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少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
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34話


「あのさ、別にいいけどね?何か銀さん最近出番少なくない?」

「何の話でしょうか」

三が日も無事に終え、今年に入って最初の開店の日。
去年の分の在庫は去年のうちに捌ききれたため、新年からは気持ちと共に切り替えて新しい商品を前に出していくことにしようと心機一転綺麗な気持ちで開店したというのに、あからさまに不機嫌なオーラを纏って来られた万事屋さんは、店内に入って来るなり椅子に座って貧乏揺すりをはじめられた。新年早々にこうも感情を爆発させている人も、きっと万事屋さんくらいじゃないだろうか。

「何があったのですか?」くらいは聞いた方がいいのだろうが、何だかロクな事じゃない気もして背中を向けて在庫整理をし始める。今年はまだ始まったばかりと言えど、初めが肝心と言うし、こういう事に早すぎるというのもないだろうと帳簿を開いていると後ろから大層不満そうな声が聞こえてきた。

あ、皆さま新年あけましておめでとうございます。
昨年は色々とお世話になりました、今年もどうぞ末永くよろしくお願い致します。

「誰に挨拶してんのよ」

「常連のかたに少々」

いつ如何なる時も挨拶は重要ですね。
人との関係を円滑に進めていく為にも、笑顔で挨拶をするところから始まります。
万事屋さんはそんな「挨拶」には興味がないようで、目を細めて不貞腐れたようにされている。

「ふーん。それよりお前さ、ほら、銀さんこんだけ落ち込んでるんだから一声かけるべきじゃない?」

「あ、落ち込まれていたんですね」

てっきり怒っているのかと思いましたが。
それにしても新年早々そんなに怒ることがあるでしょうか。
何だか万事屋さんの様子から見るに、私も関係してそうな雰囲気ですし。
しかし、万事屋さんに最後にお会いしたのは年明けの、そう、クリスマスパーティーを開いたとき以来。
それから全くお会いしていなかったし、神楽さんと新八さんはお妙さんと3人で初詣の前に顔を出してくれて、その時に少しお喋り出来ていましたが、それ以降は何も。

「あ、そうでしたね。忘れていました」

「思い出した!?」

「あけましておめでとうございます、本年度もどうぞよろしくお願いいたします。」

そうでしたね、万事屋さんにお会いしたのは27日。
まだ年明け前で「よいお年を」と挨拶を交わしたっきりでした。
そりゃ怒りますよね、挨拶が云々と言いながら万事屋さんにしていなかったのですから。
とんだ失礼を、とお詫びすると、口元を引く付かせた万事屋さんがブンブンと顔を横に振るわれた。

「新年の挨拶されなくて拗ねてんじゃねぇんだよ!ガキか俺は!」

「あ、拗ねていたのですね」

「ネタは上がってんだぞサラ子お前、多串君や沖田君とはそこそこ会ってんのに何でお前この街で最初に会った俺との絡みは少ないわけ!?」

「この街で最初に出会ったのは向かいの和菓子屋さんのご主人ですけど」

「そういう事じゃなくてだな!?」

そういう事じゃないならどういうことなのだろうか。
小首を傾げた私に万事屋さんが頭を抱えて何かを叫び始めると、ガバッと顔を上げられ「多串君達と会ってたのは否定しねぇんだな!?」とクワッと瞳孔を開かれた。

「多串君というかたを知らないのですが」

「多串君は多串君だろうがよ。家にでっかい金魚買ってて、漫画借りパクされ続けてる多串君」

「そんな空しい過去を引きずっている方のお知り合いはいない筈ですが」

「何お前記憶喪失?ほら、俺が此処にいると年中来るだろうがよ。犬の餌が主食のマヨネーズの妖怪」

犬の餌?マヨネーズの妖怪?
分からない単語が多い万事屋さんの会話に着いていけず困ってしまう。
もしかして万事屋さん勘違いしているのではないだろうか。それか酔っぱらっているのかもしれない。
万事屋さんは江戸の中でもかなり名前が知られた人なのは知っているし、万事屋さんに比べれば私の交友関係なんて足元にも及ばないだろう。そんな万事屋さんと共通の知り合いはかなり限られているし、お客さんの中にもそんな人いたらきっと思い出すと思うのだけれど。

「何だよ知らないふりして銀さんの詰問から逃れようってのか?別にぃ?お前があのニコチン野郎と仲良くても銀さん気にしてないけどぉ?アイツなんて最近ぽっと出てきた奴なのに何俺より出張ってんだよとか思ってないけど。マヨリン大国でもどこでも行けよなんて思ってないけど!?」

「誰がニコチン野郎だ、誰が」

「だあああ!?急に背後に立つのやめてくんない!?」

椅子から転げ落ちる勢いで後退った万事屋さんの後ろから来たのは土方さんだった。
片手を軽く上げて挨拶してくれた土方さんと新年の挨拶を交わしていると、いつの間にか立ち上がっていたらしい万事屋さんが私を押しのけて土方さんにメンチを切り始めた。

「おい、こいつは何で今日は一段と鬱陶しいんだ?」

「さあ、私にもよくわからないのですが…怒っていて、落ち込まれていて、拗ねているようです」

「いつにも増してめんどくせぇな」

メンチを切る万事屋さんを相手にしない土方さんは「いつものくれ。あとこの前の薬草茶」と注文をされ始めて、最初は万事屋さんの方が気掛かりだったけれど注文票を片手に今は仕事に集中することにした。

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