ACT109 『ストレガ・ユニット/再会』
ドガアアアアアアアアアアアアンンンッッッ!!!
戦場に巨大な爆発が発生していた。スワンソン機と『ネームレス2』から、400メートルほど南での出来事である。その爆発の意味を、イアゴ・ハーカナ少佐とならず者な大尉は理解し、驚愕する。
「……あのバケモノ―――」
「―――自分に飛んで来た砲弾を、キャノンで撃ち落としやがったのかい……」
ありえないことだ。ミノフスキー粒子の影響下で、照準補正の加護は受けられない。そうだというのに……っ。
拳銃の弾を拳銃で撃ち落とすほどには難しくないかもしれないが、それに等しいレベルのムチャではある。どうあれ、常識的には、『ありえないこと』。
その一つを、二人の凄腕モビルスーツ・パイロットたちは目撃していたのだ。
凄腕たちは視線を南に向ける。
闇に沈むオーストラリアの荒野に、四連装式のミサイル・ランチャーを装備した影が見える。分厚いコートをまとったような、やや不格好なモビルスーツであった。
荒野に尊大な態度で立ち尽くしている、そのモビルスーツに、紅くかがやく頭部カメラを向けながら、『ネームレス2』が走り始めていた。
『……来やがったなああああああああああああああああああああああッッッ!!!』
『ネームレス2』からの通信が、イアゴ・ハーカナ少佐とならず者な大尉の耳にあるインカムで大声を放つ。
「……知り合いなのかねえ?」
「さあな。だが、アレがきっと、オレたちシェザール隊と合流予定だったモビルスーツと……」
「そのパイロットちゃんってことかよ。強気ないい若い女の声が聞こえたなぁ」
「……女パイロットか」
「馬鹿にしたもんじゃないぜ。とくに、強化人間だとか、ニュータイプってのはよ」
「……女性パイロットを、下に見たことなんてないさ」
「だろうな。そうあるべきだ、女は男よりも価値がある。命を産めるんだからなぁ」
「……だが。彼女たちは殺し合っている」
「……友軍同士かもしれない立場なんだが……どこかの誰かの野心のせいで、こんがらがっちまっているようだ」
『……正面から、突撃するか!!命知らずな女だなッ!!ぶっ殺してやるぞッ!!』
コートをまとった不格好な丸いモビルスーツが、ミサイルを連続で射出する。残弾全てを消費する、三連続のミサイル攻撃であるが―――『ネームレス2』は冷静ではないものの……完璧な迎撃をもって、それらに対応するのであった。
『私に、そんなものが当たると思うなああああああああああああああッッッ!!!』
『ネームレス2』が肩部のキャノンから、三連続の砲弾を射出していた。それらは全て正確にミサイルを撃ち抜いた。アルゴリズムに支配されて、直感では当てることの難しいはずの捻れて揺れる軌道であったのに、そんなことなどお構いなしだ。
ドゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッ!!!
爆発たちが一つに融け合いながら、荒野の戦場に響いていた。凄腕たちは、奇跡の再現に圧倒される。ありえないことが、これで4連続……。
「アレが、あのバケモノちゃんの、標準能力かい……ッ」
「……どうあれ、助言すべきだな」
「そーしてやんな」
「おい!!南から来た機体!!こちら、シェザール1!!」
『ん。ああ、合流予定の特殊部隊だな』
「そうだ!!……護衛のはずが、こんな状況になったのは、情けない。とにかく!!アドバイスをするぞ!!あの紅くかがやく機体には、近づくなッ!!近づけば、パイロットに対して、精神的な攻撃を仕掛けて来るッ!!」
『精神的な攻撃っ!?』
「……現実との認識に、ズレが生じる。相手が動いても、気づかなくなるぞッ!!おそらく、サイコ・ジャックだ!!パイロットの頭が、ヤツにハッキングされるようだ!!」
『……そいつは、エグい力だぜ。まったく……私の……『同類』たちを……こんなことに使いやがるとはなぁ……ッ』
「……『同類』?」
「姉ちゃんも、ニュータイプか?」
『……さあな。強化人間の方が、近いかもしれない。やるだけやってみるさ。コイツを倒さなきゃ、私は、『フェネクス』に会えないんだからな』
「『フェネクス』……『不死鳥狩り』……か」
「……素敵なネーミングの作戦だこと。オレちゃんたちは、そんな作戦のために、こんな目に遭っちまっているわけだ」
「……とにかく。強化人間だろうがニュータイプだろうが、あの重そうな機体で、あのバケモノに対応が出来るとは思えん。援護の準備をするぞ、大尉殿!!」
「おうよ。スワンソンくんは……ギリギリで生きてそうだし、こっちの援護に集中するとしようじゃないかね」
「そういうことだ。スワンソン、すまんが―――」
『―――いいですよ。オレも……端末つかって、サイコ・ジャックの情報を、回収する作業に入ってます。命、助けられたみたいですからね、うちの7番機に』
「……オレの指揮下に名目上は入る予定だったからな、シェザール7か……」
「7は好きな数字だぜ。普遍的なラッキー・ナンバーだ。今の、クソみたいな惨状をどうにかしてくれるには、幸運の女神サマのミラクル・パワーが必要そうだしなぁ……」
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