21
さすがに様子がおかしいと思った降谷は気になって彼女の方へと戻った。
降谷「どうかしたのか。」
「…別に」
降谷「髪くらい乾かさないと風邪をひくぞ。」
降谷は反応のない彼女の前に腰を降ろすと彼女の頭にかかっているタオルで頭を拭いてやった。
少しの間大人しく頭を拭かれていたが、突然降谷の腕を掴んだ。
降谷は咄嗟に警戒したが、彼女の手から伝わる熱で警戒よりも心配の方が優った。
降谷「どうした。」
「…何が目的なの。」
降谷「ん?」
「貴方は私のこと、どう利用しようとしてるの?」
降谷「何を言っている?俺たちは同じ目的を持って組織にいる。互いに動きやすくするためにいるんだろう。」
「なら、優しくしなくていい。」
降谷「何かあったのか。」
「別に…」
降谷「…。熱、あるだろ。ベッドを使え。」
「…」
降谷「髪はちゃんと乾かすんだぞ。」
降谷の言葉に彼女は返事をしなかったが、勝手に寝るだろうと思い、降谷はそのままシャワーを浴びることにした。
さっとシャワーを浴びてリビングに戻ると先程と変わらぬ体制のままで、今度はハロを抱きしめている彼女の姿が目に入った。
ハロはペロペロと彼女の顔を舐めていた。まるで慰めるかのように。
降谷「はぁ。…全く…」
仕方ないとばかりに降谷は彼女に手を伸ばそうとした時だった。
「降谷。」
降谷は伸ばしていた手を止めて彼女の隣に腰をおろした。
降谷「何だ。」
「降谷は、シルバから何を聞いた?」
彼女はそう言うとハロを解放して降谷の方を見た。
降谷「は?」
「私のこと、何か聞かなかった?それとも、降谷も私に死んで欲しいからシルバに協力したの?」
睨みつけるような、縋るような、そんな視線を降谷に向けていた。
降谷「何を言っている?」
降谷は彼女の言う言葉に眉をひそめた。
「とぼけなくていいよ。私が邪魔だから、危険だと思うから、私を始末しておきたいんでしょ?」
降谷「待て。話が見えない。俺はシルバからは貴女を怒らせないようにといった内容しか聞いていない。死んで欲しいといつ言った。」
「…怒らせないように?…あぁ、そう…。なら私が異常だって?人を躊躇なく殺せる人間だって言われなかった?」
その言葉に降谷はすぐに警戒した。
降谷「…あぁ。」
少しの沈黙の後、降谷は素直に答えた。
「…そんな人間…よく自分の家にあげたね…。殺されるとか………やっぱり、いいや。私帰る。」
彼女はそう言って立ち上がった。
目線は近くなったはずなのに降谷と目を合わせず俯いていた。
降谷「どこに帰るつもりだ。」
「私のいるべき場所。…少なくともここじゃないことがわかったから。」
そう言って降谷の横を通り過ぎようとするとそれは降谷の手によって阻止された。
降谷「誰が行っていいと言った。」
「あぁ、そういえば私は貴方の監視対象だったっけ。…なら今すぐ私を牢獄に打ち込んでくれる。」
降谷「何をいきなり…」
「私、人殺しだから、牢獄に入る。ただそれだけのことでしょう。」
降谷「少し落ち着け。今日のお前はおかしいそ。」
「おかしいのは生まれつきよ…。私はおかしいの。人を殺しても何も感じない、生きていても何も感じない。そう、私はどうせ道…」
そう言いかけたが彼女の体はふっと降谷の腕に預けられた。
降谷「おいっ!…どうした?!」
降谷は腕にかかる彼女の体温が高いことに気が付きそのまま彼女をベッドへと運んだ。
降谷はすぐに冷たいタオルを用意し彼女の額に置いた。
すると「んっ」と声を漏らすとゆっくり目を開けた。
「…降谷…」
降谷「起きたか?…もう今日はこのまま寝ろ。」
降谷がそういうと彼女はゆっくり起き上がった。
それと同時に額におかれていたタオルが落ちたのをじっと見つめた後、降谷の方に声をかけた。
「私気絶したの?」
降谷「気絶って…。まぁ、そう言われるとそうかもしれないな。」
「そう。…ごめん。」
降谷「全くだ。意味のわからないことを話し出したと思うと突然倒れて。…いつから我慢してたんだ。」
「我慢はしてないよ。…それより、このタオルも降谷が…?」
降谷「俺以外に誰がいる。」
「ハロ。」
降谷「…わかりにくい冗談だな。」
「冗談のつもりじゃなかったんだけどな。」
その返答に降谷は一瞬呆れた顔をした後真面目な顔で彼女と向き合った。
降谷「熱のせいで意味のわからないことを言ったのか、それともそうじゃないのか、どっちだ?」
「…本心だと言ったら…貴方はどうするの?」
降谷「別にどうもしない。…今まで通りこの家に居てもらう。それだけだ。」
「…私は人殺しよ…本来ならば独房に入れられるか、家も仕事もない惨めな生活をしてのたれ死ぬはずの人間。」
降谷「それは日本で行った殺人か?いや、違うな。…そういった情報は耳にしたことがない。ならば何かしらの事情があったと察する。人殺しを認めるわけではないが、正当防衛、生きていく為に仕方なく。そういうこともありえるだろう。…本当に罪の意識のない奴はこんなにも苦しまないはずだ。とにかく今は休め。落ち着いたら今後について話そう。」
降谷はそう言って彼女を無理やり寝かしつけた。
降谷「どうかしたのか。」
「…別に」
降谷「髪くらい乾かさないと風邪をひくぞ。」
降谷は反応のない彼女の前に腰を降ろすと彼女の頭にかかっているタオルで頭を拭いてやった。
少しの間大人しく頭を拭かれていたが、突然降谷の腕を掴んだ。
降谷は咄嗟に警戒したが、彼女の手から伝わる熱で警戒よりも心配の方が優った。
降谷「どうした。」
「…何が目的なの。」
降谷「ん?」
「貴方は私のこと、どう利用しようとしてるの?」
降谷「何を言っている?俺たちは同じ目的を持って組織にいる。互いに動きやすくするためにいるんだろう。」
「なら、優しくしなくていい。」
降谷「何かあったのか。」
「別に…」
降谷「…。熱、あるだろ。ベッドを使え。」
「…」
降谷「髪はちゃんと乾かすんだぞ。」
降谷の言葉に彼女は返事をしなかったが、勝手に寝るだろうと思い、降谷はそのままシャワーを浴びることにした。
さっとシャワーを浴びてリビングに戻ると先程と変わらぬ体制のままで、今度はハロを抱きしめている彼女の姿が目に入った。
ハロはペロペロと彼女の顔を舐めていた。まるで慰めるかのように。
降谷「はぁ。…全く…」
仕方ないとばかりに降谷は彼女に手を伸ばそうとした時だった。
「降谷。」
降谷は伸ばしていた手を止めて彼女の隣に腰をおろした。
降谷「何だ。」
「降谷は、シルバから何を聞いた?」
彼女はそう言うとハロを解放して降谷の方を見た。
降谷「は?」
「私のこと、何か聞かなかった?それとも、降谷も私に死んで欲しいからシルバに協力したの?」
睨みつけるような、縋るような、そんな視線を降谷に向けていた。
降谷「何を言っている?」
降谷は彼女の言う言葉に眉をひそめた。
「とぼけなくていいよ。私が邪魔だから、危険だと思うから、私を始末しておきたいんでしょ?」
降谷「待て。話が見えない。俺はシルバからは貴女を怒らせないようにといった内容しか聞いていない。死んで欲しいといつ言った。」
「…怒らせないように?…あぁ、そう…。なら私が異常だって?人を躊躇なく殺せる人間だって言われなかった?」
その言葉に降谷はすぐに警戒した。
降谷「…あぁ。」
少しの沈黙の後、降谷は素直に答えた。
「…そんな人間…よく自分の家にあげたね…。殺されるとか………やっぱり、いいや。私帰る。」
彼女はそう言って立ち上がった。
目線は近くなったはずなのに降谷と目を合わせず俯いていた。
降谷「どこに帰るつもりだ。」
「私のいるべき場所。…少なくともここじゃないことがわかったから。」
そう言って降谷の横を通り過ぎようとするとそれは降谷の手によって阻止された。
降谷「誰が行っていいと言った。」
「あぁ、そういえば私は貴方の監視対象だったっけ。…なら今すぐ私を牢獄に打ち込んでくれる。」
降谷「何をいきなり…」
「私、人殺しだから、牢獄に入る。ただそれだけのことでしょう。」
降谷「少し落ち着け。今日のお前はおかしいそ。」
「おかしいのは生まれつきよ…。私はおかしいの。人を殺しても何も感じない、生きていても何も感じない。そう、私はどうせ道…」
そう言いかけたが彼女の体はふっと降谷の腕に預けられた。
降谷「おいっ!…どうした?!」
降谷は腕にかかる彼女の体温が高いことに気が付きそのまま彼女をベッドへと運んだ。
降谷はすぐに冷たいタオルを用意し彼女の額に置いた。
すると「んっ」と声を漏らすとゆっくり目を開けた。
「…降谷…」
降谷「起きたか?…もう今日はこのまま寝ろ。」
降谷がそういうと彼女はゆっくり起き上がった。
それと同時に額におかれていたタオルが落ちたのをじっと見つめた後、降谷の方に声をかけた。
「私気絶したの?」
降谷「気絶って…。まぁ、そう言われるとそうかもしれないな。」
「そう。…ごめん。」
降谷「全くだ。意味のわからないことを話し出したと思うと突然倒れて。…いつから我慢してたんだ。」
「我慢はしてないよ。…それより、このタオルも降谷が…?」
降谷「俺以外に誰がいる。」
「ハロ。」
降谷「…わかりにくい冗談だな。」
「冗談のつもりじゃなかったんだけどな。」
その返答に降谷は一瞬呆れた顔をした後真面目な顔で彼女と向き合った。
降谷「熱のせいで意味のわからないことを言ったのか、それともそうじゃないのか、どっちだ?」
「…本心だと言ったら…貴方はどうするの?」
降谷「別にどうもしない。…今まで通りこの家に居てもらう。それだけだ。」
「…私は人殺しよ…本来ならば独房に入れられるか、家も仕事もない惨めな生活をしてのたれ死ぬはずの人間。」
降谷「それは日本で行った殺人か?いや、違うな。…そういった情報は耳にしたことがない。ならば何かしらの事情があったと察する。人殺しを認めるわけではないが、正当防衛、生きていく為に仕方なく。そういうこともありえるだろう。…本当に罪の意識のない奴はこんなにも苦しまないはずだ。とにかく今は休め。落ち着いたら今後について話そう。」
降谷はそう言って彼女を無理やり寝かしつけた。
※会員登録するとコメントが書き込める様になります。