幸せを願う
「んっ…」
天は上半身を起こし、ベッドの近くにある時計を見た。
10時26分
「んー…ちょっと寝過ぎたかな…」
今日は久しぶりのオフだ。毎日のようにミュージカル『三日月狼』の練習があったのだが、たまには息抜きも必要だというプロデューサーの意向で、オフになったのだ。
天は、少しうとうとしながら、自室を後にし、リビングへと向かった。
…………………………
天はリビングを見渡した。
「あれ…誰もいない…」
うーん…龍がいないのはわかる。確か…Re:valeさんと約束があるって言ってたな…まさかRe:valeさんとオフが被るなんて!って嬉しそうにしてた。
僕にも百さんから、「天も来なよ〜」って言われたけど、ごめんなさいって断った。その日は大事な予定があるんです。って…龍も気を遣ってくれたみたいだね。ちょっと申し訳ないな。
龍に心の中で謝りながら、天は、今日、一緒に過ごす予定のあの男のことを思い出した。
「あの寝坊助さんを起こしに行かないと。」
天はふふっと笑いながら嬉しそうに楽の部屋へと向かった。
…………………………
(ガチャ)
「がく。起きて。」
「すー…すー…」
…起きる気配がない。身体を揺すってみても起きない。
「ねぇ。がく。起きて。今日は一緒にドライブするんでしょ。もうお昼になるよ。」
「………」
「………もう知らない。」
天は部屋を後にしようと思ったが、
「んっ…………天…」
「あ、がく?起きたの…?」
天は振り返って楽の方を見た。
「すー…すー…」
「あははっ寝てる時でも僕のこと呼んでるの?」
天は楽の寝てるベッドに座り、満足げに笑った。
まぁ、今日はオフだし…寝かせてあげても良いかな。ドライブなんていつでも行けるしね。
(チラッ)
(すー…すー…)
………やっぱりかっこいいよね…。流石、抱かれたい男No.1。(今は、〝元〟No.1だけど…)
天は苦笑いしながら、楽の頬を撫でた。
まさか僕が、誰かと付き合うなんて…それも男で同じチームのメンバー…。あっちでレッスンしてた頃には考えられなかった。
いや、僕がまだ『七瀬天』の頃でも考えられなかったな。
あの頃の僕は、誰にも何も求めなかった。自分に利益が無くても幸せだった。僕を見て喜んでくれる人がいるなら…そう思い込んでた。
でも、TRIGGER…楽と龍に出会ってから、僕は少し変わった。
この2人はファンのみんなは勿論、僕をも悦ばせようとしていた。僕はずっと自分ことなんてどうでも良いと思って生きてきた。だから、最初は本当に迷惑でしょうがなかった。今まで僕が守ってきたものを簡単に壊されるようで怖かったんだ…。
でも、龍と楽はそれが怖いことじゃないって教えてくれた。
………龍なんて…
「天が甘えてくれると嬉しいんだよなぁ〜!俺たちは歳上なんだから、もっと甘えてくれて良いのに!」
なんて前に言ってたな。よく恥ずかし気も無く言えるよね。龍の素直さは尊敬しちゃうよ。
楽も…付き合う前からもそうだけど…付き合うようになったら…とことん僕を甘やかすようになった。本当にもう…恥ずかしいくらいに。
僕がちょっと調子悪いな…と思ったら、すぐに気付いて「休んでろよ。」なんて言うし…少し落ち込んでいたときは「ほら、これ食え。なんかあったんだろ?話くらい、いつでも聞くよ。」って言って、ずっと側に居てくれたんだ…。もう、甘やかしすぎでしょ。
僕は未だに、昔は考えもしなかった自分がいるのがちょっと怖いけど…こういうのも悪くないな。って最近思えるようになってきた。本当、これも…2人のせい…いや、2人のおかげかな。
天がそんなことをぼんやり考えていたとき、
「ん…天…おはよ」
楽が目を覚ました。
天は慌てて楽の頬をから手を離そうとした。
「あ、楽。おは…」
しかし、そのとき、楽は天の手を掴み、手の甲にキスをした。
「!?!?!?起きてすぐ何なの!?」
天は耳まで赤くしながら、楽に言った。
「いやぁ…なんか朝から可愛いことしてんなぁ〜と思ってさ。」
…この男は………ほんとにもう………
「ん?何?嫌だったのか?」
「いや、そういう訳じゃないけど…というか、嫌じゃないってわかって言ってるでしょ。」
「ははっ、まあな。」
楽は満足そうに笑った。
楽は伸びをしながら、
「んーなぁ〜天、今何時?」
「11時前だよ。」
「うわ、まじか…寝過ぎたな…」
「しょうがないよ…疲れてるんだから。ミュージカルの練習も楽が一番大変なんだから…」
これも、前の僕なら、「休日だからって気を緩めすぎ。プロの自覚あるの?」とか言ってたんだけど…いつからこうなっちゃったのかな。それもこの男のせいだけど。天は自分の変わりように呆れながらも嬉しそうに微笑んだ。
「なぁ、天。」
楽がいきなり、しっかりとした口調で天に話しかけた。
「なに?」
「やっぱりお前のこと好きだわ。」
楽は天の頬に手を添え、天の目を真っ直ぐ見つめて言った。
天は一気に顔がりんごみたいに赤くなった。
「っ!!本当、いきなり何なの!?」
天は楽から目を逸らす。
「んやぁ、なんつうか、朝に好きな人が起こしてくれるって良いな〜って思ったからよ。」
「そう…」
この男は呼吸するみたいに恥ずかしいことを言うんだから。僕の心臓が何個あっても足りないよ。
楽はそんな天の様子に満足したのか、勢いよく身体を起こして、
「よし!天!遅めの朝飯食って、出掛けんぞ!前に天が行きたいって言ってたとこ行くか。朝飯はホットケーキで良いだろ?」
「果物もたくさん乗っけてね。」
「ははっ!わかったよ。」
楽はご機嫌に鼻歌なんか歌いながら、キッチンへと向かった。
楽の部屋に1人残った天は、この幸せな日がずっと続きますように…
………なんて前の僕が見たら怒られそうなことを考えながら、楽の後ろを追ってキッチンへと向かった。
天は上半身を起こし、ベッドの近くにある時計を見た。
10時26分
「んー…ちょっと寝過ぎたかな…」
今日は久しぶりのオフだ。毎日のようにミュージカル『三日月狼』の練習があったのだが、たまには息抜きも必要だというプロデューサーの意向で、オフになったのだ。
天は、少しうとうとしながら、自室を後にし、リビングへと向かった。
…………………………
天はリビングを見渡した。
「あれ…誰もいない…」
うーん…龍がいないのはわかる。確か…Re:valeさんと約束があるって言ってたな…まさかRe:valeさんとオフが被るなんて!って嬉しそうにしてた。
僕にも百さんから、「天も来なよ〜」って言われたけど、ごめんなさいって断った。その日は大事な予定があるんです。って…龍も気を遣ってくれたみたいだね。ちょっと申し訳ないな。
龍に心の中で謝りながら、天は、今日、一緒に過ごす予定のあの男のことを思い出した。
「あの寝坊助さんを起こしに行かないと。」
天はふふっと笑いながら嬉しそうに楽の部屋へと向かった。
…………………………
(ガチャ)
「がく。起きて。」
「すー…すー…」
…起きる気配がない。身体を揺すってみても起きない。
「ねぇ。がく。起きて。今日は一緒にドライブするんでしょ。もうお昼になるよ。」
「………」
「………もう知らない。」
天は部屋を後にしようと思ったが、
「んっ…………天…」
「あ、がく?起きたの…?」
天は振り返って楽の方を見た。
「すー…すー…」
「あははっ寝てる時でも僕のこと呼んでるの?」
天は楽の寝てるベッドに座り、満足げに笑った。
まぁ、今日はオフだし…寝かせてあげても良いかな。ドライブなんていつでも行けるしね。
(チラッ)
(すー…すー…)
………やっぱりかっこいいよね…。流石、抱かれたい男No.1。(今は、〝元〟No.1だけど…)
天は苦笑いしながら、楽の頬を撫でた。
まさか僕が、誰かと付き合うなんて…それも男で同じチームのメンバー…。あっちでレッスンしてた頃には考えられなかった。
いや、僕がまだ『七瀬天』の頃でも考えられなかったな。
あの頃の僕は、誰にも何も求めなかった。自分に利益が無くても幸せだった。僕を見て喜んでくれる人がいるなら…そう思い込んでた。
でも、TRIGGER…楽と龍に出会ってから、僕は少し変わった。
この2人はファンのみんなは勿論、僕をも悦ばせようとしていた。僕はずっと自分ことなんてどうでも良いと思って生きてきた。だから、最初は本当に迷惑でしょうがなかった。今まで僕が守ってきたものを簡単に壊されるようで怖かったんだ…。
でも、龍と楽はそれが怖いことじゃないって教えてくれた。
………龍なんて…
「天が甘えてくれると嬉しいんだよなぁ〜!俺たちは歳上なんだから、もっと甘えてくれて良いのに!」
なんて前に言ってたな。よく恥ずかし気も無く言えるよね。龍の素直さは尊敬しちゃうよ。
楽も…付き合う前からもそうだけど…付き合うようになったら…とことん僕を甘やかすようになった。本当にもう…恥ずかしいくらいに。
僕がちょっと調子悪いな…と思ったら、すぐに気付いて「休んでろよ。」なんて言うし…少し落ち込んでいたときは「ほら、これ食え。なんかあったんだろ?話くらい、いつでも聞くよ。」って言って、ずっと側に居てくれたんだ…。もう、甘やかしすぎでしょ。
僕は未だに、昔は考えもしなかった自分がいるのがちょっと怖いけど…こういうのも悪くないな。って最近思えるようになってきた。本当、これも…2人のせい…いや、2人のおかげかな。
天がそんなことをぼんやり考えていたとき、
「ん…天…おはよ」
楽が目を覚ました。
天は慌てて楽の頬をから手を離そうとした。
「あ、楽。おは…」
しかし、そのとき、楽は天の手を掴み、手の甲にキスをした。
「!?!?!?起きてすぐ何なの!?」
天は耳まで赤くしながら、楽に言った。
「いやぁ…なんか朝から可愛いことしてんなぁ〜と思ってさ。」
…この男は………ほんとにもう………
「ん?何?嫌だったのか?」
「いや、そういう訳じゃないけど…というか、嫌じゃないってわかって言ってるでしょ。」
「ははっ、まあな。」
楽は満足そうに笑った。
楽は伸びをしながら、
「んーなぁ〜天、今何時?」
「11時前だよ。」
「うわ、まじか…寝過ぎたな…」
「しょうがないよ…疲れてるんだから。ミュージカルの練習も楽が一番大変なんだから…」
これも、前の僕なら、「休日だからって気を緩めすぎ。プロの自覚あるの?」とか言ってたんだけど…いつからこうなっちゃったのかな。それもこの男のせいだけど。天は自分の変わりように呆れながらも嬉しそうに微笑んだ。
「なぁ、天。」
楽がいきなり、しっかりとした口調で天に話しかけた。
「なに?」
「やっぱりお前のこと好きだわ。」
楽は天の頬に手を添え、天の目を真っ直ぐ見つめて言った。
天は一気に顔がりんごみたいに赤くなった。
「っ!!本当、いきなり何なの!?」
天は楽から目を逸らす。
「んやぁ、なんつうか、朝に好きな人が起こしてくれるって良いな〜って思ったからよ。」
「そう…」
この男は呼吸するみたいに恥ずかしいことを言うんだから。僕の心臓が何個あっても足りないよ。
楽はそんな天の様子に満足したのか、勢いよく身体を起こして、
「よし!天!遅めの朝飯食って、出掛けんぞ!前に天が行きたいって言ってたとこ行くか。朝飯はホットケーキで良いだろ?」
「果物もたくさん乗っけてね。」
「ははっ!わかったよ。」
楽はご機嫌に鼻歌なんか歌いながら、キッチンへと向かった。
楽の部屋に1人残った天は、この幸せな日がずっと続きますように…
………なんて前の僕が見たら怒られそうなことを考えながら、楽の後ろを追ってキッチンへと向かった。
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