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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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空想の域

「その後、どうだ?」
 宜野座が珍しく分析室の唐之杜を訊ねてやってきた。
「やだ、珍しい。朱ちゃんにでも頼まれた?」
「いや……ただ、あいつにばかり頼るっていうのもな」
「わかるけど、そっちはちっちゃい縢くんから情報聞き出すのが仕事でしょ?」
「ああ……」
「もしかして、子供が苦手だったりして?」
「べつに、そうでもない。が、やり難さはあるな」
「あ~、わかるかも。秀ちゃんをまんま小さくした感じだもんね。だけど、私たちの知っている秀ちゃんじゃない。似ているけど別人だって言い聞かせればいいんじゃない? 仕事と割り切ってしまえば、苦手とも思わなくなるかもよ?」
「そういうものか?」
「そういうもんじゃない? でも、最近、少し変わってきたわよね」
「それは毎日顔を合わせている俺が一番感じている。最近は表情が豊かになってきた」
「それは、私たちを信用しはじめてくれているってことの現れじゃない?」
「たぶんな。で唐之杜、そっちはどうだ?」
「もしかして、タイムマシーンの情報とそっちで感じたなにかを照らし合わせようとか考えてる? だとしたら、空振りよ。たしかにタイムマシーンを作ろうとした人たちはいるんだけど、情報が少なくて。ただ、創作系だとかなりヒットするのよ。形も理念も様々で……これってあれかな、シビュラの方で情報管理されちゃって、潜在犯の私には権限がないとか? だとしたら、朱ちゃんに頼むしかないわね」
「シビュラか……まあ、考えられなくもないな」
「まあ、そういうことだから、あまりこっちは期待しないで」
 そこまで言われてしまうと宜野座としてももう突っ込んで聞くことができない。
 今後の無理難題要求を聞き入れてもらうためにも、ここは彼女の言い分を受け入れるしかないだろう。
「わかった。なにかあったらこっちにも情報、流してくれ」
「はいはい」

※※※

「唐之杜さん……」
 宜野座が退出してそう時間が経たない頃、新たな人物が分析室にやってくる。
「あら、朱ちゃん。ちょっと、ちゃんと休んでる?」
「あ……はい、私なりに。そんなに疲れているように見えます?」
「ん~というか、休んでいないイメージか先行しているって感じ? まあ、休んでいるならいいのよ。で、な~に? もしかして例の件の催促? だったらご期待に添えるような情報は出てないわよ」
「はい、わかっています。さっき、宜野座さんとすれ違った時、そんなことを」
「ああ、で? なにかひらめいた?」
「いえ。ただ、情報管理されているのではということで」
「ああ、それね。その可能性もあるかもって程度よ。タイムマシーンほ作ろうとした人物がいたのは確かだけど、成功したかどうかの情報がない。出てくるのは創作関係ばかりね。で、これらも結構あれね、ざっくりなものから細かい設定まであるんだけど、現実的に考えるとちょっと無理なものばかりで。もしかしたらこっちも情報管理されているのかもしれない。ああ、これは私見ね」
「簡単にヒットするとは思っていませんが、その可能性も視野にいれた方がいいかもしれませんね」
「ねえ、この件て、上に報告しているの?」
「いえ、まだ。詳しくは」
「大丈夫?」
「その辺は大丈夫です」
「ならいいけど。それで、朱ちゃんの方はなにかひらめいた?」
「現実的でいえば、クローンとか縢くんの家系の誰かの子ってことなんでしょうけど」
「ほんと、そこらで片づいてくれるといいわよね。まあ、クローンなんてちょっとアレだけど」
「クローンであれば、口外はしたくありませんよね?」
「そうね。知らないで通すんじゃないかな」
「となると、やはりちょっと非現実的な方向にしか考えられなくて。それもそこから抜け出せないんです」
「ようするに、タイムマシーンでこの時代にやってきた説ってことね」
「てことは、私頼みってことね」
「そうなりますね」
「了解。でも、もし管理されていたら」
「その可能性が濃くなっていたら私に連絡をください。様子を見ながら判断します」
「OK~」
「それでは、お願いします」
 朱が深々とおじきをして退出しようとした時、唐之杜が彼女の背中に声をかける。
「ところで朱ちゃん、彼女、どうしてる?」
「……彼女? もしかして霜月監視官ですか?」
「そう、美佳ちゃん。あの子、大丈夫? 結果的に丸く収まればいいんだけど?」
「……彼女なりの正義というものは私なりに理解しているつもりです。だから彼女の正義に水を差すつもりはない。だけど、今回は事件は事件だけど善悪の事件ではないから、彼女がどう自分なりの正義に答えを出すかがわからない。たぶん、彼女もそうなのではないかと……憶測ですけど」
「彼女、潜在犯に厳しいじゃない? 私なんかはいいんだけど、秀くんが潜在犯だったってことで、似ているってだけでちっちゃい秀くんに当たってなければいいなんて、心配しずだったかしら?」
「そうであってほしいと思います。六合塚さんにストッパー役をお願いしてしまっている現状は申し訳ないと」
「あら~、いいのよ。弥生がそれを面倒と思わないんならね。じゃあ、なにか新しいなにかを見つけたら連絡するわね」
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