ドフラミンゴの日記 その11
***
その電話は、州知事の直通電伝虫に突然かかってきた。
内容は、州知事官邸の迎賓宿泊室に数日間滞在したいというもので、承諾する以外の選択肢はない。
滞在人数は1名。もしかしたら滞在中に来客が1名あるかもしれない。
セキュリティ等に関しては先方が一切を取り仕切るから、こちら側は考えなくて良い。むしろ何も関与してこないほうが先方としては有り難いらしい。
(秘密にしたいことでもあるんだろう…)
州知事と側近達はこのように推測し、かつ何があっても首を突っ込まないほうがいいという判断を下した。例え、迎賓宿泊室から大きな物音や人の悲鳴が聞こえても…。
***
ドフラミンゴの日記より(バーティの日記と同様、後で思い出しながら書いたもの)
×月×日
ペラムの野郎がとっ捕まってる場所が、州知事官邸だと聞いた時にはぶったまげた。
バーティが会ってた男は、おそらく海軍だ。私服だったが、おれは海軍のにおいには鼻が利く。
バーティはおれに余計なことを説明する気はないらしかった。あのこんちくしょう野郎め、覚えていやがれ。
しかしペラムの野郎も、騒ぎになる前に自分で何とかできなかったのか…と思っていたら、案の定、奴はすでに行動を起こしていた。
まず、見つからないように州知事官邸の屋根の上に飛び移った後、バーティをぶら下げたまま、西の端の最上階にある宿泊室とやらのバルコニーに移動した。
カーテンが閉められていて部屋の中を覗くことはできなかったが、隙間から明かりがもれていたので、この時間でも誰かが起きているであろうことが分かった。
気付かれないように侵入するのが一番いいんだろうが、鍵を破る道具がある訳でもなく、結局ガラス戸を壊す。男の声で反応があったが、構わずに中に入った。バーティも後に続いた。
豪華な宿室内には、胡散臭いような、そうでもないような男が3人いて、こっちに向かって拳銃を構えていたので、撃ってこねえように糸で押さえた。そいつは体を動かせなくてビビっていた。
そいつらは怪我をしていた。すでに応急処置がされていたが、額から出血している者や腕に添え木を当てている者もいた。テーブルの上に、ひん曲がった拳銃が1丁置いてあった。
「丸顔のチビがここにいるって聞いて来たんだが、知らねえか?」
初めのうちは誰も答えようとしなかったが、糸で逆さにつったら素直に話し出した。
バーティの野郎は「敵か味方か確認するまでは手荒なことは…」とか言っていたが、話しを聞くうちに何も言わなくなった。
「じ、自分達は画商です。初めはペ…ペラムさんのほうから、良い風景画がないか問い合わせがあ…りま…て、そのうち絵を直接見たいというお話しになりまして…、そそうしたら、どこかでこのことを知ったとある高貴な女性ががが、その時にじ自分も来たいと…。だだだからイ、イ、インペルダウンとの定期便があるこの島に画廊を持っていることにしててて…」
この時にあいつらが話したのは、こんな内容だった。
・その高貴なご婦人とペラムは、別の場所(高級ホテルの一室)で密会する予定だった
・しかし、ご婦人の夫を名乗る人物から、密会を阻止するように高額な報酬で依頼された
・夫の指示通り、ペラムを騙してここに閉じこめていた
・3日もここで待ちぼうけを食らっていたペラムが、やっとおかしいことに気付いて、こいつらの仲間の一人を拉致して力づくでここを出て行ったのが30分ほど前のこと
「…その女は、あいつの愛人か?」
「親族でしょう。おそらく」
おれの呟きに、間髪を入れずにバーティが返した。ほう、親族か。
だが、密会とか相手の夫が妨害したとか言われると、どうしてもそれっぽく聞こえてしまう。
それにこの話しが本当なら、ペラムも女と密会するつもりでこの島に来たということになる。
おれは奴らを締め上げた。
「ただの画商が誘拐と監禁の依頼を受けたってのか?」
「か、かかなりのほほほ報酬だったんで、つつつついそれに目がくらんで…」
「つまり、お前らはペラムとその高貴なご夫人を裏切ったんだな?」
「ひいえええ~っ!ももも申し訳ありません~~っっ!!」
あの画商とやらも、おそらく全くの堅気ではないのだろう。美術品市場にはヤミ取引もある。それに高値の商品を扱っているから、荒っぽい連中を用心棒に雇っているし、そういう輩の元締めと付き合いがある場合も少なくない。
バーティがひとり言のように呟いた。
「ともかくペラムは無事なようだ。今どこにいるんだろう…」
「それはこいつらに訊くしかねえだろうな」
「ひえええ~~っ!!」
さらに締めて吐かせようとしたら、向こうから進んでバラした。
「そ…その高貴なご婦人の船は…この近くの海上で…攻撃を受けて…います………」
「ほう」
さすがにこれはただならぬ展開だった。
「私達は…依頼を受けた時は、た、た、ただの金持ちの夫婦だと思って……夫のほうは、奥様がこの島に来られないように船をしゅ襲撃させました…襲撃は…みみ3日も続いています…」
「ほうほう、それで?」
「まままさか“あの階級”の人達だったなんて…わわ私達は…そういう人を襲撃してしまった…」
「でででも止めることも…だって…命じているのも“あの階級”の人だ…」
「ど、どうしよう~~!俺達、ししし死刑にされちまう~~っ!」
その電話は、州知事の直通電伝虫に突然かかってきた。
内容は、州知事官邸の迎賓宿泊室に数日間滞在したいというもので、承諾する以外の選択肢はない。
滞在人数は1名。もしかしたら滞在中に来客が1名あるかもしれない。
セキュリティ等に関しては先方が一切を取り仕切るから、こちら側は考えなくて良い。むしろ何も関与してこないほうが先方としては有り難いらしい。
(秘密にしたいことでもあるんだろう…)
州知事と側近達はこのように推測し、かつ何があっても首を突っ込まないほうがいいという判断を下した。例え、迎賓宿泊室から大きな物音や人の悲鳴が聞こえても…。
***
ドフラミンゴの日記より(バーティの日記と同様、後で思い出しながら書いたもの)
×月×日
ペラムの野郎がとっ捕まってる場所が、州知事官邸だと聞いた時にはぶったまげた。
バーティが会ってた男は、おそらく海軍だ。私服だったが、おれは海軍のにおいには鼻が利く。
バーティはおれに余計なことを説明する気はないらしかった。あのこんちくしょう野郎め、覚えていやがれ。
しかしペラムの野郎も、騒ぎになる前に自分で何とかできなかったのか…と思っていたら、案の定、奴はすでに行動を起こしていた。
まず、見つからないように州知事官邸の屋根の上に飛び移った後、バーティをぶら下げたまま、西の端の最上階にある宿泊室とやらのバルコニーに移動した。
カーテンが閉められていて部屋の中を覗くことはできなかったが、隙間から明かりがもれていたので、この時間でも誰かが起きているであろうことが分かった。
気付かれないように侵入するのが一番いいんだろうが、鍵を破る道具がある訳でもなく、結局ガラス戸を壊す。男の声で反応があったが、構わずに中に入った。バーティも後に続いた。
豪華な宿室内には、胡散臭いような、そうでもないような男が3人いて、こっちに向かって拳銃を構えていたので、撃ってこねえように糸で押さえた。そいつは体を動かせなくてビビっていた。
そいつらは怪我をしていた。すでに応急処置がされていたが、額から出血している者や腕に添え木を当てている者もいた。テーブルの上に、ひん曲がった拳銃が1丁置いてあった。
「丸顔のチビがここにいるって聞いて来たんだが、知らねえか?」
初めのうちは誰も答えようとしなかったが、糸で逆さにつったら素直に話し出した。
バーティの野郎は「敵か味方か確認するまでは手荒なことは…」とか言っていたが、話しを聞くうちに何も言わなくなった。
「じ、自分達は画商です。初めはペ…ペラムさんのほうから、良い風景画がないか問い合わせがあ…りま…て、そのうち絵を直接見たいというお話しになりまして…、そそうしたら、どこかでこのことを知ったとある高貴な女性ががが、その時にじ自分も来たいと…。だだだからイ、イ、インペルダウンとの定期便があるこの島に画廊を持っていることにしててて…」
この時にあいつらが話したのは、こんな内容だった。
・その高貴なご婦人とペラムは、別の場所(高級ホテルの一室)で密会する予定だった
・しかし、ご婦人の夫を名乗る人物から、密会を阻止するように高額な報酬で依頼された
・夫の指示通り、ペラムを騙してここに閉じこめていた
・3日もここで待ちぼうけを食らっていたペラムが、やっとおかしいことに気付いて、こいつらの仲間の一人を拉致して力づくでここを出て行ったのが30分ほど前のこと
「…その女は、あいつの愛人か?」
「親族でしょう。おそらく」
おれの呟きに、間髪を入れずにバーティが返した。ほう、親族か。
だが、密会とか相手の夫が妨害したとか言われると、どうしてもそれっぽく聞こえてしまう。
それにこの話しが本当なら、ペラムも女と密会するつもりでこの島に来たということになる。
おれは奴らを締め上げた。
「ただの画商が誘拐と監禁の依頼を受けたってのか?」
「か、かかなりのほほほ報酬だったんで、つつつついそれに目がくらんで…」
「つまり、お前らはペラムとその高貴なご夫人を裏切ったんだな?」
「ひいえええ~っ!ももも申し訳ありません~~っっ!!」
あの画商とやらも、おそらく全くの堅気ではないのだろう。美術品市場にはヤミ取引もある。それに高値の商品を扱っているから、荒っぽい連中を用心棒に雇っているし、そういう輩の元締めと付き合いがある場合も少なくない。
バーティがひとり言のように呟いた。
「ともかくペラムは無事なようだ。今どこにいるんだろう…」
「それはこいつらに訊くしかねえだろうな」
「ひえええ~~っ!!」
さらに締めて吐かせようとしたら、向こうから進んでバラした。
「そ…その高貴なご婦人の船は…この近くの海上で…攻撃を受けて…います………」
「ほう」
さすがにこれはただならぬ展開だった。
「私達は…依頼を受けた時は、た、た、ただの金持ちの夫婦だと思って……夫のほうは、奥様がこの島に来られないように船をしゅ襲撃させました…襲撃は…みみ3日も続いています…」
「ほうほう、それで?」
「まままさか“あの階級”の人達だったなんて…わわ私達は…そういう人を襲撃してしまった…」
「でででも止めることも…だって…命じているのも“あの階級”の人だ…」
「ど、どうしよう~~!俺達、ししし死刑にされちまう~~っ!」
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