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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

ドフラミンゴの日記 その15

(×月×日の続き)
バーティが船の舵を操りながら大声で叫ぶと、ペラムが船べりから身を乗り出して答えた。
「ドフラミンゴさ~ん、ペラム~、無事か~~?」
「バーティさ~ん!」

バーティも、自分が乗っていた船からおれ達がいるところまで、ジャンプして移動した。
そして、海軍の兵士みてえな堅苦しい態度で、その場を取り仕切り始めた。

「みなさんは速やかにご自分の船に戻ってください。これ以上の争いは禁止とします。そして全船、このまま静かにこの場から立ち去ってください」

あの野郎は普段は無口なくせに、この時はよくしゃべった。

「従わない場合は、私とこの者が力で制圧します」

“この者”とは、おれのことである。
バーティは意外と人使いが荒い。まあ、お前もやるならギリセーフということにしてやった。

「こちらの船はマストが折れていますが、海軍を呼びましょうか?」
「…いや、自分で呼ぶ」
バーティが夫のほうに話しかけながら、夫婦の間にさりげなく割って入った。これに対して、夫は呟くように答えた。

バーティはペラムの母親にも、おれを指しながらこう話しかけた。
「マダムの船はあちらですね?よろしければ、この者が船までお連れしますが…」

いや、ペラムの母親にはそんなは必要ねえ。…と、心の中で突っ込みを入れた。バーティの野郎は、あの跳躍を見ていなかったらしい。

ペラムの母親はバーティの申し出を辞退し、乗組員達が二つの船の間に設置した簡易型の橋を使って自分の船に戻っていった。
橋なんかなくても帰れるだろうにと、また心の中で突っ込みを入れた。

おれ達はグズグズしていられなかった。夫が呼んだ海軍が来る前に、この場を立ち去らなければいけない。おれ達は3隻の船を残して先に出航した。

バーティが人質にした画商の社長の息子には、もう少しお付き合いいただいた。
こいつは乗っていた海軍の小型偵察船の甲板で、一人でおとなしく待っていた。
ペラムに乗っ取られた船に向かって、「親父~、みんな~~」と呼びかけたが、その船の連中はペラムのことを心底恐れていたらしく(ペラムは奴らにどんなことをしたのだろう…)、社長の息子が自分達の船に乗り移ることを拒否したらしい。

おれ達が出航する前、ペラムがこっちに来た。
「ドフラミンゴさん、どうもありがとうございました。ドフラミンゴさんが戦闘を止めてくれなかったら、泥沼のまま5日目に突入してたかも…」
奴はおれがしていたほっかむりをほんの一瞬じっと見たが、特に触れなかった。

ペラムの母親が、少し離れたところからこっちを見ていた。

ペラムは看守の職に就いてから、一度もインペルダウンの外に出たことがないと言っていた。
今までのことから推測するに、この親子は、ペラムが絵の買い付けでインペルダウンの外に出たのにかこつけて、16年ぶりに会おうとしていたのだ。

当初の予定では高級ホテルの一室で会う予定だったのに、夫の邪推とやらで、とんでもない邪魔が入ってしまった。

しかし、母と息子が会うのを秘密にしなきゃいかん理由も不明だし、母の夫がそれを妨害するのも普通とは言えねえ。この男は、最終的には自分の妻と義理の息子(多分)をどうするつもりだったのだろう?想像すると身の毛がよだつ。

ペラムは自分が乗っ取った船で、母親の船を途中まで送って行くと言っていた。インペルダウンには、明日か明後日に帰って来るだろう。

おれは今、インペルダウンのいつもの自分の寝室でこの日記を書いている。まだ高熱が続いていることになっているので、看病するふりをしたカスターが、部屋の隅で本を読んでいる。

こいつももう少ししたら、「囚人はだいぶ良くなった」ことにして引き上げるだろう。

インペルダウンに帰って来るのに、2日かかった。
ペラムを探しに、初めに行った島までの距離が、船で1日半。そこからさらにペラム親子を追って遠くに移動したから、帰路に2日かかったのはしょうがねえのかもしれない。

だが、バーティの野郎がインペルダウンを出る時に使った手漕ぎボートを回収したがって、インペルダウンに直行せずに、あの島の港に寄ったのも大きい。

バーティは手漕ぎの小さな船でないと、インペルダウン周辺を警護している監視船に見つからないで侵入することができないと言っていたが、おれの能力で空から侵入する方法もあると提案したのに、なぜか速攻で却下された。
あのボートへのあれ程までの執着は、絶対に何かある。

さっきカスターから面白いことを聞いた。インペルダウンにはレベル5.5という非公式のフロアがあり、看守達は気が付いていないが、そこに通じる穴が至る所にあるらしい。

おれの不在は糸人形があったから隠し通せる自信があったが、バーティの糸人形はなかったので不安だったという。それでレベル5.5の連中に、この部屋でバーティの身代わりをしてくれるよう頼んだらしい。

身代わりと言っても後ろ姿だけだったようだが、身代わりをしてくれる生身の人間がいるといないとでは、かなり違ったようだ。

ダイニングルームの改修は順調に進んでいるらしい。そう言えば、ペラムは風景画を手に入れることができただろうか。
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