第03話「海未、青春のワンステップ!」
それからの穂乃果達の話をしよう。
穂乃果たちはチーム名を音ノ木坂の生徒から募り、「μ's」という名前を採用。
そして、秋葉原や学校前でファーストライブのビラを配ったりと精を出した。
その時にとてもスクールアイドルに興味を持ってくれた1年生がいて印象的だったそうだ。
そうこうしているうちにファーストライブの日になった。
そんな今日は穂乃果に頼まれて、学院で手伝いをする事になっている。
「で、君たちも手伝いだね?」
俺は穂乃果の同級生たち3人にそう問う。
「はい!」
彼女らは元気よく返事した。
「それじゃあ役割決めようか」
同級生の一人でポニーテールが特徴的な女の子・フミコが真っ先に答えた。
「私、校内でビラを配ってきます!」
続いて一番身長の低いおさげの女の子・ミカが答える。
「私も行くよ!」
最後にショートヘアの女の子・ヒデコが答える。
「じゃあ、琴奈さんは私とステージの設営をやりましょう!」
「よし、頑張るぞいっ!」
ところかわってここは楽屋。
「準備はいい?」
穂乃果はそうことりと海未に言う。
「うん! ……って海未ちゃん?」
ことりは海未の変化に気づいた。海未は頬を赤らめていた。
「やっぱり恥ずかしいです!」
突然の発言に2人は困惑する。
「何言ってるの!? 今まで頑張ってきたじゃん! 大丈夫だよ海未ちゃん!」
穂乃果は海未を励ます。
「そ、そうですが……」
「それに、鏡を見てよ。海未ちゃんとっても可愛いよ」
鏡には可愛らしい水色のライブ衣装を着た海未の姿があった。
「そうだよ! 一番似合ってる!」
ことりも穂乃果の言葉に同調する。
「そうですか?」
「だから自信持とう?」
「それじゃあ、そろそろ始まるから行こっ! 1!」
穂乃果は一安心すると同時に、2人に指を向けた。ライブ前のおまじないだ。
「2!」
「3!」
ことりと海未も続く。
「μ's! ミュージック、スタート!!」
そうして、穂乃果たちはステージに移動した。
しばらくして、幕が開く。
しかし。
目の前の光景に穂乃果たちは唖然とする。
誰も客がいないのだ。
「穂乃果ちゃん……」
「穂乃果……」
ことりと海未は泣きそうな声で穂乃果にささやく。
「そんな……嘘だ……そんな……」
穂乃果も予想外の事態に固まった。
舞台袖では俺とヒデコが頭を抱えていた。
「ヒデコちゃん……穂乃果たち時間間違えてないか?」
「間違えてないですよ……時計もちゃんと……」
俺の焦りが最高潮に達する。このままだとライブは失敗してしまう。
どうすればいい……。
「ヤバい……これはヤバい……時間を遅らせるか?」
「そんなことやっても変わらないと思う」
「くそっ……どうすりゃいい! どうすりゃ……!」
そんな時、ステージから穂乃果たちの声が聞こえた。
初めてだから仕方ないとかそんなこと言ってる。
「穂乃果……くそっ……俺は何もできねぇのか……」
「俺さん……」
ヒデコは哀れみの目で俺を見つめる。
「万事休すか……」
その時、ドアが開いた。
「あれ、もうライブ終わっちゃったのかな……?」
ひとり、講堂に入ってきた。
ショートヘアのメガネを掛けた女の子。制服のリボンから察するに1年生だ。
もしかして、あの子は穂乃果の言っていたスクールアイドルに興味を持ってくれた子だろうか。
そうだったらこんなに嬉しいことはない。
ひとりだけだがお客さんが来てくれたのだ。
これでライブは成立する。
「ねぇ、かよちん……。ほんとにここでライブなんかやってるの?」
もうひとり入ってきた。さっきの子――かよちんの友達のようだ。
さて客は来たが……穂乃果はどう出るか。
ふたりの客に対してちゃんと歌うことができるのか?
「……歌おう。聴きに来てくれた人がいるんだ。何もせずに帰すわけにはいかないよ」
穂乃果の目は輝いていた。決意の念で満ち溢れていた。
それでこそ穂乃果。
「海未ちゃん、ことりちゃん。行くよ! たとえお客さんが一人でも届けるんだ。 私達の歌を!」
穂乃果はそう叫ぶ。ことりと海未も同調する。
そして曲が流れた。
「なんて曲だっけ?」
物覚えの悪い俺はそうヒデコに問う。
「確か……”START:DASH‼”です」
スタートダッシュ……。穂乃果たちにぴったりな歌だな。
ピアノのイントロから始まり、次々と別の楽器が鳴り響く。
段々と曲の力強さが増していき、頂点に達したところで穂乃果たちが歌いだした。
「……穂乃果」
穂乃果たちの練習の結晶がパフォーマンスに詰まっていた。
数週間前の穂乃果からは感じられなかったオーラが分かる。
そうしているうちに、パフォーマンスは終わった。
会場にいる皆から小さいながらもよく聞こえる拍手が鳴り響く。
すると、誰かがステージへ向かってきた。
雰囲気が怖い。少なくとも感謝を述べに来たわけじゃなさそう。
金髪のポニーテールの生徒。風格からして先輩だろうか。
「どうするつもりなの?」
金髪の生徒はそう声を高らかに上げた。
「生徒会長……」
穂乃果は言葉に詰まる。
なるほど。アイツが噂の生徒会長。
穂乃果たちのスクールアイドル活動にちょっかいを入れていると聞く。
「この客の数、とても成功したとは思えないけど? それでもアイドルやる気なの?」
穂乃果の話通り、嫌味ったらしい先輩だ。
穂乃果はそんな会長の言葉にめげず言葉を放つ。
「……続けます」
「どうして? 結果が出なかったのよ?」
「私たちはたった一度じゃ諦めません。いつか……いつか絶対、ここを満員にしてみせます!」
穂乃果の決意の言葉を聞いた会長は、諦めたのかそのままその場を立ち去った。
「……そう。好きにするといいわ」
去り際に総言葉を放った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「それはそうと竜くん! 私達のパフォーマンスどうだった?」
「控えめに言ってファンタスティック!!」
褒めてあげると穂乃果の顔が赤らんで笑みがこぼれた。
「一応、ビデオカメラでパフォーマンスを撮っておいたから、後で見直そうぜ!」
俺はそう言う。
実は、スクールアイドルはこうやって動画を撮ってネットに公開することもベタな活動のひとつ。
そのため、俺はしっかり穂乃果たちのライブをカメラに収めていたのだ。
「撮ってたんですか!?」
海未は驚きの声を上げる。
「だって、記念すべきファーストライブじゃん」
「そんな……そんな……」
海未は恥ずかしさのあまりその場に崩れる。
「海未ちゃん?」
「破廉恥です! 今すぐフィルムを渡しなさい!」
海未はそう突っかかってきた。
「そう来たか! やなこった!」
俺はカメラを取られまいと逃げる。
「まぁまぁ海未ちゃん。結果として良いパフォーマンスだったからいいじゃん」
「そうだよ! 控えめに言ってファンタスティックなんだよ!?」
穂乃果とことりが海未を説得する。
「あぁぁぁ……恥ずかしすぎますぅ……」
海未は顔が赤くなりその場から動かなくなった。……やれやれ。
こうして、μ'sのファーストライブは幕を閉じたのだった。
穂乃果たちはチーム名を音ノ木坂の生徒から募り、「μ's」という名前を採用。
そして、秋葉原や学校前でファーストライブのビラを配ったりと精を出した。
その時にとてもスクールアイドルに興味を持ってくれた1年生がいて印象的だったそうだ。
そうこうしているうちにファーストライブの日になった。
そんな今日は穂乃果に頼まれて、学院で手伝いをする事になっている。
「で、君たちも手伝いだね?」
俺は穂乃果の同級生たち3人にそう問う。
「はい!」
彼女らは元気よく返事した。
「それじゃあ役割決めようか」
同級生の一人でポニーテールが特徴的な女の子・フミコが真っ先に答えた。
「私、校内でビラを配ってきます!」
続いて一番身長の低いおさげの女の子・ミカが答える。
「私も行くよ!」
最後にショートヘアの女の子・ヒデコが答える。
「じゃあ、琴奈さんは私とステージの設営をやりましょう!」
「よし、頑張るぞいっ!」
ところかわってここは楽屋。
「準備はいい?」
穂乃果はそうことりと海未に言う。
「うん! ……って海未ちゃん?」
ことりは海未の変化に気づいた。海未は頬を赤らめていた。
「やっぱり恥ずかしいです!」
突然の発言に2人は困惑する。
「何言ってるの!? 今まで頑張ってきたじゃん! 大丈夫だよ海未ちゃん!」
穂乃果は海未を励ます。
「そ、そうですが……」
「それに、鏡を見てよ。海未ちゃんとっても可愛いよ」
鏡には可愛らしい水色のライブ衣装を着た海未の姿があった。
「そうだよ! 一番似合ってる!」
ことりも穂乃果の言葉に同調する。
「そうですか?」
「だから自信持とう?」
「それじゃあ、そろそろ始まるから行こっ! 1!」
穂乃果は一安心すると同時に、2人に指を向けた。ライブ前のおまじないだ。
「2!」
「3!」
ことりと海未も続く。
「μ's! ミュージック、スタート!!」
そうして、穂乃果たちはステージに移動した。
しばらくして、幕が開く。
しかし。
目の前の光景に穂乃果たちは唖然とする。
誰も客がいないのだ。
「穂乃果ちゃん……」
「穂乃果……」
ことりと海未は泣きそうな声で穂乃果にささやく。
「そんな……嘘だ……そんな……」
穂乃果も予想外の事態に固まった。
舞台袖では俺とヒデコが頭を抱えていた。
「ヒデコちゃん……穂乃果たち時間間違えてないか?」
「間違えてないですよ……時計もちゃんと……」
俺の焦りが最高潮に達する。このままだとライブは失敗してしまう。
どうすればいい……。
「ヤバい……これはヤバい……時間を遅らせるか?」
「そんなことやっても変わらないと思う」
「くそっ……どうすりゃいい! どうすりゃ……!」
そんな時、ステージから穂乃果たちの声が聞こえた。
初めてだから仕方ないとかそんなこと言ってる。
「穂乃果……くそっ……俺は何もできねぇのか……」
「俺さん……」
ヒデコは哀れみの目で俺を見つめる。
「万事休すか……」
その時、ドアが開いた。
「あれ、もうライブ終わっちゃったのかな……?」
ひとり、講堂に入ってきた。
ショートヘアのメガネを掛けた女の子。制服のリボンから察するに1年生だ。
もしかして、あの子は穂乃果の言っていたスクールアイドルに興味を持ってくれた子だろうか。
そうだったらこんなに嬉しいことはない。
ひとりだけだがお客さんが来てくれたのだ。
これでライブは成立する。
「ねぇ、かよちん……。ほんとにここでライブなんかやってるの?」
もうひとり入ってきた。さっきの子――かよちんの友達のようだ。
さて客は来たが……穂乃果はどう出るか。
ふたりの客に対してちゃんと歌うことができるのか?
「……歌おう。聴きに来てくれた人がいるんだ。何もせずに帰すわけにはいかないよ」
穂乃果の目は輝いていた。決意の念で満ち溢れていた。
それでこそ穂乃果。
「海未ちゃん、ことりちゃん。行くよ! たとえお客さんが一人でも届けるんだ。 私達の歌を!」
穂乃果はそう叫ぶ。ことりと海未も同調する。
そして曲が流れた。
「なんて曲だっけ?」
物覚えの悪い俺はそうヒデコに問う。
「確か……”START:DASH‼”です」
スタートダッシュ……。穂乃果たちにぴったりな歌だな。
ピアノのイントロから始まり、次々と別の楽器が鳴り響く。
段々と曲の力強さが増していき、頂点に達したところで穂乃果たちが歌いだした。
「……穂乃果」
穂乃果たちの練習の結晶がパフォーマンスに詰まっていた。
数週間前の穂乃果からは感じられなかったオーラが分かる。
そうしているうちに、パフォーマンスは終わった。
会場にいる皆から小さいながらもよく聞こえる拍手が鳴り響く。
すると、誰かがステージへ向かってきた。
雰囲気が怖い。少なくとも感謝を述べに来たわけじゃなさそう。
金髪のポニーテールの生徒。風格からして先輩だろうか。
「どうするつもりなの?」
金髪の生徒はそう声を高らかに上げた。
「生徒会長……」
穂乃果は言葉に詰まる。
なるほど。アイツが噂の生徒会長。
穂乃果たちのスクールアイドル活動にちょっかいを入れていると聞く。
「この客の数、とても成功したとは思えないけど? それでもアイドルやる気なの?」
穂乃果の話通り、嫌味ったらしい先輩だ。
穂乃果はそんな会長の言葉にめげず言葉を放つ。
「……続けます」
「どうして? 結果が出なかったのよ?」
「私たちはたった一度じゃ諦めません。いつか……いつか絶対、ここを満員にしてみせます!」
穂乃果の決意の言葉を聞いた会長は、諦めたのかそのままその場を立ち去った。
「……そう。好きにするといいわ」
去り際に総言葉を放った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「それはそうと竜くん! 私達のパフォーマンスどうだった?」
「控えめに言ってファンタスティック!!」
褒めてあげると穂乃果の顔が赤らんで笑みがこぼれた。
「一応、ビデオカメラでパフォーマンスを撮っておいたから、後で見直そうぜ!」
俺はそう言う。
実は、スクールアイドルはこうやって動画を撮ってネットに公開することもベタな活動のひとつ。
そのため、俺はしっかり穂乃果たちのライブをカメラに収めていたのだ。
「撮ってたんですか!?」
海未は驚きの声を上げる。
「だって、記念すべきファーストライブじゃん」
「そんな……そんな……」
海未は恥ずかしさのあまりその場に崩れる。
「海未ちゃん?」
「破廉恥です! 今すぐフィルムを渡しなさい!」
海未はそう突っかかってきた。
「そう来たか! やなこった!」
俺はカメラを取られまいと逃げる。
「まぁまぁ海未ちゃん。結果として良いパフォーマンスだったからいいじゃん」
「そうだよ! 控えめに言ってファンタスティックなんだよ!?」
穂乃果とことりが海未を説得する。
「あぁぁぁ……恥ずかしすぎますぅ……」
海未は顔が赤くなりその場から動かなくなった。……やれやれ。
こうして、μ'sのファーストライブは幕を閉じたのだった。
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