0話「コトブキシティ~203番道路」
ここは、シンオウ地方にあるコトブキシティのとある民家の食卓。
テレビには新商品のポケッチの紹介をするやけに声の高い男の人が映っている。
そこでいつも通り僕たち家族は夕飯を食べながら談笑をしていた。
「あなた、本当におめでとう!」
母さんは嬉し涙を流しながら父さんにそう言う。なんと僕の父さんはジムリーダーになるみたいだ。
ジムリーダーは町の象徴と言える存在であり、僕の通うスクールでもどのジムリーダーが好きかよく議論をする。まあしかし、1人シンオウ地方外のジムリーダーを興奮して語るヤツがいて周りはいつも白けてしまうのだが。サカキなんて聞いたことがないぞ全く。
「はは、その事だけど少し話があるんだ」
父さんは少し険しい表情になっている。これは子供の僕には分からない話が始まるのだろうといつもの経験から予測してテレビの方に集中する。
夕食を終え自分の部屋に戻ると、マネネが僕の胸に飛びついてくる。
「うわっと、そういやスクールから帰ってマネネにただいましてなかったよね、ごめん」
僕がマネネを抱きしめ返すとマネネは太陽のような笑顔で僕に微笑む。
マネネは僕が生まれた時からずっとそばにいて、僕とマネネは無二の親友だ。
「ねぇマネネ、僕が他の友達にも言ってないマネネと僕だけの秘密があったよね?僕がシンオウ地方のチャンピオンになるっていう夢」
チャンピオンとは、ポケモンリーグで優勝してさらに現チャンピオンを倒したものだけがなれる一握りの存在だ。
「僕がチャンピオンになるために父さんを倒さなきゃいけなくなるんだよ、マネネはどう思う?」
マネネは「どういうこと?」と手を広げたポーズをする。そりゃ僕にも父さんの話が全て分かるわけではないからマネネにも僕が言うことで分からないことだってある。
「あぁそれにしても楽しみだな、次の誕生日。やっと10歳になれるからなぁ」
10歳になると、トレーナーになって旅をすることが出来るようになる。僕はシンオウ地方が好きで、シンオウ地方の色々な所を巡ってみたい。何よりコトブキシティにはジムリーダーがいない。ジムがないと強いトレーナーも街に寄らないからずっと不満に思っていた。
「でもマネネが傷つくのは嫌だな」
僕は少し不安に思いながらも段々まぶたが重くなり眠ってしまう。
次の朝。食卓に行くと、父さんと母さんが同時にこっちを向く。朝の挨拶なんて雰囲気には見えない。母さんが真剣な表情で口を開く。
「ねぇ、大事な話があるの。パパはジムリーダーになるから、それでジムリーダーをする街に引っ越すことになるんだけど、そこまでいい?」
僕は寝起きで何を聞いてるか分からない状態でウンと頷く。
「それで向こうで落ち着いたらあなたと私もパパのいる所に引っ越しちゃおうかなって」
「え?」完全に目が覚めた。僕は最悪の事態を考えている。僕は母さんにこう尋ねた。
「それってもしかして、シンオウ地方から出るってことじゃないよね?」
母さんは無言で頷いた。嘘だろ。僕が10歳になったら冒険をしたいことは母さんだって知ってるはずだ。
「僕だけシンオウ地方にいるよ。もうすぐ10歳になるから旅に出れるし」
「ダメ!あなた街を出たらどれだけ危険か分かってるの?ポケモンが瀕死になったら誰もあなたを守れないんだからね!ベテランならともかくあなたは初心者でしょ?遠くの地方で何かあったらすぐに駆けつけることもできないから言ってるの」
正論だ。僕は肩を落とし落ち込む。そこに父さんが優しいトーンで話す。
「お前が落ち込むのも無理ない。でも向こうに行ったら冒険もできるから。母さんもお前を心配して言ってるんだよ」
僕はシンオウ地方で冒険をしたかったんだ。でもそう言うのを抑え、食事を取る。大人には逆らえない。それはどこの世界でも一緒で、抗う子供はただ面倒だと思われるだけだ。
(でも僕はもう子供じゃなくなるんだ、そんなの関係ない。勝手にいなくなって勝手に冒険してやる!大人になるってそういうことでしょ?)
今日はちょうどスクールが休みの日。準備するなら今しかない、冒険の準備を!
僕は食料とキズ薬をバッグに詰め込め、ポケッチを腕に付ける。タウンマップは何年も部屋に貼ってあるが、マップの右上に知らない土地があることに今初めて気づいた。準備はバッチリ、もうすぐ僕の冒険が始まる!
最後の家族との晩餐といえる夕食、仕事で父さんはまだ家に帰っていなかった。無言で食事を取る中、母さんは僕にこう優しく言葉をかける。
「今朝はごめんなさいね、あなたの気持ちを無視して話を進めていたかもしれない。でも本当に危険だから言ってるの。それを分かって欲しいな」
僕は少し面食らった顔をしてしまう。母さんは僕がこれから何をするか分かって言ってるのか疑うレベルだ。罰悪く感じた僕は無言で頷く。
部屋に戻り、少し外を眺める。
コトブキシティはポケッチカンパニーが有名で、商業の盛んな街だ。
ここに住み、スクールに通いながら働いている大人の人を僕は知っている。冒険だけが人生じゃない。ましてや別の場所で冒険できるのに冒険したくないなんて言う僕はなんてわがままだと思われるかもしれない。
「マネ、マネネ!」マネネが僕の顔色を見て元気づけようとしている。それを見て僕は決心した。
「そうだなマネネ、冒険に行こう!」
僕は自分に言い聞かせながらマネネをモンスターボールに入れ、母さんの目を盗みながら玄関まで抜き足差し足で行く。
(大丈夫、落ち着け。僕はもうすぐ大人なんだ。自分の道は自分で決めるし、1人で生きていけるさ)
僕は玄関のドアを音を立てずに開け家を出た。家を出るとすぐに僕は全力疾走する。
心臓の鼓動が早くなる。これが冒険ってやつなのか、景色がいつもよりとても広く見える。
僕はコトブキシティを出て203番道路に着いた。周りは暗くてもたくさんポケモンがいる。ムックルが木で寝ている姿、触覚をぶつけて音楽を鳴らすコロボーシ、水場ではビッパの群れがいて、全てがスクールじゃ経験できない初めての事だ。
「ははっ、とうとう始まったんだな。さぁ行こうマネネ!」
旅はまだ始まったばかり。僕の冒険がこれから始まる。
(現在手持ちポケモン マネネLv.10)
テレビには新商品のポケッチの紹介をするやけに声の高い男の人が映っている。
そこでいつも通り僕たち家族は夕飯を食べながら談笑をしていた。
「あなた、本当におめでとう!」
母さんは嬉し涙を流しながら父さんにそう言う。なんと僕の父さんはジムリーダーになるみたいだ。
ジムリーダーは町の象徴と言える存在であり、僕の通うスクールでもどのジムリーダーが好きかよく議論をする。まあしかし、1人シンオウ地方外のジムリーダーを興奮して語るヤツがいて周りはいつも白けてしまうのだが。サカキなんて聞いたことがないぞ全く。
「はは、その事だけど少し話があるんだ」
父さんは少し険しい表情になっている。これは子供の僕には分からない話が始まるのだろうといつもの経験から予測してテレビの方に集中する。
夕食を終え自分の部屋に戻ると、マネネが僕の胸に飛びついてくる。
「うわっと、そういやスクールから帰ってマネネにただいましてなかったよね、ごめん」
僕がマネネを抱きしめ返すとマネネは太陽のような笑顔で僕に微笑む。
マネネは僕が生まれた時からずっとそばにいて、僕とマネネは無二の親友だ。
「ねぇマネネ、僕が他の友達にも言ってないマネネと僕だけの秘密があったよね?僕がシンオウ地方のチャンピオンになるっていう夢」
チャンピオンとは、ポケモンリーグで優勝してさらに現チャンピオンを倒したものだけがなれる一握りの存在だ。
「僕がチャンピオンになるために父さんを倒さなきゃいけなくなるんだよ、マネネはどう思う?」
マネネは「どういうこと?」と手を広げたポーズをする。そりゃ僕にも父さんの話が全て分かるわけではないからマネネにも僕が言うことで分からないことだってある。
「あぁそれにしても楽しみだな、次の誕生日。やっと10歳になれるからなぁ」
10歳になると、トレーナーになって旅をすることが出来るようになる。僕はシンオウ地方が好きで、シンオウ地方の色々な所を巡ってみたい。何よりコトブキシティにはジムリーダーがいない。ジムがないと強いトレーナーも街に寄らないからずっと不満に思っていた。
「でもマネネが傷つくのは嫌だな」
僕は少し不安に思いながらも段々まぶたが重くなり眠ってしまう。
次の朝。食卓に行くと、父さんと母さんが同時にこっちを向く。朝の挨拶なんて雰囲気には見えない。母さんが真剣な表情で口を開く。
「ねぇ、大事な話があるの。パパはジムリーダーになるから、それでジムリーダーをする街に引っ越すことになるんだけど、そこまでいい?」
僕は寝起きで何を聞いてるか分からない状態でウンと頷く。
「それで向こうで落ち着いたらあなたと私もパパのいる所に引っ越しちゃおうかなって」
「え?」完全に目が覚めた。僕は最悪の事態を考えている。僕は母さんにこう尋ねた。
「それってもしかして、シンオウ地方から出るってことじゃないよね?」
母さんは無言で頷いた。嘘だろ。僕が10歳になったら冒険をしたいことは母さんだって知ってるはずだ。
「僕だけシンオウ地方にいるよ。もうすぐ10歳になるから旅に出れるし」
「ダメ!あなた街を出たらどれだけ危険か分かってるの?ポケモンが瀕死になったら誰もあなたを守れないんだからね!ベテランならともかくあなたは初心者でしょ?遠くの地方で何かあったらすぐに駆けつけることもできないから言ってるの」
正論だ。僕は肩を落とし落ち込む。そこに父さんが優しいトーンで話す。
「お前が落ち込むのも無理ない。でも向こうに行ったら冒険もできるから。母さんもお前を心配して言ってるんだよ」
僕はシンオウ地方で冒険をしたかったんだ。でもそう言うのを抑え、食事を取る。大人には逆らえない。それはどこの世界でも一緒で、抗う子供はただ面倒だと思われるだけだ。
(でも僕はもう子供じゃなくなるんだ、そんなの関係ない。勝手にいなくなって勝手に冒険してやる!大人になるってそういうことでしょ?)
今日はちょうどスクールが休みの日。準備するなら今しかない、冒険の準備を!
僕は食料とキズ薬をバッグに詰め込め、ポケッチを腕に付ける。タウンマップは何年も部屋に貼ってあるが、マップの右上に知らない土地があることに今初めて気づいた。準備はバッチリ、もうすぐ僕の冒険が始まる!
最後の家族との晩餐といえる夕食、仕事で父さんはまだ家に帰っていなかった。無言で食事を取る中、母さんは僕にこう優しく言葉をかける。
「今朝はごめんなさいね、あなたの気持ちを無視して話を進めていたかもしれない。でも本当に危険だから言ってるの。それを分かって欲しいな」
僕は少し面食らった顔をしてしまう。母さんは僕がこれから何をするか分かって言ってるのか疑うレベルだ。罰悪く感じた僕は無言で頷く。
部屋に戻り、少し外を眺める。
コトブキシティはポケッチカンパニーが有名で、商業の盛んな街だ。
ここに住み、スクールに通いながら働いている大人の人を僕は知っている。冒険だけが人生じゃない。ましてや別の場所で冒険できるのに冒険したくないなんて言う僕はなんてわがままだと思われるかもしれない。
「マネ、マネネ!」マネネが僕の顔色を見て元気づけようとしている。それを見て僕は決心した。
「そうだなマネネ、冒険に行こう!」
僕は自分に言い聞かせながらマネネをモンスターボールに入れ、母さんの目を盗みながら玄関まで抜き足差し足で行く。
(大丈夫、落ち着け。僕はもうすぐ大人なんだ。自分の道は自分で決めるし、1人で生きていけるさ)
僕は玄関のドアを音を立てずに開け家を出た。家を出るとすぐに僕は全力疾走する。
心臓の鼓動が早くなる。これが冒険ってやつなのか、景色がいつもよりとても広く見える。
僕はコトブキシティを出て203番道路に着いた。周りは暗くてもたくさんポケモンがいる。ムックルが木で寝ている姿、触覚をぶつけて音楽を鳴らすコロボーシ、水場ではビッパの群れがいて、全てがスクールじゃ経験できない初めての事だ。
「ははっ、とうとう始まったんだな。さぁ行こうマネネ!」
旅はまだ始まったばかり。僕の冒険がこれから始まる。
(現在手持ちポケモン マネネLv.10)
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