ポケモンコンテスト
ダイゴの、まるでこども扱いでもしているかのような言い方にカチンときてしまったハルカは、ついムキになって講義した。
「もう!こども扱いしないで下さい。これでもコンテストアイドルの端くれなんですからね!」
頬を膨らませながら言うハルカに、ダイゴは落ち着いた口調で返した。
「いや、子ども扱いしたつもりではなかったんだけど、そう感じさせてしまったのなら謝るよ。すまなかったね。」
(ダイゴさん、とりあえず謝っておこうって感じだ…)
確かにダイゴから見たらハルカはかなり年下で、こども扱いしてしまうのも頷けるのだが、ポケモンバトルならダイゴに勝利できるほどの腕を持つのだから、ハルカとしてはとうてい面白くないのだ。そこでハルカは、バトル以外にもコンテストでの自身の活躍を話して、ダイゴの自分に対する意識を改めさせ、子ども扱いを自然に止めさせようと試みたのである。
「こう見えても、もうすぐ全マスターランク制覇できそうなんですから!ダイゴさんが思ってるほどこどもじゃないですよ。」
(うーん…本当に子ども扱いしたつもりはなかったんだけどな。というより、ホウエンの救世主で新チャンピオンのハルカちゃんを子ども扱いなんてご両親以外はできないだろ…)
「ダイゴさん!ちゃんと聞いてください!」
顎に指を当てながら考え込んでいるダイゴに、ハルカは痺れを切らせたように詰め寄る。
「うん。ちゃんと聞いてるさ。」
「ほんとに??」
ハルカは眉間に浅く皺を寄せて問う。
「本当さ。ミクリからもある程度聞いていてね。ほら、あいつの姪のコンテストスターの…なんて名前だったかな?」
「ミクリさんの…もしかしてルチアのことですか?」
ルチアはハルカをコンテストの世界にスカウトしてくれた、ポケモンコンテストのトップアイドルだ。ハルカがコンテストにスカウトした記念すべき百人目だったこともあり、ライブで着る衣装をプレゼントしてくれた他にも、色々とアドバイスをくれるハルカの良き先輩であり友達でもある大切な存在だ。
「あ、そうそう。直接会ったことが一回くらいしかないし、ミクリが話してきてもあいつ途中から自分のコンテストの話になるから、あまり印象に残らなくて忘れちゃうんだよね。」
まるで何でもないことのように笑うダイゴだが、ハルカにとっては驚愕なことだった。
(あの超人気コンテストスターの名前を忘れるなんて…。私と二回目に会った時に名前を覚えててくれたのって、もしかしてかなり奇跡的なことなのかな…)
とハルカが思っている一方で、ダイゴの方はというと…
(ハルカちゃんみたいに強い可能性を感じるような子なら忘れないんだけど、ミクリの姪っ子さんにはそういう可能性を感じなかったんだよね…。ポケモンコンテストだけなら誰だって上を目指せるからね…)
なんて辛口なことを考えていたのだ。現にルチアは、ポケモンバトルはあまり得意ではないとハルカに話したことがあった。
「えっと…もしかしてダイゴさん、ルチアのライブも見たことないんですか?」
「うん。もともとコンテストにはあまり興味がなくてね。まぁミクリがコンテストスターだった頃になら、何度か応援に来いって言われて見に行ったことはあるけれどね。」
ダイゴは本当に退屈そうな表情で答えたが、ハルカにとってはとても興味惹かれる内容だった。なにしろハルカは、ミクリがコンテストスターだったことは、今の今まで知らなかったのだから。
「ミクリさんがコンテストスター…?確かにコンテスト慣れしてるんだろうなとは思ってましたけど。」
「スターって言っても“元”だからね。姪のルチアちゃんにコンテストスターの座を奪われたのか、それとも自ら譲ったのかは僕も知らないんだ。だから、ハルカちゃんみたいに他の地方から来た子は、ミクリが元コンテストスターだということを知らなくて当たり前だと思うよ。あ、そうだ。確か当時のミクリの写真がこの辺に…少し待っててくれるかい。」
そう言うと、ダイゴは机の隅にテキトーに積まれた本や書類の山の中を探し始めた。その様子を横目に、ハルカはメレシーの頭をなでる。メレシーは撫でられて嬉しいのか、耳をパタパタと揺らしながら、その場でくるりと一回転した。
「よしよし。メレシーっていわタイプにしては珍しく、可愛い顔してるね。やっぱりフェアリータイプでもあるからかな?」
ハルカはメレシーの頭を撫で続けながら、独り言のように呟く。
「ホウエンでゲットできるフェアリータイプのポケモン、ニンフィアくらいしか思い当たらないし…。今度イーブイゲットしに行ってこようかな…。」
ルネの地下に貯まっていたいたエネルギーが、ホウエンじゅうに降り注いでからは、ホウエンでは見かけなかったポケモンが姿を現し始めた。オダマキ博士曰く、そのポケモン達は遥か昔にもともとこのホウエンに生息していたポケモン達らしい。そしてイーブイもそのうちの一種なのだ。
「野生のイーブイなら、最近になってからカナズミシティの近くに生息するようになったよね。」
「あれ、ダイゴさん聞いてたんですか?」
ハルカは、まさか聞かれているとは思わなかったと言わんばかりに、目を丸くしながらダイゴを見た。
「うん。まあ、僕たち二人しかいないのに独り言を言われたら、聞こうとしなくても耳に届くよね。」
「う…。それより、イーブイが野生で見かけるようになったこと、ダイゴさんもしってたんですね。」
つづく
「もう!こども扱いしないで下さい。これでもコンテストアイドルの端くれなんですからね!」
頬を膨らませながら言うハルカに、ダイゴは落ち着いた口調で返した。
「いや、子ども扱いしたつもりではなかったんだけど、そう感じさせてしまったのなら謝るよ。すまなかったね。」
(ダイゴさん、とりあえず謝っておこうって感じだ…)
確かにダイゴから見たらハルカはかなり年下で、こども扱いしてしまうのも頷けるのだが、ポケモンバトルならダイゴに勝利できるほどの腕を持つのだから、ハルカとしてはとうてい面白くないのだ。そこでハルカは、バトル以外にもコンテストでの自身の活躍を話して、ダイゴの自分に対する意識を改めさせ、子ども扱いを自然に止めさせようと試みたのである。
「こう見えても、もうすぐ全マスターランク制覇できそうなんですから!ダイゴさんが思ってるほどこどもじゃないですよ。」
(うーん…本当に子ども扱いしたつもりはなかったんだけどな。というより、ホウエンの救世主で新チャンピオンのハルカちゃんを子ども扱いなんてご両親以外はできないだろ…)
「ダイゴさん!ちゃんと聞いてください!」
顎に指を当てながら考え込んでいるダイゴに、ハルカは痺れを切らせたように詰め寄る。
「うん。ちゃんと聞いてるさ。」
「ほんとに??」
ハルカは眉間に浅く皺を寄せて問う。
「本当さ。ミクリからもある程度聞いていてね。ほら、あいつの姪のコンテストスターの…なんて名前だったかな?」
「ミクリさんの…もしかしてルチアのことですか?」
ルチアはハルカをコンテストの世界にスカウトしてくれた、ポケモンコンテストのトップアイドルだ。ハルカがコンテストにスカウトした記念すべき百人目だったこともあり、ライブで着る衣装をプレゼントしてくれた他にも、色々とアドバイスをくれるハルカの良き先輩であり友達でもある大切な存在だ。
「あ、そうそう。直接会ったことが一回くらいしかないし、ミクリが話してきてもあいつ途中から自分のコンテストの話になるから、あまり印象に残らなくて忘れちゃうんだよね。」
まるで何でもないことのように笑うダイゴだが、ハルカにとっては驚愕なことだった。
(あの超人気コンテストスターの名前を忘れるなんて…。私と二回目に会った時に名前を覚えててくれたのって、もしかしてかなり奇跡的なことなのかな…)
とハルカが思っている一方で、ダイゴの方はというと…
(ハルカちゃんみたいに強い可能性を感じるような子なら忘れないんだけど、ミクリの姪っ子さんにはそういう可能性を感じなかったんだよね…。ポケモンコンテストだけなら誰だって上を目指せるからね…)
なんて辛口なことを考えていたのだ。現にルチアは、ポケモンバトルはあまり得意ではないとハルカに話したことがあった。
「えっと…もしかしてダイゴさん、ルチアのライブも見たことないんですか?」
「うん。もともとコンテストにはあまり興味がなくてね。まぁミクリがコンテストスターだった頃になら、何度か応援に来いって言われて見に行ったことはあるけれどね。」
ダイゴは本当に退屈そうな表情で答えたが、ハルカにとってはとても興味惹かれる内容だった。なにしろハルカは、ミクリがコンテストスターだったことは、今の今まで知らなかったのだから。
「ミクリさんがコンテストスター…?確かにコンテスト慣れしてるんだろうなとは思ってましたけど。」
「スターって言っても“元”だからね。姪のルチアちゃんにコンテストスターの座を奪われたのか、それとも自ら譲ったのかは僕も知らないんだ。だから、ハルカちゃんみたいに他の地方から来た子は、ミクリが元コンテストスターだということを知らなくて当たり前だと思うよ。あ、そうだ。確か当時のミクリの写真がこの辺に…少し待っててくれるかい。」
そう言うと、ダイゴは机の隅にテキトーに積まれた本や書類の山の中を探し始めた。その様子を横目に、ハルカはメレシーの頭をなでる。メレシーは撫でられて嬉しいのか、耳をパタパタと揺らしながら、その場でくるりと一回転した。
「よしよし。メレシーっていわタイプにしては珍しく、可愛い顔してるね。やっぱりフェアリータイプでもあるからかな?」
ハルカはメレシーの頭を撫で続けながら、独り言のように呟く。
「ホウエンでゲットできるフェアリータイプのポケモン、ニンフィアくらいしか思い当たらないし…。今度イーブイゲットしに行ってこようかな…。」
ルネの地下に貯まっていたいたエネルギーが、ホウエンじゅうに降り注いでからは、ホウエンでは見かけなかったポケモンが姿を現し始めた。オダマキ博士曰く、そのポケモン達は遥か昔にもともとこのホウエンに生息していたポケモン達らしい。そしてイーブイもそのうちの一種なのだ。
「野生のイーブイなら、最近になってからカナズミシティの近くに生息するようになったよね。」
「あれ、ダイゴさん聞いてたんですか?」
ハルカは、まさか聞かれているとは思わなかったと言わんばかりに、目を丸くしながらダイゴを見た。
「うん。まあ、僕たち二人しかいないのに独り言を言われたら、聞こうとしなくても耳に届くよね。」
「う…。それより、イーブイが野生で見かけるようになったこと、ダイゴさんもしってたんですね。」
つづく
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