第14話「花陽、先輩とアイドル対決!?その4」
とある日の屋上。今日もμ'sは練習する。
「みんなお疲れ様~」
俺はそう言って皆にドリンクを渡す。身体を動かした後の水分補給は必須。
とりわけ夏が近づく今は最重要項目なのだ。
「わぁいポ○リ。穂乃果ポ○リ大好き!」
このドリンクを人一倍喜ぶのは穂乃果。いつも美味しそうに飲んでくれるのでドリンクを渡す身としては嬉しいことこの上ない。
「プロテイン摂取です!」
「あはは……」
海未ちゃんはいつものごとくプロテイン摂取。こころなしかちょっとだけ腕の筋肉が付いているように見える。気がする。
「っていうかさ」
にこ先輩が唐突に話を切り出した。
「ん?」
「結局うやむやになったんだけど!?」
「何が?」
「何が? じゃないわよ!! 私と花陽のアイドル対決よ! 結局うやむやにして終わらせたじゃない! アンタが花陽と抱き合ってあんなことこんなことするもんだから……!!」
忘れてた。俺たちはつい先日までかよちんとにこ先輩のアイドル対決をやっていたのだ。
結局かよちんが拗ねたのを慰めてたせいでうやむやになってしまっていた。
そうして一週間も経ったものだから忘れてた。あぁどうしよう。
困惑する俺を横目に真姫ちゃんが提案する。
「じゃあさ、3回戦やればいいじゃない。1回戦が花陽の勝ち、2回戦がにこ先輩の勝ちなんだからこれで決着がつくわ」
「それだ! やろう! 3回戦!!」
俺はすかさず乗る。これでもうμ'sの中のゴタゴタはなくなるってもんだ。
「だったらさぁ、最後はもっと公平にやらなきゃね。ってことで竜は審査員から外れなさい」
にこ先輩はそう言って俺を指差す。どういうことだ。
「なんで俺が!?」
「花陽の彼氏なんか審査員にいたら贔屓しちゃうでしょ」
先日の出来事のせいで完全に俺がかよちんの彼氏みたいな扱いになってる。かよちんがどう思っているかは知らないが、そんなことはないのだ。決して。
だからついつい言い返してしまう。
「誰が彼氏だ!」
その言葉を聞いてかよちんは悲しい表情をする。
「違うんですか……?」
確かにかよちんは俺に懐いていることは嘘じゃない。それは俺も認めている。
とはいえ俺は彼女の彼氏ではない。
「えっ」
だから、驚きもする。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「という訳で3回戦は歌で勝負よ!」
カラオケ屋にやってきた俺達はにこ先輩主導のカラオケ対決をすることになったのだ。
「カラオケの採点モードで一番上手く歌えた方が勝ちよ。あなたは着いてこれるかしら?」
にこ先輩はいつになく張り切っており、そのせいかいつも以上に煽りにキレがある。ちょっとばかしうざったい。
「頑張るよ!」
しかし、かよちんは燃えている。やる気なら互角だ。
「曲は希に決めてもらったわ」
にこ先輩はそう言うと、希先輩が現れた。
「ウチのカラオケの十八番を歌ってもらうで」
希先輩のカラオケの十八番……? ちょっと気になる。
「曲はなんなんだ?」
「masquerade」
聞いたことのない曲だ。希先輩は前々からミステリアスだと思っていたがカラオケの十八番までミステリアスとは。
「TRFの曲ですね!」
しかし知っている人がいた。海未ちゃんだ。っていうかTRF。またTRFなの。この作品どんだけTRF推すの。ねぇどういうこと。
「最近流行ってるんやろ? KING OF」
「あぁ、分かった分かった。とりあえずそれなんだな! よし、二人ともいってみよー」
というわけでカラオケ対決が始まったのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「まずは私から!」
最初はかよちんの番。曲が流れ始め、かよちんが歌い始めた。
こころなしか声がブレているような気がしてならない。
すると、横にいた凛ちゃんがぼそっとつぶやいた。
「心なしかかよちんえっちだにゃ」
えっち? どこがだ。いつものかよちんじゃないか。
「歌詞のせいだろ」
俺がそう返す。が、そう言われてみれば確かにどこか艶っぽいかもしれない。いかん、そういう目でかよちんを見てしまうではないか。
もう、凛ちゃんってば罪な女だねぇ。
「あれれぇ~? 竜さん顔が赤くなってないかにゃあ?」
凛ちゃんはその様子を見てにやにやと笑いかける。図ったな!
何やら楽しそうと感じたのか、穂乃果も話に加わる。
「やっぱり好きなの? 花陽ちゃんのこと」
「うるせぇ」
「もぅ、素直じゃないなぁ。幼馴染の穂乃果にはなんでもお見通しだよ~? 幼馴染の穂乃果なら、ね?」
穂乃果の目が怖い。俺何か変なことしたか? もしかしてかよちんをそういう目で見たから妬いてるとか? まさかね。
そうこうしているうちにかよちんの歌が終わった。
「ふぇ~。大変でした~」
「という訳で! 花陽ちゃんの点数は!! 88点!!」
88点。なかなか高い点数だ。もうこれ勝ったんじゃないの?
「結構高いです! どうでしたか竜さん!!」
「よかったよ」
「~~~~っ!! あ、ありがとうございます!!」
かよちんは満面の笑みではにかむ。これだよこれ。かよちんのそういうところが好きなんだ。
さて、お次はにこ先輩の番だ。
「それじゃあ次は私ね! 行くわよ!!」
曲が始まる。にこ先輩は意気揚々と歌い始めるがどことなく様子が変だ。
それを察したのか真っ先に真姫ちゃんが口を開く。
「なんか様子変じゃない?」
希先輩もそれに気付いたようだ。
「焦ってるね」
「そうかな? 穂乃果は良いと思うよ」
そのうち歌が終わった。息を切らしながらこの世の終わりみたいな疲れ果てた顔を見せるにこ先輩。ほんと、お疲れさまです。
「ようやく終わった……」
希先輩が結果を告げる。
「にこっちの点数は~~88点!!」
「ぬぁんでよ! なんで花陽と同じ点数なのよ!?」
「だって、にこっち基本は良いのに焦ってテンポおかしいところあったんやもん」
にこ先輩は希先輩に抗議するも、あっけなく返される。
「そんな……嘘よ……」
「じゃあかよちんとにこ先輩の勝負は引き分けってこと……?」
「そういうことになるなぁ」
この様子に耐えきれなくなったにこ先輩が声を上げる。
「じゃあもう1回戦よ!」
とはいえ、これ以上不毛な争いをしても意味がない。
仲裁をすることにした。
「もういいだろにこ先輩。これ以上争ったって意味がないだろ」
しかし、反応は思いの外違ったものになった。
「っていうかさ、なんで事の発端がそんなこと言ってんのよ」
真姫ちゃんから思いも寄らない発言を頂いたのだ。
「え?」
「元はといえばにこ先輩ばかり褒める竜さんに問題があったんじゃない!」
「あー、そういえばそうだったな……」
そういえばそうだった。どうやら俺は物忘れがひどいようだ。
しかし、かよちんは違った。もう満足だという表情を見せた。
「事実、花陽と竜さんの愛は確認できたので私はもう勝負はいいかなぁ?って」
その発言はちょっとばかし危険だ。愛ってなんだ。俺はためらうからな。
「あ、愛!?」
「そうですよ! 花陽との愛です!」
ためらいたい。この愛だけは。ためらいたい。
「花陽ちゃん」
「……?」
「アイドルは、絶対に愛NGだぞっ」
俺はただそう言うことしかできなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ここは生徒会室。希先輩ともうひとり、生徒会長――絢瀬絵里先輩がそこにはいた。
会長は呆れたような態度で希先輩に言う。
「ということで、痴話喧嘩に2日も付き合ってたと」
「あの子らなりのケジメなんだから良かったやん」
希先輩の弁解が気に入らなかったのか、会長は机を強く叩く。
「よくないわよ! あんなに人数が増えて! 部活申請もしちゃったじゃない! あなたが!」
「あぁ、あれは悪かったって思ってるよ。でもな?」
希先輩は全く反省する様子もない。会長は余計苛立つ。
「あの子らなら、やってくれるかもしれへんで?」
その言葉にさらに苛立ちを覚える。
「痴話喧嘩するようなグループが?」
「そうや。痴話喧嘩するようなグループがや。なんか可能性、感じるんや」
「私には全然感じないけどね……」
そう言いながら、冷たく鋭い目線を向けるのだった。
「みんなお疲れ様~」
俺はそう言って皆にドリンクを渡す。身体を動かした後の水分補給は必須。
とりわけ夏が近づく今は最重要項目なのだ。
「わぁいポ○リ。穂乃果ポ○リ大好き!」
このドリンクを人一倍喜ぶのは穂乃果。いつも美味しそうに飲んでくれるのでドリンクを渡す身としては嬉しいことこの上ない。
「プロテイン摂取です!」
「あはは……」
海未ちゃんはいつものごとくプロテイン摂取。こころなしかちょっとだけ腕の筋肉が付いているように見える。気がする。
「っていうかさ」
にこ先輩が唐突に話を切り出した。
「ん?」
「結局うやむやになったんだけど!?」
「何が?」
「何が? じゃないわよ!! 私と花陽のアイドル対決よ! 結局うやむやにして終わらせたじゃない! アンタが花陽と抱き合ってあんなことこんなことするもんだから……!!」
忘れてた。俺たちはつい先日までかよちんとにこ先輩のアイドル対決をやっていたのだ。
結局かよちんが拗ねたのを慰めてたせいでうやむやになってしまっていた。
そうして一週間も経ったものだから忘れてた。あぁどうしよう。
困惑する俺を横目に真姫ちゃんが提案する。
「じゃあさ、3回戦やればいいじゃない。1回戦が花陽の勝ち、2回戦がにこ先輩の勝ちなんだからこれで決着がつくわ」
「それだ! やろう! 3回戦!!」
俺はすかさず乗る。これでもうμ'sの中のゴタゴタはなくなるってもんだ。
「だったらさぁ、最後はもっと公平にやらなきゃね。ってことで竜は審査員から外れなさい」
にこ先輩はそう言って俺を指差す。どういうことだ。
「なんで俺が!?」
「花陽の彼氏なんか審査員にいたら贔屓しちゃうでしょ」
先日の出来事のせいで完全に俺がかよちんの彼氏みたいな扱いになってる。かよちんがどう思っているかは知らないが、そんなことはないのだ。決して。
だからついつい言い返してしまう。
「誰が彼氏だ!」
その言葉を聞いてかよちんは悲しい表情をする。
「違うんですか……?」
確かにかよちんは俺に懐いていることは嘘じゃない。それは俺も認めている。
とはいえ俺は彼女の彼氏ではない。
「えっ」
だから、驚きもする。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「という訳で3回戦は歌で勝負よ!」
カラオケ屋にやってきた俺達はにこ先輩主導のカラオケ対決をすることになったのだ。
「カラオケの採点モードで一番上手く歌えた方が勝ちよ。あなたは着いてこれるかしら?」
にこ先輩はいつになく張り切っており、そのせいかいつも以上に煽りにキレがある。ちょっとばかしうざったい。
「頑張るよ!」
しかし、かよちんは燃えている。やる気なら互角だ。
「曲は希に決めてもらったわ」
にこ先輩はそう言うと、希先輩が現れた。
「ウチのカラオケの十八番を歌ってもらうで」
希先輩のカラオケの十八番……? ちょっと気になる。
「曲はなんなんだ?」
「masquerade」
聞いたことのない曲だ。希先輩は前々からミステリアスだと思っていたがカラオケの十八番までミステリアスとは。
「TRFの曲ですね!」
しかし知っている人がいた。海未ちゃんだ。っていうかTRF。またTRFなの。この作品どんだけTRF推すの。ねぇどういうこと。
「最近流行ってるんやろ? KING OF」
「あぁ、分かった分かった。とりあえずそれなんだな! よし、二人ともいってみよー」
というわけでカラオケ対決が始まったのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「まずは私から!」
最初はかよちんの番。曲が流れ始め、かよちんが歌い始めた。
こころなしか声がブレているような気がしてならない。
すると、横にいた凛ちゃんがぼそっとつぶやいた。
「心なしかかよちんえっちだにゃ」
えっち? どこがだ。いつものかよちんじゃないか。
「歌詞のせいだろ」
俺がそう返す。が、そう言われてみれば確かにどこか艶っぽいかもしれない。いかん、そういう目でかよちんを見てしまうではないか。
もう、凛ちゃんってば罪な女だねぇ。
「あれれぇ~? 竜さん顔が赤くなってないかにゃあ?」
凛ちゃんはその様子を見てにやにやと笑いかける。図ったな!
何やら楽しそうと感じたのか、穂乃果も話に加わる。
「やっぱり好きなの? 花陽ちゃんのこと」
「うるせぇ」
「もぅ、素直じゃないなぁ。幼馴染の穂乃果にはなんでもお見通しだよ~? 幼馴染の穂乃果なら、ね?」
穂乃果の目が怖い。俺何か変なことしたか? もしかしてかよちんをそういう目で見たから妬いてるとか? まさかね。
そうこうしているうちにかよちんの歌が終わった。
「ふぇ~。大変でした~」
「という訳で! 花陽ちゃんの点数は!! 88点!!」
88点。なかなか高い点数だ。もうこれ勝ったんじゃないの?
「結構高いです! どうでしたか竜さん!!」
「よかったよ」
「~~~~っ!! あ、ありがとうございます!!」
かよちんは満面の笑みではにかむ。これだよこれ。かよちんのそういうところが好きなんだ。
さて、お次はにこ先輩の番だ。
「それじゃあ次は私ね! 行くわよ!!」
曲が始まる。にこ先輩は意気揚々と歌い始めるがどことなく様子が変だ。
それを察したのか真っ先に真姫ちゃんが口を開く。
「なんか様子変じゃない?」
希先輩もそれに気付いたようだ。
「焦ってるね」
「そうかな? 穂乃果は良いと思うよ」
そのうち歌が終わった。息を切らしながらこの世の終わりみたいな疲れ果てた顔を見せるにこ先輩。ほんと、お疲れさまです。
「ようやく終わった……」
希先輩が結果を告げる。
「にこっちの点数は~~88点!!」
「ぬぁんでよ! なんで花陽と同じ点数なのよ!?」
「だって、にこっち基本は良いのに焦ってテンポおかしいところあったんやもん」
にこ先輩は希先輩に抗議するも、あっけなく返される。
「そんな……嘘よ……」
「じゃあかよちんとにこ先輩の勝負は引き分けってこと……?」
「そういうことになるなぁ」
この様子に耐えきれなくなったにこ先輩が声を上げる。
「じゃあもう1回戦よ!」
とはいえ、これ以上不毛な争いをしても意味がない。
仲裁をすることにした。
「もういいだろにこ先輩。これ以上争ったって意味がないだろ」
しかし、反応は思いの外違ったものになった。
「っていうかさ、なんで事の発端がそんなこと言ってんのよ」
真姫ちゃんから思いも寄らない発言を頂いたのだ。
「え?」
「元はといえばにこ先輩ばかり褒める竜さんに問題があったんじゃない!」
「あー、そういえばそうだったな……」
そういえばそうだった。どうやら俺は物忘れがひどいようだ。
しかし、かよちんは違った。もう満足だという表情を見せた。
「事実、花陽と竜さんの愛は確認できたので私はもう勝負はいいかなぁ?って」
その発言はちょっとばかし危険だ。愛ってなんだ。俺はためらうからな。
「あ、愛!?」
「そうですよ! 花陽との愛です!」
ためらいたい。この愛だけは。ためらいたい。
「花陽ちゃん」
「……?」
「アイドルは、絶対に愛NGだぞっ」
俺はただそう言うことしかできなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ここは生徒会室。希先輩ともうひとり、生徒会長――絢瀬絵里先輩がそこにはいた。
会長は呆れたような態度で希先輩に言う。
「ということで、痴話喧嘩に2日も付き合ってたと」
「あの子らなりのケジメなんだから良かったやん」
希先輩の弁解が気に入らなかったのか、会長は机を強く叩く。
「よくないわよ! あんなに人数が増えて! 部活申請もしちゃったじゃない! あなたが!」
「あぁ、あれは悪かったって思ってるよ。でもな?」
希先輩は全く反省する様子もない。会長は余計苛立つ。
「あの子らなら、やってくれるかもしれへんで?」
その言葉にさらに苛立ちを覚える。
「痴話喧嘩するようなグループが?」
「そうや。痴話喧嘩するようなグループがや。なんか可能性、感じるんや」
「私には全然感じないけどね……」
そう言いながら、冷たく鋭い目線を向けるのだった。
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