以前変わらず、最強はそこにある
「セイバーとアーチャーか。残る相手に相応しい」
凜の姿はない。キャスターから魔力を奪われていたせいで、衰弱しきっていた。アーチャーは宝石から魔力を補給して、この戦闘に付き合ってくれていた。
強敵共を相手取ってからの、更に面倒な相手だ。疲労は重く。魔力不足は解消されない。切り札の鞘も後一度だけだ。
状況は最悪に近くとも、騎士王の佇まいは崩れなかった。
勝てないのではないかと。その姿で思わせる絶対的なカリスマ。モードレッドでは確実に至れない王気が、バーサーカーから発せられている。
「父上」
思わず零れたモードレッドの呟きに、怪訝な顔で言葉を返す。
「貴様を子と認めた事はなかったぞ。モードレッド」
無慈悲な呟きだ。挑発も兼ねているのかもしれないが、なんて悲しい言葉だろう。心が感じられない事が、何よりも悲しい。
「っ! オレは!」
動揺と悲しみが溢れて、憎悪に繋がろうとしていた。
そんな彼女の肩に手を置いて、士郎は静かに言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ、俺が側にいる」
迷いのない愛情は彼女の心を緩ませてくれた。
「シロウ…」
落ち着きを取り戻して、真っ直ぐに見つめてくる。兜は既にない。最早、正体を隠す意味なんてない。漆黒の騎士鎧を展開して、両手に黄金の剣を構えていた。士郎が補強した聖剣である。
「ほう?」
思いもよらぬ反応だった。挑発に乗ってくれば、アーチャーの援護も許さず殺せたのだがね。状況は以前変わらず。悪くなっていた。
そうして、モードレッドが構える剣に眼を細めながら、バーサーカーも応じ剣を構えた。隙は無い。まだ戦える。油断は出来ない相手だ。
「父上、今度こそ貴方を消滅させる」
「それで良い。さあ、戦争を終わらせよう」
最初の踏み込みはモードレッドから。紅雷の魔力放出が加速を許して、瞬時に間合いを詰めた。剛剣。力強く放たれた剣戟を、容易くバーサーカーが受け止める。
金属音が響き渡った。強度は互角だ。本来ならばありえない。二連戦は、バーサーカーの出力を殺している。
そうして、モードレッドの調子が良い。滾っている。
発揮される神秘は違えど、同レベルにまで高められている。これならば戦える。一方的に負けることはない。
白銀の剣でも良かったが、真名解放の打ち合いに不安が残っている。成立するならば、同じ武器で戦った方が良い。
神秘のぶつかり合いが空気を爆ぜさせる。堪らぬエネルギーの激突で、肌が灼けるようだ。
「この様子ならば、一方的に負けることはなさそうだな」
アーチャーの見立て通りであった。今度は初戦の時とは違い。何とか戦闘が成立していた。
その要因の一つとして、モードレッドの受肉が挙げられるだろう。
肉体の疲労のデメリットよりも、魔力不足の解消がメリットになっている。士郎から注がれる魔力と、己で練り上げるエネルギーのおかげで、比べ物にならない効率を発揮していた。
けれども突破は出来ない。同程度の出力だからこそ、狂戦士に分があった。消耗した状況でもここまで抗うか。恐ろしい相手であった。
「ならば私が支援しよう」
フォローする弓矢は素晴らしい。中るが必然とばかりに放たれる矢は、的確にモードレッドを支えていた。
モードレッドの相手に手を取っているからこそ、直感もあまり意味を成さず。肌を掠め細かな傷が増えていく。完全に無視をすれば、確実に致命傷を与えてくるだろう。
意識せざるを得ない時点で面倒だった。初戦時と同じモノを放たれれば、今度は無傷とはいかない。大分消耗していた。
「小賢しい。だが、悪くない腕前だ。トリスタンを思い出す」
無駄なし必中の弓と比べられる程の、絶妙な腕前をアーチャーは発揮している。双剣とは違う。天賦の才を磨いた力量を感じ取った。
「お褒めにあずかり恐悦至極」
からかうような言葉は、妙な真が乗っていた。何か縁があるのだろうか?
戦いは続く。互角の戦況は拮抗している。
それを一撃ですり潰すからこその騎士王であり、狂戦士なのだろう。そうして、モードレッドに妙な躊躇いが見える。
何故だ? 全力で振り切れていない。迷いぶれながら、必死に食らいついている。
「ちぃい! 攻めきれねえか」
狂戦士に理由は悟れず。しかし、隙を見逃す甘い戦士ではない。
「飛べ!!」
強烈な一撃でモードレッドをはじき飛ばして、奇しくも初戦と同じ状況に持ってかれた。
「構えろ小僧。余波でも容易く呑み込まれるぞ」
大技の予感から発せられた忠告を受けて、士郎も双剣を投影した。
さて。大きく見れば違いは二つ。受肉と振るう武器の差。互いに振るうは伝説の聖剣だ。宝具は同格ならば、此処で退く理由はない!
「さあ、この剣閃を超えられるか?」
「オレの手にはシロウの力があるから!!」
真名解放は同時に行われて、貴き幻想の真価が発揮された。
担い手に大きな優劣はなく。発する輝きは同等を許されて。
「「|約束された勝利の剣《エクスカリバー》!!」」
同質量の一撃は互いを呑み込みあって、爆発と共に古城を崩壊させた。
凜の姿はない。キャスターから魔力を奪われていたせいで、衰弱しきっていた。アーチャーは宝石から魔力を補給して、この戦闘に付き合ってくれていた。
強敵共を相手取ってからの、更に面倒な相手だ。疲労は重く。魔力不足は解消されない。切り札の鞘も後一度だけだ。
状況は最悪に近くとも、騎士王の佇まいは崩れなかった。
勝てないのではないかと。その姿で思わせる絶対的なカリスマ。モードレッドでは確実に至れない王気が、バーサーカーから発せられている。
「父上」
思わず零れたモードレッドの呟きに、怪訝な顔で言葉を返す。
「貴様を子と認めた事はなかったぞ。モードレッド」
無慈悲な呟きだ。挑発も兼ねているのかもしれないが、なんて悲しい言葉だろう。心が感じられない事が、何よりも悲しい。
「っ! オレは!」
動揺と悲しみが溢れて、憎悪に繋がろうとしていた。
そんな彼女の肩に手を置いて、士郎は静かに言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ、俺が側にいる」
迷いのない愛情は彼女の心を緩ませてくれた。
「シロウ…」
落ち着きを取り戻して、真っ直ぐに見つめてくる。兜は既にない。最早、正体を隠す意味なんてない。漆黒の騎士鎧を展開して、両手に黄金の剣を構えていた。士郎が補強した聖剣である。
「ほう?」
思いもよらぬ反応だった。挑発に乗ってくれば、アーチャーの援護も許さず殺せたのだがね。状況は以前変わらず。悪くなっていた。
そうして、モードレッドが構える剣に眼を細めながら、バーサーカーも応じ剣を構えた。隙は無い。まだ戦える。油断は出来ない相手だ。
「父上、今度こそ貴方を消滅させる」
「それで良い。さあ、戦争を終わらせよう」
最初の踏み込みはモードレッドから。紅雷の魔力放出が加速を許して、瞬時に間合いを詰めた。剛剣。力強く放たれた剣戟を、容易くバーサーカーが受け止める。
金属音が響き渡った。強度は互角だ。本来ならばありえない。二連戦は、バーサーカーの出力を殺している。
そうして、モードレッドの調子が良い。滾っている。
発揮される神秘は違えど、同レベルにまで高められている。これならば戦える。一方的に負けることはない。
白銀の剣でも良かったが、真名解放の打ち合いに不安が残っている。成立するならば、同じ武器で戦った方が良い。
神秘のぶつかり合いが空気を爆ぜさせる。堪らぬエネルギーの激突で、肌が灼けるようだ。
「この様子ならば、一方的に負けることはなさそうだな」
アーチャーの見立て通りであった。今度は初戦の時とは違い。何とか戦闘が成立していた。
その要因の一つとして、モードレッドの受肉が挙げられるだろう。
肉体の疲労のデメリットよりも、魔力不足の解消がメリットになっている。士郎から注がれる魔力と、己で練り上げるエネルギーのおかげで、比べ物にならない効率を発揮していた。
けれども突破は出来ない。同程度の出力だからこそ、狂戦士に分があった。消耗した状況でもここまで抗うか。恐ろしい相手であった。
「ならば私が支援しよう」
フォローする弓矢は素晴らしい。中るが必然とばかりに放たれる矢は、的確にモードレッドを支えていた。
モードレッドの相手に手を取っているからこそ、直感もあまり意味を成さず。肌を掠め細かな傷が増えていく。完全に無視をすれば、確実に致命傷を与えてくるだろう。
意識せざるを得ない時点で面倒だった。初戦時と同じモノを放たれれば、今度は無傷とはいかない。大分消耗していた。
「小賢しい。だが、悪くない腕前だ。トリスタンを思い出す」
無駄なし必中の弓と比べられる程の、絶妙な腕前をアーチャーは発揮している。双剣とは違う。天賦の才を磨いた力量を感じ取った。
「お褒めにあずかり恐悦至極」
からかうような言葉は、妙な真が乗っていた。何か縁があるのだろうか?
戦いは続く。互角の戦況は拮抗している。
それを一撃ですり潰すからこその騎士王であり、狂戦士なのだろう。そうして、モードレッドに妙な躊躇いが見える。
何故だ? 全力で振り切れていない。迷いぶれながら、必死に食らいついている。
「ちぃい! 攻めきれねえか」
狂戦士に理由は悟れず。しかし、隙を見逃す甘い戦士ではない。
「飛べ!!」
強烈な一撃でモードレッドをはじき飛ばして、奇しくも初戦と同じ状況に持ってかれた。
「構えろ小僧。余波でも容易く呑み込まれるぞ」
大技の予感から発せられた忠告を受けて、士郎も双剣を投影した。
さて。大きく見れば違いは二つ。受肉と振るう武器の差。互いに振るうは伝説の聖剣だ。宝具は同格ならば、此処で退く理由はない!
「さあ、この剣閃を超えられるか?」
「オレの手にはシロウの力があるから!!」
真名解放は同時に行われて、貴き幻想の真価が発揮された。
担い手に大きな優劣はなく。発する輝きは同等を許されて。
「「|約束された勝利の剣《エクスカリバー》!!」」
同質量の一撃は互いを呑み込みあって、爆発と共に古城を崩壊させた。
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