第15話「海未、ファンと遭遇ですかっ!?」
さてさて、今日は穂乃果ママの手伝いとしてスーパーに買い出しに来ている。
俺はμ'sの練習のない日は穂乃果ママの手伝いをするのが主な仕事だ。あの家に居候させてもらってるんだから、それくらいはしないとだ。
「しいたけと……ナスか」
今日の夕食はカレーライス。カレーライスといえば穂乃果がハイテンションになる料理の1つだ。まったくもって楽しみである。
そんな買い物をしていると、どこからか激しい声が聞こえてきた。俺は声のする方へかけてみると、そこでは金髪でロングな小さい女の子と店員さんが揉めているようだった。
「スイカないんですかぁ!?」
若干、カタコトくさい拙い口調で少女は言葉を放つ。もしかして、外国人?
「スイカは置いてないんだよ」
やれやれと言った雰囲気で店員は首を振る。
「そんなこと言わずに!」
店員の言っていることが分からないのか、それとも強く言えばスイカを持ってきてくれると思っているのか、少女はまだまだ説得を試みる。
「そう言われても」
「プリーズ!」
ついに英語が飛び出る。その威圧的な雰囲気に周りにいた客もざわつき始めた。
「だからね」
店員の眉間にシワが寄った。流石にあの態度にはイラッときたようだった。
「プリーズ!!」
少女の声に若干のダミが交じる。このままだと本気の喧嘩になりかねない。
俺は、二人の間に割って入る形で口論をやめさせることにした。
「お嬢ちゃん、スイカは今の季節の食べ物じゃないんだよ」
「えぇ、そうだったんですか!?」
少女は俺の説明を聞いて驚いた表情を見せる。今までアメリカの首都はニューヨークだと思ってたくらいにびっくりした表情。今後これを超える驚きが彼女にはあるのか。
「まったく、お店の人困ってるじゃないか」
「ごめんなさい……」
スイカがなかったことに対し、そして店員さんに迷惑をかけたことに対し、反省の念があるのか少女は申し訳無さそうにしょげた表情を見せた。
流石にこのままにしておくのは男の名がすたる。なんとかしなきゃ。
「あ、でもこの季節でも食べられるスイカがあるよ。着いておいで」
「はい!」
俺は妙案を思いついた。それは同じスーパーの別の売り場に置いてあるあるもので解決できるのだ。
「ハラショー!」
少女はそのものを見るなり驚きの声を上げた。
それにしてもハラショーってなんだ。初めて聞いたぞ。
「本物じゃないけど、スイカバーだよ。アイスクリームだ」
スイカバー。年中売り出されているスイカを模したアイスクリームだ。味はそのままスイカといっても過言ではない。
とはいえ、カニカマのようなマジモンの擬似食品と違ってスイカバーじゃスイカの魅力を100%出し切れているわけではないのだが、今の季節無理を言っても仕方ない。
スイカバーで満足してくれなきゃ本当にめんどくさいことになる。
「ありがとうございます!」
少女は早速スイカバーを買い、むしゃぶりついていた。その表情を見るに大変満足しているようだった。
「あれ、竜じゃないですか。こんなところで何やってるんですか? 今度はナンパですか? 相変わらず破廉恥ですね」
そこへ海未ちゃんが現れた。この上なく毒舌。先日の出来事があるせいか、どうやら俺は色男という烙印を押されているようだ。本当に勘弁してくれ。
「おっす海未ちゃん。っていうかさ、そういうキャラ付けやめてくれませんかね……?」
「だって事実じゃないですか」
海未ちゃんは断固として俺の変態キャラを譲りたくないようだ。ドSかよ。
すると、あのスイカバー少女が目をキラキラさせてこちらを見ていた。
「海未……もしかしてμ'sの園田海未さんですか!?」
「は、はい。そうですが……」
少女は食い気味に海未ちゃんに語りかける。
「私、絢瀬亜里沙っていいます! 海未さんの大ファンなんです!!」
「へ、へぇ……ファンなんですか……」
こういったシチュエーションに慣れていない海未ちゃんはこの上なく照れていた。顔を真っ赤にして、今にも沸騰しそうだ。
「海未ちゃん、照れてるのかい?」
「照れてなんかいませんっ!」
海未ちゃんはそう恥ずかしそうに言い放つ。まったく、かわいいやつめ。
「それで、この方は海未さんの彼氏ですか?」
この少女は恐れを知らない。俺のことを海未ちゃんの彼氏だと思うのはシチュエーション的に仕方ないとして、それを堂々と聞いてしまうとは。お前仮にも海未推しだろう。
いいのか、俺が仮に海未ちゃんと付き合っていたとして、それで平然としていられるのか。その上で聞いているのか。だとすれば相当なチャレンジャーだ。
「彼氏っ!? なんて破廉恥な響きィッ!?」
こうなるよな。海未ちゃんはぶっ壊れたスピーカーみたいな絶叫をした後その場にうずくまってしまった。
「違うぞ亜里沙ちゃん。俺はμ'sのマネージャー、琴奈竜だ」
というわけで、俺が弁解する。
「マネージャー! ハラショー! ってことはμ'sをプロデュースするんですねっ!!」
「そういうこと」
どうやら分かってくれたようだ。
亜里沙ちゃんはそれが分かると、かばんからゴソゴソと何かを取り出した。
「あ、そうだ。海未さん、サインください!」
「サイン!?」
この怒涛の展開に海未ちゃんは着いていけてない。恥ずかしさのあまり気が動転しているのかすべての発言の声が裏返ってしまっている。
「いいじゃねぇか海未ちゃん。あげちゃえあげちゃえ」
「うむ……分かりました。書きましょう!!」
そうして海未ちゃんは真摯にサインと向き合った……。
俺はμ'sの練習のない日は穂乃果ママの手伝いをするのが主な仕事だ。あの家に居候させてもらってるんだから、それくらいはしないとだ。
「しいたけと……ナスか」
今日の夕食はカレーライス。カレーライスといえば穂乃果がハイテンションになる料理の1つだ。まったくもって楽しみである。
そんな買い物をしていると、どこからか激しい声が聞こえてきた。俺は声のする方へかけてみると、そこでは金髪でロングな小さい女の子と店員さんが揉めているようだった。
「スイカないんですかぁ!?」
若干、カタコトくさい拙い口調で少女は言葉を放つ。もしかして、外国人?
「スイカは置いてないんだよ」
やれやれと言った雰囲気で店員は首を振る。
「そんなこと言わずに!」
店員の言っていることが分からないのか、それとも強く言えばスイカを持ってきてくれると思っているのか、少女はまだまだ説得を試みる。
「そう言われても」
「プリーズ!」
ついに英語が飛び出る。その威圧的な雰囲気に周りにいた客もざわつき始めた。
「だからね」
店員の眉間にシワが寄った。流石にあの態度にはイラッときたようだった。
「プリーズ!!」
少女の声に若干のダミが交じる。このままだと本気の喧嘩になりかねない。
俺は、二人の間に割って入る形で口論をやめさせることにした。
「お嬢ちゃん、スイカは今の季節の食べ物じゃないんだよ」
「えぇ、そうだったんですか!?」
少女は俺の説明を聞いて驚いた表情を見せる。今までアメリカの首都はニューヨークだと思ってたくらいにびっくりした表情。今後これを超える驚きが彼女にはあるのか。
「まったく、お店の人困ってるじゃないか」
「ごめんなさい……」
スイカがなかったことに対し、そして店員さんに迷惑をかけたことに対し、反省の念があるのか少女は申し訳無さそうにしょげた表情を見せた。
流石にこのままにしておくのは男の名がすたる。なんとかしなきゃ。
「あ、でもこの季節でも食べられるスイカがあるよ。着いておいで」
「はい!」
俺は妙案を思いついた。それは同じスーパーの別の売り場に置いてあるあるもので解決できるのだ。
「ハラショー!」
少女はそのものを見るなり驚きの声を上げた。
それにしてもハラショーってなんだ。初めて聞いたぞ。
「本物じゃないけど、スイカバーだよ。アイスクリームだ」
スイカバー。年中売り出されているスイカを模したアイスクリームだ。味はそのままスイカといっても過言ではない。
とはいえ、カニカマのようなマジモンの擬似食品と違ってスイカバーじゃスイカの魅力を100%出し切れているわけではないのだが、今の季節無理を言っても仕方ない。
スイカバーで満足してくれなきゃ本当にめんどくさいことになる。
「ありがとうございます!」
少女は早速スイカバーを買い、むしゃぶりついていた。その表情を見るに大変満足しているようだった。
「あれ、竜じゃないですか。こんなところで何やってるんですか? 今度はナンパですか? 相変わらず破廉恥ですね」
そこへ海未ちゃんが現れた。この上なく毒舌。先日の出来事があるせいか、どうやら俺は色男という烙印を押されているようだ。本当に勘弁してくれ。
「おっす海未ちゃん。っていうかさ、そういうキャラ付けやめてくれませんかね……?」
「だって事実じゃないですか」
海未ちゃんは断固として俺の変態キャラを譲りたくないようだ。ドSかよ。
すると、あのスイカバー少女が目をキラキラさせてこちらを見ていた。
「海未……もしかしてμ'sの園田海未さんですか!?」
「は、はい。そうですが……」
少女は食い気味に海未ちゃんに語りかける。
「私、絢瀬亜里沙っていいます! 海未さんの大ファンなんです!!」
「へ、へぇ……ファンなんですか……」
こういったシチュエーションに慣れていない海未ちゃんはこの上なく照れていた。顔を真っ赤にして、今にも沸騰しそうだ。
「海未ちゃん、照れてるのかい?」
「照れてなんかいませんっ!」
海未ちゃんはそう恥ずかしそうに言い放つ。まったく、かわいいやつめ。
「それで、この方は海未さんの彼氏ですか?」
この少女は恐れを知らない。俺のことを海未ちゃんの彼氏だと思うのはシチュエーション的に仕方ないとして、それを堂々と聞いてしまうとは。お前仮にも海未推しだろう。
いいのか、俺が仮に海未ちゃんと付き合っていたとして、それで平然としていられるのか。その上で聞いているのか。だとすれば相当なチャレンジャーだ。
「彼氏っ!? なんて破廉恥な響きィッ!?」
こうなるよな。海未ちゃんはぶっ壊れたスピーカーみたいな絶叫をした後その場にうずくまってしまった。
「違うぞ亜里沙ちゃん。俺はμ'sのマネージャー、琴奈竜だ」
というわけで、俺が弁解する。
「マネージャー! ハラショー! ってことはμ'sをプロデュースするんですねっ!!」
「そういうこと」
どうやら分かってくれたようだ。
亜里沙ちゃんはそれが分かると、かばんからゴソゴソと何かを取り出した。
「あ、そうだ。海未さん、サインください!」
「サイン!?」
この怒涛の展開に海未ちゃんは着いていけてない。恥ずかしさのあまり気が動転しているのかすべての発言の声が裏返ってしまっている。
「いいじゃねぇか海未ちゃん。あげちゃえあげちゃえ」
「うむ……分かりました。書きましょう!!」
そうして海未ちゃんは真摯にサインと向き合った……。
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