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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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仮面の下

 須郷が朱の前に立ち、壁となる。
 狡噛は無防備な唐之杜の近くに寄り、壁となった。
 出遅れたが、雛河、六合塚もドミネーターを構え、霜月監視官を守るように立つ。
「どういうこと?」
 上擦った声で唐之杜がいう。
「見たまんまだろ」と狡噛。
「おもしろくなってきましたね」とチェ・グソン。
「しっかり記憶しておいてくれよ」と槙島。
「絶対ありえない、そう思いたいと言っていた仮説があたってしまいましたね」と須郷。
「そうね。だけど、なぜ? 疑問は山積みのままでなにひとつ解決していないわ」
「そうでした」
 朱たちは、宜野座から縢が不可解な行動をしている節があると聞いた時、追加でもうひとつの仮説をたてていた。
 その仮説が当たっていないことを願っていたのだが……
「なになに、この展開って想定内だったの? なんだ、性格悪いよ、キミたち」
「それはどうも……」と狡噛。
「だが、お互い様だろう? 先に騙したのはそっちだ。で、暴露でもしてくれる気になったか?」
「あれあれ? なんだ、想定内だけど確証があるわけじゃないんだね。てことは引き分けかな?」
「どうかな。試しに、話してみたらどうだ?」
「うわっ、コウちゃん、性格悪くなったんじゃない?」
「……俺をコウちゃんと呼ぶな。おまえは俺の知っている縢じゃない」
「いんや、違うね。俺は正真正銘、縢秀星だよ。あっちの世界のな。こっちに行くってことになって、こっちの世界のこと、人間関係、ざっくりと調べさせてもらった。といっても、親切に教えてくれたおばさんがいたんだよね。そのおばさんて誰だと思う? もう聞いたらビックリだと思うよ」
「ごたくはいいわ」と朱。
「だいたいの想像はついているから」
「へえ、そう。常守朱は要注意だって言ってたけど、本当だね。じゃあさ、俺には手出しできないってのも理解できているよね?」
「どうかしら? それはあなたの告白次第だと思うけど」
「え? どういうこと? おばさんに聞いてないの?」
「そうよ。あなた、あなたのいうおばさんを信じているようだけど、一番信用のできない存在だと思うわ。そこに信念がないから。人は利害の一致だけでは信用まで築けないのよ」
「ふ~ん。あ、そう。ま、いいか。俺はこの世界の人間じゃない。だからこの世界では裁かないってのが、あんたの考えだったよな。それは信じても?」
「そうね。だけど、捜査協力をしてくれた征陸刑事への協力は惜しまないわ」
「ああ、そう。じゃあ、交渉はそっちのおっさん刑事ってわけね。……ん? あれ? ああ、そうか。ずっとどこかであったことなかったかと思ったら、弟をうっかり殺しちゃった時の担当刑事さんか。いや、老けたね。あ、そっか。あれから三十年くらいか。そりゃ、老けるか。若返っちゃうと、いろいろ感覚が人とズレて面倒なこともあるよね……」
「ペラペラとよく喋るな」と征陸。
「俺の記憶じゃ、おまえがあの時の兄だっていうなら、名前は秀星じゃなかったはずだが?」
「あたりまえじゃん。三十年間、姿が変わらなかったら人間じゃないでしょ。それに、うちらの世界って、たしか成人していれば名前を変えられることになってたよね? それをしたんだ。若返る時にね」
「若返るって、若返りすぎだぞ!」
「ああ、それね。俺も最初はそう思ったよ。せめて二十歳くらいにしてほしいってね。だけど、そう何回も移植はできないっていうからさ。まあ、話すだけでいいなら聞かせてあげるよ。どうせ証拠はない。というか、手に出来はしないんだからさ」
 縢秀星はそういって、聞かれたことには答えると協力的な姿勢をみせはじめた。
「だけど、その前に。ひと通り俺に話させてよ。質問はそのあとにして」
「構わないわ。むしろ、その方が効率はよさそう」
「うわっ、朱ちゃんは話が通じやすくていいね」
「ごますりはいいから、話して」
「へいへい……じゃあ、ことの発端から。あいつらが俺の存在をないものとした。きっかけは覚えていないが、この子を世間に出してはダメだとかなんとかいって、俺は閉じこめられた。その後、弟ができ、弟とはどういうものかと興味があってね。あいつらが留守だってわかったから、部屋をでた。そしたら、ちっこい肉の塊があってさ。プニプニして切り心地がいいんじゃないかって思ったら欲を押さえきれなくなって。で、やっちゃった。その後は刑事さんがよく知っている流れだよ」
「警察は殺しの事件として処理はしていない。どうやって誤魔化した? 内通者や協力者に改竄などをさせたのは容易に想像はできるが、ほかの捜査員の目も誤魔化さないといけなかったはずだ」
「その頃、こぞって電化製品、ロボット開発を盛んにしていた時期だったじゃん。精巧に造られたロボットだよ」
「……やはり。そして解決後、関係捜査員の記憶操作までしたな?」
「へえ、そんなことまでしてたんだ。悪いけど、世間と隔離されてたんで、そういう細かいのは知らないな。けど、その頃からだよ、東金とつねみだしたのは」
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