闇の中の救い
「……よくはわからないが、つまり、我々はオーレン(仮名)の記憶を傍観し、少尉が飛ばされたあとを追うのだな?」
「正解」
「そのあとのことは、私にはよくわからないから、任せることにする。なにかあれば、守ることは約束しよう」
「頼りにしてますよ、軍曹殿。おそらく、オーレン(仮名)の記憶を見るので、あいつらも関与してくると思うんだよね。リンクしちゃってるから、オーレン(仮名)自身は覚えなくても、記憶の中には存在しているはずなんだ。ややこしいけど。ま、なんとかなるでしょ。じゃ、そろそろオーレン(仮名)と対峙した時の記憶が始まる」
ジェラルドにとっては、どのように少尉を奪還したのか、少尉がどのような状態で囚われていたのかを知ることになる。
マックス(仮名)たちがどんな思いで救ってくれたのかを見ながら、改めて、彼らに嘘や出し抜くなどという思いがないことも、知るのだった。
と、マックス(仮名)がジェラルドの腕を掴む。
「そろそろだ、しっかりと見ていてくださいよ、軍曹殿」
ライザがシャール側で、彼女自身と彼女の精神をも守ろうとしている姿がある。
なにかを伝え、シャールがそれに従っている……その時!
「いまだ!」
マックス(仮名)の合図でふたりは同時に消えていくライザの姿を追った。
植物が生い茂っている空間から、一気に闇の中へと閉じこめられてしまう。
「ここが……?」とジェラルド。
「そう、ここに彼女がいる。でも、暗くてわからないね。軍曹殿は、俺の姿が見えてます?」
「ぼんやりと……だが」
「うん。俺と同じだね。俺たちは見ている側だからこの程度で済んでいるってこと。で、あいつらも彼女がどこにいるかを知っていたから、ここも見ている可能性はある。でも、オーレン(仮名)はあのあと拘束されちゃうから、リンクも途切てしまっていると思う。だから、ライザ少尉がこの空間でどうなったかは知らない。こういう空間にいると発狂してしまう人もいるからね」
「そのことだが、ライザ少尉なら大丈夫ではないだろうか。漠然とした感覚としか言えないが」
「ああ、それ、わかる。彼女、前向きでしたね。だったら期待しても大丈夫かも」
「だといいのですが。それで? このあと、どうするのです?」
「ライザ少尉が疑わず信じてくれそうな人に誘導してもらう。飛ばされる直前様子だと、シャールちゃんか、少佐のことを気にかけていそうだけど……軍曹殿でしたら、どちらだと思います?」
「……少佐、といいたいところですが、シャールさんでしょうな」
「……だよね。だけど、彼女だと引きつけが弱いかな。少佐にしましょう」
「少佐に? どういうことですかな?」
「説明より、まずは見てもらえます?」
マックス(仮名)は霧をだし、それで人型を形成、そこにクロード姿を映し出す。
映し出すというよりは、その人型がクロードであると思いこませたのだ。
ジェラルドにもそのように思いこませるとこで、
「これが霧……」
霧であるとわかっていながらも、そこにクロードがいる。
どれだけ心配をさせてくれたんだと、ひと言いってやりたい感情がわき上がってきた。
「……っう。それで、この霧でどうしようと?」
「少佐を演じてもらい、出口まで誘導します」
「記憶を見ているのでは?」
「まあ、そうなんだけど。たぶん、ここは時間という概念はないと思う。あったとしても、ここの一分は実在の世界の一日とか、それくらいの幅はあるはず」
ジェラルドは、シャールたちに聞き取りをした時の話を思い出す。
三~四日ほど、幻覚の中で暮らしていたという内容を。
こちらでは一晩くらいしか経っていない。
時間のズレ幅は違うが、そういうものなのだろうと、思うことにした。
※※※
マックス(仮名)とジェラルドが近くにいるのに、気づけないライザは……。
「ああ、もう!」
真っ暗で霧が晴れなくて、上下左右の感覚もない。
時が経っているか、止まっているのか、それすらの感覚もない。
しかも無音。
静寂よりも静かすぎて、むしろ気持ち悪く感じる。
ではどうするか、ライザは動くのを止めたのだった。
体力温存の意味もあるが、動いたからといってなにかが変わるとも思えないと判断したからだった。
で、時間の感覚もないので、彼女としては時が止まっているとしか思えない。
あのあと、シャールはどうなったのだろう、少佐は? そんな考えも次第にしなくなっていた。
考えるだけ無駄とさえ思えてきた時だった……
「誰? そこに、誰かいるの?」
気配はするが、それは人の気配とは違っている。
では野生の生き物か……とも思ったが、その存在から殺気も恐怖心もなにも感じない。
たとえるなら、物がそこに存在しているといったところか。
が、ただの物ではないのはわかる。
動いているのだ。
近づいてくるのがわかる。
そしてそれが視界に入り、目と脳で認識をした。
「まさか……少佐? 意識が戻って?」
ライザにとって、少佐の現状は意識がないということだった。
囚われている姿を見たときも、意識はない。
「正解」
「そのあとのことは、私にはよくわからないから、任せることにする。なにかあれば、守ることは約束しよう」
「頼りにしてますよ、軍曹殿。おそらく、オーレン(仮名)の記憶を見るので、あいつらも関与してくると思うんだよね。リンクしちゃってるから、オーレン(仮名)自身は覚えなくても、記憶の中には存在しているはずなんだ。ややこしいけど。ま、なんとかなるでしょ。じゃ、そろそろオーレン(仮名)と対峙した時の記憶が始まる」
ジェラルドにとっては、どのように少尉を奪還したのか、少尉がどのような状態で囚われていたのかを知ることになる。
マックス(仮名)たちがどんな思いで救ってくれたのかを見ながら、改めて、彼らに嘘や出し抜くなどという思いがないことも、知るのだった。
と、マックス(仮名)がジェラルドの腕を掴む。
「そろそろだ、しっかりと見ていてくださいよ、軍曹殿」
ライザがシャール側で、彼女自身と彼女の精神をも守ろうとしている姿がある。
なにかを伝え、シャールがそれに従っている……その時!
「いまだ!」
マックス(仮名)の合図でふたりは同時に消えていくライザの姿を追った。
植物が生い茂っている空間から、一気に闇の中へと閉じこめられてしまう。
「ここが……?」とジェラルド。
「そう、ここに彼女がいる。でも、暗くてわからないね。軍曹殿は、俺の姿が見えてます?」
「ぼんやりと……だが」
「うん。俺と同じだね。俺たちは見ている側だからこの程度で済んでいるってこと。で、あいつらも彼女がどこにいるかを知っていたから、ここも見ている可能性はある。でも、オーレン(仮名)はあのあと拘束されちゃうから、リンクも途切てしまっていると思う。だから、ライザ少尉がこの空間でどうなったかは知らない。こういう空間にいると発狂してしまう人もいるからね」
「そのことだが、ライザ少尉なら大丈夫ではないだろうか。漠然とした感覚としか言えないが」
「ああ、それ、わかる。彼女、前向きでしたね。だったら期待しても大丈夫かも」
「だといいのですが。それで? このあと、どうするのです?」
「ライザ少尉が疑わず信じてくれそうな人に誘導してもらう。飛ばされる直前様子だと、シャールちゃんか、少佐のことを気にかけていそうだけど……軍曹殿でしたら、どちらだと思います?」
「……少佐、といいたいところですが、シャールさんでしょうな」
「……だよね。だけど、彼女だと引きつけが弱いかな。少佐にしましょう」
「少佐に? どういうことですかな?」
「説明より、まずは見てもらえます?」
マックス(仮名)は霧をだし、それで人型を形成、そこにクロード姿を映し出す。
映し出すというよりは、その人型がクロードであると思いこませたのだ。
ジェラルドにもそのように思いこませるとこで、
「これが霧……」
霧であるとわかっていながらも、そこにクロードがいる。
どれだけ心配をさせてくれたんだと、ひと言いってやりたい感情がわき上がってきた。
「……っう。それで、この霧でどうしようと?」
「少佐を演じてもらい、出口まで誘導します」
「記憶を見ているのでは?」
「まあ、そうなんだけど。たぶん、ここは時間という概念はないと思う。あったとしても、ここの一分は実在の世界の一日とか、それくらいの幅はあるはず」
ジェラルドは、シャールたちに聞き取りをした時の話を思い出す。
三~四日ほど、幻覚の中で暮らしていたという内容を。
こちらでは一晩くらいしか経っていない。
時間のズレ幅は違うが、そういうものなのだろうと、思うことにした。
※※※
マックス(仮名)とジェラルドが近くにいるのに、気づけないライザは……。
「ああ、もう!」
真っ暗で霧が晴れなくて、上下左右の感覚もない。
時が経っているか、止まっているのか、それすらの感覚もない。
しかも無音。
静寂よりも静かすぎて、むしろ気持ち悪く感じる。
ではどうするか、ライザは動くのを止めたのだった。
体力温存の意味もあるが、動いたからといってなにかが変わるとも思えないと判断したからだった。
で、時間の感覚もないので、彼女としては時が止まっているとしか思えない。
あのあと、シャールはどうなったのだろう、少佐は? そんな考えも次第にしなくなっていた。
考えるだけ無駄とさえ思えてきた時だった……
「誰? そこに、誰かいるの?」
気配はするが、それは人の気配とは違っている。
では野生の生き物か……とも思ったが、その存在から殺気も恐怖心もなにも感じない。
たとえるなら、物がそこに存在しているといったところか。
が、ただの物ではないのはわかる。
動いているのだ。
近づいてくるのがわかる。
そしてそれが視界に入り、目と脳で認識をした。
「まさか……少佐? 意識が戻って?」
ライザにとって、少佐の現状は意識がないということだった。
囚われている姿を見たときも、意識はない。
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