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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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始動

 外見を誤魔化すホロができない限り、三人の外出は許可できない。
 彼らもそれは理解しているため、おもいのほかあっさり聞き入れてくれた。
 外に出れず、また行動範囲が限られてしまうため、その間の調査はほとんどできなかった。
 代わりに、縢くんは同じ世界から来たふたりと面会し、話が通じることから早々と打ち解けあうことができた。
 はたからみれば、征陸が父親、狡噛が歳の離れた兄といったところだろう。
 この関係が演技ではなく素で続いてくれればいいのだがと、思う宜野座だった。
「ギノ!」
 馴れ馴れしく狡噛に呼ばれ、宜野座は不愉快だという顔をしながらも呼びかけに応じる。
「なんだ」
「そう露骨に面倒だという顔をするな。協力関係にあるんだろう、俺たちは」
「……そうだったな。で、なんだ? まさかそれをいうためだけに呼んだの?」
「そんなわけないだろう。例のホロってやつはいつできる? 時間が限られているんだろう? そうでなくても、俺たちはできるだけ早く元の世界に戻りたい」
「担当者が不眠不休で作成している。もう少し待て」
「担当って、不眠不休でやっても終わらないくらい難しいのか?」
「どうだろうな。専門職経験者に頼んでいる。やるからには徹底的にやってくれるんじゃないか。簡単にバレたら元も子もないだろう。あと一日くらい待てないのか」
 などど話をしている頃、雛河が仕上がったという連絡を朱にしていた。

 朱からは雛河が作ったホロの仕上がり具合は信用しているから、それをそのまま分析室に持って行くようにと指示をされ、訪ねた。
「いらっしゃい、朱ちゃんからは連絡を受けているわ。いくつかパターンを作ったんだってね、お疲れさま」
「うん、これで役立つなら」
「じゃあ、そのデータをこのブレスレット型通信機に入れるわね。終わったら、例の三人がいる部屋に持って行ってちょうだい」
「え? ぼ、僕が?」
「大丈夫よ。誰かしら監視でいるんだし。ホロの説明もしなきゃいけないんでしょう?」
「あ、うん。そうだね、わかった……です」

※※※

「雛河? どうした?」
 背後に気配を感じ振り返ると、そこに雛河が立っていた。
 もっと堂々としていればいいのに、おどおどとした雰囲気を漂わせている。
 それでもやるときはやるし、意外と度胸もあることを宜野座はちゃんと見ている。
 だから、ひとこと、こちらが訪ねれば……
「あ、はい。ホロかできたので」
「そうか。頑張ったな」
「あ、いえ。それで、このブレスレットに入れてあります」
「だそうだ……」
 といいながら、宜野座が狡噛たちをみる。
 やっとか……という感じで立ち上がった狡噛が先頭でこちらにやってきて、雛河が持っていたものをみた。
「なんだ、それは」
「ブレスレット型の通信機だ。それひとつで通話、ホロ装着ができるようにしてある。俺たちが使っているやつの簡易版だな」
「へえ……で、どうすればいい?」
 説明をしてやれと宜野座は雛河にその役目を託す。
 雛河はビクビクしながらも丁寧に教え始めた。
 さっそくホロ装着を試みた狡噛だが、その姿を見て絶句。
 絶句からの「どういうことだ」という怒号が響いた。
「なんで女のホロなんだ?」
「えっと、その、そういう依頼で……」
「んなわけがあるか! おい、ギノ、ちゃんと説明をしろ」
「説明と言われてもな。監視官の許可なく自己判断でいえるものでもない」
「はあ? おちょくってんのか?」
「刑事課にそんな暇はない」
 と応戦するふたりの間に「まあまあ」といいながら征陸が割り込む。
「まあ落ち着けコウ。縢のぼっちゃんのホロも女の子だ。何か思惑があるんじゃないか。たとえば、家族を装ってほしいとかな」
「だったら……」
「まてまて、俺に女役をやれってか? それは無理だろ。一瞬ならいいが、すぐにボロがでる」
「それは俺も同じだ」
「いや意外と合うんじゃないか、コウの場合は」
「どういう判断だ? とにかくギノ、監視官を呼べ。説明しろ」
「……ったく、おまえごときが監視官を呼びつけるなんてな……」
 といいながらも、これ以上こちらではどうにもできないと判断し、朱に連絡を入れると、今向かっていると言われる。
「だそうだ」
 会話は場にいた者たちに筒抜けだった。
「じゃあ、僕はこれで」
「待った、雛河。常守に直接説明もしなきゃいけないんじゃないか? パターン化は依頼になかっただろう?」
「うん、僕の判断」
「だったら、報告義務がある」
「う、うん、わかった」
 なんとなく宜野座にいいように言われ残された感はあるが、自分の作ったホロを気に入っているような素振りをみせる縢の様子が視界に入ると、ほっこりする雛河だった。
 征陸はまんざらでもないようだが、狡噛だけは納得できないと憤慨、今もなおひとり愚痴愚痴となにかを呟いていた。

「お待たせ。どんな感じ?」
 朱が合流すると、すぐに雛河に言葉をかけた。
 だが、そんな朱の腕を掴んでくる手があった。
 引っ張られ体勢を戻そうとすると間近に狡噛の顔がある。
「これを指示したのはあんただな、監視官。どういうことだ?」
「……どう、とは?」
「だから、なんで女のホロなんだってことだ」
「ああ。それは今から説明します」
「もちろん、納得のできる説明だろうな」
「……納得していただくしか……」
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