第20話
表情は少ししか見えないけど、どこか悲しそうに見える。
「……はぁ」
あたしは、そんなシャルを見て、嘆息した。
そんな顔をされたら、あたしは――
「仕方ないな。その機械とやら、探すか」
――助けないわけにはいかないじゃないか。
「っ! てつだって……くれるのか?」
「当然だろ。それに、これはあたしのせいでもあるしな」
綾瀬川奈々子の提案を断ったから、こうしてあたしの学校が標的にされているんだ。
あたしにも、責任の一端がある。
「今は……10時ちょっと前か。タイムリミットまであと三時間。早く見つけないとな」
「うむ! がっこうじゅうをすみずみまでさがそうぞ!」
羽織ったあたしの制服の上着で目を拭うと、さっきまでの暗い表情が嘘のように明るい顔で、シャルはそう言った。
「それしかなさそうだな」
あたしは、シャルの笑顔がもとに戻ったことに喜びを感じながらも、本当に3時間でなんとかできるのか、不安を感じていた。
◆
2時限目の授業をサボり、学校内をくまなく捜索すること約1時間。
今のところ、怪しげな機械なんて発見できていない。
そもそも、この広い真龍高校を、あたし一人で隅々まで捜索するというのは、やっぱり無理がある。
シャルが人の姿になっていられる時間は、69分間だけ。
さっき少しの間人の姿になっていたから、実質今日人の姿になれるのは1時間程度だろう。
そうなると、不用意に人の姿にさせるわけにはいかない。
機械を見つけた後に、あたし一人じゃ機械を壊すことができない、なんてことになってしまうかもしれないから。
「くそっ!」
誰もいない廊下を疾駆する。
焦ってはいけない。
手がかりを見落としてしまうかもしれないから。
でも、タイムリミットが刻々と迫っているので、焦ってしまう。
頭ではわかっていても、身体が動いてしまう。
「はぁ……はぁ……」
あたしの体力も、限界に近づいてきた。
当たり前か。
1時間近く、全力で駆け回っているんだから。
このままでは、ヤバい。
「シャル、何かわからないのか? 機械が仕掛けられそうな場所とか」
『すまぬが、現状は何も……。モザイク化計画のことは、妾たちもよくわかっていないからの』
「くそっ!」
あたしは立ち止まり、その場に座り込んでしまう。
「もう……だめ。体、力の……限……界」
校内に2時限目終了のチャイムが鳴り響いた。
こんなところに座っていると、教師に見つかってしまうかもしれない。
そうなったら、捕まってかなりの時間を食うだろう。
でも、疲労のせいで身体が動かない。
これは、間に合わないかもしれないな。
まあ、仕方がない。
もともと無理な話だったんだ。あたし一人でなんとかするなんて。
もう、無理だ。諦めよう。
「よ! 大丈夫か?」
あたしがそんな負の思考を巡らせていると、頭の上から声が聞こえてきた。
ゆっくり顔を上げると、そこには、
「ほれ、コーヒー牛乳」
紙パックのコーヒー牛乳を差し出す、幼馴染みの姿があった。
「さんきゅー」
「ゆあーうぇるかむ」
受け取ったコーヒー牛乳を口に運んでいく。
口内に広がる、コーヒー牛乳の甘味。
疲れが、いくらかましになった。
「なんか、あったのか?」
あたしの隣に腰を下ろし、尋ねてくる涼太。
あたしは、簡易版モザイク化計画のことを、涼太に話す。
「なら、俺も探すの手伝うさ」
全てを聞き終わった涼太は、スマイル全開でそう言ってくれる。ちょっとキモい。
「お前、授業は?」
「んなの、今はどうでもいいだろ? 幼馴染みを助ける方が大事だよ」
『下心丸見えじゃのう』
「何か言ったか、おっぱい?」
『言ってほしいのか?』
「……ごめんなさい」
「?」
何かわけのわからないやり取りを交わすシャルと涼太。
ともかく、これは頼もしい。
あたしたちは、二手に分かれて校内を探し始めた。
◆
「あった?」
「いや、こっちは見つからなかった」
二手に分かれて1時間が経過した。
あたしたちは、あらかじめ決めていた合流ポイントで合流し、お互いの成果を報告しあう。
でも、二人とも見つからなかったようだ。
『うむ……どうするか……』
シャルが唸り声を上げる。
校舎内は、ほとんど探したことになる。
教室の中はさすがに探してないけど、もし怪しげな機械があったら誰かしら気が付くだろう。
となると。
「校舎内にはないんじゃないか?」
『うむ……たしかに、この情報は敵からのものじゃしのう……その可能性も、なくはないが……』
でもなにか違う、とでも言いたげなシャル。
むう……なら、どこにあるんだ?
「そういえばさ」
思い出したように、涼太が声を上げた。
「地下倉庫は探したか?」
「地下倉庫?」
そんなのあったっけ?
「……はぁ」
あたしは、そんなシャルを見て、嘆息した。
そんな顔をされたら、あたしは――
「仕方ないな。その機械とやら、探すか」
――助けないわけにはいかないじゃないか。
「っ! てつだって……くれるのか?」
「当然だろ。それに、これはあたしのせいでもあるしな」
綾瀬川奈々子の提案を断ったから、こうしてあたしの学校が標的にされているんだ。
あたしにも、責任の一端がある。
「今は……10時ちょっと前か。タイムリミットまであと三時間。早く見つけないとな」
「うむ! がっこうじゅうをすみずみまでさがそうぞ!」
羽織ったあたしの制服の上着で目を拭うと、さっきまでの暗い表情が嘘のように明るい顔で、シャルはそう言った。
「それしかなさそうだな」
あたしは、シャルの笑顔がもとに戻ったことに喜びを感じながらも、本当に3時間でなんとかできるのか、不安を感じていた。
◆
2時限目の授業をサボり、学校内をくまなく捜索すること約1時間。
今のところ、怪しげな機械なんて発見できていない。
そもそも、この広い真龍高校を、あたし一人で隅々まで捜索するというのは、やっぱり無理がある。
シャルが人の姿になっていられる時間は、69分間だけ。
さっき少しの間人の姿になっていたから、実質今日人の姿になれるのは1時間程度だろう。
そうなると、不用意に人の姿にさせるわけにはいかない。
機械を見つけた後に、あたし一人じゃ機械を壊すことができない、なんてことになってしまうかもしれないから。
「くそっ!」
誰もいない廊下を疾駆する。
焦ってはいけない。
手がかりを見落としてしまうかもしれないから。
でも、タイムリミットが刻々と迫っているので、焦ってしまう。
頭ではわかっていても、身体が動いてしまう。
「はぁ……はぁ……」
あたしの体力も、限界に近づいてきた。
当たり前か。
1時間近く、全力で駆け回っているんだから。
このままでは、ヤバい。
「シャル、何かわからないのか? 機械が仕掛けられそうな場所とか」
『すまぬが、現状は何も……。モザイク化計画のことは、妾たちもよくわかっていないからの』
「くそっ!」
あたしは立ち止まり、その場に座り込んでしまう。
「もう……だめ。体、力の……限……界」
校内に2時限目終了のチャイムが鳴り響いた。
こんなところに座っていると、教師に見つかってしまうかもしれない。
そうなったら、捕まってかなりの時間を食うだろう。
でも、疲労のせいで身体が動かない。
これは、間に合わないかもしれないな。
まあ、仕方がない。
もともと無理な話だったんだ。あたし一人でなんとかするなんて。
もう、無理だ。諦めよう。
「よ! 大丈夫か?」
あたしがそんな負の思考を巡らせていると、頭の上から声が聞こえてきた。
ゆっくり顔を上げると、そこには、
「ほれ、コーヒー牛乳」
紙パックのコーヒー牛乳を差し出す、幼馴染みの姿があった。
「さんきゅー」
「ゆあーうぇるかむ」
受け取ったコーヒー牛乳を口に運んでいく。
口内に広がる、コーヒー牛乳の甘味。
疲れが、いくらかましになった。
「なんか、あったのか?」
あたしの隣に腰を下ろし、尋ねてくる涼太。
あたしは、簡易版モザイク化計画のことを、涼太に話す。
「なら、俺も探すの手伝うさ」
全てを聞き終わった涼太は、スマイル全開でそう言ってくれる。ちょっとキモい。
「お前、授業は?」
「んなの、今はどうでもいいだろ? 幼馴染みを助ける方が大事だよ」
『下心丸見えじゃのう』
「何か言ったか、おっぱい?」
『言ってほしいのか?』
「……ごめんなさい」
「?」
何かわけのわからないやり取りを交わすシャルと涼太。
ともかく、これは頼もしい。
あたしたちは、二手に分かれて校内を探し始めた。
◆
「あった?」
「いや、こっちは見つからなかった」
二手に分かれて1時間が経過した。
あたしたちは、あらかじめ決めていた合流ポイントで合流し、お互いの成果を報告しあう。
でも、二人とも見つからなかったようだ。
『うむ……どうするか……』
シャルが唸り声を上げる。
校舎内は、ほとんど探したことになる。
教室の中はさすがに探してないけど、もし怪しげな機械があったら誰かしら気が付くだろう。
となると。
「校舎内にはないんじゃないか?」
『うむ……たしかに、この情報は敵からのものじゃしのう……その可能性も、なくはないが……』
でもなにか違う、とでも言いたげなシャル。
むう……なら、どこにあるんだ?
「そういえばさ」
思い出したように、涼太が声を上げた。
「地下倉庫は探したか?」
「地下倉庫?」
そんなのあったっけ?
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