ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
目次

忍び寄る足音


その日はいたって平和だった。
私も慣れたもので落とし穴の有り無しが分かるようになってきている。
「もっと引っかかってくれてもいいのにな……俺は寂しいぜ」
「仕事してください」
本当に寂しそうに庭を見つめている鶴丸国永に私は言った。
この本丸の皆落とし穴を警戒するようになってしまったため落ちる人がいないのだ。
「ただ仕事をするのもつまらん!」
「仕事に楽しみを求めないでください」
仕事と言っても収穫された枝豆の端を切り取るだけの簡単な作業なのだが。
単調な作業に飽きてしまったようだ。
鶴丸国永はぐでーんと廊下の上に溶けた。
あぁ、白い衣装が埃で汚れてしまうな。なんて思う。
「しょうがないですね……これが終わったらお菓子作りでもしようと思っていたんですが一緒にどうですか?」
「何?それは本当か?!」
仕方なしに提案したところガバッ、と起き上がった鶴丸国永は目を輝かせている。
「ただし皆の分作るので量が大変ですが」
「やるやる!俺がお菓子作りなんて面白そうだ!」
「……食べ物で遊ぶのだけはやめてくださいね?」
確か以前鶴丸国永が料理係になった時に調味料で遊ばれて大惨事になって以来料理はさせていないと堀川が言っていた。
まぁその時こってりと絞られたらしいから大丈夫だろう。
「あぁ、口に入るものは美味しい方が良いよな……」
その時の制裁方法が確か全員分の仕掛けをされた食べ物を食べる事だったとか。
ある意味トラウマになっているようだ。
「じゃあさっさと終わらせてしまいましょう。だいぶ時間かかってしまっているので」
「わかったわかった」
私がやるように言うと鶴丸国永は観念したように枝豆にハサミを入れ始めた。
これでお昼前には終わるだろう。
おやつに何を作るか考えながら手を動かすのだった。

****

「あの、そんなにぴったりくっついてこなくても準備したら呼びに行きますけど……」
「それじゃ手間だろう?」
「いやでも近いですよ」
食材の下準備をしていた所、鶴丸国永はその様子を肩口から覗くように見ている。
その距離があまりにも近いので一緒にいた長義の機嫌がなぜか急降下しているのを察していただきたい。
「あぁすまんすまん。何をするのか気になって仕方ないんでな!」
「作るのは簡単スフレチーズケーキです」
携帯端末を取り出して見せる。
そこには某料理レシピサイトのスフレチーズケーキのレシピが並んでいた。
「おいしそうだな」
「美味しいと思いますよ」
なんたってスフレチーズケーキは美味しい。(語彙力)
ボウルに室温に戻したクリームチーズ、砂糖、用意した卵黄を入れる。
それを鶴丸国永に渡した。
「お?出番か?」
「本当にやること少ないんでこれでこうやって混ぜてください」
そう言ってハンドミキサーの使い方を簡単に教える。
すると順応力が高いのか中身をこぼさずに混ぜ始めたので驚いた。
「はは、その驚いた顔いいな!」
「喋ってないで手元に集中しろ」
ちょっと手元が危うくなったので長義の注意が入る。
長義も鶴丸国永のお料理事件の被害者だったのか穴が開かんばかりにその動きを見ていた。
私は分けた卵白を同じようにハンドミキサーで泡立てる。
途中砂糖を加えてメレンゲを作った。
「あ、鶴丸さん次はこれを加えて混ぜてください」
そう言って牛乳とレモン汁が入った容器を渡すとそれを全部入れて混ぜ始めた。
ちょっとハンドミキサーにハマってるっぽい。
今の所何か仕掛けている様子もないので次の工程にうつる。
鶴丸国永の混ぜるクリームチーズ+αに出来たメレンゲを少しづつ加えて今度はヘラで混ぜてもらう。
メレンゲを全部混ぜ終わったら長義が用意してくれた型に流し込む。
型を板に並べてオーブンの中へシュートする。
温度と時間の設定をしてスタートを押した。
こんなに簡単なのにスフレチーズケーキができちゃうんだから驚きだ。
このレシピを見つけた人はすごいと思う。
「あとは出来るのを待つだけだよ」
そう伝えると少し寂しそうにする。
「もうおしまいなのか?」
「おしまいです」
どうやらもっとやりたかったみたいだ。
「じゃあ明日も一緒に作りますか?」
「いいのか?」
私は頷いた。
すると嬉しそうに跳びあがる。

「あぁ国姫、ここにいたのか」

声の方に振り返ると山姥切国広が台所の入り口に立っている。
「どうかしたの?」
「主が呼んでいる。来れるか?」
「後は見てるだけだから大丈夫だ。言って来い」
「だ、そうなので大丈夫です」
長義に言われたのでオーブンの監視を任せて山姥切国広について行った。
もちろん向かうのは祭さんの執務室だ。
私も随分とこの本丸にも慣れたと思う。
「主、連れてきたぞ」
「ありがとう」
祭さんの執務室にしては珍しく書類の山が無かった。
そしてテーブルの上には一枚のタブレットがあり、それを真剣な表情で睨んでいる。
いつになく真面目な様子に驚きながらも私は向かいに座った。
「国姫……会って欲しい刀剣がいるの」
「え、私にですか?」
突然の申し出に驚いて聞き返すが頷かれてしまう。
テーブルの上のタブレットを見るように言われてそれを手に取った。
そこには一振りの刀剣男士の情報が載っている。
ズキリと頭が痛んだ。
「っ?!」
タブレットを落とす前にテーブルの上に置いたが頭の痛みは増していく。
「国姫?!」
「あ、るじ……」

彼は短刀の姿をしている。
でも本当は脇差だった。

「骨喰……!」

口から零れたその名前を認識する前に私の意識はブラックアウトした。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。