5話
試合開始から2時間。手加減されている塔矢アキラ七段は、必死にヒカルに喰らいついているものの、既に緒方九段・倉田七段の顔色は青くなっていた。
「(無理無理無理!既に大石詰ませちまった!このままだと最低でも60目は離れちまう!)」
「(くっ・・・全く付け入る隙がない。勝てる気がしない・・・)」
既に勝負を投げたくて仕方のない2人だが、今回の対局のルール上、最後まで打って何目差ついたか確かめる必要があるため、投了は禁止されている。
碁自体は既に終わっているに近いが、まだまだ中盤戦なので、地獄の時間はあと数時間続くのである。
「今の状況は、引き続きヒカル君の優勢ということですか?」
囲碁はからっきしでも、人の顔を見る目は人一倍鋭い大物司会者は、プロ棋士達の顔色から答えを予想しつつも、場を持たせるために、別室で大判解説をしている行洋に中継を入れ尋ねる。
「ええ。私の息子である塔矢七段は手加減してもらっているから、勝負自体は拮抗していますが、緒方九段・倉田七段は既に負けが決まっている状態です。あとは何十目差になるかの勝負ですな。」
弟子に対して容赦のない塔矢行洋。アキラを通じて知り合った藤崎あかりに期待をかけていた行洋は、今回の件、口こそ出していないものの、緒方九段の暴言に怒りを感じている棋士の一人だったりする。
そして美人で人柄の良いあかりのファンは、実は棋界にも一定数存在することを、あかりとヒカルは知らない。
「そういえばヒカル君、さっき楽屋で「塔矢七段には気を使うけど、残りの2人は容赦しない!」って・・・」
「アキラは今回の件には絡んでいませんからな。口は災いの元とは、まさにこの事です。とはいえ惜しい・・・彼程の強者が囲碁の道を選ばないとは・・・私でも勝つのは厳しいだろうが・・・彼とタイトル戦で戦ってみたかった。藤崎君は、よく彼と戦っているんだよね?」
「あっ、ハイ!ヒカル優しいから、時間がある時は打ってくれるんです。メールで一手ずつ手を送って打ち合ったり、オンライン対局したりしてます。偶に休みが重なった時はヒカルの家で、盤を挟んで指導碁してもらいます。盤を挟んだときのヒカルの空気感・・・今みたいなピリピリした空気感は、プロとの対局でも滅多に感じられるものじゃないので、精神面でも鍛えられますよ。」
「そうか。それはこの上なく恵まれた環境だ。大切にしなさい。」
「はいっ!」
嬉しそうに返事をしたあかりの顔がテレビ画面にアップで映し出される。新たに彼女のファン(ロリ・・・)が数十人増えることとなったw
「黒154目、白52目。・・・込み6目を入れて、黒の96目勝ちになります。」
開始5時間。1人持ち時間を使い果たし、ハゲそうな程必死に考え抗おうとした上で、精魂尽き果てた緒方が放送禁止レベルの顔面を晒している中、無情にも結果がアナウンスされる。
「佐為えげつねぇ〜。緒方さんの見せ場ゼロじゃんw良いところが1つもねぇ。」
「そういうヒカルこそ。あの倉田という者は、まだ帰ってこないのですかねぇ?」
既に30分程前に惨敗(101目負け)した倉田は、青い顔をしたままトイレにダッシュし、まだ帰還していない。
「黒75目、白68目。込み6目を入れて、黒の1目勝ちになります。」
塔矢アキラも終局した。あからさまな指導碁状態だったとはいえ、特に大きな失敗もなく、健闘したと言えるだろう。
「手加減して貰って言うセリフじゃないだろうが・・・楽しかった。また君と打ちたい。」
「俺はプライペートではあかりとしか打たねぇよ。・・・特番とかで打つ機会があったら、また対局する可能性も無くはないけど。」
おそらく無いであろう可能性をヒカルが告げる。棋院との関係が最悪な以上、囲碁関係の特番には呼ばれないだろうし、おっさん勢2人の様な惨敗ばかり晒していたのでは、プロの存在意義が疑問視されてしまうので、対局は今後一切組まれないと、ヒカルは予想している。
「・・・そうか。君はプロ棋士には・・・なる必要ないな。」
「分かってくれて何より。」
流石のアキラも、おっさん2人の惨敗を見て、ヒカルにプロになれ!とは言えなかった。
「ところで、僕への罰ゲームは何にするんだ?」
「う〜ん・・・デコピン1発?嫌な(分かった!1発でも2発でも歓迎だ!)・・・じゃあそれで。」
自分への対応から、罰ゲームはそれ程酷いものにならないとは予想していたものの、「1目差につき、何でも1つ好きに命令できる。」というルールなので、少しドキドキしていたアキラは、即座に返事を返した。
どう見てもシャレにならない未来しか待っていないであろうオッサンズと比べれば、デコピン1発など安いものである。巻き込まれたらたまったもんじゃない!と言わんばかりのアキラの対応に、ヒカルと佐為は苦笑いになった。
*囲碁素人なので、目数がおかしかったらごめんなさいm(-_-)m
*あくまでもフィクションであり、実際のプロ棋士やヒカルの碁のプロ棋士の中には、ここまで無様な展開になる方は存在しません(ヒカルの碁のプロ棋戦なら30目差くらいまでかと)。あくまでもギャグとしてお楽しみ下さいm(_ _)m
「(無理無理無理!既に大石詰ませちまった!このままだと最低でも60目は離れちまう!)」
「(くっ・・・全く付け入る隙がない。勝てる気がしない・・・)」
既に勝負を投げたくて仕方のない2人だが、今回の対局のルール上、最後まで打って何目差ついたか確かめる必要があるため、投了は禁止されている。
碁自体は既に終わっているに近いが、まだまだ中盤戦なので、地獄の時間はあと数時間続くのである。
「今の状況は、引き続きヒカル君の優勢ということですか?」
囲碁はからっきしでも、人の顔を見る目は人一倍鋭い大物司会者は、プロ棋士達の顔色から答えを予想しつつも、場を持たせるために、別室で大判解説をしている行洋に中継を入れ尋ねる。
「ええ。私の息子である塔矢七段は手加減してもらっているから、勝負自体は拮抗していますが、緒方九段・倉田七段は既に負けが決まっている状態です。あとは何十目差になるかの勝負ですな。」
弟子に対して容赦のない塔矢行洋。アキラを通じて知り合った藤崎あかりに期待をかけていた行洋は、今回の件、口こそ出していないものの、緒方九段の暴言に怒りを感じている棋士の一人だったりする。
そして美人で人柄の良いあかりのファンは、実は棋界にも一定数存在することを、あかりとヒカルは知らない。
「そういえばヒカル君、さっき楽屋で「塔矢七段には気を使うけど、残りの2人は容赦しない!」って・・・」
「アキラは今回の件には絡んでいませんからな。口は災いの元とは、まさにこの事です。とはいえ惜しい・・・彼程の強者が囲碁の道を選ばないとは・・・私でも勝つのは厳しいだろうが・・・彼とタイトル戦で戦ってみたかった。藤崎君は、よく彼と戦っているんだよね?」
「あっ、ハイ!ヒカル優しいから、時間がある時は打ってくれるんです。メールで一手ずつ手を送って打ち合ったり、オンライン対局したりしてます。偶に休みが重なった時はヒカルの家で、盤を挟んで指導碁してもらいます。盤を挟んだときのヒカルの空気感・・・今みたいなピリピリした空気感は、プロとの対局でも滅多に感じられるものじゃないので、精神面でも鍛えられますよ。」
「そうか。それはこの上なく恵まれた環境だ。大切にしなさい。」
「はいっ!」
嬉しそうに返事をしたあかりの顔がテレビ画面にアップで映し出される。新たに彼女のファン(ロリ・・・)が数十人増えることとなったw
「黒154目、白52目。・・・込み6目を入れて、黒の96目勝ちになります。」
開始5時間。1人持ち時間を使い果たし、ハゲそうな程必死に考え抗おうとした上で、精魂尽き果てた緒方が放送禁止レベルの顔面を晒している中、無情にも結果がアナウンスされる。
「佐為えげつねぇ〜。緒方さんの見せ場ゼロじゃんw良いところが1つもねぇ。」
「そういうヒカルこそ。あの倉田という者は、まだ帰ってこないのですかねぇ?」
既に30分程前に惨敗(101目負け)した倉田は、青い顔をしたままトイレにダッシュし、まだ帰還していない。
「黒75目、白68目。込み6目を入れて、黒の1目勝ちになります。」
塔矢アキラも終局した。あからさまな指導碁状態だったとはいえ、特に大きな失敗もなく、健闘したと言えるだろう。
「手加減して貰って言うセリフじゃないだろうが・・・楽しかった。また君と打ちたい。」
「俺はプライペートではあかりとしか打たねぇよ。・・・特番とかで打つ機会があったら、また対局する可能性も無くはないけど。」
おそらく無いであろう可能性をヒカルが告げる。棋院との関係が最悪な以上、囲碁関係の特番には呼ばれないだろうし、おっさん勢2人の様な惨敗ばかり晒していたのでは、プロの存在意義が疑問視されてしまうので、対局は今後一切組まれないと、ヒカルは予想している。
「・・・そうか。君はプロ棋士には・・・なる必要ないな。」
「分かってくれて何より。」
流石のアキラも、おっさん2人の惨敗を見て、ヒカルにプロになれ!とは言えなかった。
「ところで、僕への罰ゲームは何にするんだ?」
「う〜ん・・・デコピン1発?嫌な(分かった!1発でも2発でも歓迎だ!)・・・じゃあそれで。」
自分への対応から、罰ゲームはそれ程酷いものにならないとは予想していたものの、「1目差につき、何でも1つ好きに命令できる。」というルールなので、少しドキドキしていたアキラは、即座に返事を返した。
どう見てもシャレにならない未来しか待っていないであろうオッサンズと比べれば、デコピン1発など安いものである。巻き込まれたらたまったもんじゃない!と言わんばかりのアキラの対応に、ヒカルと佐為は苦笑いになった。
*囲碁素人なので、目数がおかしかったらごめんなさいm(-_-)m
*あくまでもフィクションであり、実際のプロ棋士やヒカルの碁のプロ棋士の中には、ここまで無様な展開になる方は存在しません(ヒカルの碁のプロ棋戦なら30目差くらいまでかと)。あくまでもギャグとしてお楽しみ下さいm(_ _)m
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