第17話「竜、消える」
「もうバカっ! 知らない! もう二度と学校に来ないで!!」
俺と口論になっていた会長は負け惜しみの如く俺に食ってかかった。
そして、俺の胸に付いていた許可証を引きちぎって奪い、そのまま走り去ってしまった。
「あっ、俺の許可証!!」
俺は突然の出来事にただ、唖然とするしかなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
このどたばたに乗じて穂乃果たちがやってきた。
「竜くん、なにか大きな声が聞こえたけど……」
心配そうな目で俺の方を見る穂乃果。
「まずい、生徒会長に許可証取られた」
「えぇっ!?」
穂乃果はびっくり仰天驚いた。穂乃果だけは。
他のメンバーは何がそんなに大変なのかよく分かっていないようだった。
とりわけ真姫はため息をついて呆れた表情をしていた。
「何をそんなに落ち込んでるのよ。再発行しに行けば……」
確かにそうだ。再発行してもらえば何ということもない。
しかし、その希望をことりちゃんが遮った。
「それは……無理だよ」
「どうして!?」
ことりちゃんは申し訳ない様子で口を開く。
「音乃木坂が発行できる許可証の数には限りがあって、今はもうその限界に達してたはず……」
「そんな……」
「それで、その制限が解除されるのが来年の4月になってからのこと……」
なんてこったい。そんな決まりがあったなんて。
「それじゃあ俺は」
「竜さん抜きでμ'sをやっていく必要があるわね。もしくは学外で活動をするか」
「でもそれってスクールアイドルじゃないにゃ」
「そうだよね……」
一年生の皆が口々に不安を掻き立てていく。
ただ、にこは違った。
「だったらやるべきことは1つよ。あの生徒会長に直談判しに行くわよ!」
さすが先輩。こんな時もポジティブに解決策を見出していた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
安堵するμ'sメンバーだったが、花陽が再び話を切り出したとき、その雰囲気は不安へと逆戻りした。
「ねぇ皆。竜さんがいないんだけど」
穂乃果は焦った。竜がいない。さっきまでそこにいて、話の中心にいた竜が忽然と姿を消してしまっていたのだ。
「えっ、さっきまでそこにいたよね?」
穂乃果は声を荒げる。額から汗が流れてきた。
そんな様子を見かねたにこは薄ら笑って口を開く。
「悲しくなって逃げたんじゃないの?」
「あなたねぇ、竜さんはそんな人じゃないわよ」
真姫が鋭い言葉を突っ込む。確かに竜は迷うことはあれどそんな根性なしではない。穂乃果たちはそれを痛感していた。
ならばどこに?
そんな不安をかき消すかのように突然、ことりが口を開いた。
「ねぇ、皆……」
「どうしたの? ことりちゃん」
「竜って誰……?」
穂乃果は一瞬でその場が凍りついたような気がした。何を言っているんだことりは。さっきまで会話していたではないか。
もしこの場を和ませるジョークだったとしてもたちが悪すぎる。一体何を考えてそんな言葉を言ったのだ。
穂乃果はそれを問い詰めようとした。
「げほっ……げほっ……なんだこれ……急に身体が変に……」
しかし、それを問い詰める気力はなくなった。竜が現れたのだ。
正直、ことりを問い詰めるより、咳き込んで気分悪そうにしている竜を介抱するのが先だった。
皆が竜に駆け寄ると、竜は話を始めた。
「みんなごめん……ちょっと気分悪くなってた……」
「もう、心配したじゃ~ん」
穂乃果はいつもの幼馴染ムーブで竜を小突いた。
「竜くん、大丈夫?」
そして、あのことりも竜の心配をしていた。一体どういうつもりなのか。
「あぁ、大丈夫。ありがとう……」
それにしてもあまりに気分が悪そうだ。穂乃果は意を決して口に出した。
「とりあえず家に帰ろうか。竜くん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところ変わって穂むら。俺は自分の部屋で穂乃果に寝かしつけられていた。
「ゆっくり休んでね」
少し浮かない顔をする穂乃果。本当に心配をかけてしまった。
「ほんとゴメンな、穂乃果」
「いいんだよ、竜くん。私達幼馴染じゃない」
穂乃果はいつもそう言って許してくれる。まるで、俺のことを全部分かっているかのような、そんな言葉。
しかし、一つ疑問に思っていることがあった。馴れ合いを今の今まで続けてきたはずの穂乃果に妙に親近感がわかないのだ。
この際だから聞いてみることに使用。
「そのことなんだけどさ、穂乃果と俺って昔はどういう関係だったんだ?」
「どうって……覚えてないの?」
「覚えてないんだ……μ'sを結成した時より前の記憶がごっそり。疲れてんのかな、俺」
知らないうちに記憶喪失になっていたのかもしれない。確かに、穂乃果は俺の幼馴染なのにその思い出は何一つとして思い出せないのだ。
一体どうなっているんだ。
「そんな……でもでも竜くんと穂乃果はとっても仲良しだったんだよ。昔も今も。小学校も中学校も一緒で……一緒で……あれ、どんな思い出だっけ」
穂乃果もそうとぼけたようなことを言う。
俺達の関係って、一体何なんだろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。
真姫の家に集合した1年生組。真姫たちはどうにかしなきゃという使命感を感じていた。
「それでどうする? 生徒会長をどうにかしないといけない気がするけど」
花陽も凛も気持ちは同じだった。なんとかしないと生徒会長の思うままである。
「そうだよねぇ。竜さんがいないと私たち何もできないし……」
「そうだ、凛にいい考えがあるにゃ。それはね……ゴニョゴニョ」
俺と口論になっていた会長は負け惜しみの如く俺に食ってかかった。
そして、俺の胸に付いていた許可証を引きちぎって奪い、そのまま走り去ってしまった。
「あっ、俺の許可証!!」
俺は突然の出来事にただ、唖然とするしかなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
このどたばたに乗じて穂乃果たちがやってきた。
「竜くん、なにか大きな声が聞こえたけど……」
心配そうな目で俺の方を見る穂乃果。
「まずい、生徒会長に許可証取られた」
「えぇっ!?」
穂乃果はびっくり仰天驚いた。穂乃果だけは。
他のメンバーは何がそんなに大変なのかよく分かっていないようだった。
とりわけ真姫はため息をついて呆れた表情をしていた。
「何をそんなに落ち込んでるのよ。再発行しに行けば……」
確かにそうだ。再発行してもらえば何ということもない。
しかし、その希望をことりちゃんが遮った。
「それは……無理だよ」
「どうして!?」
ことりちゃんは申し訳ない様子で口を開く。
「音乃木坂が発行できる許可証の数には限りがあって、今はもうその限界に達してたはず……」
「そんな……」
「それで、その制限が解除されるのが来年の4月になってからのこと……」
なんてこったい。そんな決まりがあったなんて。
「それじゃあ俺は」
「竜さん抜きでμ'sをやっていく必要があるわね。もしくは学外で活動をするか」
「でもそれってスクールアイドルじゃないにゃ」
「そうだよね……」
一年生の皆が口々に不安を掻き立てていく。
ただ、にこは違った。
「だったらやるべきことは1つよ。あの生徒会長に直談判しに行くわよ!」
さすが先輩。こんな時もポジティブに解決策を見出していた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
安堵するμ'sメンバーだったが、花陽が再び話を切り出したとき、その雰囲気は不安へと逆戻りした。
「ねぇ皆。竜さんがいないんだけど」
穂乃果は焦った。竜がいない。さっきまでそこにいて、話の中心にいた竜が忽然と姿を消してしまっていたのだ。
「えっ、さっきまでそこにいたよね?」
穂乃果は声を荒げる。額から汗が流れてきた。
そんな様子を見かねたにこは薄ら笑って口を開く。
「悲しくなって逃げたんじゃないの?」
「あなたねぇ、竜さんはそんな人じゃないわよ」
真姫が鋭い言葉を突っ込む。確かに竜は迷うことはあれどそんな根性なしではない。穂乃果たちはそれを痛感していた。
ならばどこに?
そんな不安をかき消すかのように突然、ことりが口を開いた。
「ねぇ、皆……」
「どうしたの? ことりちゃん」
「竜って誰……?」
穂乃果は一瞬でその場が凍りついたような気がした。何を言っているんだことりは。さっきまで会話していたではないか。
もしこの場を和ませるジョークだったとしてもたちが悪すぎる。一体何を考えてそんな言葉を言ったのだ。
穂乃果はそれを問い詰めようとした。
「げほっ……げほっ……なんだこれ……急に身体が変に……」
しかし、それを問い詰める気力はなくなった。竜が現れたのだ。
正直、ことりを問い詰めるより、咳き込んで気分悪そうにしている竜を介抱するのが先だった。
皆が竜に駆け寄ると、竜は話を始めた。
「みんなごめん……ちょっと気分悪くなってた……」
「もう、心配したじゃ~ん」
穂乃果はいつもの幼馴染ムーブで竜を小突いた。
「竜くん、大丈夫?」
そして、あのことりも竜の心配をしていた。一体どういうつもりなのか。
「あぁ、大丈夫。ありがとう……」
それにしてもあまりに気分が悪そうだ。穂乃果は意を決して口に出した。
「とりあえず家に帰ろうか。竜くん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところ変わって穂むら。俺は自分の部屋で穂乃果に寝かしつけられていた。
「ゆっくり休んでね」
少し浮かない顔をする穂乃果。本当に心配をかけてしまった。
「ほんとゴメンな、穂乃果」
「いいんだよ、竜くん。私達幼馴染じゃない」
穂乃果はいつもそう言って許してくれる。まるで、俺のことを全部分かっているかのような、そんな言葉。
しかし、一つ疑問に思っていることがあった。馴れ合いを今の今まで続けてきたはずの穂乃果に妙に親近感がわかないのだ。
この際だから聞いてみることに使用。
「そのことなんだけどさ、穂乃果と俺って昔はどういう関係だったんだ?」
「どうって……覚えてないの?」
「覚えてないんだ……μ'sを結成した時より前の記憶がごっそり。疲れてんのかな、俺」
知らないうちに記憶喪失になっていたのかもしれない。確かに、穂乃果は俺の幼馴染なのにその思い出は何一つとして思い出せないのだ。
一体どうなっているんだ。
「そんな……でもでも竜くんと穂乃果はとっても仲良しだったんだよ。昔も今も。小学校も中学校も一緒で……一緒で……あれ、どんな思い出だっけ」
穂乃果もそうとぼけたようなことを言う。
俺達の関係って、一体何なんだろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。
真姫の家に集合した1年生組。真姫たちはどうにかしなきゃという使命感を感じていた。
「それでどうする? 生徒会長をどうにかしないといけない気がするけど」
花陽も凛も気持ちは同じだった。なんとかしないと生徒会長の思うままである。
「そうだよねぇ。竜さんがいないと私たち何もできないし……」
「そうだ、凛にいい考えがあるにゃ。それはね……ゴニョゴニョ」
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