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METAL GEAR SOLID the ROCK

原作: その他 (原作:メタルギアソリッド) 作者: gekco
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最終話

M9の銃口を向けたまま、スネークは考えをめぐらす。
フライの言っていることは本当だろう。発射ボタンを押せば、ミサイルはサンフランシスコに飛ぶはずだ。ボタンを押すより早くフライを撃つのは危険な賭けだった。
しかし、銃を置けばフライは容赦なくこちらを撃ってくるだろう。おそらく、こちらに見えない背後にもう一丁の銃を隠し持っているに違いない。
そのとき。
「そのミサイルは、撃てないよ。」
やけに落ち着いた声で、ジョニーが告げた。
「素人は黙ってろって言ったんだ!てめぇから先に死にたいのか!」
「僕は素人じゃない。化学兵器のスペシャリストだ。あんた達が戦闘のプロであるようにね。」
そう言うと、ジョニーは無線機のような端末を取り出した。
「ハメルがこれを持っていた。ミサイルの緊急ジャミング装置だ。この装置のスイッチを押すと、ミサイルの誘導装置が誤作動し、発射されずにその場で自爆する。あんたが発射ボタンを押した瞬間、僕らもバラバラになるけど、真っ先に爆風で吹き飛ばされるのはあんただ。」
「ジョニー、本当なのか?」
「ああ。きっとハメルは、いざというときは自分の身を挺してでもミサイル発射を止めるつもりだったんだろう。」
スネークの脳裏に、ハメルの最期が浮かぶ。
「くそ・・・クソがっ!!」
背中の銃に手を伸ばそうとしたフライに向けて、スネークがM9の引き金を引いた。
「お前と一緒にするな。」
そう言うと、スネークはもう一発、フライの体に撃ち込んだ。


ハメルの亡骸まで戻ってから、スネークは通信を入れた。
「こちらスネーク、聞こえるか。任務完了だ。蜂起した海兵隊員は、全滅した。」
「そうか。ありがとう、スネーク。」
「大佐、ハメルから伝言だ。すまなった、と。奴は撃つ気はなかった。俺は、殺さなくてもいい人間を、殺してしまったのか。」
「将軍は間違ってしまったのだ。あのハメル将軍のことだ、死んだ部下たちへの思いは人一倍強いものがあった。だからこそ、死を賭して大芝居を打ったのだ。だが、ハメルの部下たちはハメルではない。戦場を生き抜いた者が皆、ハメルや君のようになるわけではないのだよ。」
「俺はハメルとは違う。」
「スネーク、ハメルは一人だった。でも、君は違うだろう?君には僕が、僕には君がいる。シャドー・モセスという戦場が、僕らを結びつけ、仲間をもたらした。ハメルには部下は大勢いたけれど、仲間はいなかったんだ。」
「スネーク。ハメル将軍の死に意味を与えるのは、残った君達だ。どうか、生き抜いてくれ。」
スネークは大きく息を吐きだした。
「で、どうすればいい?Seal’sの生き残りはジョニーだけだ。一緒にはいられないぞ?」
「アルカトラズ島にフルトン回収装置を投下する。コンバットタロンで君を回収するよ。息の詰まる潜入任務で疲れただろうから、しばらく空の旅を楽しんでくれ。」
「次はもう少しいい席を頼む、オタコン。」

通信を切ると、スネークはジョニーを振返った。
「ジョニー、お前はどうする?」
「僕は、生き残りとしてここに残って、政府の回収班と合流するよ。さっき、ハメルたちの通信装置を使って政府とも連絡がついたんだ。爆撃されることはなさそうだよ。」
「そうか。お前の回収班と出くわすと厄介なことになる。俺はそろそろ行かせてもらう。」
背中を向けたスネークに、ジョニーが話しかけた。
「スネーク。僕は、自分の人生がラボの中だけで完結するものだと思っていた。毎日、コンピューターや化学薬品、実験装置と向き合い、データを残すことだけが、僕の人生だと思っていた。でも、あんたやハメルを見ていて、人とぶつかり合う中で見えてくるものがたくさんあるんだと知ったよ。僕は今からでも・・・違う人生を、歩めるんだろうか。」
「歩めるかどうかじゃない。歩むかどうか、だ。自分の人生、生き方は自分でしか決められない。まして他人が代わりに歩むこともない。自分の生き方を決めたら、納得できるまで歩みを止めないことだ。俺の戦友が言った言葉がある。」
スネークは、グレイ・フォックスの言葉を贈った。
「俺たちは政府や誰かの道具じゃない。戦うことでしか自分を表現できなかったが、いつも自分の意思で戦ってきた。」
「自分の意思・・・。」
「ジョニー、お前の人生は、お前が決めるものだ。遅いも早いも、関係ない。」
「わかった、スネーク。僕も、自分の人生を選び取って、自分の意思で歩いていくよ。そして、ハメルがしようとしたこと、伝えようとしたことを、僕なりの方法で伝え残していく。また、あんたに会えるだろうか?」
「そうだな、会う必要性があれば会うだろう。達者でな、ジョニー。」

投下されたフルトン回収装置を準備していると、オタコンが告げた。
「スネーク、もうすぐ回収ポイントだ。準備はいいかい?」
「ああ。こっちは大丈夫だ。」
「スネーク。今回の件で、君少しだけ成長できたんじゃない?」
「余計なお世話だ、オタコン。」

朝日を浴びるアルカトラズに、コンバットタロンのエンジン音が響いた。
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