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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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再会人の捜索

「あんたが捜しているのは、槙島聖護か? それとも……」
「さすがですね。すでに知っているというわけですか」
「この界隈で槙島聖護は名が知れている。それで、そっちの連れも同じなのか?」
「ええ、私の大事なお客です」
「そうかい。じゃ、一応、そういうことにしておくか」
「謝礼は相場の倍、いえ、三倍支払います。可能な限り早く、そして他言はしないように」
「わかっている」
「それともうひとつ。こちらは相場の十倍、出しましょう。今すぐ、解析してほしい画像があります」
 と、防犯カメラの映像を見せた。
「このふたりの瞳に映っているものが知りたいです。人物なら素性、場所なら正確な場所を」
「あんたは金払いがいい上客だからね。わかった、いますぐやろう」
 薄暗い空間にパソコンが一台、その前に人物がいるのは確かだが、その人物が周りの色彩と同じ衣服を身につけ一体化しているため、顔はわからない。
 声だけでいえば、若い部類にはいるかもしれない。
「チェ・グソン」
「はい」
「悪いが、槙島聖護の行方は追いきれなかった」
「どういうことです?」
「痕跡を残さず、ある場所で消えている」
「ふむ、消えている、ですか。つまり、何かに詰められて運ばれたとも考えられますね」
「そうだな。瞳に映っている人物がわかったぞ。これは……ほう、なかなかおもしろい組み合わせだ」
「もったいぶらずに教えてくれませんかね」
「かなりの有名人だぞ。東金美沙子だ」
 名を聞き、朱は思わず声を出しそうになり両手で自身の口を塞ぐ。
 征陸も声を出しそうになり、飲み込んだ。
 だが、チェ・グソンは思ったことがそのまま声色にでていた。
「東金美沙子ですか……これはまたかなりの大物が。となれば、槙島さんは東金財団にいる可能性がありますね」
「十中八九そうじゃないか? 気前よく弾んでくれた例に、財団に入るために必要なカードの偽造と見取り図をつけてやるよ」
「それはまたずいぶんとサービスがいいですね」
「うちらは東金の主旨が嫌いでね」
「ああ、わかります。それではお言葉に甘えて」

 彼らがここにいたのは時間にして十分程度だった。
 扉の外にでると、背後で扉に鍵がかかる音がした。

※※※

 停めた車の場所まで戻ると、すぐに車内に乗り込む。
 大通りまででると、脇に寄せて車を停め、もらった見取り図を開く。
「おい、チェ・グソン。確認もしないで鵜呑みして大丈夫なのか?」
「信頼関係はあると信じていますし、彼の仕事はいつも完璧です。それに槙島さんを崇拝しているところがありますので、彼の危機であるなら偽りは言いません。それに、なんとなくですが、納得してしまっているんですよね。あの場に東金美沙子がいたってことに」
 チェ・グソンとしては、いくつか想定していた中のひとつのようで、今は平常心に戻っていた。
 しかし、想定外続きの征陸や朱は受け入れられていない。
「警察でさえ押さえていないことだぞ」
「警察は事件にならないと動かない集団組織ですからね、当然なんではないですか? 東金美沙子が槙島さんに近づいたのはクローンのことでしょう。槙島さんの持つなにか、もしくは槙島さんそのものが目的……なのでしょうかね」
 語尾を濁らせたことから、彼も想定内であるが東金美沙子の真の目的まではたどり着いていないようだった。
「ねえ、こちらの東金美沙子はどういう人物なんですか?」
「ああ、嬢ちゃんにとって東金美沙子がどういう位置にいるのかはわからないが……」
 と征陸が切り出す。
 あちらの世界での東金美沙子の立場と存在、つまりすでに亡くなっていることを征陸は知っている。
 朱と直接の関係もないことも。
 しかし、朱は他言できない秘密を持っている。
 以前、東金美沙子はシビュラの一部であったことを。
 東金朔夜が亡くなった以降、彼女がどうなっているかはわからない。
 ただ、禾生局長と対話している際も、美沙子を感じることはなかった。
 自我を放棄したか、システムから外されたか……
 どちらにしろ、朱にとってはどうでもいいことでもあった。
 だからといって知らないでいいとは思わない。
 こちらの世界で捜査をするのだから、こちらの世界の一般市民程度の情報は得ていたい。
「簡単に言ってしまえば、東金財団のトップだな。政界に顔が広くて、開発事業への多額の出資をしている。いくつも子会社したりしてな、その手腕はすごいんだが、やり方が強引すぎて反発されることもある。最近はあまり表だった活動はしていなくて、内々に世代交代をしたんじゃないかって噂があるくらいだ」
「野心家、という感じでしょうか」
「そうそう、そんな感じだ。俺が話せるのはこれくらいだな。槙島との関係はチェ・グソンの方が知っているだろう」
「実は私もそれほどでもないんですよ。こちらの組織設立に力添えをしてみらったという話くらいです」
「嘘をいうな。さっきクローンがどうのと言っていただろう」
「ああ。今ではうちもかなりの組織になりましたし、お金もそれなりに。さらに独自の開発でいろいろ発明もしていますし。クローンへの賛同を強要されていたんですよ」
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