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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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新たな来訪者

 その者は姿に似合わない声で話す。
 見た目は女性、しかし声は男。
 狡噛はその声に聞き覚えがあるらしい。
「チェ・グソンか」
「ご名答」
 チェ・グソンと呼ばれた男は覆っていたホロを外し、本来の姿をみせた。
 安堵する狡噛、しかし、一縢の面々、とくに宜野座と六合塚は目を見開き敵意を向けた。
「おやおや、そちらの執行官にはどうやら嫌われているらしいですね」
「当たり前だ。おまえはこちらの世界でなにをしたか……」
「ああ、犯罪者ってことですね。ですが、同一であって別人ですよ。なんでしたら、そのドミネーターで確認してみます? ここに来てから、色相は偽ってません。まあ、入れ替わった女性のデータは使わせていただきましたが」
 宜野座は遠慮なくドミネーターを向ける。
 ところが彼の言うとおり、とてもきれいなものだった。
 だが、どうしても向けたドミネーターを下げられないでいると、狡噛が
「もういいだろう、ギノ。このチェ・グソンは俺たちの敵じゃない」
「いいですよ、信じてもらえなくても。目的は狡噛さんの手伝いですから。そのついでに、そちらの問題解決にも尽力しますよ。縢秀星くんの保護も依頼されていますし」
「つまり、それも合わせ、協力してくれるというのか。その、東金財団のことも」
「ああ、東金財団ね。あれ、本当に厄介ですよね。よりにもよってこの世界の監視官を拉致るなんて、尋常ではありませんが、あの東金朔夜なら致し方ないといいますか。優先順位は常守監視官の救助ですか?」
 できるならそれを優先したい。
 それでいいといっていいのか、宜野座は即答できない。
 決断を求め霜月監視官をみた。
 東金財団への連絡入れを終わった彼女は、ただひたすら存在を消し、同じ場所にいた。
 だが刑事歴もある宜野座にはわずかな気配ですら知れてしまうことを、彼女はわかっていなかった。
「え? ちょっ、わ、私? そんな、あとで責任問題になったりするのはイヤよ。だってこれは先輩が勝手にやっていたことで、やらなきゃいけないことはまだあって」
「だから常守救出が大事なんじゃないか?」
「だけど……」
「誰も霜月監視官のせいだなんて言わない」
「わ、私は知らない。聞いてない」
「だそうだ。でいいな?」
 宜野座が場にいた執行官たちに言う。
 それで口裏をあわせろと言っているのだ。
「チェ・グソン、常守監視官の救出が最大優先だ」
 宜野座がチェ・グソンに告げると、彼は淡々と「わかりました」とだけ言う。
 それから狡噛の方をみる。
「狡噛さん、あなたの持っている情報を開示しましょう」
「そうだな。それを知ってもらって動いてもらった方が、二次被害の回避になるだろう」
「それはなんだ、狡噛」
「焦るな、ギノ。たぶん、おまえたちが一番聞き入れ難いことだ。東金財団と公安は繋がっている。確証はないが、そうであるなら納得できる。点が線で繋がっていくんだ。ちなみに、俺たちのいる世界での東金は政界などに息がかかり、さらに警察との癒着もあるという噂がある。とっつあんは否定したいだろうが」
「いや、コウ。その噂はある。たぶんだが、東金がクローン人間の製造に成功し、それが普通に生活しているのも知りながら黙認しているのだろう。ただ、敵対しているというだけで縢家のぼっちゃんに手を出す理由だけがわからない」
「それは、チェ・グソンの方で掴んだんじゃないか? それか、あの人か確実に掴んだか……」
「ああ、あの方ね。勘の鋭い方ですからね。言わないだけで確証は得ているのではないでしょうか」
「聞かされていないのか?」
「ええ。といいますか、今回の任務はあなたの補助ですので。ええっと、縢家のことにも首を突っ込まれるおつもりで?」
「そのつもりはない。が、あちらがチョッカイをだしてくるなら叩くだけだ」
「まあ、妥当な判断ですね。では、どなたにお話をすればよいのでしょう? こちらで狡噛さんが単独で動けない理由は存じてます」
「では俺に。だが、俺も監視官なしでは動けない。同行だけでいい、頼めるだろうか、霜月監視官」
 いやよ……という顔をする霜月。
 しかし六合塚の視線に気づき、渋々頷く。
「では、宜野座執行官を筆頭に動くということですね。わかりました。まず、連れ去られた常守監視官は東金財団の方にはいません。実は、今の財団、ああ、こちらの世界のという前置きをしておきましょうか。今の財団は東金朔夜の件は事実から抹消したいほどの汚点のようですよ。なので、別の世界の朔夜と出会ってもなにもしないでしょう。もしかしたら、公安に通報するかもしれません。では、監視官はどこにいるのか。おそらく、私たちのいた世界だと思います。あたらの財団は朔夜の犯罪体質を欲しがっており、クローンでもいいからほしいと願っています。しかし、別世界の人を連れて戻るのは違反行為。違反をしてでも連れ帰りたい理由があるということです。そこまでは掴めませんでした。しかし、あの方ならご存じかもしれません。そこで、一係ごと一度あちらの世界に来ていただき、あの方にあって真意を伺ってください」
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