終焉
バーサーカーの霊核を砕いた。現世に留める楔は存在しない。最強はここに終りを迎えた。モードレッドの勝利だ。
天にある杯も不満は感じられない。崩壊と臨界は間近であり。
騎士王は、強靱な意志力で残された者へと言葉を与える。
「貴方を私の子と認めます。ただそれだけを胸に抱き、歩んだ道を認めましょう」
空虚な言葉かもしれない。今更何をと考えるかもしれない。
だが、今だからこそ。王としての責務を降ろして、一人の人間として、ここまで愛を求めた少女へ。
素直な想いを与えよう。誰よりも真面目に生きてきた、アルトリアとしての言葉を届けるんだ。
「ごめんなさい。王位は与えられません」
そこは誤魔化せない。騎士王として背負ってきた願いがある。
やり直しを求めた。己以上の適性者を求めて、世界と契約してまで戦い続けた。死後の在り方なんてどうでも良く。
王国の理想を求め続けたからこそ、目の前の少女が願った想いを刻み込む。
己は確かに王だったと。この重みは誰にも背負わせられない。自分だけが抱えていくんだ。今更原点に戻れた。真っ直ぐに愛を求めて、誰よりも騎士王を知っていた彼女に教えてもらった。
「ん。分かってるぜ」
聞き分けのない子供から、堂々と胸を張る大人へと変わっている。
親として出来たことはなかった。こうして出会えても、結局殺し合ってしまった。けれど戦いは雄弁だった。得られたんだ。
「ただ、ただただ」
もう武装は要らない。鎧を霊体化させた。
今までの分もこめて頭を撫でる。贖罪とは言えない。
「生まれてきてくれてありがとう。私を教えてくれてありがとう」
だって、モードレッドは自分を許せないだろう。カムランの丘の罪を抱えながら彼女は生きていく。
「父、上…!!」
だから、これはただ愛情を示しただけだ。報いるだけの時間だ。
大粒の涙を流すモードレッド。応えてまた涙を流すアルトリアの姿。重ねた時間の長さはない。これまで培ってきた時間を、騎士モードレッドの想いを知っている。
こうして戦って、最後に得られた結末を誇ろう。胸に抱えれば、カムランの丘も受け入れられるから。真っ暗闇の終りを見て、今日星を見つけられた。辿り着いた結末を見られた。
「無垢に愛を、私を求めてくれたモードレッド」
最後に一度抱きしめながら、力強く抱きしめながら。
「さようなら、どうか幸せになってくださいね」
静かな宣言と清々しい愛情を残しながら、バーサーカーが遂に消滅した。最強の騎士の力は果てしなく。
「…父上、まだ戦えたんだろうな」
「最後の刃を振るった時に、俺は受け入れたように見えたぞ」
ただ戦っただけならば、恐らく超えられなかった壁だった。実力では完全に劣っていた。殺し合いならば終わっていた。
「それでも、オレに託してくれたんだな」
彼女が騎士王の子供として、素直になれたからこその結果だったのかもしれない。そうして、それは士郎との出会いがあったおかげ。
「ありがとな」
手を引き幸せを許し合えるようになれたおかげ、モードレッドは一つ大人になれた。この運命に感謝をしよう。許してくれた最愛の父へ。
「……さようなら」
呟きは座へと届いただろうか。もう十分すぎる位に愛してもらった。
これからは、願いに恥じない己として生きていくんだ。
残る英霊は存在しない。天に浮かぶ聖杯は今にも爆ぜそうだ。
ここに聖杯戦争が終りを迎えた。疲労は重く。今にも倒れてしまいそうだ。まだ後始末が残っている。
「さて…っと」
体が重たい。もう限界は近いように感じる。受肉した肉体は疲労を深く感じ取っていた。
「大丈夫か?」
ふらつく彼女の体を抱き支えながら、心配そうに見つめる彼へと。
「後一撃だけなら放てるさ。なんといっても、オレはアーサー王の息子だからな!」
にかりと元気いっぱいに笑った。眩しく輝く白銀の如き笑顔を、生涯忘れる事はないだろう。
「シロウ。支えてくれるか?」
令呪は既にない。魔力を注ぎながら。彼女の背を支えた。
重みを分かち合って生きていこう。天に浮かぶ聖杯は、原初の記憶であり。罪の記憶であった。彼女の背中にそえた手が震える。
振り返り柔らかに微笑んで。
「一緒になら戦える。そうだろうシロウ」
「ああ。本当、頼りがいがある最高の騎士だよ」
「へへ」
士郎の罪の記憶、モードレッドが抱えていた罪悪感。二つの想いを乗せて、許しはここにあるのだから。
暗黒の太陽が浮かぶ空を見た。力は――残っている!!
受け継ぎ許された宝具の力で全てを終わらせる。
「受け継いだ意思を示せ白銀の剣よ」
王位は要らない。ただ子として認められた気持ちを紡げ。
憎しみは既になく。憤怒はとっくの昔に消えている。愛された。
それだけを求めて戦い続けてきたんだ。纏う紅の稻妻に濁りはない。聖剣の光にも劣らぬ力を発しているんだ。
紡ぐ真名は魂からの叫び。抱え続けた想いの最果て。
「|我が麗しき父への敬愛《クラレント・ブラッドアーサー》!!」
白銀の光が漆黒の空を呑み込んで、此処に聖杯戦争が終結した。
天にある杯も不満は感じられない。崩壊と臨界は間近であり。
騎士王は、強靱な意志力で残された者へと言葉を与える。
「貴方を私の子と認めます。ただそれだけを胸に抱き、歩んだ道を認めましょう」
空虚な言葉かもしれない。今更何をと考えるかもしれない。
だが、今だからこそ。王としての責務を降ろして、一人の人間として、ここまで愛を求めた少女へ。
素直な想いを与えよう。誰よりも真面目に生きてきた、アルトリアとしての言葉を届けるんだ。
「ごめんなさい。王位は与えられません」
そこは誤魔化せない。騎士王として背負ってきた願いがある。
やり直しを求めた。己以上の適性者を求めて、世界と契約してまで戦い続けた。死後の在り方なんてどうでも良く。
王国の理想を求め続けたからこそ、目の前の少女が願った想いを刻み込む。
己は確かに王だったと。この重みは誰にも背負わせられない。自分だけが抱えていくんだ。今更原点に戻れた。真っ直ぐに愛を求めて、誰よりも騎士王を知っていた彼女に教えてもらった。
「ん。分かってるぜ」
聞き分けのない子供から、堂々と胸を張る大人へと変わっている。
親として出来たことはなかった。こうして出会えても、結局殺し合ってしまった。けれど戦いは雄弁だった。得られたんだ。
「ただ、ただただ」
もう武装は要らない。鎧を霊体化させた。
今までの分もこめて頭を撫でる。贖罪とは言えない。
「生まれてきてくれてありがとう。私を教えてくれてありがとう」
だって、モードレッドは自分を許せないだろう。カムランの丘の罪を抱えながら彼女は生きていく。
「父、上…!!」
だから、これはただ愛情を示しただけだ。報いるだけの時間だ。
大粒の涙を流すモードレッド。応えてまた涙を流すアルトリアの姿。重ねた時間の長さはない。これまで培ってきた時間を、騎士モードレッドの想いを知っている。
こうして戦って、最後に得られた結末を誇ろう。胸に抱えれば、カムランの丘も受け入れられるから。真っ暗闇の終りを見て、今日星を見つけられた。辿り着いた結末を見られた。
「無垢に愛を、私を求めてくれたモードレッド」
最後に一度抱きしめながら、力強く抱きしめながら。
「さようなら、どうか幸せになってくださいね」
静かな宣言と清々しい愛情を残しながら、バーサーカーが遂に消滅した。最強の騎士の力は果てしなく。
「…父上、まだ戦えたんだろうな」
「最後の刃を振るった時に、俺は受け入れたように見えたぞ」
ただ戦っただけならば、恐らく超えられなかった壁だった。実力では完全に劣っていた。殺し合いならば終わっていた。
「それでも、オレに託してくれたんだな」
彼女が騎士王の子供として、素直になれたからこその結果だったのかもしれない。そうして、それは士郎との出会いがあったおかげ。
「ありがとな」
手を引き幸せを許し合えるようになれたおかげ、モードレッドは一つ大人になれた。この運命に感謝をしよう。許してくれた最愛の父へ。
「……さようなら」
呟きは座へと届いただろうか。もう十分すぎる位に愛してもらった。
これからは、願いに恥じない己として生きていくんだ。
残る英霊は存在しない。天に浮かぶ聖杯は今にも爆ぜそうだ。
ここに聖杯戦争が終りを迎えた。疲労は重く。今にも倒れてしまいそうだ。まだ後始末が残っている。
「さて…っと」
体が重たい。もう限界は近いように感じる。受肉した肉体は疲労を深く感じ取っていた。
「大丈夫か?」
ふらつく彼女の体を抱き支えながら、心配そうに見つめる彼へと。
「後一撃だけなら放てるさ。なんといっても、オレはアーサー王の息子だからな!」
にかりと元気いっぱいに笑った。眩しく輝く白銀の如き笑顔を、生涯忘れる事はないだろう。
「シロウ。支えてくれるか?」
令呪は既にない。魔力を注ぎながら。彼女の背を支えた。
重みを分かち合って生きていこう。天に浮かぶ聖杯は、原初の記憶であり。罪の記憶であった。彼女の背中にそえた手が震える。
振り返り柔らかに微笑んで。
「一緒になら戦える。そうだろうシロウ」
「ああ。本当、頼りがいがある最高の騎士だよ」
「へへ」
士郎の罪の記憶、モードレッドが抱えていた罪悪感。二つの想いを乗せて、許しはここにあるのだから。
暗黒の太陽が浮かぶ空を見た。力は――残っている!!
受け継ぎ許された宝具の力で全てを終わらせる。
「受け継いだ意思を示せ白銀の剣よ」
王位は要らない。ただ子として認められた気持ちを紡げ。
憎しみは既になく。憤怒はとっくの昔に消えている。愛された。
それだけを求めて戦い続けてきたんだ。纏う紅の稻妻に濁りはない。聖剣の光にも劣らぬ力を発しているんだ。
紡ぐ真名は魂からの叫び。抱え続けた想いの最果て。
「|我が麗しき父への敬愛《クラレント・ブラッドアーサー》!!」
白銀の光が漆黒の空を呑み込んで、此処に聖杯戦争が終結した。
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