28
「…それでも、私が普通の生活をしていただけでも嬉しいです。」
しのぶ「…。あの、もう一度私の事をしのぶと呼んで頂けませんか。」
「私に名前を呼ばれるなんて虫唾が走ると仰る方がほとんどなのに…」
しのぶ「虫唾が走るだなんてとんでもない。…記憶が戻るまで、楽しい記憶を作らせてもらえませんか?…そんなの虫が良すぎますよね…」
「いいえ。そんなことありません。有難い限りです。よろしくお願いします。しのぶさん。」
しのぶ「ゆりえさんっ…!」
しのぶ「きょうから1週間ここで過ごすことになっていますが、部屋はこの部屋で大丈夫ですか?」
「えっ…こんなに綺麗な部屋にいていいんですか…」
しのぶ「勿論です。それに、少し療養も兼ねてもらいます。」
「療養…?」
しのぶ「身体中の傷の手当てと、体内の手当ても必要そうですね。」
「えっ…」
しのぶ「バレてないとでも思いましたか?あなたが自分で毒の耐性をつけようと大量の毒を摂取したり、私たちから付けられた傷以外にも任務や鍛錬で出来た傷を放って置いたままにしていたりすること、先日ここに運び込まれた時に全て知りました。…そして今もそれを続けようとしている、違いますか?」
「あ…それは…その…」
しのぶ「とにかく、今は療養最優先です。食事もきちんととってもらいますよ。」
「…」
しのぶ「薬を持ってきますから横になっていてください。」
「はい…」
そしてしのぶは静かに部屋を出た。
するとちょうど柱達が訪ねてきていたのか、ぞろぞろと廊下を歩いていた。
甘露寺「しのぶちゃんっ!…ゆりえちゃんは…?」
しのぶ「先程少し体調を崩されたので今日は休むように言ってます。」
煉獄「大丈夫なのか!」
伊黒「声がでかい。」
しのぶ「今のところは。」
宇髄「見舞いに行ってもいいか?」
しのぶ「えぇ。今なら起きてるでしょうし…。ただしあまり無理をさせないようにしてくださいね。」
不死川「アァ…」
宇髄「ゆりえー!開けんぞー!」
「あっ…」
宇髄がそう一声かけてから間もなく開けると晒しをまいただけの彼女がベッドにいた。
宇髄「あっ…」
宇髄は扉を開けたまま固まってしまった。
煉獄「む!入らないのか!宇髄!………よもや!」
甘露寺「急に立ち止まるからぶっかっちゃったわ!ごめんなさい!宇髄さん!…ってきゃぁぁあ!!」
伊黒「どうした甘露寺っ…………、!!!」
無一郎「何騒いでるの。…あ…。」
悲鳴嶼「嗚呼…南無…」
不死川「ッチ…さっさと入れよ…………ォ………」
義勇「俺は…見ていない…」
全員が目を晒し宇髄がピシャリと戸をしめた。
そして全員が無言で気まずく廊下に立っているとしのぶが薬を持って戻ってきたところだった。
しのぶ「おや?皆さん中に入っていたんじゃなかったんですか?」
甘露寺「それがね!宇髄さんがバーンて戸をあけたらゆりえちゃんが…!」
と言いかけた時戸が開かれた。
「さ、先ほどはお目汚し失礼しましたっ…!」
そう言って柱達の前で勢いよく頭を下げるゆりえ。
宇髄「いや、俺達が悪かった。」
煉獄「む!すまない!」
甘露寺「ところで着物を脱いでどうしたの?傷が痛むのかしら…」
「いえ、着物がほつれていたのでなおしておりました。」
無一郎「新しい着物買えばいいのに。」
「直せばまだ着れますし…勿体無くて…」
しのぶ「着れると言ってもそろそろ新調したほうがいいですよ。今日は休んでもらいますが、明日体調が良ければ街にでかけましょうか。」
「えっ、街に…?私が出かけていいのですか?」
そう言うなり無表情ながらも嬉しそうに目を輝かせていた。
しかしその後すぐに顔を曇らせた。
「明日は…村に行く日ですのでいけないです…せっかく出かける許可を下さったのに申し訳ありません…」
実弥「なら明後日行きゃいいだろォ。」
しのぶ「そうですよ。明後日行けばいいんです。」
甘露寺「村へは何をしに行くの?」
「復興の手伝いです。…私にはそれくらいしが出来ませんので…」
宇髄「なら話は早ぇーな!俺たちも派手に手伝ってやる!」
「えっ…そんな、いいんですか…?」
宇髄「当たり前だ!」
翌日、任務のある悲鳴嶼と伊黒、義勇以外の柱達はゆりえと一緒に村に出向くことになった。
村人1「あら!ゆりえちゃん!」
「こんにちは、山中さん。」
村人2「待ってたよ!いつもありがとうねぇ!」
「いえ…。私は何も…」
村人3「ゆりえちゃんや!この間繕ってもらった着物が出来たんだよ!みんな大喜びさ!ありがとうなぁ!」
「それはよかったです。」
村人4「おや!めずらしいねぇ!お友達も一緒かい?」
村人5「これはちゃんともてなさないと!」
「それはありがたい限りです。…今日は陶器屋さんの修復をしなければなりませんね。」
村人6「助かるよ!」
「では行きましょうか。…あ。えと…柱の皆様は山中さんについて行って下さい。宿を用意してくださいますので…」
甘露寺「ゆりえちゃんはどうするの?」
「私は用を済ませてから向かいます。」
宇髄「あっ…おい!」
ゆりえはそう言うなりさっと姿を消し、遠くの陶器屋と見られる場所に移動していた。
しのぶ「…。あの、もう一度私の事をしのぶと呼んで頂けませんか。」
「私に名前を呼ばれるなんて虫唾が走ると仰る方がほとんどなのに…」
しのぶ「虫唾が走るだなんてとんでもない。…記憶が戻るまで、楽しい記憶を作らせてもらえませんか?…そんなの虫が良すぎますよね…」
「いいえ。そんなことありません。有難い限りです。よろしくお願いします。しのぶさん。」
しのぶ「ゆりえさんっ…!」
しのぶ「きょうから1週間ここで過ごすことになっていますが、部屋はこの部屋で大丈夫ですか?」
「えっ…こんなに綺麗な部屋にいていいんですか…」
しのぶ「勿論です。それに、少し療養も兼ねてもらいます。」
「療養…?」
しのぶ「身体中の傷の手当てと、体内の手当ても必要そうですね。」
「えっ…」
しのぶ「バレてないとでも思いましたか?あなたが自分で毒の耐性をつけようと大量の毒を摂取したり、私たちから付けられた傷以外にも任務や鍛錬で出来た傷を放って置いたままにしていたりすること、先日ここに運び込まれた時に全て知りました。…そして今もそれを続けようとしている、違いますか?」
「あ…それは…その…」
しのぶ「とにかく、今は療養最優先です。食事もきちんととってもらいますよ。」
「…」
しのぶ「薬を持ってきますから横になっていてください。」
「はい…」
そしてしのぶは静かに部屋を出た。
するとちょうど柱達が訪ねてきていたのか、ぞろぞろと廊下を歩いていた。
甘露寺「しのぶちゃんっ!…ゆりえちゃんは…?」
しのぶ「先程少し体調を崩されたので今日は休むように言ってます。」
煉獄「大丈夫なのか!」
伊黒「声がでかい。」
しのぶ「今のところは。」
宇髄「見舞いに行ってもいいか?」
しのぶ「えぇ。今なら起きてるでしょうし…。ただしあまり無理をさせないようにしてくださいね。」
不死川「アァ…」
宇髄「ゆりえー!開けんぞー!」
「あっ…」
宇髄がそう一声かけてから間もなく開けると晒しをまいただけの彼女がベッドにいた。
宇髄「あっ…」
宇髄は扉を開けたまま固まってしまった。
煉獄「む!入らないのか!宇髄!………よもや!」
甘露寺「急に立ち止まるからぶっかっちゃったわ!ごめんなさい!宇髄さん!…ってきゃぁぁあ!!」
伊黒「どうした甘露寺っ…………、!!!」
無一郎「何騒いでるの。…あ…。」
悲鳴嶼「嗚呼…南無…」
不死川「ッチ…さっさと入れよ…………ォ………」
義勇「俺は…見ていない…」
全員が目を晒し宇髄がピシャリと戸をしめた。
そして全員が無言で気まずく廊下に立っているとしのぶが薬を持って戻ってきたところだった。
しのぶ「おや?皆さん中に入っていたんじゃなかったんですか?」
甘露寺「それがね!宇髄さんがバーンて戸をあけたらゆりえちゃんが…!」
と言いかけた時戸が開かれた。
「さ、先ほどはお目汚し失礼しましたっ…!」
そう言って柱達の前で勢いよく頭を下げるゆりえ。
宇髄「いや、俺達が悪かった。」
煉獄「む!すまない!」
甘露寺「ところで着物を脱いでどうしたの?傷が痛むのかしら…」
「いえ、着物がほつれていたのでなおしておりました。」
無一郎「新しい着物買えばいいのに。」
「直せばまだ着れますし…勿体無くて…」
しのぶ「着れると言ってもそろそろ新調したほうがいいですよ。今日は休んでもらいますが、明日体調が良ければ街にでかけましょうか。」
「えっ、街に…?私が出かけていいのですか?」
そう言うなり無表情ながらも嬉しそうに目を輝かせていた。
しかしその後すぐに顔を曇らせた。
「明日は…村に行く日ですのでいけないです…せっかく出かける許可を下さったのに申し訳ありません…」
実弥「なら明後日行きゃいいだろォ。」
しのぶ「そうですよ。明後日行けばいいんです。」
甘露寺「村へは何をしに行くの?」
「復興の手伝いです。…私にはそれくらいしが出来ませんので…」
宇髄「なら話は早ぇーな!俺たちも派手に手伝ってやる!」
「えっ…そんな、いいんですか…?」
宇髄「当たり前だ!」
翌日、任務のある悲鳴嶼と伊黒、義勇以外の柱達はゆりえと一緒に村に出向くことになった。
村人1「あら!ゆりえちゃん!」
「こんにちは、山中さん。」
村人2「待ってたよ!いつもありがとうねぇ!」
「いえ…。私は何も…」
村人3「ゆりえちゃんや!この間繕ってもらった着物が出来たんだよ!みんな大喜びさ!ありがとうなぁ!」
「それはよかったです。」
村人4「おや!めずらしいねぇ!お友達も一緒かい?」
村人5「これはちゃんともてなさないと!」
「それはありがたい限りです。…今日は陶器屋さんの修復をしなければなりませんね。」
村人6「助かるよ!」
「では行きましょうか。…あ。えと…柱の皆様は山中さんについて行って下さい。宿を用意してくださいますので…」
甘露寺「ゆりえちゃんはどうするの?」
「私は用を済ませてから向かいます。」
宇髄「あっ…おい!」
ゆりえはそう言うなりさっと姿を消し、遠くの陶器屋と見られる場所に移動していた。
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