剣の少年と愉快な魔物たち①
世界は混沌に包まれていた……。
『ジフート』と言う、人と魔物が混在する緑の星がある。
自然の力を利用し、魔法を使うことの出来る星だ。
そこにも数々の大陸や島があった。
その中に『リーク』と言う大陸がある。
この大陸は特に混沌と呼ぶにふさわしい場所だった。
この星の魔物は別の次元からジフートに訪れる。
数多の魔物が行き来する事が出来る『魔物の門(デビルズ・ゲート)』がリークにはあった。
魔物は自由に『魔物の門』を潜る事が出来た。
しかし、人間が潜り、生きて戻った者はいなかった……。
魔物は人間に無い、生命力と力が備わっている。
『門』の向こう側の世界『魔界』は力の世界だと自然と分かり、人々は恐れた。
そんな力ある悪しき物が、大陸に現れ、人間を襲った。
世界は自然に支配されそうになった。
そして、魔物は魔物同士でも戦争をした。
自分の地位と名誉、そして欲望の為に……。
更なる混沌が生まれた。
人間は傷つき倒れ、滅びの道を辿ろうとしていた。
しかし、人は魔物に屈する事無く、自由を求めて勇敢にも戦った。
戦いの歴史が長くなるにつれて、魔物は徐々に強くなった。
そして剣で倒す事が難しくなった。
その為、人々は大いなる魔法の力を借りる事にした。
剣の力は弱まり、錆びれ、今では魔法の時代となっていった……。
この物語はそんな混沌と魔法の世界を舞台に、魔法が使えない落ちこぼれの少年が世間の逆境に耐えながらも、剣で世界を救おうとする先が長くなりそうなお話。
……のはずである。
……多分……。
……きっと……。
リークの大陸に『ルー』という街がある。
この場所に主人公がいた。
この街は海の街であり、港には船が停泊している。
一年を通して漁業が盛んで、新鮮な魚が沢山獲れた。
この街の人々の大半が生活の糧となっていた。
街の天気は穏やかな天候が多いが潮風に晒されるため、少し肌寒い感じがした。
街の中はごくごく普通で、酒屋もあれば宿屋もある。
魔法が主流の世界な為、魔法の書が売られてある本屋は所狭しとある。
だが、剣などの武器を売っている店はあまりなかった。
人の出入りも、旅人、商人、観光客まで多種多様といた。
魔物が蔓延る世界でなければ平和そのものである。
「ダメ、ダメ。うちは、剣は受け付けないの。ガキもな。他を当たってくれ」
体つきががっちりしている、情報屋の主人は険しい顔をして、主人公を追い出していた。
「別にいいじゃねーか、剣を使ったってよ!しかもガキはねーだろ。これでも俺は一六だ」
主人公は腕白な、少年と呼ぶに相応しい男の子だった。
名前はザグ・ベール。
周りは縮めてザグルと呼んでいた。
自分でも呼ばれるのが普通だと思っているし、嫌いでは無かった。
身体は華奢で、自称まだまだ伸び盛り。
膝にかからない位の黄土色のズボン。白い半袖のシャツは若さを強調している。
顔つきはよくも無ければ悪くもない。
それでも大人と呼ぶにはまだ遠い顔つきは、愛くるしさも伺えた。
わざとボサボサにしている土色の髪は、直そうとしないのか、寝癖で直らないのか……。
瞳の色も土色をしていた。
見た目は至って普通の少年。
しかし、その背中には身の丈ほどの大剣を持っていた。
それが、少年の商売道具である。
職業は一応、傭兵。
ちなみに今、傭兵として雇って貰える所はないかと、街の情報屋に聞いて回っていたのだ。
結果からすると、全て断られていた。
それでも負けずに喰いつき、追い出される。
それの繰り返しだった。
「一六でもガキはガキだ。さあ、帰った。帰った」
ザグルを厄介払いすると、店の中に戻り、大きな音と共に扉が閉まった。
「なんだよ、みんなでみんな、魔法、魔法って」
もう一度食いつこうとしたが、扉から殺気を感じ、そのお店は諦めた。
仕方なしにと、他の当てを探すため街を歩いた。
と、言っても当てなんか無かった為、ただ、歩いているだけだった。
「大体、なんで剣はダメなんだ」
近くにあった普通の小石を憂さ晴らしに蹴り始める。
ザグルがここまで剣に拘るのには訳があった。
剣は魔法に比べて頑丈だし、剣術を鍛えればどんな魔物だって一溜まりもない。
魔法だって跳ね返す力だって持っている。
剣こそ、大陸を救う光だとザグルは勝手に思っていた。
「なのに、魔法を選びやがって」
世界に対しての反論だった。
一見、ザグルは最もな事を言っている。
しかし、本当の理由は他にもあった。
それは……。
単に魔法が使えないのだ。
魔法は自然の中にある『属性』と人の精神力を練り合わせて使う事が出来、精神力が強ければいくらでも使えるのだ。
その魔法の属性には『火』『水』『土』『風』『光』と『闇』そしてどこにも属さない『無』があった。
魔法を使う人にも倒すべき魔物にも得意不得意がある。
通常、一つでも得意な属性があれば、情報を貰い傭兵としてでもなんでも、なんだかの仕事を貰うことが出来る。
だが、魔法の使えない人となると話しは別で、傭兵などの仕事は自殺行為とみなし、貰う事が出来なかった。
この世界では子供の頃から、魔法を使えるように、少なくとも自分の身を守る為に学校へと通う。
学校では読み書き算盤と、魔法の授業は義務だった。
ザグルも勿論学校へと通っていた為、魔法の授業はあった。
しかし、魔法の授業だけはいつも落第点を取っていた。
ザグルの持つ負けず嫌いから、他の勉強はそれなりに頑張ったものの、主流となる魔法の成績が悪かった為、他の成績が良くとも、落ちこぼれ扱いされた。
どの属性も性質に合わなかったのか、素質自体無かったのか、今でも分からないが、魔法の力は借りず、剣で魔物を倒して行こうと決めた。
だが、剣の評価は上がる所か、下がる一方だった。
ザグルが傭兵として働き始めた頃に比べて、仕事の量が減る一方なのが、何よりも証拠である。
その為、剣専門の傭兵として生活するのは、とても楽ではなかった。
「ふざけるな!」
苛々が頂点に達し、蹴っていた小石を力いっぱいに蹴った。
その小石は運悪く、すれ違おうとしたザグルの二倍はあろう、体の大きい男の二の腕に当たった。
小石は重力に逆らう事無く、下に落ち、転がっていき何処かへ行ってしまった。
大男はすぐにザグルを見た。
「ガキ、お前がやったのか?」
凄い怒っているみたいで、迫力と殺気が感じられた。
ザグルが察するに、凄く腕に自信があり、力だけで出てきた男に感じられた。
魔法とは無縁の男、そんな雰囲気があった。
「はっはっは、ごめんなさい」
苦笑いと、謝罪でその場を凌ごうとした。
「許せそうに無いな」
しかし、無駄に終わりそうだ。
漲る危険なオーラにザグルの足がすくんでいたのだ。
体は動かないが頭は働いていた。
何をされる?
殴る? 蹴る? 振り回される?
どの道ただでは済まなそうだ。
「これでも喰らえぇ!」
「ごくっ」
大きく唾を飲み込んだ。
「炎よ!」
真っ赤に燃え上がる、炎の塊が飛んできた。
「へっ?」
何があるにしても、逃げようとしていたし、捕まると思ったから、近づく前に避けようと思った。
しかし、呆気に取られ、まともに当たった。
「あっちぃ!」
頭に火がつき、慌てながら周りをうろうろと、しばらくは走り回った。
「熱い、熱い」
「もう一発、喰らえ!」
一発目より大きい火の塊を用意していた。
「ひっ?」
火を消しながら、大男と目を合わした。
まだ、消しきれていない。しかし、目の前に恐怖が襲う。
その間にも本気で二発目を投げようとしていた。
ザグルは唾を飲み込み、これ以上当たらないようにする為、火を消しながら街の外へと大男から逃げた。
「はっはっはっ、弱い、弱い」
大男の笑いで、見ていた周りの関係無い人達からもクスクスと笑う声が聞こえた。
「なんだ。抵抗しないのか」
ザグルの逃げる姿を見送ると、少しがっかりしながら手の中の炎を消し笑っていた。
『ジフート』と言う、人と魔物が混在する緑の星がある。
自然の力を利用し、魔法を使うことの出来る星だ。
そこにも数々の大陸や島があった。
その中に『リーク』と言う大陸がある。
この大陸は特に混沌と呼ぶにふさわしい場所だった。
この星の魔物は別の次元からジフートに訪れる。
数多の魔物が行き来する事が出来る『魔物の門(デビルズ・ゲート)』がリークにはあった。
魔物は自由に『魔物の門』を潜る事が出来た。
しかし、人間が潜り、生きて戻った者はいなかった……。
魔物は人間に無い、生命力と力が備わっている。
『門』の向こう側の世界『魔界』は力の世界だと自然と分かり、人々は恐れた。
そんな力ある悪しき物が、大陸に現れ、人間を襲った。
世界は自然に支配されそうになった。
そして、魔物は魔物同士でも戦争をした。
自分の地位と名誉、そして欲望の為に……。
更なる混沌が生まれた。
人間は傷つき倒れ、滅びの道を辿ろうとしていた。
しかし、人は魔物に屈する事無く、自由を求めて勇敢にも戦った。
戦いの歴史が長くなるにつれて、魔物は徐々に強くなった。
そして剣で倒す事が難しくなった。
その為、人々は大いなる魔法の力を借りる事にした。
剣の力は弱まり、錆びれ、今では魔法の時代となっていった……。
この物語はそんな混沌と魔法の世界を舞台に、魔法が使えない落ちこぼれの少年が世間の逆境に耐えながらも、剣で世界を救おうとする先が長くなりそうなお話。
……のはずである。
……多分……。
……きっと……。
リークの大陸に『ルー』という街がある。
この場所に主人公がいた。
この街は海の街であり、港には船が停泊している。
一年を通して漁業が盛んで、新鮮な魚が沢山獲れた。
この街の人々の大半が生活の糧となっていた。
街の天気は穏やかな天候が多いが潮風に晒されるため、少し肌寒い感じがした。
街の中はごくごく普通で、酒屋もあれば宿屋もある。
魔法が主流の世界な為、魔法の書が売られてある本屋は所狭しとある。
だが、剣などの武器を売っている店はあまりなかった。
人の出入りも、旅人、商人、観光客まで多種多様といた。
魔物が蔓延る世界でなければ平和そのものである。
「ダメ、ダメ。うちは、剣は受け付けないの。ガキもな。他を当たってくれ」
体つきががっちりしている、情報屋の主人は険しい顔をして、主人公を追い出していた。
「別にいいじゃねーか、剣を使ったってよ!しかもガキはねーだろ。これでも俺は一六だ」
主人公は腕白な、少年と呼ぶに相応しい男の子だった。
名前はザグ・ベール。
周りは縮めてザグルと呼んでいた。
自分でも呼ばれるのが普通だと思っているし、嫌いでは無かった。
身体は華奢で、自称まだまだ伸び盛り。
膝にかからない位の黄土色のズボン。白い半袖のシャツは若さを強調している。
顔つきはよくも無ければ悪くもない。
それでも大人と呼ぶにはまだ遠い顔つきは、愛くるしさも伺えた。
わざとボサボサにしている土色の髪は、直そうとしないのか、寝癖で直らないのか……。
瞳の色も土色をしていた。
見た目は至って普通の少年。
しかし、その背中には身の丈ほどの大剣を持っていた。
それが、少年の商売道具である。
職業は一応、傭兵。
ちなみに今、傭兵として雇って貰える所はないかと、街の情報屋に聞いて回っていたのだ。
結果からすると、全て断られていた。
それでも負けずに喰いつき、追い出される。
それの繰り返しだった。
「一六でもガキはガキだ。さあ、帰った。帰った」
ザグルを厄介払いすると、店の中に戻り、大きな音と共に扉が閉まった。
「なんだよ、みんなでみんな、魔法、魔法って」
もう一度食いつこうとしたが、扉から殺気を感じ、そのお店は諦めた。
仕方なしにと、他の当てを探すため街を歩いた。
と、言っても当てなんか無かった為、ただ、歩いているだけだった。
「大体、なんで剣はダメなんだ」
近くにあった普通の小石を憂さ晴らしに蹴り始める。
ザグルがここまで剣に拘るのには訳があった。
剣は魔法に比べて頑丈だし、剣術を鍛えればどんな魔物だって一溜まりもない。
魔法だって跳ね返す力だって持っている。
剣こそ、大陸を救う光だとザグルは勝手に思っていた。
「なのに、魔法を選びやがって」
世界に対しての反論だった。
一見、ザグルは最もな事を言っている。
しかし、本当の理由は他にもあった。
それは……。
単に魔法が使えないのだ。
魔法は自然の中にある『属性』と人の精神力を練り合わせて使う事が出来、精神力が強ければいくらでも使えるのだ。
その魔法の属性には『火』『水』『土』『風』『光』と『闇』そしてどこにも属さない『無』があった。
魔法を使う人にも倒すべき魔物にも得意不得意がある。
通常、一つでも得意な属性があれば、情報を貰い傭兵としてでもなんでも、なんだかの仕事を貰うことが出来る。
だが、魔法の使えない人となると話しは別で、傭兵などの仕事は自殺行為とみなし、貰う事が出来なかった。
この世界では子供の頃から、魔法を使えるように、少なくとも自分の身を守る為に学校へと通う。
学校では読み書き算盤と、魔法の授業は義務だった。
ザグルも勿論学校へと通っていた為、魔法の授業はあった。
しかし、魔法の授業だけはいつも落第点を取っていた。
ザグルの持つ負けず嫌いから、他の勉強はそれなりに頑張ったものの、主流となる魔法の成績が悪かった為、他の成績が良くとも、落ちこぼれ扱いされた。
どの属性も性質に合わなかったのか、素質自体無かったのか、今でも分からないが、魔法の力は借りず、剣で魔物を倒して行こうと決めた。
だが、剣の評価は上がる所か、下がる一方だった。
ザグルが傭兵として働き始めた頃に比べて、仕事の量が減る一方なのが、何よりも証拠である。
その為、剣専門の傭兵として生活するのは、とても楽ではなかった。
「ふざけるな!」
苛々が頂点に達し、蹴っていた小石を力いっぱいに蹴った。
その小石は運悪く、すれ違おうとしたザグルの二倍はあろう、体の大きい男の二の腕に当たった。
小石は重力に逆らう事無く、下に落ち、転がっていき何処かへ行ってしまった。
大男はすぐにザグルを見た。
「ガキ、お前がやったのか?」
凄い怒っているみたいで、迫力と殺気が感じられた。
ザグルが察するに、凄く腕に自信があり、力だけで出てきた男に感じられた。
魔法とは無縁の男、そんな雰囲気があった。
「はっはっは、ごめんなさい」
苦笑いと、謝罪でその場を凌ごうとした。
「許せそうに無いな」
しかし、無駄に終わりそうだ。
漲る危険なオーラにザグルの足がすくんでいたのだ。
体は動かないが頭は働いていた。
何をされる?
殴る? 蹴る? 振り回される?
どの道ただでは済まなそうだ。
「これでも喰らえぇ!」
「ごくっ」
大きく唾を飲み込んだ。
「炎よ!」
真っ赤に燃え上がる、炎の塊が飛んできた。
「へっ?」
何があるにしても、逃げようとしていたし、捕まると思ったから、近づく前に避けようと思った。
しかし、呆気に取られ、まともに当たった。
「あっちぃ!」
頭に火がつき、慌てながら周りをうろうろと、しばらくは走り回った。
「熱い、熱い」
「もう一発、喰らえ!」
一発目より大きい火の塊を用意していた。
「ひっ?」
火を消しながら、大男と目を合わした。
まだ、消しきれていない。しかし、目の前に恐怖が襲う。
その間にも本気で二発目を投げようとしていた。
ザグルは唾を飲み込み、これ以上当たらないようにする為、火を消しながら街の外へと大男から逃げた。
「はっはっはっ、弱い、弱い」
大男の笑いで、見ていた周りの関係無い人達からもクスクスと笑う声が聞こえた。
「なんだ。抵抗しないのか」
ザグルの逃げる姿を見送ると、少しがっかりしながら手の中の炎を消し笑っていた。
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