ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

メイ探偵、桂圭吾

ジャンル: コメディー 作者: 渚
目次

メイ探偵、桂圭吾

俺は、コンクリートジャングルで一人、現代の闇と戦い続ける孤高の名探偵、桂圭吾。
オフィス街の隅で、ひっそり建つビルに事務所を構える孤高の名探偵、桂圭吾。

「桂さん。そこ邪魔だから少しどいてくれるかい。」

「あ、どうもすみません大家さん。お掃除の邪魔しちゃって。」

「それはいいんだけど、仕事は順調かい?」

「そりゃぁもちろん。大丈夫ですよ。今日も・・・ね。あれですよ、アレ。」

「アレ?まぁいいけどね。
そういえば先々月から家賃が止まってるけど、本当に大丈夫かい?」

「あ~・・・はい、大丈夫です。
今月からガスも電気も止まっているので、家賃はもうすぐ準備できるはずですから。」

「そうなのかい?大変そうだねぇ。
これでも持っていきな。お茶の新商品だかなんだかよくわからないけど商店街で配っていたからあげるよ。まだ配っていたみたいだから。行けばまだやってるんじゃないかな。」

「は!そういえば仕事があったんです。それでは失礼します。
これはこれでありがたく頂戴します。」

「行っちまったよ。普通にしてればいい人なんだけどねぇ。」

俺は、孤独を愛する名探偵、桂圭吾。
今日の仕事は、企業が街で行っているリサーチのサポートと洒落込むか。
決して、試供品目当てではない!断じて、そんな事はない!
俺は、何でもスマートに解決する名探偵、桂圭吾。

「おねがいしま~す。今、新作飲料の無料配布を行っていま~す。
よろしかったら1本いかがですか~。」

「・・・・・・・・。」

「あ、おねがいしま~す。」

「では、ありがたく頂こう。」

「ありがとうございま~す。」

「・・・・・・・・。」

「新作飲料の無料配布を行っていま~す。
よろしかったら1本いかがですか~。よかったら・・・」

「・・・・・・・・。
では、ありがたく頂こう。」

「あ、ありがとうございます。」

「・・・・・・・・。」

「新作飲料の無料配布を行っていま~す。
よろしかったら1本いかがですか~。お願いしま~・・・」

「・・・・・・・・。」

「もう1本、持っていきますか?」

「・・・・・・・・。
そこまで言うなら、ありがたく頂こう。」

「新作飲料の無料配布を行っていま~す。よろしかったら1本いかがですか~。
・・・また来たんですか?
申し訳ないんですが、何度も配布エリアの周囲2mくらいをずっとウロウロするの止めてもらえますか?他の方にも配りたいので。」

「・・・・・・・・。」

「じゃぁ、あと1本あげますから、これで最後にしてくださいね。」

「そうか、ならば仕方ない。ありがたく頂いて行こう。」

「え・・・別にいらないなら結構ですよ。」

「あ~・・・ごめんなさい!もう少しだけわけて頂けると助かりますぅ。」

「はいはいわかりました。だからもうどっか行ってください。」

「・・・・・・・・。
ありがたく頂いていこうじゃないか。」

俺は、孤高の名探偵、桂圭吾。
企業が行うリサーチ協力も簡単ではない。今回も、正体を隠し企業が持つ新の裏の顔を暴き出すことに成功した。これで、世の中の平和は保たれた。
俺は、平和を愛する名探偵、桂圭吾。
今日の仕事は、なかなかハードで危ない仕事だったぜ。
一旦事務所に戻るか・・・あ、冷蔵庫使えないんだった・・・
俺は、コンクリートジャングルを照りつける暑い日差しとの戦いを制し、事務所に戻ってきた。
俺は、クールで熱い名探偵、桂圭吾。
カツっカツっカツ・・・
事務所に向かう階段を1段1段じっくりと昇る。俺は自分の居場所に向け、コンクリートジャングルを戦い抜き重たくなった足を1歩、また1歩と進めていく。
俺は、どんな戦いにも挑み続ける名探偵、桂圭吾。
ふと顔を上げると、事務所の入り口に見知らぬ女性が立っていた。もしや依頼主?女性に涙は似合わないぜ。きっと、夜も眠れない出来事が彼女を悩ませているのか。
そう何かを直感した俺は、その女性にすぐさま駆け寄った。

「ち、近いです!熱いです!少し離れてくれますか?」

「これは失礼、お嬢さん。こんなところで、何をなさっているのですか?」

「あの、近すぎるので少し離れてください。せめて、息のかからない程度に・・・」

「おっといけない。女性の匂いを嗅ぐのは久しぶり・・・・ではなかった。
あなたの美しさに、つい見とれてしまって。
で、ご依頼ですか?」

「はい、人を探しています。」

「そうですか。では、私と結婚してください。
失礼間違えました。では、事務所の中で話を聞きましょう。」

「・・・何をどう間違えたのか疑問しかありませんが、とりあえず中に入るのはやめておきます。この写真の女性を探してください。報酬は見つかった時にお支払いします。いくらかかっても構いませんので、必ず見つけ出してください。では失礼します。」

そう言って、美しく甘い香りを漂わせていた女性が、俺の前を去って行った。あんなに急いで・・・しょうがない女性だ。しかし、世の中の女性が俺をほおっておけるはずがない。
彼女から手渡された1枚の写真には、彼女ともう一人別の女性の姿が写っていた。きっとこの横にいる女性を探して欲しいという依頼だったんだな。恥ずかしがり屋さんめ。
俺は、罪作りな名探偵、桂圭吾。
俺の手に、1件の依頼が舞い込んできた。それは、人捜し。
彼女からの依頼で手渡された女性を探しに、俺は街に出る。これが俺の仕事だ。
これは、何か匂うな・・・はぁ~・・・さっきの女性の甘い良い香りだ。
じゃなかった、何か事件の匂いがする。
こうして俺は、照りつける太陽と戦いながら、まるで地獄のよう燃え上がる街へと再び足を向ける。誰かが俺を呼んでいる。
だって、俺はコンクリートジャングルで戦い続ける孤高の名探偵、桂圭吾。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。