その四 ロビンの場合
ワノ国花の都羅刹町の牢屋敷に、トラファルガー・ローは海楼石の鎖で繋がれて閉じこめられていた。尋問の時に受けた暴行によって、無数の痣が体中に浮かび、額や唇からは血が流れている。
「トラ男くん」
ローが座り込んでいる牢獄の床から、芸者姿のロビンの上半身が出現した。ロビンはハナハナの実の能力を使って少し離れたところから分身を出していた。
「ニコ屋か…」
ローは顔をしかめた。自分がホーキンスに捕まったことは、麦わらの一味には言わないようにべポ達に口止めしていたが、なぜか(実はたまたまだったのだが)ロビンに知られるところになってしまった。
「トラ男くん、一体どうしてこんなことに…。すぐに助けを…」
「待て、ニコ屋。おれが捕まっていることは誰にも言うな」
「え?それはどうして?」
「…」
ローは自分がこんな状況下にあっても、助けを求める気はないらしかった。ロビンはローが忍者のしのぶと言い争って出て行ってしまったことは聞いていた。しかし、だからと言って意地を張るにも程がある。
ロビンは、べポ達3人が将軍オロチの手下に捕まったらしいことを思い出した。
「ベポ達は無事なの?」
「あいつらは逃がした」
「ハートの海賊団の人達は助けに来てくれないの?」
「奴らには奴らのやることがある」
ローは、ハートの海賊団は麦わらの一味と違ってドライだと言うが、その一方で捕まったベポ達を自分の身を犠牲にしてまで助けている。ドライだというのは実は正しくないのではないかとロビンは思ったが、口には出さなかった。
「ニコ屋、俺のことは捨て置け。捕まった仲間は見捨てろって、あのくノ一も言ってたろ」
「トラ男くん…」
ローの強情さに、ロビンはため息をついた。やはり見捨てるという選択肢は考えられない。
「まったく、厄介な人ねえ…」
ロビンは、とりあえず手枷の鍵を探してこようと考えた。鍵を差し出されれば、ローもそれを拒否することまではしないだろう。
「侍達の作戦がもうすぐ決行されるのに、あなたほどの戦力をみすみす放っておく気はないわ」
「…」
「それに、このまま尋問され続けたら、指を一本ずつ切り落とされながら質問攻めにあう可能性もあるわよ。そうなってもいいのかしら」
ロビンはたまにとても怖いことを言う。ローは無言ながらも少し眉をしかめた。
「手枷の鍵を探してくるから待っていて」
そう言ってロビンの分身は姿を消した。
ロビンはすぐに戻ってきた。手に鬼哭を持っている。
「お待たせ、トラ男くん。鬼哭を見つけたわ。さあ、手を出して」
ローはロビンの言葉に耳を疑った。
「手を出せって…ニ、ニコ屋…」
「鬼哭で手枷を切るわ」
パンクハザードでロビン達が海楼石の鎖で縛られた時、ローは鬼哭でいとも簡単にその鎖を切った。
しかし、今ローの手に繋がれているのは、鎖ではなく手枷である。手首と手枷の間にはあまり隙間がない。
ロビンは鬼哭を鞘から抜いて両手で持った。
「お、重いわ…」
ロビンは鬼哭を構えようとしているが、重みで手が震えている。その手つきが妙に危なっかしい。
ロビンが自分の近くに迫ってきたので、ローは焦った。ロビンがおぼつかない動作で鬼哭を振り下ろしてきても、今のローには逃げることもできないのだ。
「やめろっ。お前に手枷だけ上手く切れる訳がねえっ!」
「あら、鬼哭で切っても痛くないんじゃなかったかしら?」
「それは能力を使った時だけだっ!」
「…そうなの。じゃあ、やめておくわ」
しかし、ローがほっとしたのもつかの間、ロビンは真顔でこんなことを言い出した。
「でも、手まで切れたとしても、海楼石で拘束されたままでいるよりいいんじゃないかしら」
(一体何を言い出す、ニコ屋?!)
ローは息を飲んだ。
ロビンはうっすらとした笑みを浮かべていた。
「少し荒っぽいけど、両方の手首を切って手枷を外すという方法もあるわ。海楼石の手枷が抜ければ能力が使えるようになるから、後からゆっくり治療すればいいのよ」
本気で手を切るつもりなのかもしれない…ローは思わず目をつぶって身をすくめた。
「や、やめろ~っ、ニコ屋!後生だっ!!」
「うふふ」
ロビンは急に笑い出すと、
「冗談よ」
と言って、懐から鍵を取り出し、すぐにローの手枷を外した。
(か、鍵も探し出してたんじゃねえか…)
「う、恨むぞ…ニコ屋…」
手枷が外れたのに、まだローは動けない。
「あら、怖がらせ過ぎちゃったみたいね。ごめんなさい」
ロビンはローを横目で見ながらにやりと笑った。怯えたローはとても可愛らしい。
「でも、この牢屋敷の中を探し歩いていたら、拷問に使う道具がたくさんあったわ。もしかしたら、あなたもあの道具で拷問されていたかもしれないわよ。それでも意地を張ったほうが良かったと言えるのかしら?」
「拷問道具?面白そうじゃねえか…」
ローはまだへたり込んだままだったが、その顔にちょっと残酷そうな笑みが浮かんだ。
その時、誰かがやってくる気配がした。ホーキンスだった。
「…おい、拷問の道具を試せるかもしれねえぞ」
「あら、それは興味深いわね」
「お前はそういうの好きそうだよな…」
「あなたもね」
ロビンはくすりと笑った。
気の毒なホーキンスは、この後、二人がかりで拷問されることになる。
「トラ男くん」
ローが座り込んでいる牢獄の床から、芸者姿のロビンの上半身が出現した。ロビンはハナハナの実の能力を使って少し離れたところから分身を出していた。
「ニコ屋か…」
ローは顔をしかめた。自分がホーキンスに捕まったことは、麦わらの一味には言わないようにべポ達に口止めしていたが、なぜか(実はたまたまだったのだが)ロビンに知られるところになってしまった。
「トラ男くん、一体どうしてこんなことに…。すぐに助けを…」
「待て、ニコ屋。おれが捕まっていることは誰にも言うな」
「え?それはどうして?」
「…」
ローは自分がこんな状況下にあっても、助けを求める気はないらしかった。ロビンはローが忍者のしのぶと言い争って出て行ってしまったことは聞いていた。しかし、だからと言って意地を張るにも程がある。
ロビンは、べポ達3人が将軍オロチの手下に捕まったらしいことを思い出した。
「ベポ達は無事なの?」
「あいつらは逃がした」
「ハートの海賊団の人達は助けに来てくれないの?」
「奴らには奴らのやることがある」
ローは、ハートの海賊団は麦わらの一味と違ってドライだと言うが、その一方で捕まったベポ達を自分の身を犠牲にしてまで助けている。ドライだというのは実は正しくないのではないかとロビンは思ったが、口には出さなかった。
「ニコ屋、俺のことは捨て置け。捕まった仲間は見捨てろって、あのくノ一も言ってたろ」
「トラ男くん…」
ローの強情さに、ロビンはため息をついた。やはり見捨てるという選択肢は考えられない。
「まったく、厄介な人ねえ…」
ロビンは、とりあえず手枷の鍵を探してこようと考えた。鍵を差し出されれば、ローもそれを拒否することまではしないだろう。
「侍達の作戦がもうすぐ決行されるのに、あなたほどの戦力をみすみす放っておく気はないわ」
「…」
「それに、このまま尋問され続けたら、指を一本ずつ切り落とされながら質問攻めにあう可能性もあるわよ。そうなってもいいのかしら」
ロビンはたまにとても怖いことを言う。ローは無言ながらも少し眉をしかめた。
「手枷の鍵を探してくるから待っていて」
そう言ってロビンの分身は姿を消した。
ロビンはすぐに戻ってきた。手に鬼哭を持っている。
「お待たせ、トラ男くん。鬼哭を見つけたわ。さあ、手を出して」
ローはロビンの言葉に耳を疑った。
「手を出せって…ニ、ニコ屋…」
「鬼哭で手枷を切るわ」
パンクハザードでロビン達が海楼石の鎖で縛られた時、ローは鬼哭でいとも簡単にその鎖を切った。
しかし、今ローの手に繋がれているのは、鎖ではなく手枷である。手首と手枷の間にはあまり隙間がない。
ロビンは鬼哭を鞘から抜いて両手で持った。
「お、重いわ…」
ロビンは鬼哭を構えようとしているが、重みで手が震えている。その手つきが妙に危なっかしい。
ロビンが自分の近くに迫ってきたので、ローは焦った。ロビンがおぼつかない動作で鬼哭を振り下ろしてきても、今のローには逃げることもできないのだ。
「やめろっ。お前に手枷だけ上手く切れる訳がねえっ!」
「あら、鬼哭で切っても痛くないんじゃなかったかしら?」
「それは能力を使った時だけだっ!」
「…そうなの。じゃあ、やめておくわ」
しかし、ローがほっとしたのもつかの間、ロビンは真顔でこんなことを言い出した。
「でも、手まで切れたとしても、海楼石で拘束されたままでいるよりいいんじゃないかしら」
(一体何を言い出す、ニコ屋?!)
ローは息を飲んだ。
ロビンはうっすらとした笑みを浮かべていた。
「少し荒っぽいけど、両方の手首を切って手枷を外すという方法もあるわ。海楼石の手枷が抜ければ能力が使えるようになるから、後からゆっくり治療すればいいのよ」
本気で手を切るつもりなのかもしれない…ローは思わず目をつぶって身をすくめた。
「や、やめろ~っ、ニコ屋!後生だっ!!」
「うふふ」
ロビンは急に笑い出すと、
「冗談よ」
と言って、懐から鍵を取り出し、すぐにローの手枷を外した。
(か、鍵も探し出してたんじゃねえか…)
「う、恨むぞ…ニコ屋…」
手枷が外れたのに、まだローは動けない。
「あら、怖がらせ過ぎちゃったみたいね。ごめんなさい」
ロビンはローを横目で見ながらにやりと笑った。怯えたローはとても可愛らしい。
「でも、この牢屋敷の中を探し歩いていたら、拷問に使う道具がたくさんあったわ。もしかしたら、あなたもあの道具で拷問されていたかもしれないわよ。それでも意地を張ったほうが良かったと言えるのかしら?」
「拷問道具?面白そうじゃねえか…」
ローはまだへたり込んだままだったが、その顔にちょっと残酷そうな笑みが浮かんだ。
その時、誰かがやってくる気配がした。ホーキンスだった。
「…おい、拷問の道具を試せるかもしれねえぞ」
「あら、それは興味深いわね」
「お前はそういうの好きそうだよな…」
「あなたもね」
ロビンはくすりと笑った。
気の毒なホーキンスは、この後、二人がかりで拷問されることになる。
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