ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第二十九話    趣味を語ろうではないか!


 やって来たバスに、三人は乗り込んでいた。もちろん、モルガナは通学バッグのなかに入り、運転手に見つからないように隠れている。

「……ふー。バスは楽だねー……でも、いつもは、こんな気楽に座れないほどに混雑しているんだよねー……あんまり人混みって、好きくないから、バスとか電車は苦手でござる」

 バスの最奥部にある、ワイドな座席を選びながら、城ヶ崎シャーロットは持論を語った。

『我が輩も人混みはあまり好きじゃないが……去年、さんざん満員電車を体験させられたもんだから、慣れてはいるかもな……蓮は、どうだ?』

「……オレも人混みは好きじゃない。でも、東京の通学ラッシュで慣れた」

「なるほど。そうだよね、レンレンは東京でアジア最大級の混雑っぷりに揉まれて来たんだよね。シャーさん、ちょっと感心するでござるよ」

「ああ。感心してくれ」

『ドヤ顔になりながら、そんなセリフを使える根性がスゲーよ』

「あはは。レンレン、天狗になってる」

「……調子に乗りすぎたか」

『そうだぜ。まったく、蓮はマジメな表情でもボケるし……本気で愉快なことをするユーモア・センスを持っているからな……かなり、変わっているんだよなあ』

「……ふむ?」

 そうなのだろうか?……蓮はモルガナの主張については、同意することが難しい。自分では、ほどよいユーモアを使いながら、日々を楽しく生きて行こうとしているだけなのだが?

「……でも。バス通学は、脚にやさしいなー……乙女としては、脚力がつきすぎて、脚が太くなっちゃうのはイヤなんだよねー。三倍速いシャーさんの脚力を養うのは、良いんだけれど……脚が太くなるのはなー……」

『いい運動になるから、ダイエットになるんじゃないかとも思うケド……女子の悩みは繊細なところがあって、大変なんだな……』

「城ヶ崎の脚は太くないから安心しろ」

『……セクハラじゃないか?……いや、こういうセリフを真顔で言えるから、蓮はスゴいというか……』

「……っ。う、うん」

「自信を持て。城ヶ崎の脚はキレイだぞ」

「も、もう。からかわないでよ、レンレン!!」

 城ヶ崎シャーロットの指が、蓮の右の頬をつまんで、引っ張ってきた。

「……痛い」

「あ。ご、ごめんね?」

「冗談だ。それぐらいじゃ、オレは痛みなんて感じない」

「お、男の子だからか」

「『漢』だからだ」

『テキトーなこと言ってやがる……そういうの言うと、マンガオタクのハートが疼くんじゃないのか……?』

「『漢』……いい響きだ。1980年代のレトロな少年マンガの魂を感じるでござるよ!!シャーさん、そういう生きざま好きでござる!!」

『オタクの心に燃料投下だな……『漢』について、一家言あるような女の子か……城ヶ崎って、やっぱり、どこかモテなさそうなところがあるよなぁ……』

「モルガナが、にゃーみゃー言っているけど、何?」

「……城ヶ崎は熱いオタクだと言っている」

『トゲを抜いた通訳をありがとよ』

「そかー。たしかに、私は燃えるタイプのオタク。武道で言えば、ブラックベルト級のオタクなんだよね。うーん……猫さんにも、伝わるのか、私のオタク・スピリッツ……ウフフ!!ついに、そこまでの境地に至ったんだ、スゴいよ、シャーさん!!」

 なんだか城ヶ崎シャーロットは、えらく自信たっぷりなドヤ顔を浮かべている……。

『本物のオタクだなー……オタク扱いされて、名誉だと思うんだから。まあ、何にしたって、自分が好きなことに、ここまで真剣になれるってことは、人生を楽しめるコツだと思うぜ。蓮も……オタクになれとは言わないけど、いい趣味を見つけろよ?それは、人生を確実に豊かにしてくれるもののはずだぞ』

「……そうだな。探してみよう」

 ……自分の趣味。それは、何だろう?……読書に、体を鍛えること、美術館巡り、名所巡りに、将棋、ゲームセンター通いに、レトロ格ゲー……古い機械の修理……思えば、色々とあるような気がするが……どれが一番の趣味なのかは、蓮自身にも分からなかった。

「……城ヶ崎は、マンガ以外に好きな趣味とかあるのか?」

「うん。色々とあるよねー……美味しいスイーツを食べて、SNSに書くとか!」

『女の子らしいな……』

「作るのか?」

「うー……そういうの作れたら、いい女道の初段ぐらいになれそうな気がするのでござるが……シャーさんは、ヒトの三倍早くお菓子を食べられることぐらいしか、お菓子関連には能力を発揮できないのでござる!!」

『全然、ダメダメじゃないかッ!!』

「……他には、ないのか?」

「あとは、ネット動画かな……ゲームの実況とかも好きなんだ。ホラーとか」

『ホラーか……七不思議を体験した後では、ちょっとイヤなジャンルだな』

「自分でホラーゲームをやるのは、かなり怖くて、夜にトイレに行けなくなってしまうでござるよ……でも、実況ならば、どうでしょう?」

「どうなるんだ?」

「そこそこ、平気なのでござるよ。不思議じゃのう、フォフォフォ」

『……んー。ホラーゲームって、自分で操作する方が怖いのか?』

「キャラクターを操作することで、感情移入を深められるのかもしれないな」

『なるほど』

「鋭い考察だね。レンレンは、レトロゲーム・マスター的な側面を持つ男子高校生だもんね!!」

「そういうことだ」

『そうだっけ?……お前、今日はボケすぎていないか……?』

 
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。