剣の少年と愉快な山の住人たち(後編)②
とりあえず、時間は掛かったが、ライトから離れる事が出来た。
もう、それだけでザグルは疲れてしまった。
正直帰りたい。
しかし、口に出すことは出来なかった。
口にしたら、ライトがすぐさま賛成すると目に見えていたからだ。
(まあ、それはそれでいいのか?)
ライトが破門になるだけで、ザグルには直接被害がある訳じゃないのだ。
ザグルはそんな思いをぐっとこらえて、地図を頼りに更に奥へと進んだ。
きっと近づいてはいるのだろうけど、周りは木だらけで、進んでいるかどうかはっきりしていないのだ。
方位を示す磁針を持ってはいたが、方角が完全に狂って使い物にならなかった。
そのうちに少しずつ霧が出てきた。
「ど、どうします?」
ライトが怯えながらザグルに聞く。
「どうするもなにも……」
ライトも動揺しているが、ザグルだって充分あたふたしていた。
「ねえ、帰りましょうよ」
「ここまで来て帰れるかって、つーか、帰ったらあんた破門だぞ!」
「それは嫌だ」
また、泣き出した。
「なんで、こんなにもヘタレてるんだ?」
「しょうがないじゃないですか、僕、ヘタレていますし」
「自分で言うなよ」
ザグルは森に入る以上に、ライトの子守りで疲れていた。
その間にも霧はどんどん濃くなっていった。
徐々にだが視界が悪くなり前が見えなくなるくらいだ。
「アルバーノ、はぐれるなよ」
「離れたく無いから、くっ付いています」
ライトははぐれないようにザグルの腕を掴んだ。
「くっ付かなくっていいから……。ま、まあ、今回はその方が都合いいか」
霧もだが、地図の通りに進んでいないらしく、迷ってしまったようだ。
「この霧じゃ、どんなに進んでも迷うな」
「やっぱり、帰りましょうよ」
「アルバーノあんたな。帰るにしてもこの霧だ。どっちにしても迷うんだから、意味無いだろう」
「う、ううん」
しょうがなく、霧が晴れるのを待つ事にし、視界が完全に悪くなる前に、テントを張った。
ザグルはライトのリュックから、カンテラを取り出した。
「アルバーノ、火を付けること出来るか?」
一人の時は時間を掛けて、火を点けるが、誰かがいる時は必ず頼んでいた。
魔法が使えないと、少しの火を点けるのも大変なのだ。
「それくらいの魔法なら」
ライトが軽々と火を点けた。
「本当に、魔法が使えないのですね」
「余計なお世話だ」
ザグルは足下にあった数個の小石をライトの頭に投げた。
「痛い、酷いです」
「酷いなら言うな」
「は~い」
(全く、疲れる)
ライトは大きくため息をついた。
テントは五分もあれば簡単に作る事が出来る為、作り終わると中で、しばらくは疲れを癒していた。
ザグルは大きな剣を下ろし、壁に立てかけている。
ライトは冷たいお茶を飲んだ。
「まあ、この状態じゃなにも出来ないし、ご飯でも食べるか」
「本当ですか?」
ライトの声が大きくなる。
「う、うん」
ザグルは逆に引いてしまった。
ライトは嬉しくなったのか、リュックからお弁当を二つ取り出した。
「あんた、そんなに楽しみにしていたのか?」
「当たり前です。ミーファが作ったのですから」
「へー。自分が作った時とか、他の人が作った時とは違うのか?」
色恋と言うものをあまり考えた事がなく、超がつく鈍感だった為、ライトの気持ちに、気付かなかった。
昨日の内に、ハンクがこっそりザグルに渋々だが教えており、概要は理解しているはずだった。
ザグルは好意があることは分かったがそれしか分からなかった。
ただ、リフィルのように真っ直ぐ、気持ちをぶつけるだけじゃないのだけは分かった。
こっちの方がまだ大人しくて可愛い物だと、ザグルは感じた。
「違いますよ。僕はもちろん、料理が好きですけど、彼女は特別なのです」
「ふうん」
「ザグルさんにはないのですか? 好きな物を目の前にする瞬間を」
とは言ったが、殆どない。
「そりゃ、あるけど、だけど、これに関しては、ただの弁当には変わりないじゃない?」
「……ザグルさんって、子供なのですね」
「あんたには言われたくないわ!」
ザグルは機嫌を悪くしていた。
「まあまあ、食べましょう。いただきます」
ライトは手を合わせた後、蓋を開け、箸を割り、ご飯を口に入れた。
白いご飯にサラダ、鳥を揚げた物、煮物が入っていた。
「うん。美味しい」
あまりに美味しく食べているのを見て、ザグルも蓋を開けた。
「なんか、気に食わない」
ザグルの捻くれが始まった。
「嫌なら、食べなくっていいですよ。僕が代わりに全部食べますから」
「食べます!」
ザグルも食べ始めた。
「どうですか?」
ライトが目を輝かせて聞く。
ライトの料理と同様に味は良かった。
「まあまあ、じゃないの?」
しかし、感想は逆を言った。
「ザグルさん。そこは僕が作った訳じゃないんだし、捻くれないで下さい」
ライトが呆れて言った。
もう、それだけでザグルは疲れてしまった。
正直帰りたい。
しかし、口に出すことは出来なかった。
口にしたら、ライトがすぐさま賛成すると目に見えていたからだ。
(まあ、それはそれでいいのか?)
ライトが破門になるだけで、ザグルには直接被害がある訳じゃないのだ。
ザグルはそんな思いをぐっとこらえて、地図を頼りに更に奥へと進んだ。
きっと近づいてはいるのだろうけど、周りは木だらけで、進んでいるかどうかはっきりしていないのだ。
方位を示す磁針を持ってはいたが、方角が完全に狂って使い物にならなかった。
そのうちに少しずつ霧が出てきた。
「ど、どうします?」
ライトが怯えながらザグルに聞く。
「どうするもなにも……」
ライトも動揺しているが、ザグルだって充分あたふたしていた。
「ねえ、帰りましょうよ」
「ここまで来て帰れるかって、つーか、帰ったらあんた破門だぞ!」
「それは嫌だ」
また、泣き出した。
「なんで、こんなにもヘタレてるんだ?」
「しょうがないじゃないですか、僕、ヘタレていますし」
「自分で言うなよ」
ザグルは森に入る以上に、ライトの子守りで疲れていた。
その間にも霧はどんどん濃くなっていった。
徐々にだが視界が悪くなり前が見えなくなるくらいだ。
「アルバーノ、はぐれるなよ」
「離れたく無いから、くっ付いています」
ライトははぐれないようにザグルの腕を掴んだ。
「くっ付かなくっていいから……。ま、まあ、今回はその方が都合いいか」
霧もだが、地図の通りに進んでいないらしく、迷ってしまったようだ。
「この霧じゃ、どんなに進んでも迷うな」
「やっぱり、帰りましょうよ」
「アルバーノあんたな。帰るにしてもこの霧だ。どっちにしても迷うんだから、意味無いだろう」
「う、ううん」
しょうがなく、霧が晴れるのを待つ事にし、視界が完全に悪くなる前に、テントを張った。
ザグルはライトのリュックから、カンテラを取り出した。
「アルバーノ、火を付けること出来るか?」
一人の時は時間を掛けて、火を点けるが、誰かがいる時は必ず頼んでいた。
魔法が使えないと、少しの火を点けるのも大変なのだ。
「それくらいの魔法なら」
ライトが軽々と火を点けた。
「本当に、魔法が使えないのですね」
「余計なお世話だ」
ザグルは足下にあった数個の小石をライトの頭に投げた。
「痛い、酷いです」
「酷いなら言うな」
「は~い」
(全く、疲れる)
ライトは大きくため息をついた。
テントは五分もあれば簡単に作る事が出来る為、作り終わると中で、しばらくは疲れを癒していた。
ザグルは大きな剣を下ろし、壁に立てかけている。
ライトは冷たいお茶を飲んだ。
「まあ、この状態じゃなにも出来ないし、ご飯でも食べるか」
「本当ですか?」
ライトの声が大きくなる。
「う、うん」
ザグルは逆に引いてしまった。
ライトは嬉しくなったのか、リュックからお弁当を二つ取り出した。
「あんた、そんなに楽しみにしていたのか?」
「当たり前です。ミーファが作ったのですから」
「へー。自分が作った時とか、他の人が作った時とは違うのか?」
色恋と言うものをあまり考えた事がなく、超がつく鈍感だった為、ライトの気持ちに、気付かなかった。
昨日の内に、ハンクがこっそりザグルに渋々だが教えており、概要は理解しているはずだった。
ザグルは好意があることは分かったがそれしか分からなかった。
ただ、リフィルのように真っ直ぐ、気持ちをぶつけるだけじゃないのだけは分かった。
こっちの方がまだ大人しくて可愛い物だと、ザグルは感じた。
「違いますよ。僕はもちろん、料理が好きですけど、彼女は特別なのです」
「ふうん」
「ザグルさんにはないのですか? 好きな物を目の前にする瞬間を」
とは言ったが、殆どない。
「そりゃ、あるけど、だけど、これに関しては、ただの弁当には変わりないじゃない?」
「……ザグルさんって、子供なのですね」
「あんたには言われたくないわ!」
ザグルは機嫌を悪くしていた。
「まあまあ、食べましょう。いただきます」
ライトは手を合わせた後、蓋を開け、箸を割り、ご飯を口に入れた。
白いご飯にサラダ、鳥を揚げた物、煮物が入っていた。
「うん。美味しい」
あまりに美味しく食べているのを見て、ザグルも蓋を開けた。
「なんか、気に食わない」
ザグルの捻くれが始まった。
「嫌なら、食べなくっていいですよ。僕が代わりに全部食べますから」
「食べます!」
ザグルも食べ始めた。
「どうですか?」
ライトが目を輝かせて聞く。
ライトの料理と同様に味は良かった。
「まあまあ、じゃないの?」
しかし、感想は逆を言った。
「ザグルさん。そこは僕が作った訳じゃないんだし、捻くれないで下さい」
ライトが呆れて言った。
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