すぐに終わるとは思いますが…」
ヘンリーさんは静かに続けた。
「しかし、いくつか気になることがあります。ペラムさんがここに閉じ込められて3日になります。普通の誘拐であれば、3日も動きがないのはおかしいのです」
「なるほど、確かに…」
「いくつかのパターンが考えられます。まず、事件ではないという可能性も、完全には否定できません。つまり、ペラムさんと親しい方がお忍びで会っているとか…。
でも、そうであれば何らかの形でペラムさんの無事を向こうから知らせてくるはずです。
次に事件性がある場合ですが、犯人側がペラムさんを人質にして、何らかの要求を出しているけど、取り引きが長引いているというケースです。もしそうなら、ペラムさんはまだ無事です。
また、逃亡させるか監禁する目的で誘拐したけど、計画に何らかの狂いが生じて、いまだに移動できないでいるというケースも考えられます。この場合、犯人の目的は様々ですが、とりあえずは無事でいると思われます。
そして、最悪の場合も考えられますが…、口に出すことは控えましょう」
“最悪の場合”は想像したくなかったし、ないと信じてもいた。ペラムは強い。看守の3人の中で一番強いと思う。そのペラムが簡単にやられたりするはずがない。
「分かりました。私と一緒にいるのを見られたらあなたに迷惑がかかるので、これで失礼します。ご協力を感謝いたします」
急いで立ち去ろうとしたら、ヘンリーさんは私を引き止めた。
「服を…、もっと目立たないものに取り換えたほうがよろしいかと…」
「え?目立ちますか?」
意外なことを言われて、私は両手を広げてさっき着替えた服を見下ろした。
セルリアンブルーにピーチピンクのチェック模様が入ったパンツ、パンプキンオレンジにライムグリーンの星柄が散ったスタンドカラーのシャツ、これにネイビーブルーのベストとチェリーピンクのネクタイ、ポピーレッドの中折れ帽、それに大きめのサングラス。
ちなみに、ドフラミンゴさんに着せた服もだいたい同じような感じのものだ。
ポケットやタグ等の細かい部分にティールグリーンがポイントで入ったカドミウムイエローのパンツ、シャツはコバルトブルーにキャロットオレンジやホワイトの花模様が入ったもの、一番上のボタンは開けて着るのでネクタイは無し、葡萄色とチェリーピンクのツイードのテーラードジャケット、アップルグリーンのカンカン帽、サングラスは彼は元からかけてるし…。
「でも、まだ夜明け前で暗いし、人目もありませんからそんなに問題でもないでしょう。明るくなる前に、ペラムを見つけ出して状況を確認しなければいけないので急がないと…」
「は、はあ…」
時間がないので服は着替えないことにした。私自身も久しぶりの外の世界で、非常時であるにもかかわらず、はしゃいでいた訳では決してない。
ヘンリーさんと別れてドフラミンゴさんと合流し、二人で歩いてペラムが捕まっていると思われる建物まで移動した。
その建物の門の前には警備員がいたので、少し離れたところでドフラミンゴさんに告げた。
「ここです」
「…これは何の建物だ?」
壁も柱も白く塗り固められた豪奢かつ頑丈そうな建物を見上げながら、ドフラミンゴさんが訊ねた。
「州知事官邸です。この島は世界政府加入国の州のひとつで、この州のトップが在任中に住む建物です。ペラムがいるのは西の端の宿泊室ではないかと…」
「で、どうするんだ?」
「ペラムを見つけたら、相手がペラムに対して友好的かどうかを確認しなければいけません。友好的な場合は私達がすることは特にありませんが、そうでない場合はペラムを救出して明るくなる前にこの島を出ます」
「おれとお前の役割分担は?」
ドフラミンゴさんはわざと回りくどく質問しているようだった。口元はニヤニヤ笑っているが、額に青筋が浮かんでいた。細かいことを言うと後で面倒くさそうなので、こう言った。
「全てあなたが行ってください。ペラムを発見して相手の目的を確認するまでは、慎重かつできるだけ穏便に。相手が友好的でなかった場合は手段を問いません。私も同行しますので、私の移動と安全の保障もあなたが負ってください」
「ふん」
ドフラミンゴさんは鼻で返事をすると、いきなり私の襟元をつかんで空を飛んだ。
とても苦しかった…。
私達3人の素性は、勤務先であるインペルダウンの署長以外は誰も知らないということにはなっているが、少数ながらもヘンリーさんのような人がいて、いざという時には協力してくれる。
インペルダウンを出る時、暴動を起こしてくれたのもこういう人達だ。
ペラムが行く予定だった画廊が架空の店であったことは既に知らされていた。
ヘンリーさん達は、今はペラムを迎えに来た馬車がどこに消えたのか捜索している最中ということになっているが、実はこちらも既に分かっているということだった。
その場所は、私達がいた場所からそんなに遠くなかった。私はヘンリーさんに言った。
「まだ夜明け前です。すぐに行動を起こします」
「そうであれば、急いだほうがいいでしょう。明るくなると人目に付きやすくなります。強力な助っ人もいるようなので、すぐに終わるとは思いますが…」
ヘンリーさんは静かに続けた。
「しかし、いくつか気になることがあります。ペラムさんがここに閉じ込められて3日になります。普通の誘拐であれば、3日も動きがないのはおかしいのです」
「なるほど、確かに…」
「いくつかのパターンが考えられます。まず、事件ではないという可能性も、完全には否定できません。つまり、ペラムさんと親しい方がお忍びで会っているとか…。
でも、そうであれば何らかの形でペラムさんの無事を向こうから知らせてくるはずです。
次に事件性がある場合ですが、犯人側がペラムさんを人質にして、何らかの要求を出しているけど、取り引きが長引いているというケースです。もしそうなら、ペラムさんはまだ無事です。
また、逃亡させるか監禁する目的で誘拐したけど、計画に何らかの狂いが生じて、いまだに移動できないでいるというケースも考えられます。この場合、犯人の目的は様々ですが、とりあえずは無事でいると思われます。
そして、最悪の場合も考えられますが…、口に出すことは控えましょう」
“最悪の場合”は想像したくなかったし、ないと信じてもいた。ペラムは強い。看守の3人の中で一番強いと思う。そのペラムが簡単にやられたりするはずがない。
「分かりました。私と一緒にいるのを見られたらあなたに迷惑がかかるので、これで失礼します。ご協力を感謝いたします」
急いで立ち去ろうとしたら、ヘンリーさんは私を引き止めた。
「服を…、もっと目立たないものに取り換えたほうがよろしいかと…」
「え?目立ちますか?」
意外なことを言われて、私は両手を広げてさっき着替えた服を見下ろした。
セルリアンブルーにピーチピンクのチェック模様が入ったパンツ、パンプキンオレンジにライムグリーンの星柄が散ったスタンドカラーのシャツ、これにネイビーブルーのベストとチェリーピンクのネクタイ、ポピーレッドの中折れ帽、それに大きめのサングラス。
ちなみに、ドフラミンゴさんに着せた服もだいたい同じような感じのものだ。
ポケットやタグ等の細かい部分にティールグリーンがポイントで入ったカドミウムイエローのパンツ、シャツはコバルトブルーにキャロットオレンジやホワイトの花模様が入ったもの、一番上のボタンは開けて着るのでネクタイは無し、葡萄色とチェリーピンクのツイードのテーラードジャケット、アップルグリーンのカンカン帽、サングラスは彼は元からかけてるし…。
「でも、まだ夜明け前で暗いし、人目もありませんからそんなに問題でもないでしょう。明るくなる前に、ペラムを見つけ出して状況を確認しなければいけないので急がないと…」
「は、はあ…」
時間がないので服は着替えないことにした。私自身も久しぶりの外の世界で、非常時であるにもかかわらず、はしゃいでいた訳では決してない。
ヘンリーさんと別れてドフラミンゴさんと合流し、二人で歩いてペラムが捕まっていると思われる建物まで移動した。
その建物の門の前には警備員がいたので、少し離れたところでドフラミンゴさんに告げた。
「ここです」
「…これは何の建物だ?」
壁も柱も白く塗り固められた豪奢かつ頑丈そうな建物を見上げながら、ドフラミンゴさんが訊ねた。
「州知事官邸です。この島は世界政府加入国の州のひとつで、この州のトップが在任中に住む建物です。ペラムがいるのは西の端の宿泊室ではないかと…」
「で、どうするんだ?」
「ペラムを見つけたら、相手がペラムに対して友好的かどうかを確認しなければいけません。友好的な場合は私達がすることは特にありませんが、そうでない場合はペラムを救出して明るくなる前にこの島を出ます」
「おれとお前の役割分担は?」
ドフラミンゴさんはわざと回りくどく質問しているようだった。口元はニヤニヤ笑っているが、額に青筋が浮かんでいた。細かいことを言うと後で面倒くさそうなので、こう言った。
「全てあなたが行ってください。ペラムを発見して相手の目的を確認するまでは、慎重かつできるだけ穏便に。相手が友好的でなかった場合は手段を問いません。私も同行しますので、私の移動と安全の保障もあなたが負ってください」
「ふん」
ドフラミンゴさんは鼻で返事をすると、いきなり私の襟元をつかんで空を飛んだ。
とても苦しかった…。
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