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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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潜在犯

 唐之杜が朱と「新しいなにかを見つけたら連絡をする」と口約束をしてからしばらくたった頃、その「新しいなにかを見つけたら」が現実となる。
「朱ちゃん、今どこ?」
「唐之杜さん? 今、一旦家に戻ろうと駐車場です。なにかありましたか?」
「あったねなにも、ちょっとこれ、どういうことかしらね? 説明するより戻ってきてくれると助かるわ。で、ついでに宜野座くんも」
「宜野座さんも?」
「私だけじゃ……今、弥生がこっちにいるから、四人で一度確認したいのだけど」
「わかりました。宜野座さんには私から連絡して向かいます」

※※※

 分析室の前で朱と宜野座がいいタイミングで到着し、ふたり揃って中に入ると、唐之杜と六合塚のふたりが怪訝そうな表情を浮かべていた。
「なにがあったんですか?」
 ただならぬ雰囲気に朱が声をかけると、
「説明よりこの動画を見てくれない?」
 と、唐之杜がモニターに問題の動画を映し出した。

 動画は見慣れた街中、そこで対峙している男がふたり。
 しだいに男の顔がアップになっていくと、朱と宜野座が同時に疑問符付きの問いかけをその場にいたふたりにした。
「私に聞かないでよ。こっちが知りたいくらい」
 と六合塚。
「朱ちゃんたちがそう反応するってことは、やっぱり私たちの知っている人物ってことでいいのよね? だとしたら、どういうことかな? 慎也くんについてはいつこっちに戻ってきたのかしら? こんな動画撮られて自殺行為よね? 彼らしくない行動だと思わない?」
 と唐之杜。
 しかし彼女のその言葉を聞き終えるや否や、宜野座が声をあらげる。
「なに暢気な話をしているんだ、おまえたちは! 狡噛のことはいい。こんなところにのこのこ戻ってきたあいつがバカなんだ。自業自得だろう。だが、その狡噛と対峙しているあの男はなんだ? まさか、あれを征陸だという気じゃないだろうな? あの男、征陸は死んだ。俺の目の前で死んだんだ。その男がなぜ生きている?」
 たしかにそうだと頷く者もいる。
 朱は違った。
「死者が生き返ることなんて、それこそ創作の中の物語だけです。小さい縢くんのことを思い出してください。時代を超えてこの時代に来たと仮定するのはどうでしょう」
「ん~、朱ちゃんの見解も納得できるけど、となると、どの時代の彼かってことよね」
「それなら、息子が直接話しかければいいのでは?」
「あら、弥生。いいアイデアね」
「……っう、バカか、おまえらは!」
「でも宜野座さん、その考えも一理あると思います。小さい縢くんはこの時代の人、世界観に違和感を持っていました。むしろ廃れた街の方が記憶にあるとさえ……」
「なにがいいたい、常守」
「宜野座さんが征陸さんに声をかけ、その反応を確認します。息子と認識したら演じてください。そして聞きだしてほしい。死者は蘇らない。それは空想の中でのこと。であれば、どの時代から来たのか、どうやって来たのか」
「……多数決でも負けそうだな。わかった。狡噛の方はどうする? 顔色変えずに親父と対峙しているってことは、あいつの正体を知っている可能性がある」
「それはつまり、あの狡噛さんも別の時代から来たという可能性があるということですね」
「考えたくはないが、戻れば拘束されるとわかって戻るバカはそうそういない。もしその危険を犯してまで戻ってくるのなら、それ相応の理由がある。だとして、こんな録画されるようなことをすると思うか、あの狡噛が」
「……考えにくいですね」
「私も、朱ちゃんの考えに一票。弥生もよね?」
 唐之杜に同意を求められた六合塚は小さく頷いた。
「ふっ……よかったよ、考えが一致して。それで、どう動く? 常守」
「……そうですね。とりあえず狡噛さんのことは別に考えましょう。征陸さんの方から接触したいと思います。唐之杜さんは追跡を。六合塚さんと宜野座さんは私と一緒に現地に向かい、直接彼に会いに行きましょう」
「了解した」と宜野座、「OK~」と唐之杜が頷くと、それぞれが動き始めた。

※※※

「監視官」
「なに、六合塚さん」
「例のあの子は同行させないんですか?」
「あ~、小さい縢くんね。たしかにあの子を連れて行きふたりと対面させてみるというのも手だとは思うけど、ここに来てもらえればいいわけだし」
 だが、朱の考えに宜野座が意義を唱える。
「素直に応じるとは思えないがな」
 しかし、そうするよう説得するのが宜野座の役目だとふたりに言われ、反撃をくじかれてしまう。
「一番いいのは、ふたりが今も行動をともにしていること」
「だが、あの映像をみる限り、ふたりの間に信頼関係があるとは思えない。むしろ敵対関係にあると思っていい」
「宜野座さんのその考えに同意するわ。でも、なぜ敵対関係?」
「あいつらの生まれ変わりだか、先祖だかはわからないが、敵対関係になるなにかがあったんだろうな。親父の場合、先祖も子孫も刑事である可能性がある。まあ、俺が潜在犯になったことで子孫の望みは薄い。となると先祖か?」
「宜野座さんのその考えでいくと、狡噛さんの子孫か先祖は前科者ってことね」
「あいつの子孫はそうなる可能性はあるな。今のところ逃亡犯だろう?」
「親がそうだから子も同じとは考えたくはないわね」
「ああ、そうだな」
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