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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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真実と演技

「……そうですね。それで? 彼、ピエロの言っていた植物は見つかりそうですか?」
「ん~、この使い魔が、教えてくれるらしいんだけど」
「……? では、私は不要でしたな」
「いやいやいや、それはないから。別に、この使い魔が探してくれるってわけじゃないし。探すのは俺たち、人の目。で、この使い魔はこうして……」
 マックス(仮名)はとりあえず近くにあった雑草を指さす。
 すると使い魔が映写機のように映像を映しだすと、そこには採取してほしい薬草が映っていた。
「こうやって見比べて採取していくわけ。なんで、採取している背後はがら空きなんで、お互い協力しあうってわけなんですけど」
「……なるほど。ではシャールさんより私で正解でしたね。それとも、あちらにシャールさんを残しておきたくない理由でもあったでしょうか。たとえば、罪人である彼。どこから演技だったのでしょう? それも打ち合わせのうちですか? こちらは知らされてませんでしたが? それとも、あなた方も知らされていなかったとか? まあ、そんなことはどうでもいいのですよ。少佐と少尉が無事に戻れるのでしたら」
「……やっぱな、軍曹は誤魔化せないと思ったよ」
「いいえ。おそらくハンクも気づいてましたよ。それでも騙されているフリをしたのは、シャールさんを守るためかと」
「ああ、その心配はないかな。彼はシャールにはなにもしない。というか、ピエロがそれをさせない。それに、ハンクもね。で、ハンクもオーレン(仮名)を殺せない。聞き出したいことがまだあるから」
「……そうでしょうね」
「ええっと。べつに騙したわけじゃなくて。咄嗟に機転利かせたっていうか。とにかく、あの場から脱出したかったんだが、そのタイミングを作る必要があった。で、脱出したところで、あのふたりに追いかけられてたんじゃ意味がない」
「それで、人間界に行けない罰を受けていることを確認したというわけですか」
「いろいろとね。オーレン(仮名)をやつらの監視から外す必要があった。芝居をしていたのは事実だが、オーレン(仮名)の失神は演技じゃないよ。あいつが演技をしているしたら、いいというまで気絶し続けろと言ったくらいかな。あ、俺たち、思念だけで会話できるから。たまに、思念で話しながら声に出してしまうやつもいる。ちょっと難しくて疲れるから滅多にやらない。尋問中も裏で暗躍とかはない。俺たちだって、あんた方の協力は必要だからね」
 ジェラルドはマックス(仮名)の視線、表情などから真意の確認をするかのように見た。
 マックス(仮名)もヘラヘラと誤魔化すことはしない。
 しばらく……時間にして数秒程度。
 ジェラルドは観察するような波線を解いた。
「それがあなたの本当の姿、なのでしょうね。いつも感じは壁、でしょうか。たしかに、ヘラヘラしていた方が人当たりもよいかもしれませんし、警戒心を凭れることもありません。ほかにも利点は多々ありますね」
「……買いかぶりすぎでしょ、それは。でも、信じてもらえたようでよかったよ」
「あなた方がケインのことに関し、一族総出で挑んでいることは知っています。こちらの協力が欲しいというのも本当でしょう。ですが、期待されるほどの情報はありませんよ?」
「わかっています。それはもう、クロード少佐の近くにいて、なにもないことの苛立つなども見てましたから。あれは本当に知らないんだと、突きつけられた時の脱力感といったら……」
 と、そんな話をしながら薬草採取に勤しむふたり。
 時折、視界を阻むような濃霧が出たりするのは、この世界のあるある現象なのだと言われてしまえば、それで納得するしかないと思うジェラルドだった。

※※※

 体を起こし、拘束を解かれたオーレン(仮名)と対峙するハンク。
 ピエロくんは、どちらの味方にもならないスタンスを貫くらしい。
 どうしてオーレン(仮名)が寝たふりを続けていたのか。
 気づいていながらなにもしなかったピエロの真意は?
 汽車の客室車両は一触即発の事態になっても不思議ではない、異様な緊迫感が漂っていた。
 そこに……。

「ど~も~。戻ってきたよん。ちゃんと薬草も取ってきたし。ひと仕事終えた俺たちを労って欲しいな~……なんてね」
 と、チャラい口調と態度でマックス(仮名)が戻り、続いて眉間にしわを寄せたジェラルドが帰還する。
 ジェラルドとしては、半分おふざけモードのマックス(仮名)にイラッとしたようだ。
 マックス(仮名)としては、そこで冷たい対応か、ツッコミかを期待してのことだったが……

「あれ? なに、もしかして、バレちゃってんの?」
 なんともいえない空気に気づき、ピエロくんを見た。
「……ダカラ、セツメイ、シタホウガ、イイ。ト、イッタ」
「いや。だって、どのタイミングで? 思念以外で伝えるって無理でしょ。アイコンタクト? そんなんでわかりあえるほど、親密なつき合いないよ、俺たち」
「コッチニキテスグ、ハナス。デキタ」
「説明している時間は惜しかった」
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