降谷零・人生の流儀
もう少しで日付が変わるというころ、僕は自宅の駐車場でエンジンを切っていた。仕事が一区切りつき、今夜は久々に自宅へ帰ってくることができたのだ。一人暮らしで殺風景な部屋とはいえ、久々に自宅で休めるのは嬉しい。僕はわずかな開放感を覚えていた。
玄関を開けると、誰もいないはずのリビングから灯りが漏れている。あれ?電気消し忘れたっけな僕。そう思った瞬間、リビングの扉が開いた。
「おかえりなさい!今日は早かったですね」
レースがあしらわれた淡いピンクのエプロンを着けた梓さんが駆け寄ってきた。
「梓さん!?なんでうちにいるんですか?」
「やだぁ零さん、何ですかその冗談。それに今さら梓『さん』なんて。あっ、もしかして安室さんごっこですか?」
梓さんはくすくす笑い、手慣れた様子で僕から鞄を受け取る。
待て待て待て、えーっと、どういう事だ。一つずつ整理して考えよう。まず第一に、なぜ梓さんが僕の家にいる?そして彼女は「零さん」と言った。なぜ僕の本名を知っている?まさかベルモットの変装か…?いや、あのシャンプーの匂いは梓さんに間違いない…
ここまで考えて、リビングへ向かおうとする梓さんの後ろ姿を見た僕は、明らかな異変に気づいた。
梓さん、エプロン以外何も着てねぇ!!!!
「ちょ、ちょっと梓さん!なんて恰好してるんですか!」
「へ?零さんが言ったんじゃないですか。裸エプロンで待っててほしいって」
どうしてそんな平気な顔してしれっと答えてるんだ。同僚にそんな事言うはずないだろうセクハラだぞ!願ったり叶ったりだけど…いや待てそうじゃなくてこの状況はいったいどういうこt
「ねぇ零さん。ご飯にします?お風呂にします?それとも…」
梓さんは僕の首に両手を回してきた。
「わたしにしますか」
耳元でそうささやかれて、何かがプツッと音を立てて切れた。気が付くと僕は梓さんを抱きしめて夢中で口づけていた。
「…んっ、はぁっ…、んぅっ…」
梓さんから時折甘い息遣いが漏れる。午前0時の廊下は酷く反響して、水音が耳に響いている。薄いピンク色の布ごしに、柔らかさに柔らかい膨らみが当たっている。僕の下半身はあっという間に窮屈になった。
「…はぁっ、れ、零さん…、これ、辛いんじゃないですか…?すぐラクにしてあげますね…」
膝立ちになった梓さんの手がベルトに伸びて金属音が響く。流れるようにファスナーが開かれ、スラックスが床にするすると落ちてゆく。
梓さんは、すっかりそそり立った僕の陰茎を取り出し温かい手でそっと包む。僕を見上げて優しく微笑み、いとおしそうに撫でた後で、舌の先が触れた。
はぁっ…もう意味がわからない…梓さん、どうしてこんなにかわいくてエロいんだ。ダメだ、もう何も考えられない…うっ…
…
最悪だ。
快感の直後に、腹の周りのとてつもない不快感で目が覚めた。
すぐにシャワーを浴び、汚れた下着を手洗いする。もう今週3回目だ。僕アラサーだよな?この歳で夢精だなんて。僕の性欲、まさかここまでとはな…。
夢に出てくるのは毎回梓さんだった。殺伐とした日々の中で梓さんと過ごす時間に癒され、いつの間にか僕は梓さんに恋をしていたのだ。
しかし、これなんとかしないとな。週に何度もあんな夢を見るなんてたまったもんじゃない。いや、たまってるからあんな夢見るのか。仕方ない、面倒だが定期的に抜くしかないか。
僕はパソコンを立ち上げた。
*
最悪だ。
ATMから出た直後、涼しいお財布の中身を見てためいきが漏れた。
はぁ、今日も晩ごはん抜きだなぁ。もう今週3回目だ。賄いをおかわりしたのに、もうお腹ぺこぺこだなんて。わたしの食欲、まさかここまでとはな…。
今月は予定外の出費が重なった。うっかり忘れてたマンションの更新、地元の友達の結婚式が2回、大尉の治療費と入院費。すずめの涙ほどだった貯金を全て使っても足りなくて、普段の生活に使うお金もそちらに充てるはめになった。もちろん友達の幸せそうな姿はとってもうれしいし、大尉のケガもたいしたことはなかったから本当に良かったのだけれど。
でも実際問題、家賃を払ったあと手元に残る現金だけでは、到底次のお給料日まで暮らせそうになかった。しかたない、アルバイトをかけもちするしかないか。
わたしはパソコンを立ち上げた。
*
どうせ食事するなら美味いものを食べたいだろう。同じように、どうせ抜くなら良いオカズが欲しい。組織への潜入も、ハムサンド作りも、オカズ探しも、常に本気だ。妥協せず最高のクオリティを追及する。それが僕、警察庁警備企画課・降谷零の仕事の流儀なのだ。
だがAVのプロ感はどうも醒めてしまう。素人ものも素人「風」なだけだしなぁ。ぼんやりネットの海を漂っていると【素人の女の子活躍中!アダルトライブチャット】の文字が目に留まった。盲点だった。これはいいかもしれない。
運営会社や利用規約、プライバシーポリシーをチェックし、違法サイトでないことを念入りに確認して登録した。僕は手始めに今日デビューしたての新人嬢一覧をざっとチェックしてみることにした。しかし一人目の名前に目が留まって先へ進めなくなった。
【あずさ 23歳 喫茶店店員】
えっ!?
名前・年齢・職業が完全に一致-。まさか、梓さんなのか!?一体何故こんなところに…
(続く)
玄関を開けると、誰もいないはずのリビングから灯りが漏れている。あれ?電気消し忘れたっけな僕。そう思った瞬間、リビングの扉が開いた。
「おかえりなさい!今日は早かったですね」
レースがあしらわれた淡いピンクのエプロンを着けた梓さんが駆け寄ってきた。
「梓さん!?なんでうちにいるんですか?」
「やだぁ零さん、何ですかその冗談。それに今さら梓『さん』なんて。あっ、もしかして安室さんごっこですか?」
梓さんはくすくす笑い、手慣れた様子で僕から鞄を受け取る。
待て待て待て、えーっと、どういう事だ。一つずつ整理して考えよう。まず第一に、なぜ梓さんが僕の家にいる?そして彼女は「零さん」と言った。なぜ僕の本名を知っている?まさかベルモットの変装か…?いや、あのシャンプーの匂いは梓さんに間違いない…
ここまで考えて、リビングへ向かおうとする梓さんの後ろ姿を見た僕は、明らかな異変に気づいた。
梓さん、エプロン以外何も着てねぇ!!!!
「ちょ、ちょっと梓さん!なんて恰好してるんですか!」
「へ?零さんが言ったんじゃないですか。裸エプロンで待っててほしいって」
どうしてそんな平気な顔してしれっと答えてるんだ。同僚にそんな事言うはずないだろうセクハラだぞ!願ったり叶ったりだけど…いや待てそうじゃなくてこの状況はいったいどういうこt
「ねぇ零さん。ご飯にします?お風呂にします?それとも…」
梓さんは僕の首に両手を回してきた。
「わたしにしますか」
耳元でそうささやかれて、何かがプツッと音を立てて切れた。気が付くと僕は梓さんを抱きしめて夢中で口づけていた。
「…んっ、はぁっ…、んぅっ…」
梓さんから時折甘い息遣いが漏れる。午前0時の廊下は酷く反響して、水音が耳に響いている。薄いピンク色の布ごしに、柔らかさに柔らかい膨らみが当たっている。僕の下半身はあっという間に窮屈になった。
「…はぁっ、れ、零さん…、これ、辛いんじゃないですか…?すぐラクにしてあげますね…」
膝立ちになった梓さんの手がベルトに伸びて金属音が響く。流れるようにファスナーが開かれ、スラックスが床にするすると落ちてゆく。
梓さんは、すっかりそそり立った僕の陰茎を取り出し温かい手でそっと包む。僕を見上げて優しく微笑み、いとおしそうに撫でた後で、舌の先が触れた。
はぁっ…もう意味がわからない…梓さん、どうしてこんなにかわいくてエロいんだ。ダメだ、もう何も考えられない…うっ…
…
最悪だ。
快感の直後に、腹の周りのとてつもない不快感で目が覚めた。
すぐにシャワーを浴び、汚れた下着を手洗いする。もう今週3回目だ。僕アラサーだよな?この歳で夢精だなんて。僕の性欲、まさかここまでとはな…。
夢に出てくるのは毎回梓さんだった。殺伐とした日々の中で梓さんと過ごす時間に癒され、いつの間にか僕は梓さんに恋をしていたのだ。
しかし、これなんとかしないとな。週に何度もあんな夢を見るなんてたまったもんじゃない。いや、たまってるからあんな夢見るのか。仕方ない、面倒だが定期的に抜くしかないか。
僕はパソコンを立ち上げた。
*
最悪だ。
ATMから出た直後、涼しいお財布の中身を見てためいきが漏れた。
はぁ、今日も晩ごはん抜きだなぁ。もう今週3回目だ。賄いをおかわりしたのに、もうお腹ぺこぺこだなんて。わたしの食欲、まさかここまでとはな…。
今月は予定外の出費が重なった。うっかり忘れてたマンションの更新、地元の友達の結婚式が2回、大尉の治療費と入院費。すずめの涙ほどだった貯金を全て使っても足りなくて、普段の生活に使うお金もそちらに充てるはめになった。もちろん友達の幸せそうな姿はとってもうれしいし、大尉のケガもたいしたことはなかったから本当に良かったのだけれど。
でも実際問題、家賃を払ったあと手元に残る現金だけでは、到底次のお給料日まで暮らせそうになかった。しかたない、アルバイトをかけもちするしかないか。
わたしはパソコンを立ち上げた。
*
どうせ食事するなら美味いものを食べたいだろう。同じように、どうせ抜くなら良いオカズが欲しい。組織への潜入も、ハムサンド作りも、オカズ探しも、常に本気だ。妥協せず最高のクオリティを追及する。それが僕、警察庁警備企画課・降谷零の仕事の流儀なのだ。
だがAVのプロ感はどうも醒めてしまう。素人ものも素人「風」なだけだしなぁ。ぼんやりネットの海を漂っていると【素人の女の子活躍中!アダルトライブチャット】の文字が目に留まった。盲点だった。これはいいかもしれない。
運営会社や利用規約、プライバシーポリシーをチェックし、違法サイトでないことを念入りに確認して登録した。僕は手始めに今日デビューしたての新人嬢一覧をざっとチェックしてみることにした。しかし一人目の名前に目が留まって先へ進めなくなった。
【あずさ 23歳 喫茶店店員】
えっ!?
名前・年齢・職業が完全に一致-。まさか、梓さんなのか!?一体何故こんなところに…
(続く)
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