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白いヴェールを貴方に

原作: その他 (原作:あんさんぶるスターズ!) 作者: 緋
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Knights

結婚式は滞りなく進んでいく。
あの後からあんずが泉のことを見ることはなかった。
当たり前だ。式の進行中の花嫁というのは忙しい。
それにプロデューサーという仕事を学生時代に心より楽しんでいた彼女だ。
結婚式はまるで観客が心から楽しめるような、そうあの時のライブのような。
普段観客を楽しませる側の自分たちが楽しめるものになっている。
それを進行することも忘れない彼女はさすがに動きはしないが花嫁であるのにずっと目を光らせている。何かあれば立ち上がることも厭わないのではないだろうか。
とはいえ元生徒会であったメンバーも協力していたらしい。
何かが起こる前に。観客たちが気が付くその前に、手は打たれているらしい。
さすがの一言である。
今も輝くアイドルたちがやってくるということでマスコミも注目しそうなものではあるがそれもない。騒ぎにはなっていない。
中心であるのがプロデューサーだというからだろうか、もしくは生徒会長だったあの人が睨みをきかせているのか。
まあ、一観客である泉には知りえないことだ。

「王さま~も、なんか一言いうの?」

気になったらしい凛月は口を開く。
声をかけられたレオは、ん?と凛月を見る。

「なんか各ユニット一言ずつリーダーが喋るって・・・・・・兄者が」
「あ!そうそう!喋る!」

レオの説明を聞こうと思ったが相変わらずの王さま。言葉の合間合間に何かしらが入り説明となっていないので掻い摘んでわかりやすく解釈するのであれば、各ユニットのリーダーが前に立ち一言、というか即興ができるようだ。

「だから、おれ、というか俺たちKnightsは即興で俺が曲作るから~それに合わせて踊って!」
「無茶苦茶か」

つい突っ込んでしまった。

「相変わらずね・・・」

なるくんも顔に手を寄せはぁ、とため息をつく。

「まあ、慣れたもんだけど~」
「leaderの突然の思い付きは今も健在ですね・・・」

凛月と司も手を振り、ため息をつき応える。
Knightsはいつだってこうだった、と思い出すことができる。
懐かしい、とすら思えるほど時間はたっていたのに王に呼ばれれば。
命令されれば立ち上がり、舞い踊る。それがあの頃と何一つ変わっていない。
Knightsだ。
そう、あの頃と何も。変わってはいないのだ。
泉の想いですらも。
もし、変わったことがあるのであれば、それは、
あの時にはなかったはずの勇気とプライドを隠すために作り上げた体裁だろうか。
Knightsとしての活動は今はもうなくなってしまった。
泉も嵐もモデル活動のほうへ移転してしまったし、凛月はアイドルというよりはキャラを買われてバラエティに出ていることのほうが多い。司は自分の家の当主として忙しいらしくメディアへの露出はめっきり減ってしまった。レオは作曲家として名を挙げたので、そっち方面でメディアに出ることのほうが多い。
そういった相変わらずといってもいいほどのメンバーであっても、まとまればどこにも負けない。決して。
鳴上嵐はメンバーの中で一番身長が高いにも関わらずそれぞれに合わせるのが得意だ。瀬名泉はプライドが高いとは言われるがそれは完璧主義が齎したものであって彼の動きには迷いがない。朔間凛月は柔軟性と歌声がある。やわらかい雰囲気で場を和ませることも得意としているが、その実まとめることが得意だ。年長者、だという彼はいつも誰かと誰かを繋ぎ合わせていた。朱桜司には力強い意志がある。未熟だと言われていた彼はいつでもどこでも努力を怠らず立ち上がる。その意志こそが司の何よりの強さだ。
そして、リーダーである月永レオ。彼の曲があり、彼が王であるからこそ、Knghtsはまとまっているのだと、信じずにはいられないのだ。
そのKnightsがまた集まり手を取るのだという。まとまらないはずがない。
それはそれぞれが感じていたことだった。

「あんずの結婚式を素晴らしいものとするための一興だ。」

成功させるぞ。
と、レオはニヤリと笑った。
それに応じるかのようにそれぞれ笑った。
式はその間も進行していく。
あんずの両親の手紙は言葉が美しく羅列していて。
あんずは涙を見せているし、泉の隣にいる嵐もまた泣いている。
それを見て今度は言葉をかけるのではなく、静かにハンカチーフを差し出す。
丁寧に端までおられたそれに気づいた嵐はごめんなさい、ありがとう泉ちゃんと声をかけると手にしたそれを目元にあてた。
きっとなるくん自身ももってるんだろうけど、と思いながら。
そういえば、呼び方だって変わっていないのだな。と、泉は思わず笑いそうになる。
何年たっても自分はなるくんと呼び、変わることはなく泉ちゃんと呼ばれる。
あの時ライバルのようにお互い支えあいながら隣に立っていた存在は今も変わらず隣にいる。
何でもないことだと思っていたそれは年数を追うごとに変わっていくものだと思っていたが。
変わらないものであるらしい。
それがお互い当たり前のことだというのに、あまりにも身に余るほどの幸福であるようでなんだかむず痒い。
ずっとこのままで、とまで思ったところで頭を振る。
俺は今回変わるためにもここにいるのだから。
変わらなかった幸福と変わることで手に入れる幸福を手に入れて、そして
ずっと隣にいてくれる彼に与えるのだ。
そんなことを考えているとレオは勢いよく立ち上がる。

「じゃあ、俺行ってくるな!お前らはサプライズだから!」

そんな大きな声で言ってはサプライズにもならないだろう。
と思いながら泉は手を振る。
さぁ、Knightsが再び、かつてのプロデューサーのために。
立ち上がるのだ。
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