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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

ドフラミンゴの日記 その1

インペルダウンレベル6にて
×月×日
ここに収監されてから、一週間ほどになる。初めのうちは麦わらのルフィにやられて大怪我を負っていたこともあって伸びていたが、たいした手当もされていないのにすっかり治ってしまった。

それとも、海軍の船で運ばれている最中に、手術でもされたのだろうか?意識がなかった時のことは分からないが、体のどこにも切ったり縫ったりした跡がないということは、やはり手術等はされておらず、自然に治癒したと考えていいだろう。
おれの体はかなり強靭らしい。天竜人の中でも特異なほうだと思われる。

海楼石にこんなに長い時間繋がれるのも初めてだが、体の傷が回復してくると、慣れればそんなに負担でもないような気がしてくる。現に、自分は今退屈しているが、退屈するということは気力がある証拠だ。新聞が楽しみだし、食欲もある。これでおつるでも面会に来れば、退屈が紛れるのだが。

しかし、独房なのはいいが、この部屋は狭すぎる。

×月×日
ここの食事は意外と豪華だ。
朝食はコーヒーまたは紅茶から始まり、次にポリッジかシリアル、その次が卵料理とソーセージ等の燻製肉(魚の場合もある)とトマトやマッシュルーム等の付け合わせを大皿に盛り付けたもの、次がパン、最後にフルーツが順番に出てくる伝統的なフル・ブレックファーストが基本だ。
飲み物やシリアル、卵の焼き方等はオーダーを訊いてくれるし、パンもトーストなど数種類の中から選べる。

ただ、今朝はエッグベネディクト(一皿料理)だった。でも、個人的には毎日これでも構わない。

昼食は軽め。これは朝が豪勢だからかもしれない。今日はパスタで、昨日はリゾット、一昨日はピザだった。飲み物はミネラルウォーターのみ。できたら食後にコーヒーが飲みたい。

夕食は、内容はコースメニューだが、全ての料理がいっぺんにテーブルに出される。ここではなぜか朝食の時のほうが格式張っている。夕食を担当する給仕人の数が足りないのだろうか。

ちなみに、今夜のメニューは前菜に焼いた牡蠣とエビ、ポタージュスープ、パンは柔らかいものと硬いものを取り混ぜて数種、魚料理は舌平目のムニエル、肉料理は牛フィレのステーキ、温野菜の盛り合わせ、チーズ、デザートのチョコレートケーキ、コーヒーだった。
飲み物はいつもワインとミネラルウォーターが付く。

食事は収監されている監獄とは別の部屋に移動して摂る。海楼石の鎖に繋がれたままだし、部屋に窓はないが、壁には壁紙、床には絨毯、テーブルにはクロスがかけられている。

レベル6は、あらゆる部分で特別ということなのか。

×月×日
ベッドがないことにケチをつけてみた。
すると、すぐに寝室の使用が許可された。今日からは夜の十時から朝の六時まで、監獄から寝室に移動して、そこで就寝する。

ここには中間というものがないらしい。監獄は床も壁も石が剥き出しで、頑丈なだけで快適さとは程遠いが、寝室と食事を取る部屋は、快適を通りこして贅沢に造られている。

天蓋付きのベッドに(ただしカーテンは付けられていない。囚人にカーテンは不要ということだろう)、布団は羽根布団でシーツにアイロンまでかけられている。

実は、トイレも寝室と似たような造りになっている。専用のものが監獄の隣に造り付けられていて、ドアは監視のために上下に隙間があいているが、プライバシーは確保できる。
便器は陶器製で、その優美なデザインから、一般に普及している大量生産品でないことが分かる。

ただ、いずれの部屋も窓はない。

×月×日
今日は入浴の日だった。顔を洗ったりひげを剃ったりすることは毎朝できるが、風呂は三日に一度だけだ。

おれは能力者なので、今まで風呂はシャワーだけで済ませてきたが、考えてみればインペルダウンの中では敵襲の可能性がない。

収監中のほうが身辺の危険度が低いというのも皮肉な話だが、せっかくなので入浴を堪能する。お湯に浸かると力が抜けるが、抜けていても上記の理由で特に問題はない。

この入浴も、看守は付くが、個室の浴室で入っている。
浴室の造りは贅沢で、かつ掃除も行き届いており、他の囚人と共用のものではないと思われる。

別に、だから何だということではないが。

×月×日
今日はマゼランが様子を見に来た。こいつは堅いからあんまり怒らせないほうがいい。

床の上にべったりと座って海楼石に生気を奪われているふりを装いつつ、気になっていることをちょっと訊いてみる。

***
「よう、マゼラン。この独房の豪華さは一体何だ?過去に天竜人を収監したことでもあるのか?」
「その質問に答える義務はない」

マゼランはむっつりとした顔で答えて、ギロリとドフラミンゴを睨んだ。
「…元気そうだな。海楼石の純度がもっと高い手枷にする必要がありそうだ」

「おい、よせよ。こいつはもう十分に効いてるぜ」
ドフラミンゴは自分の手首に付けられている手枷をマゼランのほうに突き出して抗議した。よもやマゼランがそんなことを言い出すとは思いもしなかったので、ドフラミンゴは自分の軽率さとマゼランの目敏さを忌々しく思った。

マゼランはドフラミンゴの抗議には何の反応も示さず、無言で立ち去った。
そしてその日の夕刻、ドフラミンゴの手足を繋ぐ四つの枷が新しいものに交換された。
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