ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
目次


『俺こそが長義が打った本歌、山姥切。聚楽第での作戦において、この本丸の実力が高く評価された結果こうして配属されたわけだが、……さて』
政府の役人だと思っていたあいつがそう言ったてこちらを見た。
『俺自身はこの本丸の実力を今だ疑っている。幻滅させないでくれよ偽物くん』
そんなこと俺に言われてもどうしようもないじゃないか。

『その傷はどうしたんだ。早く手入れを受けてこい』
中傷くらい当たり前だ。手入れの資材がもったいないだろう。それにお前は俺の事を嫌っているはずだ。放っておいてくれ。
『……確かに偽物くんのことは嫌いだよ』

『ほら、手入れ用の資材を持って帰ってきたぞ。主に手入れの許可はもらっている』
面倒なことを。どうして放っておいてくれないんだ。
『俺の写しである君がそんな傷だらけの状態でいるのが我慢ならないだけさ』

『なぁ、山姥切国広。少しは俺を見たらどうだ?』
何を見ろと言っているんだ。

『一部の本丸では修行に出たお前はそのぼろ布を捨て去っているらしいぞ』
それは一部の本丸の話で俺には関係のないことだ。

『決めたぞ山姥切。俺はこの本丸をブラック本丸として摘発する』
やめろ。そんな事をしたら無事じゃいられないぞ。
『もしも俺に何かあったら俺の代わりに戦ってくれ』
縁起でもないことを言うな。それにあんたの代わりはいないんだ。

****

ガタリと何かが揺れる音を耳がひろう。
意識が浮上してきて、起きなければと重い瞼を持ち上げる。
見えたのは丁度今部屋に入ってきたらしい長義の後ろ姿だった。
「……長義?」
「?!」
名前を呼べば驚いたようにこちらへ振り返る。
「何て顔してるんだ」
すぐに隠されてしまったが泣きそうな顔をしていた。
「なんでもない。これが普通だ」
そう言って私が寝ているベッドの横へやってくる。
「ここは?」
「政府の特殊病棟だよ。今剣に刺された事は覚えているか?」
長義の言葉に頷いた。
あの憎悪に満ちた顔が頭から離れない、忘れられるわけがない。
「あの今剣はお前を刺したと同時に呪詛を放っていたらしい。幸いすぐに解呪できたからいいものの、大事を取って入院することになったんだ」
「じゅそ……今剣は?」
私の言葉に長義は苦しそうに眉をひそめた。
「折った」
「……そう」
「呪詛と神隠しを解くには仕方なかったんだ……」
「彼は、戻れない所まで行ってしまったんだね」
神隠しだけなら顕現を解かれるだけで済んだかもしれない。でも彼はそこで止まれなかったんだろう。
それほどまでに雪音さんの事を大事に思っていたのか。
それとも別の理由があったのか。
私にはわからない。
「ねぇ長義」
ふと、気になることを聞いてみる。
「なんだ?」
「なんで長義は私に優しくしてくれるの?」
「は?」
「だって私は長義の嫌いな偽物の偽物だよ」
「いや、嫌いなんて言ってないぞ?!嫌いって誰がそんな事を……」
私の言葉に慌てた様子で否定する。
「え、誰って……あれ?」
そういえば誰にも長義が私を嫌いだと聞いていない。
どうしてそう思ったんだろう。
わけがわからない。
「……疲れてるんだな。もう寝るんだ」
「え、さっきまで寝てたんだけど」
「いいから!」
強制的に眠らせるつもりなのか手で目隠しをされてしまった。
ここまでされては眠るしかないか。と再び瞼を閉じる。
まだ疲れが残っていたのか眠りに落ちるのは簡単だった。

****

「……」
「あ、長義。国姫の具合はどうだった?」
静かに病室を後にすると交代に来たのか主がやってきた。
「あぁ、目を覚ましたよ。後遺症などの問題はなさそうだった」
「本当?あぁよかった!」
すぐにでも病室に駆け込みそうな主を捕まえる。
「少し待ってくれないか?」
「え?どうしたの?」
「国姫の様子が少しおかしかったんだ……」
そう言えば主は真剣な表情で俺に向き直った。
「どういうこと?」
「誰も言っていないはずなのに俺が偽物くんの事を嫌いだと言ったんだ」
確かに配属以前は嫌っていたが今は割とどうでもよくなった。
特にこの本丸では写しコンプレックスを発動していない山姥切国広のあんちくしょうのせいで仲が良いとさえ思われている節がある。
なのにどこからその情報を手に入れてきたのだろう。
「そっか……もしかしたら前の本丸の長義とは仲が悪かったのかもしれないわね」
「ん?前の本丸とは一体……」
「まだ確定事項じゃないから山姥切にしか話してないんだけどね。もしかしたら国姫はブラック本丸から逃げてきたのかもしれないの」
「なんだって?」
「どうやら前の記憶を失ってるみたいだから様子見をしていたんだけど、その様子じゃ少し思いだしてきてるのかもしれないわね」
思ってもいなかった言葉を聞いて思わず拳を握りしめた。
もしかしたら他の本丸の刀剣かもしれないとは思っていたがまさか国姫がブラック本丸から逃げてきた刀剣の可能性があったなんて少しも考えなかった。
最もブラック本丸について情報に触れる機会があるであろう元政府の役人なのにだ。
「……記憶が混乱しているようだったから今は寝かせている」
「そう、ありがとう。この事まだ皆には内緒ね」
主に言われて俺は頷いた。
「あぁ、わかっている」
国姫に関して情報を集める必要がありそうだ。
そう感じた俺は主を置いて政府施設内を歩き出すのだった。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。