剣の少年と愉快な山の住人たち(後編)①
男だって怖い時はある。
逃げたい時だってある。
泣きたい時だって結構ある。
しかし、女より逃げられないし泣くこともできない。
だから、影で泣くことがよくある。
誰もいないところで、人に見られないようにこっそりと。
だが、男は堂々と泣くことが出来ないと考えると、世の中、割りと不公平に出来ていると思う……。
次の日。
二人は『迷宮(ラビリンス)』の出口に立っていた。
ハンクの家がゴールだから、ゴールから心臓部に入ろうとしているのだ。
「心臓部にはどうやって行くんですか?」
ライトがザグルに聞く、ライトの背中には大きなリュックを背負っていた。
中にはいつでも野宿が出来る、アウトドアグッズが二人分一式入っている。
それと、ミーファが無理矢理持たせた手作りの弁当と……。
「歩いて行くんだけど? 行ったことないのか?」
ザグルは大きな剣と、少しの荷物だけだった。
ライトが荷物の当番で、ザグルが魔物退治の当番を受け持つことになった為だ。
しかし、ザグルの剣もライトのリュックくらい重いので、重さ的には変わらなかった。
「はい」
「無いのか……」
思わせぶりな口調でザグルは地図を広げた。
「あるんですか?」
「あるよ。一度だけだけどな」
弟子になったばかりの時に、ハンクに連れられたのだ。
理由は特に聞いていないから、正直なところ分からなかった。
もしかしたら、なんの理由も無いのかも知れないし、驚天動地が起こる程の凄い理由があるのかもしれない。
未だに分からないことだけど、聞く必要無いと思っていた。
はっきり言うと、聞くのが無駄だからだ。
行動に予測がつかないハンクに、上手く付き合う手段のひとつであった。
そもそも意味があったらとっくに話しているだろうし……。話すことを忘れてなかったらだけど。
「そうなのですか……」
ライトは少し、暗い表情をした。
「んな、暗い顔すんなよ」
「僕が弟子として認められていないかも知れないじゃないですか」
「そんなことないと思うぞ。師匠、ああ見えて意外となにも考えてないから、案外忘れているだけかも知れないし」
「そうですか?」
「そんなもんだよ」
「はあ、しかし、行ったことあるのに、地図広げてますよね?」
「まあ、基本師匠がいないし、一回しか行ったことないから、地図を広げないと、何処になにがあるか分からないからな~」
『迷宮』だけあって、複雑なのだ。
ちなみに地図はハンクが作ったのではなく、ルミアが作った物だ。
ハンクは頭の中にその地図は入っているから必要ないと言い張り、渋々兄弟子のルミアが作ったのだ。
その地図はほぼ正確な物らしい。
ルミアが何度も足を運び、苦労して作った賜物なのだ。
それをハンクが一応でも目を通したのだ。
そして、合格点を出したから、地図として起用することが出来た。
「さあ、出発するか」
ザグルが先頭で歩き始め、その後ろをくっつくように、ライトがついていった。
『迷宮』の中は一見するとただの森だ。
動物もいるし、花だって咲いている。
山菜などもあり、あまり奥へ行かなければ、魔物にもあまり遭遇しないから、麓にあるハニーの村はライスの森を利用し、日々を生活していた。
しかし、今日の森は少し、どころか大分可笑しかった。
正確には『迷宮』の中にあるライスの森が可笑しいのである。
普段は術とただの森との境が分からず、上手く馴染ませているのだけど、この日だけは静かで気味が悪かった。
昨日、ザグルが同じ森を通った時もそんな感じにはなってなかった。
「気味が悪いですね……」
「確かに」
ライトの質問に答え、自分なりに考えていた。
それから、しばらく歩いていると……。
鷲のような格好のカラスのような黒さの鳥が一羽大声で泣いた。
『グガァ』
泣き声はよりいっそう怪しさを強調させた。
いきなりで、ライトは驚き、ザグルにしがみ付き泣いた。
「うぁぁぁ……」
「こら、泣くな。しがみつくな!」
ザグルは離れようとした。
「だって、怖いじゃないですか?」
「怖いって、あんた、これでも男だろう」
「それは男性も女性も関係ないですよ。差別ダメです」
離れようとするザグルを無視して、くっついていた。
「五月蝿い。そう言う意味じゃなく。怖くともしがみ付くか付かないかの問題なの」
しがみついたライトを、凄い力でブラブラと揺らし、引き離そうとした。
「そっちの問題だったのですか?」
「そっちの問題だ。オレだって口には出さないようにしているが怖いだ。分かったらとっとと離れろ!」
「嫌です!」
こう言う時だけライトの意志はザグルの意志より強かった。
「意味が分からないから、ああ、離れろ」
『グガァ』
鳥はもう一回鳴いていた。
「ひぃぃぃ……!」
二人は一緒に驚いていた。
逃げたい時だってある。
泣きたい時だって結構ある。
しかし、女より逃げられないし泣くこともできない。
だから、影で泣くことがよくある。
誰もいないところで、人に見られないようにこっそりと。
だが、男は堂々と泣くことが出来ないと考えると、世の中、割りと不公平に出来ていると思う……。
次の日。
二人は『迷宮(ラビリンス)』の出口に立っていた。
ハンクの家がゴールだから、ゴールから心臓部に入ろうとしているのだ。
「心臓部にはどうやって行くんですか?」
ライトがザグルに聞く、ライトの背中には大きなリュックを背負っていた。
中にはいつでも野宿が出来る、アウトドアグッズが二人分一式入っている。
それと、ミーファが無理矢理持たせた手作りの弁当と……。
「歩いて行くんだけど? 行ったことないのか?」
ザグルは大きな剣と、少しの荷物だけだった。
ライトが荷物の当番で、ザグルが魔物退治の当番を受け持つことになった為だ。
しかし、ザグルの剣もライトのリュックくらい重いので、重さ的には変わらなかった。
「はい」
「無いのか……」
思わせぶりな口調でザグルは地図を広げた。
「あるんですか?」
「あるよ。一度だけだけどな」
弟子になったばかりの時に、ハンクに連れられたのだ。
理由は特に聞いていないから、正直なところ分からなかった。
もしかしたら、なんの理由も無いのかも知れないし、驚天動地が起こる程の凄い理由があるのかもしれない。
未だに分からないことだけど、聞く必要無いと思っていた。
はっきり言うと、聞くのが無駄だからだ。
行動に予測がつかないハンクに、上手く付き合う手段のひとつであった。
そもそも意味があったらとっくに話しているだろうし……。話すことを忘れてなかったらだけど。
「そうなのですか……」
ライトは少し、暗い表情をした。
「んな、暗い顔すんなよ」
「僕が弟子として認められていないかも知れないじゃないですか」
「そんなことないと思うぞ。師匠、ああ見えて意外となにも考えてないから、案外忘れているだけかも知れないし」
「そうですか?」
「そんなもんだよ」
「はあ、しかし、行ったことあるのに、地図広げてますよね?」
「まあ、基本師匠がいないし、一回しか行ったことないから、地図を広げないと、何処になにがあるか分からないからな~」
『迷宮』だけあって、複雑なのだ。
ちなみに地図はハンクが作ったのではなく、ルミアが作った物だ。
ハンクは頭の中にその地図は入っているから必要ないと言い張り、渋々兄弟子のルミアが作ったのだ。
その地図はほぼ正確な物らしい。
ルミアが何度も足を運び、苦労して作った賜物なのだ。
それをハンクが一応でも目を通したのだ。
そして、合格点を出したから、地図として起用することが出来た。
「さあ、出発するか」
ザグルが先頭で歩き始め、その後ろをくっつくように、ライトがついていった。
『迷宮』の中は一見するとただの森だ。
動物もいるし、花だって咲いている。
山菜などもあり、あまり奥へ行かなければ、魔物にもあまり遭遇しないから、麓にあるハニーの村はライスの森を利用し、日々を生活していた。
しかし、今日の森は少し、どころか大分可笑しかった。
正確には『迷宮』の中にあるライスの森が可笑しいのである。
普段は術とただの森との境が分からず、上手く馴染ませているのだけど、この日だけは静かで気味が悪かった。
昨日、ザグルが同じ森を通った時もそんな感じにはなってなかった。
「気味が悪いですね……」
「確かに」
ライトの質問に答え、自分なりに考えていた。
それから、しばらく歩いていると……。
鷲のような格好のカラスのような黒さの鳥が一羽大声で泣いた。
『グガァ』
泣き声はよりいっそう怪しさを強調させた。
いきなりで、ライトは驚き、ザグルにしがみ付き泣いた。
「うぁぁぁ……」
「こら、泣くな。しがみつくな!」
ザグルは離れようとした。
「だって、怖いじゃないですか?」
「怖いって、あんた、これでも男だろう」
「それは男性も女性も関係ないですよ。差別ダメです」
離れようとするザグルを無視して、くっついていた。
「五月蝿い。そう言う意味じゃなく。怖くともしがみ付くか付かないかの問題なの」
しがみついたライトを、凄い力でブラブラと揺らし、引き離そうとした。
「そっちの問題だったのですか?」
「そっちの問題だ。オレだって口には出さないようにしているが怖いだ。分かったらとっとと離れろ!」
「嫌です!」
こう言う時だけライトの意志はザグルの意志より強かった。
「意味が分からないから、ああ、離れろ」
『グガァ』
鳥はもう一回鳴いていた。
「ひぃぃぃ……!」
二人は一緒に驚いていた。
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