代用
諭すようにライザが言うと、シャールは少しだけ気を落としたような仕草をした。
「いっそのこと、物語を進めるという手もあるかもしれないな」
ハンクは突破口になるかもしれないと提案をする。
しかしクロードは危険な賭けだと反対をするが、ライザはもう少し様子を見た方がいいと言った。
そしてシャールに聞く。
「シャールはどう思う?」
「え? 私ですか?」
「もしかして遠慮している? そんなのしなくていいのよ。だって、今の私たちは運命共同体なんだから。思ったことは言ってほしいの。私たちとは見方が違うと思うし、着眼点が違えば新たな発見に繋がるし。ね?」
シャールはライザを見てからハンクを見た。
「俺たちがこうしてまとまっていられるのは、シャールの存在が大きい。今はシャールの幻影を共有している。この世界の主はおまえだ、シャール」
そう言われると気持ちがほっこりしてくる。
疎外感を感じたとかはないが、やはり軍人が三人になると別世界を目の当たりにしているような気持ちにはなっていた。
その原因のひとつはクロードの存在なのだが、彼にライザやハンクのように砕けたつき合いを望むのは無謀というものだろう。
「えっと、じゃあ、気づいたことを少しだけ」
「あら~、少しだなんて謙虚なことは言わなくていいのよ。で、なあに?」
「あ、はい。幻影って、だいたいどれくらい見続けられるものなんでしょうか?」
「え? どういうことかしら?」
「時間の経過が普段の私たちが過ごしている経過と同じかどうかはわかりませんが、何時間も連続して見続けられるものなのかと思って。たとえば、夢なら、寝ている間だけですよね。蔦に触れたり粒子が付着したりすると見てしまうという仮説になっていますが、そういったものが見せる幻影はどれくらいの効力があるのでしょう?」
「あら、いやだわ。そんな理論的なことを考えちゃってたの? でも、言われてみればそうよね。一晩寝たわけだし、それなりの時間は経っていて当たり前。ハンクくらいになれば体感で時間の経過とかわかるのかしら?」
「……だいたいはわかる」
「じゃあ、昨晩はどうだった?」
「至って当たり前の一晩だったと思うが。長くもなく短くもない。それなりに仮眠もとれたし、疲れも多少は癒えている」
「そう。少佐に聞くのは無駄なような気がするけど……」
「バカにするな。この男ほどではないが、多少の体感くらいはある。そういうライザ少尉はどうだったんだ?」
「私? そうね、普通だったかしら? いつもと同じ感じで眠りについて自然と目が覚めたわ」
「となると、時間の流れは同じと思ってもいいな。幻影を持続して見れる時間については……」
自分は専門外だとハンクはいい、クロードも悔しそうに自分にもその知識はないと言った。
「そうなると私の出番って感じかしら? と言いたいところなんだけど、私も全くなのよ。でもね、自由を奪ったり都合よく動かせたり語らせたりできる薬品はあるわよね?」
「自白剤や睡眠薬といった類のことか?」とクロード。
「そうそう、それ。その効果だったら私たちにもわかるんじゃない?」
ライザの提案にハンクが頷き、クロードは軽く息を吐く。
ただそれらに関してシャールは知識がない。
会話には入れないが聞くことで何かがわかるかもしれないと、耳を集中させる。
「まず、それらの薬品などの効力は量によって操作できるわね」
少量で強力なものも存在するが、投与された側の体力や命の安全は無視する感じになる。
薬品を使ってでも何かをしたい場合、使う側がそうまでして得たいものがあるからだ。
死なれたり発狂されたりしては困る場合が多く、少量から少しずつ調整していくのが一般的である。
ただまれに、頑張られすぎてしまい使い物にならないことがある。
鍛えられた人ほど、いや、融通が利かない人ほど頑固で頑張ってしまうものなのだ。
薬品に加え拷問にかけても頑張っちゃう人は命を落としやすい。
そのあたりをうまくやりくりできる人は、薬品に対しての免疫ができていたり、またどんな時でも出せる情報と絶対に出せない情報とをやりくりし、脱出のチャンスを待つ。
聞き出したい側はそれがどれほど重要かどうかはあまりわからないことの方が多い。
堅く口を閉ざすより割ってしまった方がいいこともある。
「私たちはどのくらい触れてしまっていたのかしら?」
ライザの問いかけにハンクが返す。
「俺とシャールが一番触れているかもしれないが、離れていた時間もある。逆に少佐の方はギリギリまで触れていた。ライザは間接的であることから、効力が短いのはライザ、長いのは少佐。俺とシャールは参考にはならないだろうな」
続いてクロードが独自の見解を口にする。
「ヘンリエット曹長の意見はおおむね同意だが、曹長とシャールの状態が参考にならないというのはいかがなものか。時間差で症状がでている。人によって効力が発揮されるまで差があるということだ」
その意見に賛成と軽く手を挙げたライザが意見する。
「いっそのこと、物語を進めるという手もあるかもしれないな」
ハンクは突破口になるかもしれないと提案をする。
しかしクロードは危険な賭けだと反対をするが、ライザはもう少し様子を見た方がいいと言った。
そしてシャールに聞く。
「シャールはどう思う?」
「え? 私ですか?」
「もしかして遠慮している? そんなのしなくていいのよ。だって、今の私たちは運命共同体なんだから。思ったことは言ってほしいの。私たちとは見方が違うと思うし、着眼点が違えば新たな発見に繋がるし。ね?」
シャールはライザを見てからハンクを見た。
「俺たちがこうしてまとまっていられるのは、シャールの存在が大きい。今はシャールの幻影を共有している。この世界の主はおまえだ、シャール」
そう言われると気持ちがほっこりしてくる。
疎外感を感じたとかはないが、やはり軍人が三人になると別世界を目の当たりにしているような気持ちにはなっていた。
その原因のひとつはクロードの存在なのだが、彼にライザやハンクのように砕けたつき合いを望むのは無謀というものだろう。
「えっと、じゃあ、気づいたことを少しだけ」
「あら~、少しだなんて謙虚なことは言わなくていいのよ。で、なあに?」
「あ、はい。幻影って、だいたいどれくらい見続けられるものなんでしょうか?」
「え? どういうことかしら?」
「時間の経過が普段の私たちが過ごしている経過と同じかどうかはわかりませんが、何時間も連続して見続けられるものなのかと思って。たとえば、夢なら、寝ている間だけですよね。蔦に触れたり粒子が付着したりすると見てしまうという仮説になっていますが、そういったものが見せる幻影はどれくらいの効力があるのでしょう?」
「あら、いやだわ。そんな理論的なことを考えちゃってたの? でも、言われてみればそうよね。一晩寝たわけだし、それなりの時間は経っていて当たり前。ハンクくらいになれば体感で時間の経過とかわかるのかしら?」
「……だいたいはわかる」
「じゃあ、昨晩はどうだった?」
「至って当たり前の一晩だったと思うが。長くもなく短くもない。それなりに仮眠もとれたし、疲れも多少は癒えている」
「そう。少佐に聞くのは無駄なような気がするけど……」
「バカにするな。この男ほどではないが、多少の体感くらいはある。そういうライザ少尉はどうだったんだ?」
「私? そうね、普通だったかしら? いつもと同じ感じで眠りについて自然と目が覚めたわ」
「となると、時間の流れは同じと思ってもいいな。幻影を持続して見れる時間については……」
自分は専門外だとハンクはいい、クロードも悔しそうに自分にもその知識はないと言った。
「そうなると私の出番って感じかしら? と言いたいところなんだけど、私も全くなのよ。でもね、自由を奪ったり都合よく動かせたり語らせたりできる薬品はあるわよね?」
「自白剤や睡眠薬といった類のことか?」とクロード。
「そうそう、それ。その効果だったら私たちにもわかるんじゃない?」
ライザの提案にハンクが頷き、クロードは軽く息を吐く。
ただそれらに関してシャールは知識がない。
会話には入れないが聞くことで何かがわかるかもしれないと、耳を集中させる。
「まず、それらの薬品などの効力は量によって操作できるわね」
少量で強力なものも存在するが、投与された側の体力や命の安全は無視する感じになる。
薬品を使ってでも何かをしたい場合、使う側がそうまでして得たいものがあるからだ。
死なれたり発狂されたりしては困る場合が多く、少量から少しずつ調整していくのが一般的である。
ただまれに、頑張られすぎてしまい使い物にならないことがある。
鍛えられた人ほど、いや、融通が利かない人ほど頑固で頑張ってしまうものなのだ。
薬品に加え拷問にかけても頑張っちゃう人は命を落としやすい。
そのあたりをうまくやりくりできる人は、薬品に対しての免疫ができていたり、またどんな時でも出せる情報と絶対に出せない情報とをやりくりし、脱出のチャンスを待つ。
聞き出したい側はそれがどれほど重要かどうかはあまりわからないことの方が多い。
堅く口を閉ざすより割ってしまった方がいいこともある。
「私たちはどのくらい触れてしまっていたのかしら?」
ライザの問いかけにハンクが返す。
「俺とシャールが一番触れているかもしれないが、離れていた時間もある。逆に少佐の方はギリギリまで触れていた。ライザは間接的であることから、効力が短いのはライザ、長いのは少佐。俺とシャールは参考にはならないだろうな」
続いてクロードが独自の見解を口にする。
「ヘンリエット曹長の意見はおおむね同意だが、曹長とシャールの状態が参考にならないというのはいかがなものか。時間差で症状がでている。人によって効力が発揮されるまで差があるということだ」
その意見に賛成と軽く手を挙げたライザが意見する。
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