第23話「穂乃果、帰宅するも」
次、俺が目覚めたのは神田明神だった。もうすっかり日が暮れて、カラスの鳴き声まで聞こえてくる。
「なんで俺こんなところに……」
地面に倒れていた俺は身体を起こす。
すると、目の前には海未がいた。
「大丈夫ですか?」
そう彼女は声を掛ける。
「あぁ、海未ちゃん。俺は平気だよ」
何気なく、いつも通りの返しをする。海未ちゃんは優しいなぁなんて思っていたのだが。
「あの……どうして私の名前を知ってるんですか?」
海未ちゃんの様子が変だ。
「なんでって、俺たち友達でしょ? 悪い冗談やめろよな」
海未ちゃんはきっと俺をからかっているのだろう。そう思って返すが、何やら様子がおかしい。
「何言ってるんですか……気持ち悪いです!!」
「えっ、何言ってんの海未ちゃん」
そういうドッキリか、ドッキリだと言ってくれ。
しかし、本気で嫌がっている海未ちゃんを見てドッキリじゃないような気もする。一体どうなってるんだ。
「お~い! 海未ちゃ~ん!」
そんな時、穂乃果がやってきた。
「穂乃果! 離れてください!! この人変質者です!!」
海未ちゃんはそう言って穂乃果を逃がそうとする。
「何言ってるの海未ちゃん! 竜くんじゃん! 私達の幼馴染だよ?」
穂乃果は俺のことを認識していた。故に海未ちゃんと口論になってしまっていた。
「何言ってるんですか穂乃果! 私の幼馴染は穂乃果とことりだけです! こんな人知りません!」
「どうしちゃったの海未ちゃん!? ことりちゃんみたいに変なこと言って!」
「変なのは穂乃果です! 一体誰なんですかこの人!」
「だから竜くんだって言ってんじゃん!」
口論は激しくなる一方。正直、こんな言い争いは見たくなかった。
「もういいよ。変なこと言ってごめん! これでいいだろ? じゃあな!」
俺はその場から逃げることにした。
☆ ☆ ☆
竜が一目散に逃げたところを見て、海未は安堵した。
「全くお騒がせもいいところです」
そんな様子を見て、穂乃果は憤慨した。
なぜμ'sの仲間にあんな物言いができるのか。昼間にあんなことがあったとはいえ、さすがにあの態度はない。
「海未ちゃん、なんであんなこと言うの!? 私竜くん追いかけるからね!」
穂乃果はそれだけ言うとその場から立ち去った。
竜にひどいことをしてしまった。それを悔やんで悔やんで仕方なかった。
穂乃果にとって竜とはそれほどまでに大切な人であったのだ。
だからこそ、勝手に絵里を加入させようとしたことには怒るし、逆に竜がひどいことをされていたら庇うのだ。
穂乃果は、竜に謝ろうとしていた。海未に代わって。そのために町を駆け巡った。
1時間ぐらいだろうか。それくらい走った後、町外れの河原でようやく竜を見つけた。
「どうしちゃったんだろうな……まるで俺だけ違う世界の住人みたいな……」
そんな風にぼやく竜の姿がよく見える。
穂乃果は、竜を大声で呼びながら駆け寄った。
「竜く~ん!!」
その声に気づいた竜はなんともいえない寂しい表情で穂乃果を見た。
「穂乃果……」
哀しそうな声が聞こえる。穂乃果は本当に申し訳ない気持ちになった。
「さっきはごめん! 海未ちゃんが変なこと言って」
「いや、いいんだ。悪いのは俺だ。きっと無理に絵里ちゃんをμ'sに入れようとしたから怒ってたんだよ」
竜は無理にポジティブに考えようとしている。
これ以上この話をしても実りがないと感じた穂乃果は意を決して竜に聞いてみた。
「……その話なんだけどさ、竜くんは会長のどこがよかったの?」
「輝いてたんだ。穂乃果と同じように。一見冷めたような目をしてる絵里ちゃんだけど、実は胸の内に熱いハートを秘めてた。一緒に飯食ってて分かったよ」
「それが良かったの?」
「そうだ」
穂乃果はいまいち信用できなかった。いや、信用したくなかった。少し妬いていたのだ。
「ほんと?」
「それ以外には特にないんだなこれが」
穂乃果はむぅーっと頬を膨らませじっと竜を見つめる。竜は一体何だという感じに首を傾げた。
これに怒った穂乃果はぐっと胸を竜の腕に押し当てた。
「穂乃果!? なにやって……」
「……てっきりあの身体でされたと思ってた」
「何を?」
「……ヒミツ」
☆ ☆ ☆
俺たちは二人して穂むらへ帰ってきた。
「ただいまー!」
「おかえり、穂乃果。あら、その人は彼氏さん?」
穂乃果ママは真顔でそう穂乃果に聞いてきた。
さっきの海未ちゃんといい、やはり何かがおかしい。
「変な冗談やめてよお母さん。竜くんは」
「どうも彼氏です」
こう答えるしかなかった。ここは嘘でもこう言わなければまたトラブルになる。
「ちょっと竜くん!?」
「穂乃果、ここもなにか変だ。俺の嘘に乗れ」
「う、うん……」
仮説でしかないが、なぜか皆俺のことを忘れている。海未ちゃん然り、穂乃果ママ然り。
だから嘘でも赤の他人であると伝えて、それっぽい装いをしないといけない。
穂乃果にもそれを分かってほしかった。
「はじめまして、琴奈竜っていいます。穂乃果さんとお付き合いしてます。よろしくお願いします」
「あら、そうだったのね。それで今日は泊まっていくの?」
「え、えぇ。そんなところで」
「ゆっくりしていってね」
俺たちは穂乃果の部屋に向かった。
「なんで俺こんなところに……」
地面に倒れていた俺は身体を起こす。
すると、目の前には海未がいた。
「大丈夫ですか?」
そう彼女は声を掛ける。
「あぁ、海未ちゃん。俺は平気だよ」
何気なく、いつも通りの返しをする。海未ちゃんは優しいなぁなんて思っていたのだが。
「あの……どうして私の名前を知ってるんですか?」
海未ちゃんの様子が変だ。
「なんでって、俺たち友達でしょ? 悪い冗談やめろよな」
海未ちゃんはきっと俺をからかっているのだろう。そう思って返すが、何やら様子がおかしい。
「何言ってるんですか……気持ち悪いです!!」
「えっ、何言ってんの海未ちゃん」
そういうドッキリか、ドッキリだと言ってくれ。
しかし、本気で嫌がっている海未ちゃんを見てドッキリじゃないような気もする。一体どうなってるんだ。
「お~い! 海未ちゃ~ん!」
そんな時、穂乃果がやってきた。
「穂乃果! 離れてください!! この人変質者です!!」
海未ちゃんはそう言って穂乃果を逃がそうとする。
「何言ってるの海未ちゃん! 竜くんじゃん! 私達の幼馴染だよ?」
穂乃果は俺のことを認識していた。故に海未ちゃんと口論になってしまっていた。
「何言ってるんですか穂乃果! 私の幼馴染は穂乃果とことりだけです! こんな人知りません!」
「どうしちゃったの海未ちゃん!? ことりちゃんみたいに変なこと言って!」
「変なのは穂乃果です! 一体誰なんですかこの人!」
「だから竜くんだって言ってんじゃん!」
口論は激しくなる一方。正直、こんな言い争いは見たくなかった。
「もういいよ。変なこと言ってごめん! これでいいだろ? じゃあな!」
俺はその場から逃げることにした。
☆ ☆ ☆
竜が一目散に逃げたところを見て、海未は安堵した。
「全くお騒がせもいいところです」
そんな様子を見て、穂乃果は憤慨した。
なぜμ'sの仲間にあんな物言いができるのか。昼間にあんなことがあったとはいえ、さすがにあの態度はない。
「海未ちゃん、なんであんなこと言うの!? 私竜くん追いかけるからね!」
穂乃果はそれだけ言うとその場から立ち去った。
竜にひどいことをしてしまった。それを悔やんで悔やんで仕方なかった。
穂乃果にとって竜とはそれほどまでに大切な人であったのだ。
だからこそ、勝手に絵里を加入させようとしたことには怒るし、逆に竜がひどいことをされていたら庇うのだ。
穂乃果は、竜に謝ろうとしていた。海未に代わって。そのために町を駆け巡った。
1時間ぐらいだろうか。それくらい走った後、町外れの河原でようやく竜を見つけた。
「どうしちゃったんだろうな……まるで俺だけ違う世界の住人みたいな……」
そんな風にぼやく竜の姿がよく見える。
穂乃果は、竜を大声で呼びながら駆け寄った。
「竜く~ん!!」
その声に気づいた竜はなんともいえない寂しい表情で穂乃果を見た。
「穂乃果……」
哀しそうな声が聞こえる。穂乃果は本当に申し訳ない気持ちになった。
「さっきはごめん! 海未ちゃんが変なこと言って」
「いや、いいんだ。悪いのは俺だ。きっと無理に絵里ちゃんをμ'sに入れようとしたから怒ってたんだよ」
竜は無理にポジティブに考えようとしている。
これ以上この話をしても実りがないと感じた穂乃果は意を決して竜に聞いてみた。
「……その話なんだけどさ、竜くんは会長のどこがよかったの?」
「輝いてたんだ。穂乃果と同じように。一見冷めたような目をしてる絵里ちゃんだけど、実は胸の内に熱いハートを秘めてた。一緒に飯食ってて分かったよ」
「それが良かったの?」
「そうだ」
穂乃果はいまいち信用できなかった。いや、信用したくなかった。少し妬いていたのだ。
「ほんと?」
「それ以外には特にないんだなこれが」
穂乃果はむぅーっと頬を膨らませじっと竜を見つめる。竜は一体何だという感じに首を傾げた。
これに怒った穂乃果はぐっと胸を竜の腕に押し当てた。
「穂乃果!? なにやって……」
「……てっきりあの身体でされたと思ってた」
「何を?」
「……ヒミツ」
☆ ☆ ☆
俺たちは二人して穂むらへ帰ってきた。
「ただいまー!」
「おかえり、穂乃果。あら、その人は彼氏さん?」
穂乃果ママは真顔でそう穂乃果に聞いてきた。
さっきの海未ちゃんといい、やはり何かがおかしい。
「変な冗談やめてよお母さん。竜くんは」
「どうも彼氏です」
こう答えるしかなかった。ここは嘘でもこう言わなければまたトラブルになる。
「ちょっと竜くん!?」
「穂乃果、ここもなにか変だ。俺の嘘に乗れ」
「う、うん……」
仮説でしかないが、なぜか皆俺のことを忘れている。海未ちゃん然り、穂乃果ママ然り。
だから嘘でも赤の他人であると伝えて、それっぽい装いをしないといけない。
穂乃果にもそれを分かってほしかった。
「はじめまして、琴奈竜っていいます。穂乃果さんとお付き合いしてます。よろしくお願いします」
「あら、そうだったのね。それで今日は泊まっていくの?」
「え、えぇ。そんなところで」
「ゆっくりしていってね」
俺たちは穂乃果の部屋に向かった。
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