日だまりの君【柊夜ノ介】エロなし。校内ネタバレあり。
放課後の生徒会室で、向い合わせのあなたが眠っている。窓越しの光が柔らかくあなたを包み込むこの空間が、なんていうか……そう。とても幸福感でいっぱいだ。こんなに優しい時間をくれるあなたに出会えたこと、偶然だとしても喜んでしまう僕がいる。
僕はひとりでこの部屋からよく、絵を描いている姿を見かける。一生懸命な様子になぜだか、とってもあなたに親しみを感じるんだ。
昼休みに友だちと話ながら、絵を描く姿は、ここ最近のあなたの恒例となっていて僕の楽しみのひとつ。あなたは何事に対しても前向きで、周りを明るくさせる不思議な魅力を兼ね備えた人だと知ってはいた。でも、芸術と向き合っている真剣な眼差しや何枚も何枚も集中している姿に、時々稽古にのめり込む自分を重ねてしまう。
あなたはなんてスゴい人なんだろう。我を失わない強い人だ。
今日も、いつものメンバーと談笑した帰りなのか、遠くの廊下からあなたの楽しそうな笑い声や話し声が優しく響いていた。
「今日も帰るのかな……」
楽しげな声はだんだんと近づき、別に待ち合わせの約束したわけでもないのに、あなたがここにやってくることを心待ちにしている自分がいる。ヤノくんと、はにかんだ笑顔を向けられるのが楽しみなんて自分の感情が、少し照れ臭い。
「じゃぁねぇ。マリィ、バぁイバイ~」
と、少しまのびした、ひかるさんの声が思ったより間近に聞こえてドキッと胸が跳ねる。
少し遅れて、パタパタとあなたの足音と相手を気遣う優しげで愛らしい小さな声がすっと、僕の胸に届く。
「ヤノくん。いる?失礼します」
「やぁ。いらっしゃい。何かご用?」
ふわりと笑うあなたに見とれながら、努めて冷静に語りかける。
「あのね。これ、差し入れだよ」
いつもご苦労様と笑うあなたは、おもむろにカバンをあけてなにやら探している様子だ。あなたのカバンから、突然思いもよらない、ふ菓子が出てきて驚いた。
「最近、お疲れ気味なのかなって、心配になって」
ヤノくんの好きなものなら、少しは元気になってくれるかなぁって、窓の景色を気にしながら、差し出されたふ菓子が窓際からもれる光に照らされている。
「ありがとう、ございます」
あなたは、どうしてそんなにも……。
「もう少し、したらさ、終わるかな?良かったらなんだけど、一緒に帰らない?私も手伝うしさ」
言いながら、大きなあくびをしたあなたは気持ち良さそうにグンと体をのばした。こんな温かな陽気の日はあなたとの共同作業も楽しそうだ。なんだか、帰りのお誘いが嬉しくてウキウキ浮わつく気持ちを押さえながら手短な書類、数枚を差し出す。
「それでは、あの。これを……」
でも、なぜだか受け取ってもらえるハズだった書類が空を切って、初めてあなたの様子がいつもと様子が違うことに気が付く。何事かと恐る恐るあなたのいる方向に目をやるとなんだか可愛らしいいきものがそこに、いた。
そこにはつかれた顔で机に突っ伏して、寝息を立てているあなたの姿があった。
……なんてことだろう。
僕は、あなたが疲れていることに気が付かなかったというのに……。僕はいつもあなたの優しさに触れて、自分の至らなさに気が付く。優しいあなたは、こんな風に僕の知らないところでいつも無理ばかりしているのだろうか。
そんなあなたが、急に心配になるが、今の今まで気が付かなかった自分に深くため息をついた。しっかりしなくてはと思う。いつまでも、あなたに寄り添っていたいなら、しっかりするべきだ。僕は……。
本当に全く、あなたって人は……。眠っているあなたの頬をそっと撫でてみた。起きてしまうかもしれないと胸が高鳴ったものの、押さえるとこは出来ない。
ぼくはわかってたハズだ。疲れているのはあなたも一緒だということ。なぜなら、バイトや学校、連日のデート。考えたらわかるハズだ。当然、そんなことを繰り返していたら疲れてないわけない。考えてみたら簡単なことだ。
あなたが気遣ってくれて初めて気が付くなんて、本当に僕はにぶい。
それなのに、僕のことを気にかけてくれて、そんなあなただからこんなにも心が満たされていく。
僕は、何かに追われていないと自分の存在意義を見いだせない自分にゾッとして、周りを巻き込んでいたことに、落ち込んで、繰り返して……。どうしようもない負の連鎖に愕然とした自分を救ってくれるのはいつもあなたの優しさだ。
ぼくはただ、窓の外を眺めていただけ。
そしたら、なぜかあなたが現れて僕の世界に彩りを添えてくれた。
こんな僕でも、この世界でこの街で、楽しんでいいんだと教えてくれたんだ。
そっと、あなたの肩にブレザーをかける。僕の変わりにあなたを温めて欲しくて。……一時でいい。僕の香りに包まれたあなたをみていたいから。
「さぁ。もう少しだけ、これが終わるまで……」
あなたの寝息をBGMに気を良くしたのか、キーボードが楽しそうに鳴り出す。まるでこの光景が、歩きだした自分とあなたの未来とが重なるような気がして、胸が熱く騒ぎだした。
【完】
僕はひとりでこの部屋からよく、絵を描いている姿を見かける。一生懸命な様子になぜだか、とってもあなたに親しみを感じるんだ。
昼休みに友だちと話ながら、絵を描く姿は、ここ最近のあなたの恒例となっていて僕の楽しみのひとつ。あなたは何事に対しても前向きで、周りを明るくさせる不思議な魅力を兼ね備えた人だと知ってはいた。でも、芸術と向き合っている真剣な眼差しや何枚も何枚も集中している姿に、時々稽古にのめり込む自分を重ねてしまう。
あなたはなんてスゴい人なんだろう。我を失わない強い人だ。
今日も、いつものメンバーと談笑した帰りなのか、遠くの廊下からあなたの楽しそうな笑い声や話し声が優しく響いていた。
「今日も帰るのかな……」
楽しげな声はだんだんと近づき、別に待ち合わせの約束したわけでもないのに、あなたがここにやってくることを心待ちにしている自分がいる。ヤノくんと、はにかんだ笑顔を向けられるのが楽しみなんて自分の感情が、少し照れ臭い。
「じゃぁねぇ。マリィ、バぁイバイ~」
と、少しまのびした、ひかるさんの声が思ったより間近に聞こえてドキッと胸が跳ねる。
少し遅れて、パタパタとあなたの足音と相手を気遣う優しげで愛らしい小さな声がすっと、僕の胸に届く。
「ヤノくん。いる?失礼します」
「やぁ。いらっしゃい。何かご用?」
ふわりと笑うあなたに見とれながら、努めて冷静に語りかける。
「あのね。これ、差し入れだよ」
いつもご苦労様と笑うあなたは、おもむろにカバンをあけてなにやら探している様子だ。あなたのカバンから、突然思いもよらない、ふ菓子が出てきて驚いた。
「最近、お疲れ気味なのかなって、心配になって」
ヤノくんの好きなものなら、少しは元気になってくれるかなぁって、窓の景色を気にしながら、差し出されたふ菓子が窓際からもれる光に照らされている。
「ありがとう、ございます」
あなたは、どうしてそんなにも……。
「もう少し、したらさ、終わるかな?良かったらなんだけど、一緒に帰らない?私も手伝うしさ」
言いながら、大きなあくびをしたあなたは気持ち良さそうにグンと体をのばした。こんな温かな陽気の日はあなたとの共同作業も楽しそうだ。なんだか、帰りのお誘いが嬉しくてウキウキ浮わつく気持ちを押さえながら手短な書類、数枚を差し出す。
「それでは、あの。これを……」
でも、なぜだか受け取ってもらえるハズだった書類が空を切って、初めてあなたの様子がいつもと様子が違うことに気が付く。何事かと恐る恐るあなたのいる方向に目をやるとなんだか可愛らしいいきものがそこに、いた。
そこにはつかれた顔で机に突っ伏して、寝息を立てているあなたの姿があった。
……なんてことだろう。
僕は、あなたが疲れていることに気が付かなかったというのに……。僕はいつもあなたの優しさに触れて、自分の至らなさに気が付く。優しいあなたは、こんな風に僕の知らないところでいつも無理ばかりしているのだろうか。
そんなあなたが、急に心配になるが、今の今まで気が付かなかった自分に深くため息をついた。しっかりしなくてはと思う。いつまでも、あなたに寄り添っていたいなら、しっかりするべきだ。僕は……。
本当に全く、あなたって人は……。眠っているあなたの頬をそっと撫でてみた。起きてしまうかもしれないと胸が高鳴ったものの、押さえるとこは出来ない。
ぼくはわかってたハズだ。疲れているのはあなたも一緒だということ。なぜなら、バイトや学校、連日のデート。考えたらわかるハズだ。当然、そんなことを繰り返していたら疲れてないわけない。考えてみたら簡単なことだ。
あなたが気遣ってくれて初めて気が付くなんて、本当に僕はにぶい。
それなのに、僕のことを気にかけてくれて、そんなあなただからこんなにも心が満たされていく。
僕は、何かに追われていないと自分の存在意義を見いだせない自分にゾッとして、周りを巻き込んでいたことに、落ち込んで、繰り返して……。どうしようもない負の連鎖に愕然とした自分を救ってくれるのはいつもあなたの優しさだ。
ぼくはただ、窓の外を眺めていただけ。
そしたら、なぜかあなたが現れて僕の世界に彩りを添えてくれた。
こんな僕でも、この世界でこの街で、楽しんでいいんだと教えてくれたんだ。
そっと、あなたの肩にブレザーをかける。僕の変わりにあなたを温めて欲しくて。……一時でいい。僕の香りに包まれたあなたをみていたいから。
「さぁ。もう少しだけ、これが終わるまで……」
あなたの寝息をBGMに気を良くしたのか、キーボードが楽しそうに鳴り出す。まるでこの光景が、歩きだした自分とあなたの未来とが重なるような気がして、胸が熱く騒ぎだした。
【完】
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