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原作: その他 (原作:キングオブプリズム) 作者: iou
目次

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この過ちをどうか神様、お許しください。




雪降る街のネオンが今晩だけは、僕らの姿を隠してくれる。

どうか、僕に触れて。
温かい指先で
この怖い夢を忘れさせて。



ルヰは縋る様にその太い腕に顔をうずめて
歌うように枯れた声を出した。





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報われないとわかっていても、
こんなにも愛してしまうものなのか。

いつもの道へ
この道の途中はこんなにも寂しいものなのか、愛とは。




ルヰが空を見上げると、
空は既に日の光は落ち辺りを闇へと包んでいた。



暗闇を覆う雲は、僕の姿を否定しているのかな。
寂し気な木々たちは葉もつけずに揺れている。
冷たい風が、頬を刺すようだ。



「もうすぐ、雪が降るね。」


ルヰはいつものようにシンの前に現れた。



胸が跳ねる。
鼓動が早くなることが自分でもわかる。

こんなに寒いのに、顔が熱を持つようだ。
体温が上がっていくのを感じて、ルヰは思わず笑顔になる。

短髪の青い髪が太陽にキラキラと光って綺麗だ。
赤い瞳はあの頃を思い出すような深さだ。


「ル、ルヰくん」
神出鬼没だなぁ、と腰を抜かして笑うシンは、
本当に優しい人になった。


君が笑うと、嬉しいんだ。


「会いに来たよ。」

今晩も。君に会いたくて。




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「ねぇ、シン。
最近は、どう?学校は、寮は、楽しい?」


「ん?え、あーうん。楽しいよ。
料理がうまい人、お裁縫がうまい人、
色んな人がいて楽しいんだ。」

「ふふふ、本当に色んな人がいるんだね。」


「そうなんだ、女の人みたいにきれいな人や可愛い人もいてね」



月明かりが照らす、いつものベンチに二人で腰を並べる。
この、たわいのない会話は一体いつまで続くのだろうか。
ルヰはうつむく。


「僕も同じ学校だったらな。
そうしたら、シンとずっと一緒にいられるのに。」


シンは、ルヰの顔が暗くなったことに焦りを覚えた。



「ルヰくん、悲しまないで」


ルヰの銀色の髪に触れる。
綺麗だなぁ、月の日が利が透けて見えるようだ。


「ふふふ、大丈夫。」


表情を変えて顔をあげて微笑むルヰに安心する。




でもね、シン、


僕の事を覚えていない君は、
僕に取って一体何なのか、
僕を覚えていない君にとって僕は一体君の何なのか。










好きだよ。
と答えを出してしまえばどんなに楽か。




「シンはクリスマス、何をしているの?」

「うーん、多分、エーデルローズのみんなでパーティだと思うなぁ」

「そっか、」

「シュワルツローズは何かするの?大きなパーティをしそうだよね、とても凄い学校だから。」」

「う・・・ん、きっと仁が何か企画するんじゃないかな。」

「それは、楽しみだね!」


シンの屈託のない笑顔にルヰの心は痛むばかりだった。

好きな人がいるのはつらいことだ。
僕がどんなに思っても、君は僕を愛してはくれないのだろうか


「もう、帰らなきゃ。」


「え?もう?」

「うん。」






木々のきしむ音が聞こえる。









送るよ、とシンが立ち上がる。


ルヰはシンの背中を目で追うと


「シン、のことが・・・っ」



咄嗟に口がついた



「え?」


どうしたの?ルヰくん

木々のどよめきでシンの声が小さく聞こえる。





あの時みたいだ。
シンの声がどんどん聞こえなくなっていく。

だめだ、こわい。


「大丈夫?ルヰくん?」


「う・・・ん・・・。」




具合が悪くなったら言ってね。

ルヰは、純粋な笑顔で手を出すシンに続きを伝えることはできなかった。
今のこの関係を崩してしまうわけにはいかない。







今日こそは伝えたい。
そう、さもしい夜を独りで過ごすには、もう充分苦しんだはずだ。

でも、まだ、言えないんだ。

早くその日が来てほしい。
あわよくば、それが今日であるように。


お気に入りの靴に願った想いは、
儚くも散っていったのだ。







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シンに会うために、この地にやってきたルヰは、
もう一度会えば何かを得られるのではないかと思っていた。

シンはルヰにとって初恋の人だった。
初恋とは、意地になっても一緒になりたいと願うものだ。

現に、ルヰも時空を超えてしまうほどにシンに焦がれて会いに来た。

ルヰはシンに毎日毎日会いに来ては、あの頃のことを思い出して欲しくないような、
欲しいような複雑な気持ちに襲われる。



再びであったシンは、昔とは違い心が全く変わってしまったように
こちらの気持ちに全く気付かない人間になっていた。


もし神様がいるのなら、シンを再び作った理由は何なのだろう。
誰もお添えてくれない不思議なこの世界に取り残されて
全ての真実を知っているのは自分だけであること
この現実を抱えられなくなるほどに
時には悲しく、寂しくなることは誰にでもあることだ。
もちろん、ルヰにも。






「僕はもう、ダメ、かも。」


ポソリとルヰはつぶやいた。
その小さな声は、冬の冷たい風にさらわれてシンの耳には届かなかった。
















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シン、こんな僕でごめんね。




唐突に現れるのは、彼への気持ちを止められないから、
そして彼へ約束を取り付けるのが怖いから。







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「仁」


「おぉ、ルヰどうした。」


「僕は、どうしたらいいのかな。」


「ルヰは、ルヰのままでいいんだよ。」







いつでも優しく僕を受け入れてくれる仁。

でも、この人じゃだめだ、この人じゃ、弱すぎる。

僕の心を受け止めてくれるかもしれない。
でも、弱いんだ。
この人が僕を受け入れてくれるのは、
僕への愛情のほかに、憎悪がある。


違うんだ、僕は、
僕は自分と同じ気持ちを持った
苦しさを知っている人と、
今晩は一緒にいたい。





ルヰは、仁の胸に両手を置き、
仁から体を離すと、眼を見てそっと微笑んだ。



そう、今じゃない。


そして、別だ。




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