常守朱を追って
「俺たちがそちらに? それは可能なのか?」
宜野座がチェ・グソンを見、次に征陸をみた。
朱がそっちに連れられたのなら追いかけるしかない。
しかし、単独ではなく一係全員。
「できるかできないかでいえば、できます」
チェ・グソンは少しひっかかる言い方をした。
「その説明は不親切だな」
征陸が助け船を出す。
「前にも話したが、意思を無視して飛ばすのは難しいが、本人にその意思があれば可能だ。何人か経験者がいれば、なお成功率があがる。成功率がってところが厄介でな、思いを合わせる必要がある。だからあまりやらない。飛ぶときは単独が多い。今回、常守監視官を救うという気持ちが合わさることで可能かもしれない」
「とっつあんの考えも一理だ。だが、なぜ監視官をあちらに連れ去る必要がある? これは罠じゃないか。一係ごと移動させる。この世界に一係がそっくりいなくなることで得する者がいるんじゃないか?」
「コウの考えも捨てがたいが、勘ぐっていたらキリがない。おまえのいう、あの方ってあいつだろう? あいつが一係を呼び寄せたいがために、東金朔夜を利用した可能性もある」
「刑事の考えか。たしかに、警察からはよく思われていないことは自覚しているが、こんなまどろっこしいことをいるか?」
あの方が誰のことを指しているのかがわからない執行官たちは、黙って見守るしかない。
だが、ただおとなしく成り行きをみているのももどかしい。
「おい、征陸」
割り込むように宜野座が征陸を指名する。
「あんたが見つけた映画館のトイレの入り口。あれを確認するのはどうだ? 戻れば存在が薄くなり、まだ戻っていなければ、あんたにはわかるんだろう? それで東金がどこにいるかがわかるんじゃないか?」
「執行官の言っていることももっともだ。だが、チェ・グソンがこっちの東金財団には連れられていないと言っている。たぶん、それは本当のことだ。悔しいが、警察の調査力よりこいつらの方が上だ。とくにチェ・グソンはあらゆるネット社会に精通している。情報収集能力も長けている。そのチェ・グソンがいないというなら、いない。賭けてもいい」
「だから、別の世界に連れていかれたというのも飛躍しすぎている」
宜野座としては、別世界への移動は避けたい。
別世界に行くことでどうなってしまうのか、想像ができないからだ。
だが、朱をこのままにしておくつもりはない。
「執行官のいいたいことはわかる。刑事っていうのは決め付けで行動るのは危険だ。選択肢、可能性はいくつもあると思って行動することはいい。捜査員を分散できるなら可能性は広がるが、こっちの刑事は人手不足なんだろう? なら、大博打にうってでるしかないんじゃないか」
「ふざけるな! あんたたちは慣れたことかもしれない。だがこっちはなにもかもがはじめてのことだ。ひとりが行くというならまだいい、だが全員っていうのは」
どうする? と宜野座が須郷に助けを求めるような視線を送る。
霜月はあてにできない。
六合塚や唐之杜は大それた行動はしないだろう。
ここで決断するほどの行動はしない。
「自分は……」
「求められた須郷は言葉を詰まらせながらも、なんとか自分なりの考えを伝えようと言葉を探す。
「自分は……二手に分かれるのがいいと考えます。監視官はこちらに残し、何か理由をつけ執行官のふたりが別世界へと行き、常守監視官とともに戻る。なぜいないのか、それは霜月監視官に嘘の報告をしてもらいことでごまかせるでしょう」
だが、霜月は反対をする。
これ以上、面倒なこと厄介なことはイヤだとヒステリックに主張する。
来訪者側も一係側も結論がでずにいる。
落としどころを探そうにも、すべてが仮説でしかないため、決定打に欠けすぎていた。
見かねたチェ・グソンが言葉を挟む。
「まとまらないようなのでもう一度いいますが、こちらの東金財団に彼女はいませんよ? それでも東金財団を訪ね探すのですか?」
「だからってこの世界にいないという証拠もないだろう」と宜野座。
「別世界に行くのは最終手段がよいのでは?」と須郷。
「私だの時に厄介ごとはやめて。勝手な行動はダメよ」と霜月。
「どうでもいいが、早く決めないと監視官の危険が増すぜ」と煽る狡噛。
「そんなことはわかっている。慎重に動くことは悪くはない。もっと確実な証拠を出せないのか」と征陸。
それぞれが各々の主張をし、妥協がない。
捜査に妥協など不謹慎だが、征陸の言うように確実な証拠がないのが決断に欠けるのだという意見はもっともなことだった。
この時まで傍観者でいた六合塚が動いた。
響くほどの音、それが壁を叩いた音だと気づくまでやや時間がかかる。
音を出した人物が六合塚だとわかると、なぜだかわからないが、背筋がゾクリとした男性陣だった。
「いい加減にして。最優先は常守監視官の奪還でいいのよね? というか、当たり前でしょう? 証拠は集めればいい。そこのチェ・グソンはそういうことに長けているのでしょう? どれくらいの時間があればいいの? 公安局の持つ情報網も必要? 緊急事態なのよ、人員不足なら効率性を優先にすればいいだけでしょう?」
そして六合塚は霜月美佳をみた。
宜野座がチェ・グソンを見、次に征陸をみた。
朱がそっちに連れられたのなら追いかけるしかない。
しかし、単独ではなく一係全員。
「できるかできないかでいえば、できます」
チェ・グソンは少しひっかかる言い方をした。
「その説明は不親切だな」
征陸が助け船を出す。
「前にも話したが、意思を無視して飛ばすのは難しいが、本人にその意思があれば可能だ。何人か経験者がいれば、なお成功率があがる。成功率がってところが厄介でな、思いを合わせる必要がある。だからあまりやらない。飛ぶときは単独が多い。今回、常守監視官を救うという気持ちが合わさることで可能かもしれない」
「とっつあんの考えも一理だ。だが、なぜ監視官をあちらに連れ去る必要がある? これは罠じゃないか。一係ごと移動させる。この世界に一係がそっくりいなくなることで得する者がいるんじゃないか?」
「コウの考えも捨てがたいが、勘ぐっていたらキリがない。おまえのいう、あの方ってあいつだろう? あいつが一係を呼び寄せたいがために、東金朔夜を利用した可能性もある」
「刑事の考えか。たしかに、警察からはよく思われていないことは自覚しているが、こんなまどろっこしいことをいるか?」
あの方が誰のことを指しているのかがわからない執行官たちは、黙って見守るしかない。
だが、ただおとなしく成り行きをみているのももどかしい。
「おい、征陸」
割り込むように宜野座が征陸を指名する。
「あんたが見つけた映画館のトイレの入り口。あれを確認するのはどうだ? 戻れば存在が薄くなり、まだ戻っていなければ、あんたにはわかるんだろう? それで東金がどこにいるかがわかるんじゃないか?」
「執行官の言っていることももっともだ。だが、チェ・グソンがこっちの東金財団には連れられていないと言っている。たぶん、それは本当のことだ。悔しいが、警察の調査力よりこいつらの方が上だ。とくにチェ・グソンはあらゆるネット社会に精通している。情報収集能力も長けている。そのチェ・グソンがいないというなら、いない。賭けてもいい」
「だから、別の世界に連れていかれたというのも飛躍しすぎている」
宜野座としては、別世界への移動は避けたい。
別世界に行くことでどうなってしまうのか、想像ができないからだ。
だが、朱をこのままにしておくつもりはない。
「執行官のいいたいことはわかる。刑事っていうのは決め付けで行動るのは危険だ。選択肢、可能性はいくつもあると思って行動することはいい。捜査員を分散できるなら可能性は広がるが、こっちの刑事は人手不足なんだろう? なら、大博打にうってでるしかないんじゃないか」
「ふざけるな! あんたたちは慣れたことかもしれない。だがこっちはなにもかもがはじめてのことだ。ひとりが行くというならまだいい、だが全員っていうのは」
どうする? と宜野座が須郷に助けを求めるような視線を送る。
霜月はあてにできない。
六合塚や唐之杜は大それた行動はしないだろう。
ここで決断するほどの行動はしない。
「自分は……」
「求められた須郷は言葉を詰まらせながらも、なんとか自分なりの考えを伝えようと言葉を探す。
「自分は……二手に分かれるのがいいと考えます。監視官はこちらに残し、何か理由をつけ執行官のふたりが別世界へと行き、常守監視官とともに戻る。なぜいないのか、それは霜月監視官に嘘の報告をしてもらいことでごまかせるでしょう」
だが、霜月は反対をする。
これ以上、面倒なこと厄介なことはイヤだとヒステリックに主張する。
来訪者側も一係側も結論がでずにいる。
落としどころを探そうにも、すべてが仮説でしかないため、決定打に欠けすぎていた。
見かねたチェ・グソンが言葉を挟む。
「まとまらないようなのでもう一度いいますが、こちらの東金財団に彼女はいませんよ? それでも東金財団を訪ね探すのですか?」
「だからってこの世界にいないという証拠もないだろう」と宜野座。
「別世界に行くのは最終手段がよいのでは?」と須郷。
「私だの時に厄介ごとはやめて。勝手な行動はダメよ」と霜月。
「どうでもいいが、早く決めないと監視官の危険が増すぜ」と煽る狡噛。
「そんなことはわかっている。慎重に動くことは悪くはない。もっと確実な証拠を出せないのか」と征陸。
それぞれが各々の主張をし、妥協がない。
捜査に妥協など不謹慎だが、征陸の言うように確実な証拠がないのが決断に欠けるのだという意見はもっともなことだった。
この時まで傍観者でいた六合塚が動いた。
響くほどの音、それが壁を叩いた音だと気づくまでやや時間がかかる。
音を出した人物が六合塚だとわかると、なぜだかわからないが、背筋がゾクリとした男性陣だった。
「いい加減にして。最優先は常守監視官の奪還でいいのよね? というか、当たり前でしょう? 証拠は集めればいい。そこのチェ・グソンはそういうことに長けているのでしょう? どれくらいの時間があればいいの? 公安局の持つ情報網も必要? 緊急事態なのよ、人員不足なら効率性を優先にすればいいだけでしょう?」
そして六合塚は霜月美佳をみた。
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