第十四話 乙女の秘密ですけれど!?
城ヶ崎と共に、聖心ミカエル学園へと向かう。その歩幅は蓮としては小さなものであり、かなりゆっくりではあった。
「うーん。すっごく捻挫した足首にはやさしいペースでさー、私とすれば、とっても楽なんだけどー」
「良かったじゃないか。それを目的としたペースだろ?」
「そだねー。それはー……いいんだけども。やっぱり、このままじゃ、絶対に間に合わないし……そうなるとね、怒られちゃうかなー、遅刻したら?」
「大丈夫だ。それで、世界が終わるわけじゃない」
雨宮蓮はよく晴れた空を見あげながら断言する。世界の終わりみたいに世の中が歪んでしまった状況にも遭遇したことがあった……昨年のクリスマス。悪夢のような状況と対峙することになった。
世界の終わりを予感させるような状況ではあったが―――仲間たちとの絆、そして多くの人々の希望を弾丸に変えて……ペルソナ・サタナエルは世界をも救える一撃を放った。
あんな戦いに比べれば?
たかが遅刻の一つや二つで、雨宮蓮の心は怯むことはないのだ。もちろん、褒めた行いではないし、何度もするつもりはないのだが……今日は、特別だ。城ヶ崎シャーロットの足首が、捻挫しているわけだしな……。
「……むー。まったく、あわててないよねー」
「事情がある行動だ。オレのために、城ヶ崎は足を捻挫したし、その城ヶ崎を放置してはいけない」
「うん。でも、悪い子さん扱いされちゃうよねー」
「慣れてるから、問題はない」
「笑えないからね、そのジョーク。対応に困りまーす!!」
「すまない」
「あはは。ううん、いいよ。でも、レンレンは、トラブルに巻き込まれちゃいやすいんだねえ」
「そうかもしれないな」
「でも。女の子を助けて、遅刻しちゃうのは……カッコいいかも」
「だろうな」
『自分で言うなよ……』
「あはは。レンレン、面白い子だ。私の周りには、そういう子いなかったなー……」
「そうなのか?」
「うん。あんまり、男友達とかいない。イギリスにいたころはね、ホント、友だち少なかったんだー」
『ふむふむ。城ヶ崎は、イギリス帰りのようだ。帰国子女か……なんだか、いいな!』
「モルガナ、何だって?」
「帰国子女であることを褒めていた」
「そう?……帰国子女って、それなりに苦労だってするよー……やっぱり、私、ハーフだから見た目とかも日本人と思いっきり違うし」
「いじめられたのか?」
「ううん。でも、転校ばかりだったから、なかなか馴染めなかった。仲良くなっても、すぐに遠くに行くんじゃ、しょうがないよねー……」
青く晴れた春の空を見あげながら、城ヶ崎シャーロットは青い瞳をさみしげに細めていた。
「……そうか」
「うん。そうなんだ…………レンレンは、静かに聞いてくれるね。聞き上手だよ!」
「無口だからな。そういう役回りになりやすい」
「なるほど」
「……でも、ヒトのことを色々と知れるのは、嬉しい」
「私のコト、知れて嬉しい?」
「……秘密だ」
「うわー。テクニックで弄ばれてるカンジ!……さすがに、東京帰りのそこそこモテモテは違うぜ」
「まあな」
「……じゃあ。そこそこモテモテのレンレン」
『語感がいいカンジに仕上がっているな……』
「どうした、城ヶ崎?」
「……こうして、ゆっくりと登校中だし……お暇でしょう?」
「それなりにな」
「なら。私の話を聞いてもらってもいいかな?」
「いいぞ。何でも話せ。秘密にすべきことなら、オレもモルガナも他のヤツには話さないようにする」
「うん。ありがと。実は、私には秘密があるんだー」
『……城ヶ崎の、秘密か……何だろうな?ちゃんと聞いてやれ』
「……どんな秘密だ?」
「えーとね……実は、私……けっこー……オタクなんだ!!マンガがウルトラに好きなタイプの!!」
よく晴れた春の空に遊ぶ風に、その言葉は遠くまで運ばれて行きそうだった。モルガナは、何だか眠たくなった。
十数秒前の真剣さを、時間の支配者にでも申請して、返却してもらいたい気持ちで、その小さな猫ボディはいっぱいになる。
『……くだらねえ…………』
「……そうか。マンガオタクなんだな」
「そ、そーだけど。やっぱり引いちゃうかな!?」
「いや。別にいいだろ。オレもマンガは好きだ」
「そーだよね。ジャパンは、マンガの聖地だもんね。挙国一致で、マンガを輸出しようとしているクレージー・クールなキングダムだもんね!?」
「……そんな国に住んでいた記憶はないが、マンガは好きだぞ」
「そ、そーか。うん。私もね、イギリスにいた頃から、マンガとか好きだったんだけど、それが好きすぎて、他の子たちと違いが出て来たっていうか?……そのうえ、転校も多かったし……でも、日本に来てからは、ガッツリとコアなマンガ・フレンズが出来た」
「よかったじゃないか」
「うん。でも……割りと、引かれる時もあったから……レンレン、引かないでくれて助かった」
「そんなことでは引かない」
「う、うん」
「どんなマンガが好きなんだ?」
「……そ、それは!!こ、こんな朝っぱらから口にするのは、お、乙女としてなかなか難しいから、ご勘弁をっ!!」
『おいおい……どんなマンガを、通学バッグに詰めているんだろうな……イヤなオーラを感じる』
「うーん。すっごく捻挫した足首にはやさしいペースでさー、私とすれば、とっても楽なんだけどー」
「良かったじゃないか。それを目的としたペースだろ?」
「そだねー。それはー……いいんだけども。やっぱり、このままじゃ、絶対に間に合わないし……そうなるとね、怒られちゃうかなー、遅刻したら?」
「大丈夫だ。それで、世界が終わるわけじゃない」
雨宮蓮はよく晴れた空を見あげながら断言する。世界の終わりみたいに世の中が歪んでしまった状況にも遭遇したことがあった……昨年のクリスマス。悪夢のような状況と対峙することになった。
世界の終わりを予感させるような状況ではあったが―――仲間たちとの絆、そして多くの人々の希望を弾丸に変えて……ペルソナ・サタナエルは世界をも救える一撃を放った。
あんな戦いに比べれば?
たかが遅刻の一つや二つで、雨宮蓮の心は怯むことはないのだ。もちろん、褒めた行いではないし、何度もするつもりはないのだが……今日は、特別だ。城ヶ崎シャーロットの足首が、捻挫しているわけだしな……。
「……むー。まったく、あわててないよねー」
「事情がある行動だ。オレのために、城ヶ崎は足を捻挫したし、その城ヶ崎を放置してはいけない」
「うん。でも、悪い子さん扱いされちゃうよねー」
「慣れてるから、問題はない」
「笑えないからね、そのジョーク。対応に困りまーす!!」
「すまない」
「あはは。ううん、いいよ。でも、レンレンは、トラブルに巻き込まれちゃいやすいんだねえ」
「そうかもしれないな」
「でも。女の子を助けて、遅刻しちゃうのは……カッコいいかも」
「だろうな」
『自分で言うなよ……』
「あはは。レンレン、面白い子だ。私の周りには、そういう子いなかったなー……」
「そうなのか?」
「うん。あんまり、男友達とかいない。イギリスにいたころはね、ホント、友だち少なかったんだー」
『ふむふむ。城ヶ崎は、イギリス帰りのようだ。帰国子女か……なんだか、いいな!』
「モルガナ、何だって?」
「帰国子女であることを褒めていた」
「そう?……帰国子女って、それなりに苦労だってするよー……やっぱり、私、ハーフだから見た目とかも日本人と思いっきり違うし」
「いじめられたのか?」
「ううん。でも、転校ばかりだったから、なかなか馴染めなかった。仲良くなっても、すぐに遠くに行くんじゃ、しょうがないよねー……」
青く晴れた春の空を見あげながら、城ヶ崎シャーロットは青い瞳をさみしげに細めていた。
「……そうか」
「うん。そうなんだ…………レンレンは、静かに聞いてくれるね。聞き上手だよ!」
「無口だからな。そういう役回りになりやすい」
「なるほど」
「……でも、ヒトのことを色々と知れるのは、嬉しい」
「私のコト、知れて嬉しい?」
「……秘密だ」
「うわー。テクニックで弄ばれてるカンジ!……さすがに、東京帰りのそこそこモテモテは違うぜ」
「まあな」
「……じゃあ。そこそこモテモテのレンレン」
『語感がいいカンジに仕上がっているな……』
「どうした、城ヶ崎?」
「……こうして、ゆっくりと登校中だし……お暇でしょう?」
「それなりにな」
「なら。私の話を聞いてもらってもいいかな?」
「いいぞ。何でも話せ。秘密にすべきことなら、オレもモルガナも他のヤツには話さないようにする」
「うん。ありがと。実は、私には秘密があるんだー」
『……城ヶ崎の、秘密か……何だろうな?ちゃんと聞いてやれ』
「……どんな秘密だ?」
「えーとね……実は、私……けっこー……オタクなんだ!!マンガがウルトラに好きなタイプの!!」
よく晴れた春の空に遊ぶ風に、その言葉は遠くまで運ばれて行きそうだった。モルガナは、何だか眠たくなった。
十数秒前の真剣さを、時間の支配者にでも申請して、返却してもらいたい気持ちで、その小さな猫ボディはいっぱいになる。
『……くだらねえ…………』
「……そうか。マンガオタクなんだな」
「そ、そーだけど。やっぱり引いちゃうかな!?」
「いや。別にいいだろ。オレもマンガは好きだ」
「そーだよね。ジャパンは、マンガの聖地だもんね。挙国一致で、マンガを輸出しようとしているクレージー・クールなキングダムだもんね!?」
「……そんな国に住んでいた記憶はないが、マンガは好きだぞ」
「そ、そーか。うん。私もね、イギリスにいた頃から、マンガとか好きだったんだけど、それが好きすぎて、他の子たちと違いが出て来たっていうか?……そのうえ、転校も多かったし……でも、日本に来てからは、ガッツリとコアなマンガ・フレンズが出来た」
「よかったじゃないか」
「うん。でも……割りと、引かれる時もあったから……レンレン、引かないでくれて助かった」
「そんなことでは引かない」
「う、うん」
「どんなマンガが好きなんだ?」
「……そ、それは!!こ、こんな朝っぱらから口にするのは、お、乙女としてなかなか難しいから、ご勘弁をっ!!」
『おいおい……どんなマンガを、通学バッグに詰めているんだろうな……イヤなオーラを感じる』
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